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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第八章

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ライト・アンド・ダーク

・・・ここで、諦める訳にはいかない。

あんな力を持ったルーニーを野放しにはしては置けない・・・。

力を取り返さなきゃ、このままじゃ、ソウスケを迎えに行けないし、この世界の戦争も、おじさんの国の戦争も止めることが出来ない。

もっと、怒りを。

「はあぁっ」

力を振り絞りながらヒロヤに向かって飛び掛かり、思いっきり光と闇の剣を振り上げたとき、ヒロヤはとっさに体を反らして剣をかわしたものの、光の剣身から巻き上がった白い光は風圧となってヒロヤに襲い掛かった。

立て続けに光と闇の剣を振り下ろすと、今度は闇の剣身から闇が噴き上がり、そのまま黒い風はヒロヤの上半身を呑み込んだ。

「おおっと・・・また強くなったみたいだな。武器も変わったみたいだし」

「ふぅ・・・」

手に持つ物の重さは変わらないものの、ふと目を向けた光と闇の剣は先程までの形とは全く異なるものに変化していた。

何だ、これ。

光の剣は細身で長い白い槍に、反対側の闇の剣は太くて短めの黒い槍になって、中央の持ち手には手を守るように小さな円い盾が付いてる。

けど、1番変わったのはグリップの安定感。

まるで手に吸い付いてるみたいにしっくりくる。

これが、僕の武器か。

「それって、あれか?さっきミント達が言ってた、自分のスタイルに合った武器ってやつか?」

「そうみたい」

「そうか、やっぱりお前は槍だってことか」

槍は槍だけど、厳密に言っちゃえば腕と槍が一体化してるのが僕のスタイルなんだけどな。

まぁ、いっか・・・。

「そうか、じゃあそのことはオレから言っておく。あぁ、じゃあ」

携帯をジャケットのポケットにしまったノブが隣のテーブルに戻って来るのを見ながら、ホットミルクの入ったコップを口に運ぶ。

「良かったね氷牙、自分の武器に出来て」

「あぁ」

「でも帰ってきてすぐに修業だなんて、やっぱりあまり無理しない方が良いよ?」

ライムがそう言いながら心配そうに眉をすくめると、小さく頷き出したミントもすぐにライムと同じような眼差しを向けてくる。

用を済ませるって言ってたけど、ソウスケはきっとアルバートの本拠地を叩くまで帰って来ないだろう。

何か、妙な胸騒ぎもするし。

「まぁ体調を壊さない程度に頑張るよ」

「・・・明日、シイドが例のカンノってのを連れてくるってよ」

揃って微笑む2人を見たときにふとノブの話し声が耳に入ってきたので、何となくノブ達に目を向けてみる。

「そういえば、シキの方はどうなってんだ?」

ヒロヤの問いにノブは何やら呆れるような笑い声を噴き出す。

「いやぁ、何だかよく分かんねんだ。けど着実に進めてはいるみたいだぜ?」

何の話だろ。

けどノブ達もシキと知り合いになったのか。

「氷牙、明日も修業するの?」

「あぁ」

明日か、そういえばシンゴのところにも行かないとな。

ポケットから取り出したカードキーを改めて見ると、懐かしさを感じると共に若干の不安を感じた。

あれ、どっちから入れるんだっけ。

「それじゃあな」

「あぁ」

タイチとミサが向かい隣りの部屋に入っていったので、カードキーで鍵を開けて部屋に入ったとき、ふとある疑問が頭を過ぎった。

そういえばずっと留守だったし、全く掃除されてないよな。

・・・でも異世界に行ってないときも掃除はしなかったけど。

明かりを点けて部屋を見回ってみると、テーブルやキッチンのカウンター、ベッド脇の小さなサイドテーブルにまでも埃っぽさが感じられなかった。

おじさんには異世界に行くことを言ってあったし、何かしらの対処はしてただろう。

朝食の時間になる頃にホールに入ると、ノブ達の居るグループは皆迷彩服かそれに近い格好をしていて、人数も幾つかのテーブルを埋めるほどのものになっていた。

今ここに居る能力者の半分は皆戦争に関わってるってことか。

日本も変わったな。

声をかけてきたヒカルコが手を振る方へ盛りつけた料理を持って行くが、ヒカルコの隣にはヒカルコと同世代と思われる見知らぬ男女が座っていた。

「おぉ、本物の氷牙じゃん」

「ね、思ってたより小さいんだね」

「この人達は?」

「タイチの居た組織と一週間前に合併したの。メイナとハルゴだよ」

合併?・・・。

てことは片方の組織は潰れたってことになるよな。

・・・でも通りで前より賑やかな感じがすると思った。

「何か最近になって世界中の組織の数が減ってるみたいだよ」

「そうか。それってここみたいに合併とかで?」

「うん。そのせいで勢力争いが激しくなってるの」

能力者同士の戦争に、普通の人間の戦争、そして普通の人間と能力者との戦争、か。

「そうか」

他人の世界を変えてまで戦争をするなんて、おじさん達も案外自分勝手で冷酷な人達なのかな。

「僕、1回氷牙と戦ってみたかったかんだよな。今度相手してよ」

あれ、ハルゴは普通の服なのか。

「あぁ。そういえばハルゴはノブのチームに入らないの?」

それにノブ達の服に付いてる紋章も付けてはないみたいだけど。

「いやぁ、この前ノブさんに連れてって貰ったんだ、現場にさ。けど本当に血が流れたりしてさ、僕にはちょっと無理そうだって思ったよ」

「当たり前でしょ?現実なんだから。ゲームとは違うんだよ?」

「そりゃあ・・・分かってるけどさぁ、僕だって、ちょっとは自信あるし」

「ハルゴはどんな力なの?」

「僕はね、複合型なんだよ」

「何?それ」

「攻撃と支援両方出来るんだ。無属性のレーザービームと、動きを封じる魔法が使えるんだ」

「へぇ」

複合型か、それだけでも結構な実力者だと思うけど、やっぱり1番重要なのは闘争本能だろうな。

「おい、帰ってきたか」

声がした方に目を向けると同時に近づいてくるシンゴが見えたが、シンゴはそのまま隣の椅子の背もたれに軽く寄り掛かった。

「シンゴ、何で?」

しかもノブ達と同じ迷彩柄の服だ。

「関東辺りの強い能力者を集めて、軍に協力する特別特攻隊を作ったんだ。そんで東京で唯一のこの組織を拠点にしたんだ」

なるほど、関東の強者を集めた、か。

通りで知らない顔が多いと思った。

「でも、誰が集めたの?相当強い人じゃないと声掛けれないと思うけど」

「そらぁノブとシンジだ。あとユウジって奴もな。あいつらなかなか強いんだよ、ノブには俺でも敵わなかったからな」

ノブ?・・・シンゴより強そうには見えないけど、シンジみたいに強くなったってことかな。

「そうか」

さりげなくユウジの名前も出たけど、ユウジなんて1つしか力を持ってなかったし、覚醒も1回しかしてなかったのに。

「ていうか、あいつと一緒に帰ってきた訳じゃなかったのか?」

「あぁ、ソウスケはまだあっちで戦ってるから、修業したらまずソウスケを迎えに行くつもりだよ」

「いや、いいんじゃないか?迎えなんて、そのうち帰って来るだろあいつ」

アルバートのサソリやデカルト・ウーノは簡単に破壊出来てたけど、最後の巨大なカブトムシがな。

「それに異世界だろ?そんなすぐに迎えに行けるのか?」

確かに空を飛んでもアサフィルから石碑のゲートまで2日くらいかかったからな、あ、ソウスケが持ってたトランシーバーって言ってたやつ、返さなきゃ良かった。

「大体の居場所なら分かるけど、確かにすぐに見つけられる訳じゃないや」

それにもう普通にお腹が空くようになっちゃったし、四六時中捜し回ることも出来ない。

「それより、あんたもノブのチームに入るだろ?」

「いや、僕は僕で用事があるから、ノブを手伝うのはその後かな」

「そうか、あんたの力があれば相当助かるんだが、俺ら特別特攻隊は強制的な集まりじゃないからな、用があるなら仕方ないか」

「そういえば関東で選りすぐりの能力者を集めたってことは、シキも関西で同じようなことしてるのかな?」

「まあな。もうそれぞれの組織で活動する時期じゃないんだよ。世界中でも組織が合併してってるからな。今が正に勢力争いの本番ってこった」

朝食の料理が引き下げられた頃、ヒロヤが見知らぬ男性を1人連れてこちらの方に近づいてきた。

「空母に行くまで少し時間があるが、昨日の続きやるか?」

「あぁ、頼むよ」

ヒロヤの表情からは内から滲み出るたくましさが伺え、そんな横顔を見ながら、何となく胸の底に沸き立つ嬉しさと劣等感を噛み締めていく。

「こいつはゴトウショウリだ。今回はこいつが相手になるからな」

「分かった」

どちらかと言えばヒロヤに近い年齢に見えるゴトウショウリと呼ばれた男性は、頼りがいのあるような微笑みを浮かべてはいるものの、どことなく残念がっているようにも見えるその眼差しがふと気になった。

「ノブさん達から事情は少し聞いたよ。もう俺達の知ってる氷牙は居ないってことで良いんだよな?」

「まぁ・・・そうだね」

距離を取って翼を解放すると、ショウリはゆっくりと右腕を水平になる高さまで上げた。

・・・ん?

何か出るような感じだけど・・・。

「俺はもう準備万端だ。いつでも来て良い」

「・・・え?何もしてないじゃん」

「良いんだよ、これで。さぁ来い」

何かを企んでいるような笑みをうっすらと浮かべるショウリに戸惑いを感じながら、光と闇の槍を出して飛び出す。

ショウリは姿勢を少し下げ、握りしめている長さの感じる何かの底を突き出そうとするような動きを見せたので、槍の柄の前にある小さな盾を前に出したとき、まるで長い何かの底で勢いよく突かれたような重たい衝撃が盾から伝わった。

とりあえずはただの透明な武器ってところか。

衝撃に耐えながら地面を踏ん張ると同時に、ショウリはその長さの感じる何かを振り回し始めると、とっさに振り出した光と闇の槍は何かに当たったような鈍い音を鳴らした。

リーチの長さから言って、ショウリの武器は槍か、でもこの衝撃の重さから見て斧かハンマーってこともある。

再びショウリがその長い何かを振り出し始めたので、少しだけ距離を取るが、直後に重たい衝撃が脇腹を襲いそのまま勢いよく吹き飛ばされた。

くっ思ったよりも長かったか。

追撃に備えるためにすぐに立ち上がり顔を向けるが、ショウリはその場から動かずに居て、先程と同じように長い何かを地面に立てながらこちらを見据えていた。

あまり自分からは動かない戦法なのかな・・・いや、今は手加減して貰ってるだけか。

「それ、透明なの?」

「いや、俺の武器はある条件を満たしてるときにしか見えないんだ」

どうやら、ただ見えないだけで特に変わったような攻撃をする訳じゃないみたいだな。

「へぇ」

「随分と呑気なんだな。強くなりたいんだろ?言っとくがこの武器は条件を満たしたときにこそ本当の力を発揮するんだ。俺に本気を出させるつもりで来いよ。じゃなきゃ修業にならないだろ?」

なるほど、どうやら僕は根本的にショウリの武器を甘く見てたみたいだな。

・・・本気か。

「じゃあ、遠慮なく行かせて貰うよ?」

少しばかり、解放させるか、闘争本能。

「あぁ」

するとショウリはその長い何かを両手に持ったので、翼に意識を集中させながら強く地面を蹴った。

闘争本能を目覚めさせるためには・・・。

振り出された長い何かを盾で受け止めながら、手に光と闇を集め、再びその長い何かを振り出す前にショウリの胸元に光と闇の球を撃ち込んだ。

小さな光と闇の爆風は一瞬だけしかショウリの動きを鈍らせることしか出来ず、またすぐに形の見えない武器が豪快に振り出されていく。

光の槍でその長い何かを受け止めたものの、その重たい衝撃に光の槍はたやすく弾かれ、立て続けに突き出された長い何かはこちらの腹に勢いよく叩きつけられた。

「ぐっ・・・」

少し吹き飛んだが翼を広げながら足を踏ん張り、すぐに飛び出すと、ショウリもまたすぐに長い何かを振り出したので、とっさに闇の槍を振り上げてその長い何かを受け止める。

すると闇の槍の衝撃に相殺されるかのように、長い何かの勢いは失われ、同時にショウリは一瞬だけ驚きの表情を見せた。

あれ・・・。

しかし直後にショウリはうっすらと笑みを浮かべ、再びその長い何かを大きく振りかぶった。

光の槍で長い何かを受け止めようとしたが、鈍い音を鳴らしながら槍は弾かれ、重たい衝撃と共に体勢はたやすく崩されてしまう。

・・・なるほど。

胸の底に沸き立った怒りを力を変え、素早くショウリの懐に飛び込む。

闇の槍でショウリの持つ長い何かを僅かに弾き返し、胴体ががら空きになった隙を突いてショウリの胸元に光の槍を突き刺した。

何・・・確かに槍が刺さった感覚がしたのに、ショウリに槍が届いてない。

後藤 勝利(ゴトウ ショウリ)(24)

群馬の組織に身を置いているが、ノブが発足させた特別特攻隊に入っている為、1日のほとんどは東京の組織で過ごしている。特別特攻隊の中ではトップ10の中に入る実力者。


ありがとうございました。

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