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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第一章

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オーガニゼーション・アクティビティーズ2 ウエスタン・ウィンド

「そうね、情報収集を重視した感じかしら。内容は、大阪や北海道とか、わりと遠い地域と同盟を結ぶってことよ」

「なるほどね。まぁ同盟を結ぶ時点である程度の戦力拡大は見込めるけど、マナミはどう思う?」

ユウジがマナミに顔を向けると、マナミが首を傾げながら目線を上げた。

「じゃあ神奈川と大阪の両方と仲良くなれば?」

わりと皆真剣に会議しているんだな。

学校から帰って来た途端に会議なんて、これは大変そうだ。

「氷牙はどう思う?」

するとユウジが唐突にそう言ってこちらに顔を向けてきた。

「え?僕はこの組織の活動方針が守りだから、戦力よりも情報が必要かなって思ったんだ」

「そうだね・・・大体みんなの意見は似た感じだし、戦力よりも情報を多めで進める感じってことでいいかな?」

ユウジが意見をまとめると他の3人は同意するように頷いた。

「あとね、鉱石の情報を武器にして交渉するのはどうかしらってことも氷牙と話したのよ」

それも2人の意見として言うのか。

まぁそんなに気にならないから別に良いけど。

「もし、相手が鉱石を知ってたら?」

意見の穴を突こうとアキが言葉を返すと、ミサは黙ってこちらに顔を向けた。

「例えば代表同士が戦って決めるとか、リーダーを決めたみたいに。それで勝った方の条件を飲むとかは?」

「なるほど・・・」

「それならこれはどうかな?アキが取締役で、俺が戦力拡大担当、氷牙は情報収集担当ってことで」

「良いなぁ、マナも大臣やるー」

そこまで真剣にやってる訳でもないみたいだ。

「いや、僕はブレインじゃないから、大臣はミサで、僕はミサの使者ってところかな」

「良いね、それ」

しかも何だか楽しんでるみたいだし。

「マナはー?」

「マナミは医療班の班長になれば?」

ユウジがそう言うとマナミはゆっくりと嬉しがるように笑みを浮かべた。

「んー、良いかもそれ」

「ちょっと」

ミサが口を挟むが会議室の空気は止まらず、ミサの声が空しく消えていったことさえ誰も気に留めようとしない。

「僕がまとめ役か。まぁいっか」

どうやらアキは納得したみたいだな。

「いっかじゃないわよ」

「ミサさん、俺達はそれぞれのやり方でやってみるってことで、それに、すぐに一気にネットワークを広める訳じゃないよ。1人で2つやるより、2人で2つやる方が効率も良いし」

「そ、そうね」

その呑気な顔とは裏腹にまくし立てるような口調のユウジに、ミサは若干の戸惑いを見せながら言いくるめられるように黙った。

「とりあえず俺は今ある話を進めるよ。メールで話したけど、群馬には裏に大きな組織があるみたいで、積極的に戦力拡大を試みているって」

「それじゃ神奈川は?」

アキが答えを促すように素早く口を挟む。

「神奈川はまだどことも同盟は組んでないみたいで、単独での発展を望んでるってさ。だから同盟と言っても浅い繋がりが良いみたい」

ちょうど良いな。

「・・・僕は断然、神奈川だな」

「マナも」

「あたしも」

「・・・決まりだね。あ、氷牙は?」

あ、って。

「僕にも聞くの?」

「一応・・・」

するとユウジは、まるで何も考えてないと思わせるほどの真顔を真っ直ぐこちらに向けてきた。

「じゃあ僕も神奈川で」

「分かった。じゃあ神奈川にしようかな。ミサさんはどうするの?大阪とか」

ユウジがミサに顔を向けると、ミサはすぐさま黙ってこちらに真っ直ぐな眼差しを向けてきた。

「1つくらいはやってみようよ」

小さく頷いたミサはすぐに気品のある笑顔を浮かべる。

「そうね。どんな風にやるの?」

「大阪と言うよりは、関西で1番強い所が良いな」

「あら、それって氷牙が戦いたいだけよね?」

「すくなくとも相手も自分は強いと認識してるなら、拳で語れるかなって感じで」

ミサは目線を落として黙り込んだものの、その表情は反発心を感じているような印象はなく、ただ小さく頷いただけだった。

「でも、強い所とかはどうやって知るのよ」

「おじさんなら何とか出来るかも」

「じゃあ聞いてみなよ」

そう言うとすぐにユウジが椅子を回しながら自身の背後にある扉に手を伸ばし、軽くノックした。

「はい」

「関西辺りで1番強い能力者がいる組織とか分かるかな?」

「関西ですか?ちょっと待って下さい」

「あぁ」

「ただ戦って見込みはあるのかい?」

おじさんが扉を閉めた後、ふとした沈黙を破るかのようにアキが落ち着いた口調でそう問いかけてくる。

「一応、鉱石の情報を賭けてみるけど」

「ふーん、まあ僕は2人で違うやり方でやるのは、面白いと思うよ」

表情はたいして変わらないものの、小さく頷いて見せたアキはそう言って飲み物に手を伸ばした。

「アキが良いなら、採用ということだね。じゃ、おじさんが来るまで、組織の名前でも決めようか」

ユウジがそう言うとマナミは静かに席を立ち、壁際に置かれていたホワイトボードを引き寄せた。

「おお、結構あるんだね。・・・なるほどね。アキは?」

「僕はやっぱり他とは被らなそうなのが良いよね」

ユウジとアキがホワイトボードを眺めているときにふとこちらに顔を向けたミサと目が合うが、ミサは何も話すことなくゆっくりとホワイトボードへと目線を変えていった。

何を訴えてたんだろう。

「俺はこれかな、レッドスロープ」

あれは単に赤坂を英語にしたものだな。

「ええ何か盗賊みたい」

するとマナミが少し不満げに口を開いてユウジに顔を向ける。

「と、盗賊?まさかの例えだね」

ユウジが仕方なさそうに他の候補を眺め始めると、ふとアキがマナミに顔を向けた。

「じゃあマナミは?」

「マナはこれかな」

マナミは照れ臭そうに微笑みを浮かべて応えながら1つの候補に指を差す。

「エネルゲイアか。僕は良いと思うよ?何か、国際的な感じだし」

アキが同意したってことは、ブレインの3人が良いって言うことになるし、決まりかな。

「そうか、ならエネルゲイアに決まりだね。あ、氷牙は?」

するとユウジは再びこちらに惚けたような真顔を向けてきた。

決まったならもういいのに。

「ああ実はそれ、僕が書いたやつなんだ」

「おおそうか、じゃあ決まりだね」

ちょうどその時、おじさんの部屋に続く扉が静かに開かれた。

「お待たせしました氷牙君」

「どうだった?」

「えぇ、関西で今1番強い人がいる組織があるのは、大阪府ですね」

おじさんは何やらメモのような紙を見ながらそう応えている。

何で簡単に調べがついたかなんて、この際気にしなくていいや。

「どんな組織?」

「そうですね、クラスはBですが、他に具体的に知りたいことは何でしょうか?」

「え?クラスって?」

すかさずミサが口走る。

「単に組織の人数で付けられた位です。150人から300人の組織はBクラスとなります」

「そんなものがあったのね」

「はい」

ならここはCクラスなのかな。

「1番強いのはリーダーの人?」

「すいません、そこまでは分かりません」

分からないこともあるのか。

「じゃあ、他に組んでる組織はあるの?」

「1つありますね」

おじさんは再びメモに目を向けながらそう応える。

「そうか」

「でも大阪って結構遠いよね」

何気なく口を開いたマナミに反応するように、おじさんはすぐにマナミに顔を向けた。

「大丈夫です。直接組織に行くなら私の部屋から繋げますから」

それは一体、どういう意味なんだろう。

「じゃあ頼んでいい?」

「分かりました」

「じゃあメールで、1番強い人と戦いたいから行っても良いかって聞いてくれる?丁寧な言葉で」

「分かりました」

組織同士で連絡出来て、しかも行き来も出来るなんて、もしかしたら、おじさん達はただ戦争を起こしたい訳じゃないのかな?

「それじゃホールで待ってるよ」

扉に向かうとすぐさまミサに呼び止められる。

「ダメよ。この件は氷牙とあたしで進めるんだから。ここに居てよ」

「そうか。じゃあ飲み物でも持ってくるよ」

「あたしも行くわ。オーナーさん、椅子1つ置いといてもらえないかしら?」

「分かりました」

舞台脇の階段を下りていると、足早に隣に並んできたミサが笑顔で顔を寄せてくる。

「大阪の組織とうまく行くといいわね」

「そうだね」

ホットミルクを注いでいると、ミサが隣でお茶を注きながらこちらに微笑みを見せてきた。

「ちゃんと勝ってよね」

「あぁ今回は勝ちに行くよ」

会議室に戻ると新しく置かれていた椅子に座り、ホットミルクを飲みながら、何となく会議室からホールを眺めてみる。

「あ、そうだみんなに相談があるの」

すると本を読んでいたマナミが何かを思い出したかのように口を開いた。

「何かな?」

会議室の緊張が解けたかのように、先程よりかは表情が緩んだユウジが何気なくマナミに問いかける。

「この部屋にテレビ置いたらどうかな?」

「そうだね、ニュースも大事だね」

するとマナミに相槌を打ちながらユウジはおもむろに会議室を見渡し始めた。

置く場所でも探してるのかな。

「でしょ?」

マナミはアキにも顔を向けるが、落ち着き払った態度を変えないアキはただ小さく頷いた。

「会議の邪魔にならなきゃ、僕は良いよ」

「アキが良いなら、ミサさんは?」

「あたしも良いわ」

「なら俺も賛成だよ」

「うん分かった」

皆の意見を聞いてから最後に同意したユウジに、マナミは笑顔で頷いて見せてから手元の本に目線を戻した。

「氷牙君、メール返って来ましたよ」

「早いね。それで?」

「面白いからそっちの都合が良いなら今すぐ来て良い、ということです」

「そうか、じゃ行こうか、ミサ」

するとまるで不意を突かれたような驚いた表情でミサが振り向いた。

「あ、そうよね、あたしも行くのよね」

「急だね、相手の人怒ってなきゃ良いけど」

「頑張ってね」

どこか緊張したような表情でアキが冷静に口を開くが、マナミはすぐに笑顔で手を振り出した。

「あぁ」

今の時間なら学校も無いし、皆都合が良いのかな。

おじさんの部屋に入ると、会議室より広い感じがするが見たことも無い機械がたくさん置いてあってか、少し狭苦しく感じた。

「そこの扉から行けますよ」

入ってすぐ前方に広がる巨大なモニターの前に座りながら、おじさんは左隅にある扉に指を差した。

「あぁ、今行くとメールしておいてくれない?」

「あ、はい」

おじさんがキーボードを打ち始めるとミサが不安げにこちらを見つめてきた。

「何か緊張するわ」

「大丈夫だよ」

「そうね、勝ちに行くって言ったものね」

顔を寄せながら微笑むミサの目は、まるで念を押しているのを訴えるように若干の力強さがあった。

左奥の扉を開けると真っ先に目に留まったのはすぐ左手にある、おじさんの部屋にあるのと同じような巨大なモニターだった。

恐らくここはこの組織のオーナーの部屋だな。

おじさんの部屋より2、3個分広くて横に長い部屋みたいだけど。

しかもホールのテーブルとは違うデザインの円形テーブルが2つもある。

巨大なモニターの前に居るオーナーと思われる人が椅子を回転させ、こちらに体を向ける。

「どうもいらっしゃい」

「あぁ」

「オーナーさんですか?」

「はいそうです」

ミサの問いにオーナーは礼儀の正しさが伺えるような笑顔で応えた。

おじさんとは大違いだ。

おじさんよりも若く見えるし、スラッとしててまるでバーテンダーのような女性だ。

「来ましたよ」

オーナーの視線の先に目を向けると、右手の奥の方のテーブルの椅子には男性が2人と女性が1人座っていて、3人が立ち上がるとお互いに近づいた。

「よう、あんたらが道場破りかいな」

最初に声を掛けて来たのは、堂々と胸を張るように3人の真ん中を歩く、髪を立てた短髪の男性だった。

「いや、破るつもりはないよ、ただの訪問かな」

やっぱり3人は少し警戒しているみたいだな。

3人とも見た目は大学生かな。

「何や、どんないかつい奴が来る思たら、変な奴が来よったわ、白髪やし」

短髪の男性はこちらから目を逸らしながら、おもむろに顎を人差し指でさすり始めた。

「これっ会っていきなり変な奴なんて言うたらあかんよ。私はオカダユイ、よろしくね、さっき喋ったのがシキ」

ユイと名乗った女性はすぐに警戒心を感じさせないような笑みを浮かべると共に、明るい印象を感じさせるような口調で喋り出す。

オーガニゼーション・アクティビティーズは日本語に訳すと組織的な活動という意味です。

英語の方が、単にカッコイイですからね。笑

ありがとうございました。

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