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ブルースカイ・グリッターズ2

「あたし達のようなものを作る時点で、この国の研究員はああなって当然だよ・・・ん?」

体が軽い・・・傷は治ってないが、これならまだ戦える・・・。

「何?・・・さっきよりも、光が増してる」

「悪いが、まだあいつらをやらせる訳にはいかないんだ」

「さっきまで死にかけてたのに・・・」

呆れるようなため息をついて目線を落としたゼロは、顔を上げると再び力強い眼差しと殺気をこちらに向けた。

「しょうがないな、今度こそ完全に焼き尽くしてあげる」

一瞬にして辺り一面が薄く紫がかった霧で充満したので、すぐに体全体に力を入れると共に魔力を全身に纏わせた。

「ぐうぅぅぁぁ」

凄まじい衝撃と熱が収まった後に感じた達成感は、絶望感の中に灯った闘志の火を更に燃え上がらせた。

「・・・うそ、立ったまま耐えるなんて」

いけるっ・・・これならいけるっ。

「おらぁぁっ」

夜空に浮かぶ星のような、きらびやかな光を纏う空色のオーラを乗せた拳を突き出すと、壁に当たったかのような感覚がして拳の勢いは止まったものの、きらびやかな空色のオーラは光の柱を突き抜けて勢いよくゼロを覆っていった。

薄く紫がかった光が消えるとゼロは勢いよく地面を転がるが、うまく受け身を取ったゼロはそのまますぐに立ち上がりながらこちらに掌を向ける。

放たれた収束された光を間一髪でかわしながら前に飛び出し、浮遊速度を上げて一気に距離を詰め、そしてきらびやかな空色のオーラを纏わせた脚をゼロに向けて思いっきり振り出した。

とっさに腕を出して蹴りを受けたゼロだが、再び激しく地面を転がると今度はゆっくりと起き上がり、その表情にも若干の険しさが伺えた。

「ふぅ・・・どうして、急に強くなったのかな」

「・・・さあな」

しかしゼロはすんなりと立ち上がり、険しさが伺えていた表情を余裕が伝わるようなものに変えて見せた。

「良いよ?本気、出してあげる」

この勢いに乗じて一気に畳み掛ける、そしてアレを・・・。

先手を取るためにすぐさま駆け出していくが、ゼロを包んだ光の柱は突如波を打つように地面を這って周囲に広がりだした。

何だよ・・・っ。

腕を交差させて衝撃を緩和したものの、足を止めずにはいられないほどの熱風圧が全身を包む。

これじゃ、近づくこともかわすことも出来ねぇ。

「はぁっ」

そして突き出された両手から収束された薄く紫がかった光が放たれると、避ける間もなくそれを全身に浴び、視界が晴れた頃にはトゥー達の近くにまで吹き飛ばされていた。

くそぉ・・・これが、ゼロの本気・・・。

起き上がるときに妙な違和感を感じたが、すぐにそれは驚くほどの体の軽さだということに気がついた。

だが、まだ体は動くみてぇだ・・・。

「まだ、やれるぜ?俺は。まだまだ、やれる」

良いぞ、いける。

少し腕は痺れてるが、なんてことはねぇ。

「ねぇ。ゼロを止めるなら、私達協力出来るんじゃない?」

突如話しかけてきたトゥーに顔を向けると、頼りがいのある真っ直ぐな眼差しを見せていたが、それよりもトゥーの後ろに立つメガミ達の不安げな表情にふと目を捕われた。

「いや、俺だけで十分だ。もとはと言えばあんたらを守るために戦ってんだ。だからあんたらは下がってろ」

素っ気なくトゥー達に背を向けてゼロの方へと歩み始めたとき、ふと守ることよりも戦うことの楽しみを優先している自分が居るということに気がついた。

「良いの?せっかくの誘いを断って」

「あいつらをやらせないためにあんたと戦ってるのに、あいつらをあんたと戦わせたら意味無いだろ。それに、あんたとはタイマンでやりてぇんだよ」

見下すような笑みを浮かべるゼロは更にその眼差しに強い殺気を宿すと、その表情は狂気さが伺えるほどのものになった。

「死んでも知らないからね」

こういうときこそ冷静にならないとな。

前に飛び出すとゼロは収束された光を放ったが、上空に飛んでそれをかわしてすぐさま魔力の球をゼロに向けて撃ち落とす。

するとゼロは光の柱で自分を包み、きらびやかな空色のオーラの球の衝撃を緩和させてから光の柱を周囲に広げていった。

一旦地面に降り立って拳に魔力を集めるが、球を飛ばす前に地面が激しく揺れ、瞬時に辺り一面に薄く紫がかった霧がかかる。

くそっ。

とっさに上空に飛び、全身を押し潰す衝撃は免れたものの、立て続けに地面から天に向かって吹き出す光の柱が邪魔をしてゼロとの距離を詰めさせない。

・・・なかなか間合いが詰めれねぇ・・・。

どうしたもんか。

・・・そうだ。

勢いよく降り立つと同時に魔力を集めた拳を地面に突き立て、そしてすぐさま地面に食い込ませた魔力の球を爆発させる。

やべっ俺もゼロが見えねぇじゃねぇか。

宙を舞う大量の砂利、土、砂埃の中を勘で駆け抜け、運よくゼロの背後に回り込めたものの、ゼロはその場から動かず、すぐさま辺り一面に薄く紫がかった霧をかけた。

だが今、こいつは俺に背中を向けてる・・・。

全身に力を入れて体中を押し潰す衝撃に耐え、まだゼロが辺りを見渡している隙に重たい体を動かして背後から飛び掛かった。

しかしゼロに掴みかかろうとした瞬間にゼロがこちらの存在に気がつくと、直後にゼロを包む光の柱が現れ、ゼロに抱きついた形のままゼロと共に光の柱に閉じ込められてしまった。

「うふふ、そんな体じゃ、もう逃げられないよ?」

「・・・それは、あんたも同じだろ?」

魔力を纏わせた体でゼロを包み込み、爆発を起こすために魔力を一気に増幅させる。

そして足元から突き上げてくるような熱が襲ってきたと同時に、体ごとゼロを包むすべての魔力を爆発させた。

・・・くそ、魔力を使い過ぎたな、急に体にガタが来やがった。

「ゴホッ・・・ゴホッ・・・そんな戦法、めちゃくちゃだよ」

おぼつかない足取りでこちらから離れようとしたゼロだが、すぐにつまづいて軽く尻もちをつく。

「ふぅ、思ったよりしぶといね、でもあなた、体中真っ黒だよ?」

若干の疲労感は伺えるものの、戦いを楽しむかのような笑みを浮かべるその表情からは依然として余裕が滲み出ている。

もうこれ以上あいつの光に耐えるのは無理だ・・・チャンスは、今しかない。

「おらぁっ」

力を振り絞り地面を蹴って駆け出すとすぐにゼロは立ち上がり、ゼロの懐に入ると同時に再びゼロと共に光の柱に包まれた。

「今やられたばっかりなのに、また同じこと繰り返すの?あなたって意外と・・・」

ゼロの胸元に人差し指と中指を突き刺すと、口を閉じたゼロはゆっくりと目線を下に向け、自身の胸元に刺さる2本の指に釘付けになった。

「開魂」

「う、何?今の」

光の柱が消えると同時に、ゼロの体全体がほんのりと光を放ち始める。

「繋縛」

「わ、何か変、動けない。何?やめてよ」

ゼロの体から放たれる光が胸元から腕を伝い、やがてその光はこちらの体全体にも優しく纏わり付いていった。

「俺の力はな、生物を体に憑依させて肉体を強化することじゃなくて、生物を強制的に俺と契約させることなんだよ。肉体強化は不可抗力みてぇなもんだ」

「何?急に訳の分からないこと言って」

「要は、これからあんたそのものを俺の力の一部にするってこと・・・さぁ、仕上げだ。封魂っ」

「あっ」

勢いよく天に昇る真っ白な光が2人を包んでいくと、その優しい光に視界が覆われていくと共に体の感覚が徐々に薄れていった。

ふと目が覚めたような感覚に陥ったと同時に瞼が勝手に開くと、そこは背景も何も無い、ただの真っ白な世界だった。

「何だここ」

「ここは多分、あなたとあたしの心の中」

後ろを振り返るとそこにはゼロが立っていて、今にも飛び掛かって来そうなほどの怒りに満ちた眼差しでこちらを見ていた。

「思い出した、俺はあんたに契約させたはずだ、なのに何だここ、こんなの初めてだ」

「確かに、あなたとあたしの魂が重なり合ってるのは感じる。けどあたしは、こんなところで死ぬつもりはない。あたしを吸収するって?ふざけないで、あなたの魂なんか、逆にあたしが吸収してやる」

何故だ?こいつの意思で、俺の力を抑えてるとでもいうのか?

ありえない・・・だが、確かに伝わってくる。

こいつの意思が、図り知れないほどの強い自我が。

そして瞬く間に飛び掛かってきたゼロに首を掴まれると、直後にゼロの拳が勢いよく腹に叩きこまれた。

「がぁっ」

痛みは感じないが、胸が締め付けられるような感覚を覚えると共に周りの背景が少しだけ紫がかった。

「感じるでしょ?あなたの魂が薄れていくのを」

くそ、このままじゃほんとに、逆に俺が喰われる・・・。

とっさにゼロの腕を掴んだ自分の手を見てみると、すぐにその手は人間のものだということに気づいた。

憑依が、解けてる?

まじかよ、人間の姿でなんかじゃ、ゼロに敵う訳ねぇだろ。

突如、瞬間的な獣の雄叫びが聞こえると同時に目の前に巨大な何かが飛び掛かってくると、その何かにさらわれるように目の前からゼロの姿が消えた。

「もうっ」

ゼロに投げ返された巨大なトラは地面に降り立つと、すぐに信頼を寄せているかのようにこちらの下へと歩み寄ってきた。

「お前は・・・」

そうだ、俺にはこいつらがいる。

「何?それ。あなた、魂の中にそんなもの飼ってたの?」

「いや、こいつは俺が最初に契約させた奴だ」

憑依が出来ないなら魔力も使えねぇ・・・だがそれはゼロでも同じみてぇだな、魔法を使えたらわざわざ俺を直に殴ったりしないだろう。

肉弾戦なら、こっちが有利だ。

「いくぞっ」

巨大なトラがゼロに飛び掛かるが、ゼロは自身を飲み込むほどのその巨体に怯むことなくトラの首を掴み、その勢いを使ってそのままその巨体を軽々と持ち上げ、投げるようにして地面に叩きつける。

な、何だって?

そしてゼロはすぐさまトラの胸元に拳を叩きつけようと腕を振り出すと、ゼロの拳はトラの胸元に突き刺さるように食い込み、直後にトラは光の粒子となってその姿を消していった。

「まじかよ、トラが・・・」

「この子はあたしが吸収したけど、良いよね?あなたもすぐにこうなるんだから」

感じなくなった・・・いつも心の中に3匹の存在を感じていたのに、トラの魂を、感じなくなった。

本当に、こいつに吸収されたのか・・・くそっ。

「大丈夫だよ、苦しまずに吸収してあげるから」

自信と殺気を宿した眼差しを見せながら笑みを浮かべるゼロがこちらの下に歩み寄ろうとしたとき、突如鈍い金属音のような連続的なタップ音が聞こえてくると、そこにはドラミングで威嚇をする巨大なゴリラが立っていた。

「えー」

何故か残念そうな表情でゴリラを見るゼロは、その巨大なゴリラに全く怯える様子もなくこちらに顔を向ける。

「飼うならもっと可愛いのにしてよ」

「いやほっとけよ、見た目で選んだ訳じゃねぇ」

ゴリラに顔を向けると、ゴリラはその佇まいから気兼ねなく信頼を置けるような勇ましさを醸し出しながら、こちらの信頼に応えるように力強く頷いた。

「あぁ、いくぞっ」

強く鼻息を吐いて返事をしながらゴリラが走り出し、ゼロに向けてそのはち切れんばかりの筋肉質な太い腕を豪快に振り出すが、ゼロは素早い身のこなしでゴリラの懐に飛び込み、その巨体をよろめかすほどの一撃を浴びせた。

ゴリラに目を向けている隙にゼロに向かっていくが、すぐにこちらに気づいたゼロはゴリラの腕を掴み、自身の何倍もの巨体を有するゴリラを軽々とこちらに向けて投げつけてきた。

危ねっ・・・。

同時に地面に倒れ込んだゴリラはすぐさまゼロの手刀で首筋を突き刺されると、全身が光を帯びた直後、その巨体は風船が弾けるような勢いで光の粒子と化した。

やられた・・・ゴリラも、こんなに呆気なく。

「ふぅ・・・意外とちょろかったな」

立ち上がりながらこちらに顔を向けたゼロの表情は一見落ち着いているようなものに見えるが、すぐに何かを警戒するように周りを見渡し始める。

「もう何も飼ってないよね?」

「いや・・・あと、もう1匹」

頭上から何かが羽ばたくような音と強い風圧を感じ始めると同時に、後ずさりし始めたゼロもその方へと目を向けていく。

「うわ、おっきい」

無意識に鉱石を使ったときが第2ラウンド、心の中が第3ラウンドってところでしょうかね。

ありがとうございました。

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