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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第八章

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絶望へのカウントダウン

これまでのあらすじ

オージョという生物と出会い、成り行きでオージョと行動を共にする中、総助はオージョの記憶を探す為にコテンのとある研究所へと向かう。

ってことは、あの戦車にロボットがくっついたゴツい兵器とメガミは同等の力ってことか?

そう言いながら自分の持ち場に戻り椅子に座った男性だが、終始オージョには目を向けず、依然として怠さを感じるような表情を浮かべている。

「へぇ、でも、私はどう違うの?」

「トゥエルブは、敵軍の中に潜入して情報を掴んだり、政府の幹部などの主要人物暗殺を目的としたメガミの第1機目だ」

オージョに目を向けた男性はすぐに目を逸らしていったが、その素っ気ない態度の中に一瞬かいま見えた、まるで気を許していないようなその眼差しに、何となく違和感を感じた。



「そんな話、信じられる訳ないだろ?」

「そりゃあ自分だって信じ難い話だと思いますよ、でももしそうなら、この戦いの結果はどうあれ、この戦いは意味の無いものではなくなるんですよ」

呆れ果てたようにホウゴがため息をつく隣で、つられるようにアウローラも険しい表情をデンテラに見せている。

「でもデンテラ、もしそうだとしても、やっぱりこの世界はアルバートが思うような単純なものじゃないのよ。それに、各国はそのことを知らないでしょ?それなら各国にとってはアルバートはただの侵略者よ。アルバートがどんな理想を語ろうが、そんな人の話なんて誰も聞こうとはしないわ?」

デンテラが眉間にシワを寄せたまま黙り込み、若干の安堵感を感じる沈黙がその場を包み込んでいく中、ふとサニダ達が目線を向けた方が何となく気になり、後ろを振り返った。



周りの研究員達が向けてくる警戒心に満ちた眼差しに、少しずつ不安感のようなものが募ってくると、同時にそんな自分が情けなくも感じた。

「じゃあ、私はみんなと同じような力は無いの?」

「・・・いや、トゥエルブは従来の火力を引き継ぎつつも、更に隠密行動を取れるように作られた改良型のメガミだ」

「ふーん」

自動ドアの開く音が聞こえたので何となく後ろを振り返ると、研究室に入って来た男性達は足早に歩きながらすぐさまこちらに拳銃を向けてきた。

な・・・何だ・・・。

薄い紫のラインが入った装飾の付いたスーツを着た男性達が瞬く間にこちらを取り囲む頃には、研究員達は皆すでに入口の方へと避難し始めていた。

「動くなよ?少しでも妙な動きを見せればすぐに頭を撃ち抜く」

くそ・・・ホントに俺は・・・いや、こればっかりはしょうがねぇか。

「え、何?・・・」

オージョが後ろを振り返り、そわそわとした動きで周りを見渡すが、拳銃を構えている男性達は皆依然としてこちらに真っ直ぐ銃口を向けている。

くそ、やっぱり警備員を襲ってでもドラゴン達を憑依させておくべきだった。

「そこに入れ」

研究室の奥にある、小さく区切られたガラス張りの部屋に入れられると、ゆっくりと席を立った研究員の男性はガラス越しに立ち、問い詰めるような眼差しを向けてくる。

「あんた、本当は何なんだ?」

「は?何だよ、どういう意味だ?」

すると男性はふてぶてしく口元を緩ませ、何か知っていると思わせるような挑発的な表情を返してきた。

「白々しいな。知らないとは言わせない、あんたらは2日前、バルーラとの国境辺りでコテンの軍と交戦しただろ」

な、何でそれを・・・。

「アサフィルから回ってきたみたいだが、あんたらの情報はとっくにこっちにまで伝わってたんだ。・・・はっはっは、まさか、本当に親切で中に入れて貰えたとでも思ってたのか?」

・・・んだよ、これ。

一体、どこから?

もし時間を戻せるなら、どの分かれ道を進めばこうならずに済んだ?

「黙ってるってことは、認めるってことだよな?まったくバルーラもバカだよな、こんなマヌケ送り込むなんて」

「違ぇよ。確かに国境で車を破壊したのは俺だ、けど、俺はバルーラとは関係ない。俺はシンバンから来たんだ」

「とぼけるな、擬態生物を研究してるのはクラドアじゃこことバルーラ、あとは南西のフラウンだけだ、だがフラウンはまだ発展途上国だし、トゥエルブを模したものを作るとしたら、トゥエルブを送り込まれたバルーラだけだからな、あんたはバルーラの工作員か何かなんだろ?」

な、何だこいつ、いきなり訳の分からない話しやがって・・・。

まるで核心を突いて問い詰めているかのような、自信に満ちた笑みを浮かべるその男性の向こうに立つオージョのその不安げな表情は、無力感の中に怒りを沸かせ始める。

「バルーラだって恐らく極秘で開発した生物兵器のはずだ、それがどうしてシンバンから来た見ず知らずの奴と行動してるんだ?」

「だからそれは、こいつが記憶を無くして」

「そんな立証も出来ない話、誰が信じられるんだ?バルーラは恐らく勘づいたんだ。だからこの生物兵器を作ってここに潜入させようとしたんだろ?」

また、訳の分からない話を・・・。

くそ・・・あ、そういえば、俺は1人で閉じ込められてんだよな。

今ならドラゴン達を憑依させられる。

オージョには悪いが、とりあえずここから脱出させて貰うか。

3匹を体に憑依させると、拳銃を下げていた男性達は再び拳銃を構えたが、研究員の男性は1番近くにいるにも拘わらず、全く恐れるような素振りすら見せない。

「無駄だ、その部屋では、この研究所が吹っ飛ぶほどの危険な実験が有意義に出来る場所だ」

・・・そんなの、知ったこっちゃねぇよ。



何もしないで見てたら怒られちゃうしな。

形だけでも仕事した方が良いかな。

再びアサフィルの国境まで飛んでいき、こちらの方に向かってくるデカルト・ウーノとサソリに酷似した兵器達の前に、氷王牙の姿で立ちはだかる。

動きが止まった兵器達だが、すぐにこちらに狙いを定めるかのように動き出したので、掌の上に紋章を出してデカルト・ウーノに酷似した兵器に向けて蒼満月を撃ち出した。

サソリは移動式の固定砲台だしな、まずは俊敏なデカルト・ウーノから撃っていこう。

強い吹雪のような爆風を抜けて吹き飛んでいったデカルト・ウーノに酷似した兵器を追いかけ、サソリに酷似した兵器の群れを抜けようとしたとき、突如目の前にサソリに酷似した兵器が立ちはだかった。

おっと。

尻尾から放たれる火炎放射をかわし、そのサソリに酷似した兵器の背後に回り込んだが、その兵器は滑らかな動きで旋回してすぐさま鋏からこちらに向けて砲弾を発射させた。

速いっ・・・。

直撃の衝撃を打ち消して再度その兵器の背後に回り込もうとしたが、ふと目に入った別のサソリに酷似した兵器が、まるで地面を滑るような動きで素早く目の前まで飛び込んできた。

何っ・・・。



「どうしたんだ?もう終わりか?」

くそ、この姿でも砕けないだと?・・・。

確かに手応えはある、だがガラス全体が激しく振動するだけで、ヒビすら入らねぇ。

力そのものが足りないってのか?

憑依と解くと拳銃を構えていた人達は拳銃を下ろし、研究員の男性は蔑むような眼差しでこちらを見据えながら小さく口元を緩ませた。

「シャーマンかどうかはこの際抜きにしてやるが、あんたがバルーラと関係しているのは明白なんだ」

このままじゃ、俺は殺される・・・多分オージョもそうだろう。

どうすればいいんだ。

「何故ここに来たんだ?素直に話さないと、この生物兵器は破壊させて貰う」

「嘘じゃねぇって、ほんとに、俺とそいつは何も関係ねぇんだって」

「本当だよ、総助とはたまたま会っただけで、親切にここまで連れてきてくれただけだよ?」

研究員の男性はオージョに顔を向けるが、男性はこちらに向けていた疑い深い表情をそのままオージョにも向けている。

あいつがオージョを見ている間に何かしねぇと・・・けど一体、今の俺に何が・・・。

「お前だってさっき言ったよな?ここに来れば自分のことが分かるって、それはお前がトゥエルブをモデルにして作られたから、記憶の中にここの情報が擦り込まれていたんだ」

今の俺の力じゃここから出られない。

・・・今の、俺・・・。

ふと信悟や氷狼の姿が脳裏に浮かんだとき、遠くのデスクに置かれている、ほんのりと光沢を放つ小さな隕石のようなものが何となく目に留まった。

そうだ、鉱石だ。

あいつが言ってたな、鉱石でドラゴンを強化出来るって。



え・・・それってどういうこと?

「違うよ、私、エストレージャを元にして作られたんだよ?」

すると研究員の男性は小さく眉間にシワを寄せ、疑い深い表情の中に若干の戸惑いを伺わせた。

「お前、仮死擬装計画は?知ってるだろ?」

カシギソウ?

「・・・え、何それ、植物か何か?」

また少しだけ戸惑うように表情を歪ませた男性がソウスケに目を向けると、男性は何故か驚くような表情を浮かべながらソウスケに指を差した。

「何してる」

「あ?腹減ったから食い物出してるだけだ、どうせここからは出られないし、お前らの話聞いたってさっぱり分かんねぇし」

カバンの中に両手を突っ込みながら応えているソウスケは、おもむろにこちらの方に背中を向けるとそのまま透明な壁に背中をつけ、ゆっくりと座り込んだ。

「まぁ、いいか」

こちらに目線を戻すと男性は表情を落ち着かせると共に小さくため息をつく。

「どうやら記憶に支障をきたしてるのは本当らしいな。仕方ない、まぁバルーラの手先ってことは分かったから、お前はこのままここで破壊させて貰う」

「え、ちょっと待ってよ、私のこと教えてくれるんじゃないの?」

「勘違いするな、良いか?お前らがバルーラの手先ってことは前々から知っていた、だからお前のことを教えるふりをして中におびき寄せたんだ」

じゃあ、結局私は自分のことを知ることが出来ないの?

そんな・・・。



ヤバいな、このままじゃオージョが殺される。

早いとこ、この鉱石を使わねぇと・・・。

それにしても・・・どうやって使うんだ?これ。

くそ・・・あいつに聞いときゃよかった。

確か前にテロ組織の奴も使い方について話してたんだが・・・。



「ねぇ、私のこと殺すの、私のことを教えてくれてからでも遅くないんじゃない?」

研究員の男性はこちらと目を合わせたにも拘わらず、すぐさま他の研究員の方へと顔を向けていく。

「おい、ゼロを出せ」

む、無視・・・。

「ですがゼロは永久凍結のはずじゃ・・・」

「恐らく銃器類じゃこの生物兵器は破壊出来ないだろう。他のメガミは出払ってるから、他に方法は無いと思うが」



白龍牙を突き刺したサソリに酷似した兵器を別の同様の兵器に向けて投げ、また別のサソリに酷似した兵器の火炎放射を紋章で防ぎながら、尻尾の紋章から蒼満月を撃ち出す。

背中に強い衝撃を感じた直後に勢いよく地面を転がるが、立ち上がるまでの短い間に、反撃を許さないかのように1機のサソリに酷似した兵器がすぐさまこちらの方へ滑り込んでくる。

見た目はサソリだけど、この俊敏さはサソリとは比べものにならないな。

火炎放射をかわして上空に逃げ、サソリに酷似した兵器の背中から発射されたミサイルもかわしながら、サソリに酷似した兵器の群れに紋章を向ける。

「氷雨、蒼満月」

サソリに酷似した兵器の群れの残骸の中に降り立つと同時に、こちらの方に歩いてくる1体の何かが視界に入る。

・・・新手か?

何だあれ、何となく所々にこのサソリみたいな兵器のパーツを思わせるものがあるけど、あの歩き方、まるで人間みたいだな。

人間らしい動きで歩み寄ってくる、揺らめく光が機械の所々から洩れているその人型の兵器は、一旦距離を取った位置でその歩みを止めてこちらを見据えた。

「見たところ生物兵器のようだな、ティンレイドの兵器か」

喋った?・・・。

ヒューマノイドも喋るけど、こんなに感情を感じるような喋り方じゃないしな・・・。

しかも炎のように揺らめくあの光・・・。

「まさか、ゼビス人?」

「お、よく分かったな」

サソリの顔のような仮面を被っているせいか表情は分からないが、そのゼビス人からは戦いの場に緊張を感じているような雰囲気はまったく感じない。

やっぱりそうなのか。

「それも、やっぱりアルバート財閥の兵器なの?」

「あぁ、このスコーピオン・ドライバーはアルバートの兵器の中じゃ唯一の装着型のものなんだ。それも俺のようなゼビスの人間兵器専用のな。さて、これから各国の主力兵器を潰し回るんだ、せいぜい楽しませてくれよ?」

どの分かれ道を進めばよかったんでしょうかね。

ありがとうございました。

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