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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第一章

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オーガニゼーション・アクティビティーズ

ホワイトボードには5個の候補が書かれていて、開票済みの紙は目安箱の横に積まれていた。

どうやらそんなに進んでないみたいだ。

マナミは目安箱から1枚の紙を取り、候補の名前を書き写すとすぐに椅子に座り、一息ついたり考え事をしたりしている。

目安箱に手を入れ1枚の紙を取ると、紙にはナカジマ組と書いてあった。

これじゃちょっとヤクザっぽいな。

「レベッカは昨日もずっと部屋にいたの?」

ホワイトボードに名前を書き写す。

「うん、カズマが出ちゃダメだって。外は見えるけど話し相手がいないから、退屈なの」

レベッカは目安箱の角に座り、足をゆっくりとばたつかせている。

「ユキは?」

マジックペンを置き再び紙を1枚取り出す。

「あたし達はあたし達の住む世界があるから、しょっちゅう行ったり来たりは出来ないと思うの」

「そうか」

そういえばあれ以来カズマを闘技場で見てないな。

「レベッカも行ったり来たりしてるの?」

「ううん、あたしの村は、旅に出たら戻らないって風習があるから」

「だから帰りたくないって言ったの?」

「うん」

色々事情があるんだな。

レベッカはおもむろに目安箱から降りると、テーブルを歩き回り始めた。

「これ何?」

そしてレベッカは細長いアルミ素材の袋から、反り返った薄っぺらいお菓子を持ち上げて見せる。

「ポテチだよ」

すると笑顔で応えながらマナミはポテチを1枚取って食べて見せた。

「へぇ・・・んっあ、おいしいかも」

レベッカが持つと座布団みたいだな。

そういえばミサは紙に何て書いたんだろう。

取った紙を見ると、その紙には礼儀正しく書いた本人の名前があった。

これも一種のアピールなのかな。

「これは?」

続いてレベッカは別の袋から白い円筒の形をした物を持ち上げた。

「マシュマロだよ」

マナミが目安箱から紙を取りながら笑顔で応えると、レベッカはその場に座り込み、マシュマロを小さくちぎった。

「ふーん・・・わっこれすごい好きかも」

どうやら気に入ったみたいだな。

「カズマこんなの教えてくれなかった」

すると豪快にマシュマロにかぶりつき始めながら、レベッカは不満げに喋り出した。

・・・順調に作業が進んでいく。

普通にやれば時間はかからないはずだけど。

「ふぅ」

マナミは椅子に座るとおもむろにお菓子へと手を伸ばした。

ポテチを1枚つまみ、口に運ぶまでの動きさえものんびりとしている。

「テレビがあるといいのにな」

一点を見つめるような表情のマナミは、お菓子を片手に突如静かにそう呟いた。

確かにニュースを見れば世の中の情報が掴める。

「どうして?」

「ニュースとか大事かなあって」

どうやら考え方はまともらしい。

「情報は大事だね」

「そうだよね。ホテルの部屋にはあるのに」

お菓子をかじりながらこちらに顔を向けたマナミは、純粋に会話を楽しむかのようにゆっくりと笑顔を浮かべていく。

「集計が終わったらおじさんに言ってみようか」

「そうだね」

お菓子を置いたマナミは紙を取り、書かれている名前をホワイトボードに書き写した。

マナミの動きが早くなった・・・気がする。

「あたしも手伝う」

そう言ってレベッカが目安箱に入り込むと、間もなくして紙を持ったレベッカが目安箱から上半身だけ飛び出した。

「ありがとう」

紙を受け取って名前を書き写す。

「あ・・・これ」

同じようにレベッカから受け取った紙を見て動きが止まったマナミは、そう言ってその紙を見せてきた。

「エネルゲイアだって」

ミサが書いたのだろう。

読み方と意味がつけ足されていて、右下にミサ・氷牙と署名がある。

「ミサは気に入ったみたいだったよ」

「そうなんだ」

マナミは何やら紙をじっと見つめた後、小さく口元を緩ませるとそのまま次第に笑顔を浮かべていく。

「カッコイイね」

「そうか」

「2人で考えたの?」

「最初に僕が書いたら、ミサが勝手につけ足したって感じかな」

あまり誤解させるのも良くないしな。

「へぇ仲良しなんだね」

どうやら伝わってないみたいだ。

「もうそろそろお昼ご飯にしようよ」

半分くらい進んだところでマナミがそう言ってマジックペンを置き椅子に座ると、すぐにレベッカが目安箱から飛び出して来た。

「やったぁ」

「もうそんな時間か」

黙ってやるより話しながらやった方がマシかな。

少しくらいのんびりでもいいか。

マナミがテーブルの上にあったベルを鳴らすが、甲高い金属音を響かせるベルの音は小さく、とても会議室の外にまで届くほどのものにはならなかった。

こんな遠くじゃ届かないんじゃないかな。

しかしその直後にホール後方の扉から、まるでベルに反応したかのように1人のウェイトレスが出て来たのが見えた。

音ではなく、鳴らしたことによる別の何かに反応しているのか。

「お呼びでしょうか」

「ランチメニューくれますか?」

「はい、かしこまりました」

丁寧にお辞儀をして出て行くウェイトレスをマナミがゆっくりと目で追っていく。

「今のはベテランの人だね」

そしてウェイトレスが会議室を出た後にマナミは得意げにそう口を開いた。

「そういえば、前に頼んだ時はラフな話し方だったね」

「きっと新人なんじゃない?」

「そうか」

ふとレベッカに目を向けると、レベッカは食べかけのマシュマロに手を伸ばしていた。

「レベッカ、急にこっちに来て友達も心配してるんじゃない?」

「あたしが逆の立場なら、黙って応援するよ」

レベッカは一口大にちぎったマシュマロを口に運びながら笑顔を見せる。

ちゃんと信頼してるってことかな。

「でも、ちょっとは寂しいんじゃない?」

するとふと目線を落としたその眼差しに、ほんの一瞬だけ陰りのようなものを感じた。

「うん、ちょっとはね」

カズマの力でいきなりこっちの世界に飛ばされたんだし、やっぱりいくら何でもすぐには受け入れられないよな。

「お待たせしました」

静かに扉が開かれると、ウェイトレスは丁寧に会釈してからテーブルにメニューを置いた。

「遠いのにご苦労様」

「いえ、とんでもないです」

マナミがそう言うとウェイトレスは笑顔で応え、料理を頼むとメニューを持って去って行き、料理を運んで来るとまた軽くお辞儀をしてから会議室を出て行った。

「氷牙、それおいしいの?」

スプーンを手に取ったとき、匂いにつられてかレベッカが料理を覗き込んできた。

「あぁおいしいよ」

「・・・ちょっとかじっていい?」

「良いけど、熱いから気をつけてね」

新しい世界に来たから色々物珍しいのかな。

「いい匂いだね」

大きく息を吸い込むように匂いを嗅いだレベッカは、スプーンに盛られた山の先を小さくかじった。

「んんっ・・・おいしーっこれすっごいおいしい」

今にも飛び上がりそうな勢いで羽をばたつかせたレベッカは頬に手を当て、目を輝かせた。

「これ、名前何て言ったっけ?」

「ラザニアだよ」

「覚えておこっ・・・味も覚えなきゃっもうひとくちちょうだい?」

「あ、あぁ」

「うーん・・・これは衝撃だね」

目を閉じてゆっくり味わった後、レベッカはまるでカルチャーショックでも受けたかのように唸りながらラザニアを見つめた。

どうやら気に入ったみたいだな。

次にレベッカはマシュマロを持ち出し、マナミの方へと向かった。

「マナミ、ソースちょうだい?」

なるほど、マシュマロにつけるんだな。

「いいよ」

「あたしこれ知ってるよ?カルボラーナでしょ?カズマが好きなの」

そう言いながらマシュマロを小さくちぎり、溢れるような嬉しさが伝わる笑顔を浮かべながらレベッカはマシュマロをソースにつける。

「ナーラだよ」

「え?間違えた?」

マナミが訂正したものの、レベッカは気に留めずにソースのついたマシュマロを頬張る。

「ちょっとね」

「うーん・・・濃くてまろやか」

そしてしばらくしてお皿を下げて貰い、集計を再開させると、レベッカは再び目安箱の中に潜り込んだ。

目安箱の中も大分減って来たみたいだな。

レベッカが目安箱から顔を出しながら紙を手渡してきて、受け取った紙を見て名前を書き写す。

目安箱に手を突っ込む手間が無い分、なかなか効率的みたいだな。

ふとマナミに顔を向けると、マナミはポテチでマシュマロを挟んだものを笑顔で頬張っていた。

マナミは相変わらずマイペースだな。

「ふぅ終わった」

「よいしょっ」

作業が終わるとマナミが椅子に座り込み、レベッカが目安箱から出て来たので、色々な名前が候補として並んだホワイトボードを眺めていく。

どうせなら、他には無い名前がいいな。

まぁ後はユウジ達に任せるか。

そうだおじさんを呼ぼうかな。

おじさんの部屋をノックした。

「あ、はい」

「会議室にテレビって持って来れるかな?」

「そうですね、来れますよ」

「マナミ、出来るって」

「あ、じゃあみんなに相談してからにするね」

「分かりました」

マナミが少し戸惑ったように応えると、おじさんは表情を変えずに頷いて扉を閉めた。

「そうだ、氷牙ありがとね、手伝ってくれて」

「全然いいよ」

「これお礼だよ」

笑顔でそう言ったマナミは半分くらい残ってるポテチを差し出してきた。

「あぁ」

「レベッカもありがとね」

「うん」

レベッカは満面の笑みで応えると食べかけのマシュマロに手を伸ばした。

ポテチを食べながらのんびりしていると、しばらくしてカズマが舞台に上がってくるのが見えた。

「レベッカ」

「あ、カズマ」

まるで幼稚園のお迎えだな。

レベッカはマシュマロを持ちながらカズマの肩に飛び乗る。

「氷牙、ありがとう」

「あぁ」

レベッカが小さく手を振ったので、レベッカに手を振り返すとカズマは会議室を出ていった。

ということはそろそろ皆も帰ってくる頃か、とりあえずホールに戻ろうかな。

「ホールに行くの?」

席を立つこちらの動きを目で追ったマナミがすぐにそう聞いてきた。

「あぁ」

「そっか」

ホールに戻り、ホットミルクを持ち近くの椅子に座る。

ふとホールやモニターを眺めていたとき、学校から帰ってきたミサが静かに隣に座ってきた。

「氷牙、ユウジ達が帰って来たらあたしと会議室に行って欲しいのよ」

すると何やら少し真剣な眼差しでそう言ってミサがこちらに顔を向けてきた。

「分かった。もしかして昨日のこと言うの?」

「そのつもりだけど、嫌かしら?」

そう言うとミサはゆっくりと微笑みを浮かべた。

「嫌じゃないよ」

2人のアイデアにするということが冗談だったんだな。

「ならいいわ」

「そういえばマナミの集計手伝ったよ。候補の名前を並べたから、後は皆で決めるだけだね」

「あらほんと?あたしからも礼を言うわ。氷牙、今日も誰かと戦ったりしたの?」

バッグから取り出した携帯電話を片手に、ミサは気品さの漂う笑顔で顔を寄せてくる。

「今日はまだ誰とも戦ってないな。朝からさっきまで集計してたから」

「あらそうなの・・・あ、ユウジ達が帰って来たみたい。行きましょ?」

「あぁ」

会議室に入るとすぐにユウジとアキが揃ってこちらに顔を向けると共に、ユウジはいつものような呑気そうな表情を見せてきた。

「やあ、2人そろってどうしたの?」

「同盟の方針について、2人で意見を考えたから聞いてもらえないかしら?」

すると椅子に腰掛け始めたミサは、こちらのこともまるで気にすることなくすぐにその話を切り出した。

まさかのどっちも冗談じゃないパターンか。

「それは良いけど、じゃあ早速会議始めようか・・・氷牙、椅子用意しようか?」

仕切り始めると同時にユウジが見せてきたまるで会議に小慣れたような表情に、ふとリーダーの雰囲気を感じさせるような大人っぽさを感じた。

「いや大丈夫、すぐ終わるから」

「そうか、じゃあ同盟の件については、まずミサさん達の意見を聞くよ」

「あらそう?まずあたし達の同盟の方針をはっきりとした方が良いと思うわ?大きく2つに分けて、戦力拡大か情報収集のどちらかね」

ミサが淡々と喋り出すと3人は黙ってミサの話に聴き入るように落ち着いていく。

「そうだねぇ、俺はやっぱり半分ずつ両方とりたいけどな」

変わらず落ち着いた口調で意見を話したユウジは、その後にアキの答えを聞こうとするようにアキを見た。

「確かにバランスが良いのが1番だけど、ミサさん達の考えた方針はどんなの?」

中川 舞波(ナカガワ マナミ)(16)

中学生の時に病気を患い、そのままずるずると学校に行く日が少なくなっていった。だが実家が裕福なせいか、マナミの両親は今のマナミに特に何も言わない。


ありがとうございました。

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