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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第八章

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セパレーション

そうだな、とりあえず詳細を聞いてみるしかないかな。

「あのさ、堕混が撤退していったときのこと、詳しく教えてくれない?」

「そういった質問は、軍事機密漏洩になりますので私からは答えられません」

それでも全く表情を変えずにそう応えた受付の男性に、ソウスケは呆れるように重たいため息をついた。

仕方ないか、自力で情報を集めるしかないな。

「んだよ、良いじゃねぇかちょっとくらい、せっかくこっちはそいつらを倒してやろうってわざわざ来てんのによ」

ちょっと主旨は違うけど、まぁ良いか。

ソウスケが受付の男性に背中を向けたと同時に、受付の男性はイヤホンマイクに集中するように目線を落とすが、すぐにまたソウスケに目線を戻した。

「たった今、軍の方が面会を承諾されました」

「はぁーあ、これからどう・・・はぁ?何だって?何で今更」

「只今軍からこちらに使いの者を向かわせましたので、少々お待ち下さい」

何で急に・・・まさか、今までの会話が聞かれていたのか?

周りを見渡してみると、集音マイクのようなものは見当たらないが、代わりに監視カメラのようなものを見つけた。

カメラだけじゃ・・・、いや、でも何らかの方法で声も拾っていたはず。

「まぁとりあえず話を進められるみたいだから、俺ちょっと行ってくるわ」

「・・・え?」

行ってくる?って・・・。

「どこに?」

「俺だって俺の目的があんだ。お前が目的を果たしてる間に、俺もやることやりてぇからな。んじゃ、日が暮れてきたら、またここでな」

「あ、あぁ・・・」

特に慌てたり何かを急いだりする様子ではないが、爽やかな微笑みと共に軽く手を挙げながら、ソウスケは颯爽と歩き出していく。

・・・まぁ、そりゃあ1人の方が動き易いけど・・・大丈夫かな?

外に出て行ったソウスケを何となく見ていたとき、受付カウンターの奥の方から、徐々にタイルを突くような甲高く響く足音が聞こえてきた。

「あら?もう1人の方はどうなされたの?」

するとジャケットに軽く金の装飾が施された、スーツに軍服の要素を加えたような格好の女性が、背後にスリムだが巨漢の男性を1人従えてやってきた。

「別行動取るってさ」

見下すような強気な眼差しの女性は、呆れるように小さなため息をつきながら受付の男性の方へ振り返った。

「何故引き止めてくれなかったの?」

「私は少々お待ち下さいと言いましたが」

恐らく偉い立場にいると思われるその女性にも、受付の男性は全く表情を変えずに言葉を返す。

「そう、まぁ良いわ。そういう強引な男、嫌いじゃないし」

受付の男性の素っ気ない態度を指摘する様子は全くなく、女性はすぐにこちらに目線を戻してきた。

「それじゃあ先ずは、あたしはハランよ。ハラン・ウィンスター」

「僕は氷牙だよ」

差し出された手を握りながら応えたときに、ふとハランの背後に立つ長身の男性が気にかかった。

この人はいいのかな。

「じゃああなた、とりあえずどこの国から来たのか聞いていいかしら?」

適当な国の名前も分からないしな。

「次元を越えて来たよ」

強気な眼差しはより鋭くなったが、女性は感心するように黙り込んで小さく片眉を上げた。

「そう、あの侵略者達を追って来たみたいだけど、あなた達があの侵略者達の仲間じゃないと、今ここで言い切れるかしら?」

少なくともこの国は堕混を警戒してるのかな?

「別に言い切る必要は無いよ。完全に信用して貰う必要は無いかな、こっちはこっちで勝手にやるから。僕はただ適当な国に来て、国の情報収集能力を利用したいだけだし」

すると女性は小さくニヤつきだし、何かを見定めるような眼差しでこちらを見つめる。

「ふーん、そんなこと言って良いのかしら?あたし達はあなた達を堕混の味方だと決めつけてる訳じゃなくて、そうじゃないかと疑ってるの。疑惑っていうのは、頭の中に深く、植物の根のように蔓延るもので、それが少しでもあるだけで確定させた意思よりも強く意識に居座るのよ。その疑惑を、払拭させなくていいだなんて、返って自分の立場を危うくしちゃうかも知れないわ?」

「じゃあ・・・一応言っとくよ。僕達、堕混の味方じゃないよ?」

呆れながらも堪え切れずに小さく笑い声を吹き出したハランに、少しだけ表情の緩和が見られた。

「何よそれ。でも嫌いじゃないわ?そういうの。あたし自身、少しだけあなたのこと気に入っちゃったけど、でもあたしがここに来たのは、単に立ち話するためじゃなくてあなたを軍に連行するためなのよ」

「え?」

・・・連行?

「でも心配しなくて良いわ?任意で引っ張るだけだから」

取調室にでも連れていかれるのかな。

まぁ確かに堕混の味方じゃない証拠も無いし、仕方ないか、ついでにこの世界のことも聞けるかもな。

「あら?もしかして抵抗しようとか思ってるの?悪いこと言わないから、この人の前じゃ大人しくしていた方が良いわよ?」

この人?

後ろの人ってやっぱりSPか何かなのかな。

「いや、別に抵抗するつもりはないよ」

「あらそう、急に素直になっちゃうのね」



お、良いもんあんじゃねぇか。

ある建物の前に置かれている、フリーペーパーと思われる観光誌が入ったパイプ棚に手を伸ばし、一冊の観光誌を取り出す。

見慣れない文字のものや、その土地の名物が載ったものがあるが、その中で解読出来る文章に小卵船の特集があった。

中央管理局も・・・どうやらこの雑誌はこの国の観光ガイドらしいな。

だがまずは、金、だよな・・・。

ここは手堅く鉱山にでも行くか?

おっとこれは地図だな・・・駄目だ、現在地が分かんねぇ・・・。

「あの、もし良ければご旅行プランのご案内致しましょうか?」

気付くと目の前の建物から出て来たと思われる、店員のような格好の女性が隣に立っていた。

「あ、いや、悪い、旅行者には違いないが、金無いんだ」

「そう、ですか」

店員の女性が対応に困ってるような雰囲気を感じる微笑みを浮かべるのを見ると、何となく気まずい空気を感じた。

「まぁでも丁度良いところに来てくれたな、これなんだが、今ってどこ居るのか分かるか?」

店員の女性に地図を見せると、女性はすぐに地図に指を差し始める。

「中央管理局がここで、今居る場所はそこから少し進んだ、ここですね」

まぁ大通りを適当に歩いただけだしな。

「そうか」

「シーシーをお持ちであればより詳しく知ることが出来ますよ?」

シーシー?・・・シーってあのCか?

「いや、持ってないな」

そういや携帯持って来ちゃったが、ここじゃ役に立たないだろうな。

「そうなんですか?珍しいですね、ご旅行なのにシーシーをお持ちでないなんて」

すると店員の女性はセールストークの雰囲気を感じるようなはしゃぎ方で、声色のトーンを少し上げる。

「そういうもんなのか」

旅行者は大抵持ってるってことは、ガイド本みたいなやつか?

「もし宜しければシーシーをお使いになりませんか?旅行者の方のためにシーシーのレンタルもやってるんですよ?」

レンタルっつったってなぁ・・・。

「だから金が・・・」

「あ、大丈夫ですよ、レンタルは無料ですし、国内のどこのショップでも返却出来ますから」

無料か、まぁそれなら良いが・・・。

「まぁ、じゃあ一応どんなものか見て置こうかな」

「はい、ではこちらへどうぞ」

店員の女性の後についていって自動ドアを抜けると、一見そこは家電量販店に入ったかのような景色が広がっていた。

店の中央にある円形のディスプレイ棚に乗せられた、まるで携帯電話そのものを思わせるような形の物を見ながら、無意識に差し出された椅子に腰を掛けた。

この世界にもスマホがあんのか?

「こちらがレンタル用のシーシーになります。旧型ですので通信範囲は狭まりますが、地図のバージョンは最新型と同じものですのでご安心頂けますよ」

・・・ていうか、普通にスマホじゃねぇかよ。

「まさか、これ普通に電話出来んのか?」

「いえ、同じ電波を設定した同機種とのみ、限定された範囲での通話が出来ます」

つまりは、トランシーバー、だよな。

「ていうか、そもそもこのシーシーはどういうもんなんだ?」

「このシーシーは、卵船塔から発せられる電波をもとに現在地を計算して、インストールされた地図をベースに行きたい場所への道順や到着時間などを検索出来るタイプです」

なるほど、カーナビ的な要素を持ったトランシーバーか。

これほどのものが無料レンタルか・・・確かに地図は必要だしな・・・。



「そのキングって、昨日はいつ頃来たの?」

「昼からはだいぶ前だったな」

とりあえずシエッドシードでも飲も・・・あ、ここ違う世界だった。

常に少しだけ気を張ったようなロードの表情に、何となく場の空気に空虚さが混ざってきた。

「そういえば、擬態光張っちゃえば?」

「あっ」

「え、どうかした?」

「いや、そういえば、何で昨日、擬態光張ってるのにキングがここを尋ねて来られたんだ?」

え・・・あそっか擬態光、張ってたんだ。

確かにおかしいな、透視筒で見ないと擬態光に覆われたものが見えないはずなのに。

「まさか透視筒を持ってるはずないし・・・故障でもしたのかな」

「じゃあ、ちょっと外出てみるか」

ロードと共に一旦小屋から出て、小屋を眺めてみるが、傍から見るとそこにはまるで人工的な物質が無く、木がまばらに立つ平原が広がっているだけだった。

「ちゃんと見えないよね?」

「おかしい、少なくとも、キングは俺達が筒を持ってることを知ってて、俺達が堕混だと分かってて尋ねて来たことになる」

しかし不思議そうに見えない小屋を見つめるロードからは、緊迫感のようなものは伝わってこない。

「でも敵って感じはしなかったんでしょ?」

「あぁ、何かこう中立的な雰囲気を感じたから、全然気にも留めてなかった」

「そっか・・・」

それはそれで気を抜き過ぎなんじゃないかな。

ふと後ろを振り返ったロードの眼差しが瞬時に鋭くなったので、何気なくロードの目線の先に目を向けてみる。

ん?・・・何だ?

するとわりと木々が寄って見通しが悪い平原の向こうから、すぐにこちらの方に向かってくる1つの人影が確認出来た。

誰か来るっ・・・。

「昨日よりちょっと早いな、カイル、あいつが例のキングだ」

あいつが・・・キング。

黄緑色に縁取られた黒い鎧に、頭から足先まで全身を包んでる・・・。

ほんとに、見るからに怪しい・・・。

「今日は仲間が居るみたいだな」

その佇まいと声やら雰囲気に、何となくキングという人物に違和感を覚えた。

「あぁまあな」

「紹介して貰う手間が省けたな。それとも自ら出迎えに来てくれたのかな?」

「いや偶然だ。ところで今日は何しに来た?昨日は最初、迷い込んでここに辿りついたと言ってたが、今日もまさか道に迷ってきたのか?」

「ふっ・・・今日は、ある人物について伝えて置こうと思ってな」

ある人物?・・・。

鎧を纏っているので表情は全く分からないが、キングから伝わるものは緊張感よりも落ち着いた雰囲気が勝っているように感じた。

「詳しいことは言えないが、私はその人物を追っている。まぁ君達も接触する可能性があるかも知れないから、もし見かけたら知らせて欲しい」

お尋ね者を追ってるなら、この人はこの世界の人かな。

「ちょっと待て、俺達は普通じゃ見えない小屋にいるから、普通ならば誰かが尋ねて来ることはない。それに俺達は、ずっとこの世界には居ない」

「あぁ、むしろそれを承知で話している。その人物は君達のように次元を越えることが出来るからだ」

次元を越えることが出来る人を追ってるなら。

「じゃあ君も次元を越えられるの?」

「あぁそうだ」

でも追ってるって言ったって、どうして僕達のところに来たんだろう。

「この際聞かせて貰うが、俺達のことを知っててここに来たのか?」

「・・・あぁ、君達はブルーオーガのエネルゲイアに対抗して作られたディビエイトだろ?もっとも、堕混という形はまだ発展途上だが」

この人、何者だ?

ゆっくりと地面を踏み締めるロードの背中から、少しずつ殺気に近いものを感じ始めた。

「まさか、俺達反乱分子を潰しに来たのか?」

ハラン・ウィンスター(31)

その強気な姿勢は後輩に慕われ、上司にはあまり好かれないが、彼女のその性格では上司の目など気になるものではなく、上司の圧力や叱責にも屈することはない。しかし一人で大人しくカフェで過ごしているのを見られた日の翌日は、彼女の知らぬところで上司から優しくされることがある。


ありがとうございました。

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