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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第八章

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ジャーニー・オブ・メン

「まあな、非常食的なものだけだが、一応な」

「あのさ、ちょっと思ったんだけど、夜に行くより、朝方に行った方が良くないかな?」

「ああ・・・そう、だな。確かにその方が宿代も余計にかからないか・・・」

もしゲートが林の中だったら、暗闇の中だし、街を探すこともままならないだろうしな。

「ん、分かった、んじゃ明日にすっか。じゃあ、朝メシ食ったら・・・そういや、どんな世界に行くか決まってんのか?」

「いや、あ、言い忘れたけど、僕は組織のオーナーからの任務で異世界に行くんだ」

コップをテーブルに置き、腕を組んだソウスケから少しだけ真剣な表情が伺えた。

「任務、か・・・じゃあ、異世界は指定されんのか?」

「いや、それは僕が決めて良いんだ。だからまぁ、行くときは僕の組織からで良いかな?」

「ああ・・・そうか、まぁ俺は別に良いぜ?じゃあ、朝メシ食ったら、お前の組織のオーナーの部屋でってことで」

「あぁ」

組織に戻って夕飯を食べていたとき、ユウコに連れられたユズは1枚のお皿に複数の料理を盛っていた。

「ねぇユウコ、これ、何て言うの?」

「トマトだよ」

カットされたトマトを口に運んだユズは、小さく頷きながら表情を綻ばせる。

「うん、美味しいねぇ」

するとユズは再びフォークの先をトマトに向け、サラダの中にあるトマトにフォークを刺す。

しかしサラダから持ち上げられるときに、サラダの隣に密着するように置かれているデザートの中の生クリームにトマトが引っ掛かる。

あ・・・。

「あ、何か取れた。ユウコ、これ何?」

「生クリームだけど・・・」

ユウコは少し戸惑いを見せる笑顔を浮かべるが、そんなユウコを気にも留めず、ユズは生クリームが乗ったトマトを口に入れた。

「うんうん、これも美味しいね」

「ほんとに?私もやってみようかな」

まぁトマトは良いか、それよりそのデザートの隣にあるエビチリ・・・。

・・・ていうかもうすでに生クリームがソースの一部に溶けだしてる・・・。

そしてフォークの矛先はエビチリへと向けられるが、幸いフォークの先端は生クリームとは離れた位置にあるエビを捕らえる。

別に人魚だから魚介類は食べないって訳じゃないのか・・・。

いや、海にいたら魚介類しか食べれないか。

しかし持ち上げられたそのチリソースを被ったエビはすぐにユズの口元へと運ばれず、なんと先程のトマトのように端っこに盛られた生クリームに着けられてしまう。

ふと目に入ったヒカルコも食器を持つ手を止め、ユズの行動に釘付けになる。

もしかして、生クリームが気に入ったのか?

「うん・・・何か甘辛くて良いかも」

まぁ良いなら良いか。

「ユズ、生クリーム気に入った?」

こちらに顔を向けたユズはすぐに笑顔を浮かべながら大きく頷いた。

「うん、何か甘くて美味しいから、色んなのにつけて食べるよ」

「そうか」

翌日になり朝食を取っていると、隣の椅子との間に来たユズは複数の料理が盛り付けられたお皿の端っこに、再び生クリームを盛っていた。

「はい、おすそ分け」

するとユズは突然生クリームをこちらの料理の上に置くと同時に、満面の笑みを向けてきた。

「お・・・あぁ、ありがとう」

ステーキの端を一口大に切り、仕方がないのでステーキの真ん中に乗せられた生クリームに肉をくぐらせた。

・・・まぁ、悪くはないか・・・。

「はいおすそ分け」

卵焼きに生クリームを乗せられたレンが寂しそうな

眼差しをユズに向けるのを見ながら、付け合わせのブロッコリーに生クリームをくぐらせる。



「なぁ、お前異世界から帰ったら、行くとこ無いんじゃないのか?」

「まぁ・・・拠点はやっぱ必要だな、何にしろ」

この世界に帰ってくる頃には、世界中の名だたるテロリストと戦えるようにはなってるだろうからな。

何となく何かを言いづらそうな表情の信悟は、何かを合図するかのように皆の顔を見渡していく。

「ソウスケ君・・・」

するとマリアが口を開き、少し緊張感の感じる空気を忘れさせるような、ゆったりとした微笑みを向けてきた。

「もし良かったら、組織に戻ってこない?」

「・・・良いのかよ、それで。おい信悟」

「まぁ、言い出したのはマリアだしな・・・」

シュウトの方に顔を向けると、シュウトとその隣にいるゴウも反対するような雰囲気は感じられない。

「まぁその代わり、きっちりテロ鎮圧しろよな」

「あぁ、そういえばあいつらにも話つけないとな。俺が居なくなったってそこまで戦力は変わらないからな」

「いや、あのテロ組織はオレ達に任せた方が良いだろう。お前が行っちゃ、あいつらなら余計に暴れだすかも知れない」

言葉を返しながらゴウは小さくニヤつきながらシュウトに顔を向けると、シュウトはそのアイコンタクトに何かを理解するかのように小さくニヤつき出す。

「それにあっちに行った途端、やっぱテロ組織に戻るって言い出すかも知れないしなぁ」

「おい、俺はそこまで気まぐれじゃねぇよ」

シュウトとゴウが笑い声を上げている景色に、何故か心の中は余計に空虚感が川のように流れていく気がした。

「んじゃ、まぁ、ちょっと行ってくる」

「気をつけてね」

マリアが小さく手を振り出すと、シュウト達もこちらに顔を向けてきた。

「ちゃんとカロリーメイト持ったかぁ?」

「あぁ」

「キムチ味は絶対持ってけよな」

「はぁ?お前、カロリーメイトつったらチーズだろうが」

すぐさまゴウがシュウトにじゃれるように突っ掛かると、シュウトも負けじと強気な眼差しをゴウに向ける。

ていうかキムチ味なんて無いだろ。

「赤坂の組織に繋いでくれ」

「うん分かった・・・良いよ」

「ソウスケ、帰ってきたらどんくらい強くなったか試してやるよ」

「お前よりかは絶対強くなってやるからよ」

ニヤつきながら強気な眼差しでこちらを見ていた信悟に背を向け、何となく違う世界に繋がってるように感じてしまうその扉に手を掛けた。

扉を抜けるとすぐに巨大なモニターとオーナーが目の前に居て、オーナーの背後に立つ氷狼がすぐにこちらに顔を向けた。

「何だここ、物置か?オーナーならもっと広く作りゃ良いのに」

「そ、そうですね」

「それよりお前、マジで手ぶらで行くのか?」

見たところ周りには荷物らしきものも見えない。

「まあね」

まぁ、3分の1くらいは分けてやることもないが・・・。



「それで、どんなとこに行くのか決めたのか?」

「まあね、堕混が居るかどうかまでは分からないみたいだから、ずっと前に行った世界で聞いたキーワードで行くよ」

ソウスケが小さく頷きながらおじさんに顔を向けると、おじさんは椅子を回して体をモニターに向け、軽快な指使いでキーボードを叩き始めた。

「ではどうぞ」

すぐにソウスケが歩き出したので後に続き、柔らかい間接照明に照らされた短い通路の先にある、霧が集まって出来たようなゲートを抜けた。

あれ?今回は林の中じゃないのか・・・。

天井に敷き詰められたタイルみたいなものが、まるでLEDのように光ってこの部屋を照らしている。

「ここは・・・何かの研究室みてぇな感じだが、使われてる気配も無ぇみてぇだ」

周りにはパソコンやら、ケーブルがたくさん繋がった見知らぬ機械があるが、どれも皆埃を被っていると共に、動かせなさそうなほどに傷んでいるのが見てとれる。

「廃墟かな?」

「そうみてぇだな。まぁそれならそれでさっさとこの部屋を出ようぜ」

石碑を背後にしたときに丁度対面している遠くの壁に、寂れてはいるが別の部屋に繋がっていそうな扉が見えた。

「あぁ」

その扉を抜けると外の空気や風を感じ、すぐに舗装されたような一本道が見えたが、やはり辺りには数メートルほどの木々が生い茂っていた。

何だ、やっぱり林か。

「おっと、そういや前に行ったときも森の中だったかな」

もしかしたら、おじさん達はわざと人気の無い所に石碑を置いてるのかな。

「僕も、行った世界は最初は全部林の中だったよ」

「そうか」

とりあえず舗装された一本道を辿っていると、生い茂っていた木々は徐々に数を減らしていき、舗装された一本道の幅も徐々にその太さを増していく。

「お、案外簡単に街が見つかったな」

「そうだね」

林を抜けたその場所は高い丘だったが、そこから見下ろした景色は先程の林が嘘かのように大小様々の建物に覆い尽くされていた。

そして丘の脇に下り坂が見えると、ソウスケは迷うことなく軽い足取りでその下り坂へと歩き出した。

「なぁお前、堕混を捜してどうする気だ?」

まだ少し砂利道が混ざった下り坂を進んでいるとき、ソウスケは世間話をするような口調でそんな話を切り出した。

「んー、探ってると思われないように話とか聞きたいんだ」

「何の情報をだ?」

ソウスケはこちらに顔を向けず、落ち着いた様子で言葉を返してくる。

「ディビエイトっていうのが、堕混を凌駕した力を持った堕混なんだけど、その人達の・・・」

「ちょっと待て、その堕混がそもそも何なのかもまだよく知らないんだが、確か堕混は戦争のために作られたって言ったよな?」

そういえば、ソウスケはスカウトされてないから、オーナーがどういうものかも知らないんだったな。

「元々、堕混は戦争の戦力として作られたもので、ディビエイトもそれは同じなんだけど、その国が敵対してる国が、僕達の組織にいるオーナーの国なんだ」

「オーナーって、あのオーナー達か?」

思わず足を止め、こちらに顔を向けたソウスケを見ると、その表情は少し深刻そうに引き締まっていた。

「あぁ。実は、僕達能力者は、ディビエイトを作った国に対抗してオーナー達が作ったんだって」

深刻そうな表情でゆっくりと目を逸らしていったソウスケは、頭の中で考えを巡らせるように黙り込む。

「じゃあ俺ら、勝手な目的で能力者にされたのか」

「まぁ、そうだね。そして僕はオーナーからの任務で、ディビエイトについて調べるために異世界に行ってるんだ」

もしソウスケがオーナー達に反発心を持ったら、やっぱりオーナー達と戦い始めるのかな。



戦争か・・・。

形は悪いが、環境によっては自分の存在理由なんて考えなくても済むかもな。

力があればそれで良い、確かにその方が楽っちゃ楽だ。

「もし、話の途中でそのディビエイトと戦うことになったら?」

「その時はその時だよ、まぁ戦って出来る話もあるし」

随分と余裕があるんだな、それほど実力に自信があるのか。

「そうか」

今のままの俺じゃ、恐らくそのディビエイトとやらには敵わないのか?

いや、もしそうだとしても、こいつについて行けばきっと俺は強くなれるような、そんな気がする。

ふと見下ろした坂の先には、坂の終わりが見えると共に街に続く道が見えた。

しばらくして坂を下り、街に足を踏み入れると、すぐに遠くから人々の賑やかなざわめきや足音、そのすべてを雑音と認識させる音が聞こえてきた。

「とりあえずどうすんだ?宿か?金か?」

「ソウスケはどうしてたの?」

「ああ、この前は泊まらずにいちいち日帰りしてたって・・・おい、何でお前俺の名前知ってんだ?」

確か俺から名前なんて言った覚えねぇよな・・・。

「だって普通にシンゴがそう言ってたし」

「まぁそうか」

話しながら無意識に歩いていて、ふと気がつくと左右に延びた大きな通りの前にいた。

何だあいつ、原チャリ乗ってんのか?

目に留まった原チャリらしきものに乗る人が大通りを通り過ぎていくと、視界に入った氷狼がこちらに顔を向けたのが見えた。

「僕は、最初はまず、軍かな」

グン?・・・。

「軍って・・・警察か?何だお前、道を尋ねるのにいちいち警察行ってたのか?大袈裟だろ」

「いや、ダコンは侵略のために異世界に散らばったから、僕はいつも、軍に傭兵として入り込んでダコンを捜してたよ」

な、傭兵だ?・・・こいつ、意外と大胆だな。

「お前、何かすげぇな。あ?ていうか、そもそもその警察にはどうやって行くんだ?」

「それは・・・そこらへんの人に聞かないと」

やっぱそれしかねぇか。

てことはこいつ、最初っから仕事モードかよ。

「いやでもなぁ、お前、もっとのんびりしても良いんじゃねぇかぁ?」

「そうかな」

人波をゆっくり見渡した氷狼からは、そわそわとした様子も見えなく、ましてや嫌悪感のかけらも感じない。

何考えてんだ?こいつ・・・。

「まぁ、いいか。じゃあ行こうぜ?警察」

「あぁ」

この異世界ではソウスケがメインですね。そしてカイルがどんな風に関わってくるか、です。笑

ありがとうございました。

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