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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第八章

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真実は世間話と共に

「どっか行くの?」

「まあね、ちょっとおじさんのところに」

「あ、そっか」

会議室に入るとテレビを見ていたユウジとアキが揃ってこちらに顔を向ける。

「ああ氷牙、ノブナガの件のメールが返って来てたよ」

すると少し椅子を回し、体をこちらに向けながらアキが口を開いた。

・・・ノブナガ?

あ、忘れてた。

「そうか」

確か今日会いに行くって言ったんだった。

「とりあえず組織に来てってさ、伊豆半島にある組織だよ」

「あぁ、でもちょっと用があって異世界に行くから、それが終わってからにするよ」

「え、異世界・・・」

アキは戸惑うように表情を曇らせながら、考え込むように目線を落とす。

「でもちょっと知り合いに合うだけだから、すぐ帰るよ」

「何だそっか」

アキは安心したように微笑みを浮かべるとテレビに目線を戻していったので、おじさんの部屋への扉を開けた。

「あのさ、今回行った世界で、また堕混から更に強力なものになった堕混がいたんだけど、その人が、妙なこと言ったんだ」

「妙ですか」

「確か、お前もディビエイトかって」

するとおじさんはゆっくりと小さく首を縦に振って頷いた。

「そうですか」

何か心当たりでもあるかのようだけど。

「知ってるの?」

「はい。実は、その言葉には少し心当たりがあるんです」

「そうか」

でも何でおじさんが知ってることをハルクも知ってたのかな。

「そのことで氷牙君にお話があるんです」

小さく笑みは浮かべているが、おじさんの眼差しには真剣さが伺えた。

「話って?」

「まずは、ディビエイトについて話しましょう。私が知っているものであるなら、恐らくそれは、簡単に言えば新兵器の名前です」

・・・兵器?

でも生き物だしな。

「じゃあ、生物兵器って感じ?」

堕混だって、元は作られたものだしな、納得は出来るかも。

「はい。どういったものかという詳しいことは分かりませんが、恐らく、私の国の敵対国が作ったものでしょう」

おじさんの、国?

「どういうこと?」

「私の国はある国と戦争しているんですよ。2つの国は相手の国を潰すために、日や新兵器の開発に勤しんでます。ディビエイトは、その一貫で作られたものだということです」

ドラゴンもその国の人ってことかな。

もしそうなら、異世界中に侵略出来る力を持った国の存在を掴もうとしていた訳か。

「そんな国を相手にするなんて、厳しいんじゃないの?」

するとおじさんの眼差しが柔らかくなると共に、どこか余裕のようなものを感じた。

「いえ、私達も新たな軍勢を作ってますから」

「そうか」

「そのために私達はプロデューサーとして異世界に行き、この国の言葉で言えば能力者ですが、エネルゲイアを生み出して潜在能力の高い人をスカウトしています」

何の、話だ?

プロデューサー?スカウト?・・・。

おじさんは小さく笑みを浮かべながら、まるでこちらの戸惑いを楽しむかのような眼差しをしている。

「えっと、もしかしてそれが・・・おじさんの正体?」

「はい、改めて言いますが、私達は、新しい軍勢を作るための人材を捜しに異世界から来ました」

「そうか・・・そのプロデューサーとオーナーは違うの?」

「組織の中で言えばオーナーで、任務で言えばプロデューサーということでしょうか」

なるほど、まぁプロデューサーがおじさん達だとしても・・・。

「スカウトって?」

「新しい軍勢にですよ。実は、世界中に散らばったプロデューサー達と定期的に連絡を取り、その世界で誰を軍勢に引き入れようか相談していたんですよ」

「そうか」

・・・すべての組織の能力者が、軍隊を作るために蒔かれた種、か。

なるほど。

皆が知ったらどんな反応するかな?

「そういえば、鉱石のことは知ってたの?」

「はい、元々、あの鉱石をより多く含む惑星にしかプロデューサーは行きませんし、組織に招かれたあなた方も鉱石を元に研究した技術で能力者になる訳ですので」

知ってたって言ったってな・・・。

じゃあ鉱石は元々地球に埋まってたのか。

まぁどの星に鉱石があるか調べる術を持ってるとしても・・・。

「鉱石があるなら、何で今更地上に溢れてきたのかな?まさか、その時期のときを見計らってここに来た訳じゃないでしょ?」

「はい、この惑星に関しては鉱石はまだ地中深くに埋まっていました。ですが、力を持つ者がいると共鳴して呼び寄せられるようになるという説がありまして、恐らくその影響かと思います」

組織を作って一気に能力者を生み出したから、急に鉱石が地上に出てきたってことか。

なるほど・・・。

鉱石が出てきたせいで野生動物が巨大化しても、戦える人がいるから問題は無いということだろうか。

「それにしても、そんなに勝手に能力者にしたのに、戦争は起こったけど、わりと皆普通だけど」

「最初の小部屋、あそこでは皆さんには夢であると錯覚させる催眠をかけてました。そこで皆さんは得る能力を自分で設定したので、落ち着いてる方がほとんどです。まぁ氷牙君は記憶と感情を無くすことを望んだので、そうなりましたけど」

・・・僕が、自分で・・・。

ふと思い出したのはトラウマを心配していた時のミサの言葉。

「そこで、氷牙君に頼みがあるんですよ」

すると再びおじさんの眼差しに真剣さが甦る。

「頼み?もしかして・・・」

「はい、私達はまず最初に氷牙君をスカウトすることに決めました」

「そうか」

まず?スカウトって1人だけじゃないかな。

まぁ潜在能力が高い人なら、さすがに1人だけじゃないのかな。

「スカウトされるとどうなるの?」

「簡単ですよ。新しい軍勢として、敵対国と戦争して頂きます」

純粋な戦いなら、まぁ良いか。

「異世界中ってことは、その惑星から強い能力者達が集まるってこと?」

「そうですよ。でも安心は出来ません。敵対国の兵器の中には強力なものが沢山ありますから」

おじさんの世界か。

理由は何であれ、戦えるなら別に良いかな。

それにもうドラゴン達の国のことも、堕混やディビエイトが何なのかもだいたい分かったしな。

もう、調べる必要も理由も無い・・・かな。

「おじさん達の目的が僕をおじさんの世界に連れていくことなら、その後はどうするの?」

「そうですね、随時スカウトする人を選別していき、氷牙君のようにスカウトしていくということになりますが、ある程度確保出来れば、もうこの世界には居る理由は無くなりますね」

・・・おじさんが居なくなるなら、組織も無くなるのかな。

「じゃあおじさん達は皆帰るの?」

「どうでしょう。報告が済んだ後の指示によりますが、恐らくは帰還することになるでしょう」

もし組織が無くなったら、ミント達やレン達が住めなくなるか。

「組織が無くなると困るんだよね、どうにかならないかな?」

小さく唸り出したと思った途端、すぐにおじさんは何かがひらめいたように微笑みを向けてきた。

「大丈夫ですよ。私が居なくなっても、誰かに新しくオーナーをやって貰えば良いだけです」

まぁ・・・そうか。

「でもその機械とか使えるかな」

「もしそうなったら私から分かりやすく教えますので、ご心配なく」

何だかいきなり色々謎が解けたけど、結局この世界は第三者の勝手な目的で変えられた訳か。

「そうか、そういえば、いつからおじさんの世界に行くの?」

「報告が済んで指示を受けたらこちらからご連絡しますので、それまで待って貰えますか?」

「分かった」

とりあえずこの話は一旦終わりだな。

「じゃあ、最初に行った、天使と悪魔の世界に繋いでくれる?」

「はい・・・どうぞ」

きっと戦争の道具にされたと言う人も居るだろうし、もしそれが原因で能力者がオーナー達に反旗を翻したら、組織自体の存続に関わるかもな。

皆に言うのは、やめた方が良いか・・・。

奥の扉を抜けて、霧で出来た壁のようなゲートを抜ける。

何も考えずに何となく歩き出すと、薄暗い林の中ですぐに篭ったような低い声がどこからともなく不気味に響いてきた。

そうだ忘れてた。

亡霊のように低空飛行する、全身を黒いフードで覆ったものが見えたときに、絶氷牙を纏う。

すると無心兵とやらは急ブレーキをかけたように止まり、まるで獲物を見失ったかのようにうろうろし始めた。

空でも飛ぶかな。

ブースターを吹き出してゆっくりと上昇し、地面が見えなくなるほどに葉っぱが密集した林を眼下にすると、目の前にはすべての建物が白に染められた広大に広がる大きな街があった。

3つの国が1つになってるからな、改めて見ると結構大きいな。

林を越えて地上に降り立ち、しばらく塀づたいに歩くと、門番の姿が見えてきたので鎧を解く。

2人の門番がこちらに気づくと、すぐに身構えるように背筋を伸ばした。

「僕のこと、覚えてるかな?」

門番達はゆっくりと顔を見合わせると、1人が何かを思い出したようにこちらに目線を戻した。

「もしかして、いつかの異世界からのお客様ですか?」

「あぁ、ちょっと用があって、ミレイユに会いに来たんだけど」

「ああそうでしたか」

小さく頷く門番の表情からは、すでに緊張感のようなものが感じられなくなっていた。

「ではご案内しますよ」

「あぁ、ありがとう」

門番に連れられて歩いているとき、ふと塀づたいに並ぶ露店が目に留まった。

今度こそお土産でも持って行くか。

噴水広場を見渡すように聳える白い城の前に着くと、門番は高齢だががっちりとした体型の城の門番に事情を説明し始めた。

「そうか、だが生憎、今アルマーナ大尉は演習に出ている」

大尉?中尉じゃないのか、昇進したのかな。

「そうですか・・・」

「まぁ、今は天王様にお会いなるのが先だ。ここからの案内は私が引き継ごう。お前は戻ってくれ」

「はい、それでは」

門番が持ち場に戻り始めると同時に、高齢の門番はもう1人の門番の方に顔を向ける。

「おい、先に事情を説明して来い」

「はい」

すると若い門番が大きな扉を軽々と開けて城に入って行く。

見た目ほど頑丈じゃないのかな?

しばらくして扉が開かれると若い門番が出て来たので、若い門番について行って城に入って行った。

あれから何日くらい経っただろう。

そういえば、死神との仲は進展したかな。

「天王様、連れて参りました」

「うむ、お前は下がって良いぞ」

「はっ」

門番が下がって行くと、天王は迫り出した2階からこちらを見下ろしながら、立派に蓄えられた顎ひげをゆっくりと摩り始めた。

「ご無沙汰してます」

「そうだな、随分と呆気なく帰ってしまったときは少し驚いたが、健やかそうでなによりだ」

天王は威厳のある低い声で喋り出したが、すぐに気を緩ませるように小さく笑みを浮かべた。

「ところで、今日はアルマーナ大尉に会いに来たそうだが、よければその理由を聞かせてくれるか?」

「はい、あれから僕は反乱軍を捜して異世界を回っていたんですが、この前行った世界で、ハルクに会いました」

すると天王は驚くように眉が上げると共に表情を少し引き締めた。

「ほう、ディレオ大尉にか・・・死神に操られていると聞いたが」

「いえ、今はもう正気に戻ってますが、事情があってまだ帰れないということなので、ミレイユへの伝言を預かって来ました」

「なるほど、そうだったのか」

大きく頷いた天王の表情は再び緩み、緊張感が和らいでいく。

「門番から伝わっているかと思うが、アルマーナ大尉は演習に出ている。演習に出てから時間が経っているからもうすぐ戻ってくると思うが、それまでゆっくり待つと良い」

「はい」

天王が奥の扉の方に去って行くと、瞬く間に静けさと共に平穏な空気が風のように吹き抜けていった。

どこで待ってれば良いかな。

とりあえず城を出て、雲行きが怪しい空を見上げながら、広場の中央にある噴水に腰掛ける。

しばらく霧のように灰色にくすんだ雲が空が覆っていくのを眺めていたとき、やがてふと一筋の水滴が頬に滴った。

降ってきたか。

するとまるでダムが崩壊したかのように瞬く間に雨の量が増してくる。

城に入らなきゃ・・・。

短い帰路を経て城に戻る頃には、まるで噴水に落ちたかのようにびしょ濡れになっていて、何となく城の入口から激しく地面を叩く雨空を見上げてみる。

「氷牙」

掻き消えそうな声が背後から聞こえたときに反射的に後ろを振り返る。

「アリシアか」

満面の笑みで頷いたアリシアは、何やら両腕に抱えている洗い立てのようにふんわりとした真っ白のバスタオルを差し出してきた。

受け取ったバスタオルを何となく頭に乗せ、ゆっくりと髪を掻き始める。

考えてみればバスタオルは必要無いけど、この際使っておこうかな。

「今はね、急に強い大雨が降っては30分くらいで止むっていうのが度々ある季節なの」

やっぱり氷牙ですからね、聞いたところで成り行きに任せるんでしょうね。笑

火爪も火爪で、強いと自覚してるなら恐怖は感じないのかも知れないですね。

ありがとうございました。

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