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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第八章

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ファイアクロー・アンド・アイスファング

アキは小さく唸り出したが表情は落ち着いているので、手を振るマナミを見ながら扉を閉める。

「よぉ兄ちゃん、ヒョウガの世界に繋げてくれよ」

「はい・・・どうぞ」

奥の扉を開けるとまるで同じ部屋に戻ってきたかのような錯覚に陥るが、巨大なモニターの前に座っているオーナーの姿に、そこがすぐに別世界だということが分かった。

「どうも、またいらしたんですね」

「まあな。そういや、あんたらにとっては俺の世界もこの世界も、ただの異世界扱いなんだろ?」

小さく眉を上げながらオーナーはまるで言葉を選ぶように目を逸らす。

「そうですね」

「ま、それなら、パラレルワールドだろうがオーナーは違って当然だよな。それで、あんたの方はもう話したんだろ?あんたらの目的」

するとオーナーは小さく首を傾げ、小さな疑惑を持つかのように目を細める。

まさか、まだ言ってないのか?・・・。

「心配すんなって、俺はもう聞いたよ、あんたらの目的、エネルゲイアプロジェクトの話」

「ああ、そうだったんですか」

頭の中で何かを理解したように頷いたオーナーは、安心したように小さく笑みを浮かべた。

「実は、まだ言ってないんですよ。でも、あなたが聞いたのなら、ヒョウガ君にも話して良い頃合いだということでしょう」

「ま、今日はヒョウガと戦いに来ただけだからよ。ちょっと聞いてみただけだ」

「そうですか」

会議室に入るが、椅子が無造作に置かれているその部屋には静けさが充満しているだけだった。

何だ、居ないのかよ。

一応、ユウジに顔出しとくか。

研究室に入ると、朝食をとっていた2人は揃ってこちらに顔を向けた。

「あれ?何で?」

「せっかく自分に会えたからな、戦いたいじゃねぇか」

すると別世界のユウジは少し戸惑うような笑みを浮かべた。

「今まだ朝ご飯の時間だけど」

「良いじゃねぇかこっちで食ったってよ」

「まぁ・・・それも、そうだね」

焼き魚を箸でつつきながら、別世界のアキが呟くように相槌を打つ。

そんじゃ、あいつんとこに行くかな。

「あ、後でミサも来るってよ」

「そっか」

会議室を抜けてホールに出ると、すぐにホールの賑やかな雰囲気が伝わってきた。

あいつはどこかな、ま、白髪だからすぐに分かるだろうが。

舞台を降りる階段に向かいながら皆を見渡す。

お、あいつはヒロヤだな、こっちのは金髪じゃないのか。

ヒョウガは・・・あそこか。

階段を降りて歩き出したときにふとマナミの姿が目に入った。

何だ?あいつ、羽が生えてる、まるで妖精だ。

しかも、外人の子供もいるなんてな・・・。

まさか、俺の世界とはシンクロしてない奴らってことか?

ヒョウガの居るテーブルに近づいたときにおもむろに別世界のヒカルコがこちらに顔を向けた。

「え・・・」

するとお椀を口元に運んでいる別世界のユウコ、そしてヒョウガもこちらに顔を向ける。

「ヒョウガだっ」

慌てながらお椀を口から離したユウコはすぐにそう口走った。

「俺はヒョウガじゃないよ」

呆気に取られている表情のユウコとヒカルコを見ながらヒョウガの隣に座る。



「悪いけど、まだ食事の途中なんだ」

こちらに顔を向けたカソウはリラックスしたような笑みを浮かべながら、テーブルの上のベルに手を伸ばす。

「俺も今食うからよ、闘技場はその後だ」

「そうか」

「ねぇ、ほんとに、氷牙じゃないの?」

恐る恐る聞くような口調で口を開いたユウコに、カソウは安心感の伝わる微笑みを向ける。

「あぁ、俺は火の爪で火爪だ。まぁ簡単に言やパラレルワールドの氷牙ってとこだろ」

「えっ・・・本当に、あるの?」

珍しく驚く表情を見せながらヒカルコが聞くが、火爪は平然とした顔で頷いて応える。

「お待たせしました」

火爪が後ろを振り向くと、ウェイトレスのニーナは目を見開いてこちらと火爪の顔を交互に見ていく。

「チャーハン頼むわ」

「あ、はい。すぐにお持ち致します」

あのニーナでも少しは戸惑うみたいだな。

「ヒカルコ、アパレルワールドって何?」

「え、違うよ、パラレルだよ。簡単に言うとね、私達と同じ顔の人が居る世界が、こことはまた別にあるってことだよ」

「へぇー」

小さく頷きながらユウコは火爪とこちらの顔を見比べるように見つめると、何となく嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「じゃあ、私ももう1人居るの?」

「ま、そうだな。育ちは違うが、顔と名前、年齢、そんくらいだな、一緒なのは」

するとユウコはより笑みを深めながら更に期待を寄せるような眼差しを見せていく。

「私、どんな人?」

「あー、そうだな、ここのヒカルコみてぇな、落ち着いたインテリ系だな」

「ひぇー」

嬉しさと驚きを混ぜたような、何とも言えない悲鳴を小さく上げながら、ユウコは満面の笑みをヒカルコに向ける。

「お待たせ致しました」

運ばれてくるなり火爪はすぐにレンゲを持ち、チャーハンを掬って口に運んだ。

「あ、ちなみにヒカルコはここのユウコみてぇによく笑う奴だぜ?」

「そっかぁ」

落ち着いた表情で返事を返しながらヒカルコがユウコに顔を向けると、2人は若干嬉しさの伝わるような笑みで微笑み合う。

「でも、何でこの世界に来たの?」

「パラレルワールドがあるってのは俺も偶然知ったんだが、やっぱりもう1人の自分と戦ってみたいだろ?」

火爪が自信の伺えるようなニヤつきを見せながらヒカルコに応えると、ヒカルコは何かが気にかかるような表情でこちらと火爪の顔を見比べる。

パラレルワールドの定義なんて分からないけど、性格だけ違うなんてことがあるんだな・・・。

「じゃ、そろそろ」

「おい氷牙」

火爪が席を立とうとしたときに声を掛けられたので、火爪と共にその方に顔を向ける。

シンジが言葉を失い、ただ呆然とこちらと火爪の顔を見ると、すぐに火爪が吹き出すように小さく笑い声を上げた。

「おうシンジか、こっちのは見た目あんま変わってねぇんだな」

「え・・・」

更に言葉を詰まらせながらシンジが火爪を見ていると、そんなシンジを見ていたユウコは小さくほくそ笑む。

「あのね、パラレルワールドの氷牙だって」

ユウコに顔を向けたシンジは少し落ち着いた表情に変わるが、再び驚くように眉をすくめながら小さく唸り出す。

「そんなの、ほんとにあるの?」

「うん・・・だって、現に・・・」

ユウコが火爪に目を向けるのにつられてシンジも火爪に目を向けたとき、シンジが何かを思い出したかのようにこちらに顔を向けた。

「まさか、戦う奴って、もう1人の氷牙?」

「まあね」

「じゃ、行くぞ?」

そう言っておもむろに席を立った火爪は、ふとユウコに顔を向ける。

「あ、そういや、俺の世界からミサが来るから、興味あるなら見てみれば?」

「ほんと?ミサちゃん来るの?うわぁ見たい」

満面の笑みを浮かべたユウコを見ていると視線を感じたので、待ち兼ねるように立っている火爪について席を立ち、共に闘技場への扉を抜けていく。

「結構本気で行くけど、良いだろ?」

「あぁ」

闘技場の真ん中に着くと、火爪は嬉しそうにニヤつきながら距離を取っていった。



パラレルワールドのシンクロ率がどこまでかは知らないが、恐らくは俺と同等の力はあるだろう。

「とりあえず姿形も興味もあるからな、1つずつ出して行くぜ?」

「・・・そうか」

何だこいつ、全然顔色変わんねぇな・・・。


火爪、炎上。


燃え上がらせる炎を鎧に変えて全身に纏う。

するとヒョウガは青白く反射する鎧を身に纏った。

「やっぱりそれって、氷なのか?」

「そうだよ」

氷の牙か、ま、何にせよ俺が有利だろうが、ここはひとつ、相手の出方を見るか。

「来いよ」

氷牙が地面を蹴って飛び出したと同時に、氷牙の背中から空気が強く吹き出した。

何っ・・・。

そして瞬く間に距離を詰め、氷牙は拳を突き出してくる。

胸元を殴りつけられたが、後ずさりすると同時に回転して腕を振り、氷牙に向けて炎を浴びせ掛ける。

速ぇなこいつ。

「炎剣」

手から手刀のような炎の短剣を作り上げると、氷牙は何やら青白い紋章が描かれた円状のものを掌の前に出現させる。

何だありゃ。

するとその紋章から氷の塊のようなものが飛び出てきたので、とっさに炎剣を振り上げた。

氷の塊を切り裂くと同時に氷の塊は破裂し、氷の破片が辺りに散らばるが、炎剣の炎によって瞬間的に水蒸気が発生して広がり、視界から氷牙を覆い隠した。

やっぱりあの塊は氷そのものってか。

水蒸気が消えると氷牙は構えることもなく、まるで置物のようにその場に立ち尽くしていた。

「それ何?」

「あ?これか?これは炎の剣で炎剣だ。お前だって今のは何だってんだよ」

「今のは氷の弾で氷弾だよ」

飛び道具使うなら氷牙は遠距離タイプなのか、俺と反対だな。

「そういやお前、背中にジェットが付いてるみてぇだしな、距離を取る戦法ってことか」

「ジェットっていうかブースターって呼んでるけど。でも剣じゃないけど、武器ならあるよ」

「お、まじか、ちょっと出せよ」

すると紋章を消した氷牙は肘から手の先までを更に鋭い鎧で覆った。

槍か・・・純粋に飛び道具専門って訳じゃねぇんだな。

「ま、俺も空が飛べねぇ訳じゃねぇ」


業火爪、炎上。


鎧の上から更に全身に燃え上がらせた炎を固め、より強固な鎧を身に覆う。

「お前も次の出せよ」

「あぁ」

槍を消した氷牙の全身が一瞬だけ霧のようなものに覆われると、姿を現した氷牙からは地に着くほどの尻尾が生えていた。



骨格の変化も無いし、鳥のような足をして翼が生えてる。

しかも犬顔じゃない、鳥顔だ・・・。

「お前狼男みてぇだな」

「そっちだって鳥人じゃん」

「はっ面白ぇなぁ。これも個性か」

表情は分かりづらいが、火爪は天を見上げながら大きく口を開けて笑い声を上げた。

・・・火爪って、感情が豊かなのかな。

「じゃ、行くぜ?」

体勢を低くした火爪は先程よりも一回り大きい炎の手刀を作り上げた。

「あぁ」

エンケンとやらはどこまでの切れ味かな。

紋章を出して火爪の動きを伺う。



翼を広げ、翼からジェットのように炎を吹き出して一気に距離を詰める。

業炎剣を振り下ろすが、氷牙は掌の前に出した紋章で受け止め、すぐさまブースターとやらを吹き出してこちらの懐に飛び込む。

硬ぇな、あの紋章。

腹に強く拳を突きつけられたが、足を踏ん張って衝撃を抑え、もう片方の手にも業炎剣を出し氷牙に向けて振り回す。

脇腹辺りに衝撃を受けながら少し吹き飛んだ氷牙もすぐにブースターから空気を吹き出し、慣れた足取りで体勢を立て直すと、すぐさま地面を蹴り、ブースターを吹き出しながら飛び出してきた。

腕を槍状の鎧に変えながら突き出してきたので、上体をずらしてそれをかわしながら下から業炎剣を振り上げる。

すると氷牙ももう片方の腕を槍に変えて業炎剣を押さえ込む。

体を回転させて氷牙の背後に業炎剣を振り回すが、氷牙は尻尾の中間辺りからの鎧を腕のように槍状の鎧で覆い、難無く業炎剣を受け止めた。

こいつ、尻尾は飾りって訳じゃねぇみてぇだな。

なら俺も・・・。

振り向き様に振り下ろしてきた槍を受け止め、もう片方の業炎剣を突き出すが、氷牙はもう片方の槍でそれを受け止める。

すると氷牙は背中を丸め、頭の横から尻尾の槍の矛先をこちらに向けてきた。

そう来ると思ったぜ。

その直後に翼の関節にある手で尻尾の槍を掴み、もう片方の翼の手に業炎剣を出す。

「業火穿」

業炎剣から吹き出す細い炎が氷牙を押し出すと共に、勢いよく氷牙の腹を貫いていった。

「やっぱり火には弱ぇみてぇだな」

「そうだね」

すんなりと立ち上がると氷牙は平然とそう応えながらすぐに腹に空いた穴を塞いだ。

損傷を直せることに関しては、鎧の性質はやっぱり俺と同じだな。

「それじゃ次行こうか」

「お?お前ものってきたな、良いぜ?」

氷牙は体をこちらに向けながら距離を取り始めたので、後ずさりしながら氷牙から少し離れる。


黒点火爪、炎上。


激しい炎の渦が瞬間的に天に昇っていくと、氷牙からは青白い衝撃波が爆風のように広がった。

「そういや、その姿の名前は何て言うんだ?」

「ゴクテン氷牙だよ」

火爪も組織の人達と関わり、異世界に行き、鉱石を使い、強くなっていってる訳ですが、たまたま氷牙が最初に主人公として取り上げられたということです。

ありがとうございました。

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