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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第八章

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チーム・タイムジャンパー

「あぁ。それよりアイリ、鉱石使った話聞いたんだけど、後遺症とか無い?」

アイリは目線を落としながら表情を曇らせたが、すぐに照れるように口元を緩ませながら頷いた。

「あぁ、平気だよ」

「じゃあ僕行くけど、アイリはどうするの?」

「私は氷牙の相手が済んだら、ノブに覚醒の手伝いして貰うことになってるから、それまで見物だよ」

「そうか」

ノブとシンジ、そしてヒロヤが戦ってる方に歩きながら絶氷牙を纏い、またすぐに極点氷牙を纏ってから紋章を5つブースターに転換して背中に配置させる。

今って、あれか、ノブが手に入れた新しい力を僕で試すって時間か。

「お、来たか氷牙」

「あぁ。そういえば2人の他に鉱石使った人とか居ないの?」

地面に降り立ちながらノブは目でヒロヤを差す。

「ヒロヤも使ったぜ?」

するとまるでヘルメットを取るように、和洋折衷風の光の兜を消したヒロヤは照れ臭そうに小さくニヤつく。

「ヒロヤは何とも無かったの?」

「まあな」

何だ・・・案外簡単に3つも力を持てるのか。

「じゃ始めるぞ?」

「あぁ」

再び光の兜を頭に纏ったヒロヤは、光で出来た日本刀を肩に乗せながら離れていった。

「悪いが氷牙、3対1でも良いか?オレら、チームワークも強化したいんだ」

「良いよ」

そして3人は同じような距離感でこちらを囲んでいく。

「そっちから良いよ」

先陣を切ったのはシンジで、驚異的な跳躍で跳び出しながら黒い外殻を纏った右腕を振り上げる。

そしてシンジは瞬時に右腕を更に暗めの朱い外殻で覆いながら、自身の身長の2倍ほどまでに巨大化させる。

ブースターを吹き出しながらシンジの巨大な拳を受け止めたとき、すでにヒロヤが光の刀をこちらに向けて振りかざしていた。

瞬間的にブースターを全開にしてヒロヤに向けて尻尾を振り回し、ヒロヤを吹き飛ばした直後にブースターを1つ掌に戻してシンジに向ける。

しかしその瞬間に激しい衝撃が体の前面に襲い掛かる。

くっ・・・ノブか。

ブースターを吹き出して反動を打ち消すほんの短い間に、シンジがこちらに向かって跳び出し、拳を突き出してくる。

ブースターを吹き出して素早くシンジの拳をかわしたとき、突如頭上から体を押さえ込むような衝撃が降りかかった。

これはっ・・・ダメージを与えるためじゃない、動きを鈍らせるためのものか・・・。

その瞬間にヒロヤがこちらに向かって飛び出し、光の刀を振りかざす。

避け切れないっ。

とっさに体を反らしたが間に合わず、ヒロヤの刀はこちらの胸元に強く叩きつけられた。

少しだけ氷の破片が飛び散ったが、胸元には鋭利なもので切り付けたような跡じゃなく、硬いもので叩きつけられたようなヒビが入った。

この刀、刀に見えてただ硬いだけなのかな。

立ち上がるとヒロヤは少し距離を取るが、張り詰めた気を緩めるように光の刀を肩に乗せる。

「それ、刀じゃないの?」

「いや、普段は木刀のようにしてるだけだ。鋭くすると無駄に死人が出るからな」

「そうか」

警棒みたいな感じかな。

ヒロヤが再び距離を取ったときに地面を強く蹴る音がして、それと同時にこちらに向かってくるシンジが目に入った。

シンジの拳をかわすとヒロヤが切りかかってきて、ヒロヤの刀をかわすとシンジが殴りかかってくる。

そして2人と距離を取ったときにノブの衝撃波が体に襲い掛かる。

なるほど、シンジとヒロヤが前線に立って、ノブが後方支援か。

チームワークは良いけど、単体の攻撃力は低いな。

5つのブースターを消し、向かってきたシンジの拳を受け流すようにかわす。

「何っ」

そのままの勢いでシンジの懐に飛び込みながら、シンジに紋章を向ける。

「蒼月」

シンジが吹き飛ぶと同時にヒロヤに向かって飛び出し、ヒロヤの腹に拳を突きつける。

「ぐっ」

ヒロヤが地面に倒れ込むと同時に頭上から強い衝撃波が降りかかったので、紋章を5つブースターに転換し、ブースターを全開に吹き出しながらノブに向かって飛び出す。

恐らくあのノブは残像になって消えるはず。

だけどタイムスリップ出来る回数は無限じゃないから、いつか実体を掴めるはず。

ノブに手を伸ばすと、足を掴んだときにノブの体は消えず、しかもその一瞬にしっかりとした感触も感じた。

ん?・・・。

その直後、ノブの体が風船のように弾け消えると共に、強い衝撃が爆風のように広がった。

・・・爆発、した?

地面に叩きつけられる前にブースターを吹き出して体勢を立て直すが、地面に降り立ったノブはどこか満足げな表情をしていた。

「爆発したの?」

「あぁ、新しい力は、残像を機雷にする力だ」

・・・なるほど。

「確かにいつかはオレを捕まえられるだろうが、オレは必ず手を出す残像を機雷にすることで、連続的にオレを追いかける勢いを削ぐことにしたんだ」

・・・とことん逃げ足を強化したか。

でもそれなら、爆弾に触らなきゃ良いだけだな。

その場からノブに紋章を向けると、ノブは小さくニヤつき出した。

「だったら触れなきゃ良いってか。だが、そう簡単に上手く行くか?」

その瞬間に後頭部に強い衝撃を受け、地面に倒れながらノブに顔を向けるが、すでにそこにノブは居なかった。

たった1秒タイムスリップするだけなのに。

・・・それなら。

ノブに蒼月を撃ち、氷の弾がノブに当たるときに尻尾に紋章を出しながら尻尾を真っ直ぐ上に伸ばす。

ノブの残像が爆発したと同時に、やはり尻尾の先に出している紋章に強い衝撃を感じた。

背後か・・・。

すぐに尻尾の紋章から蒼月を撃つが、その瞬間に目の前にノブが現れる。

すかさずノブに蒼月を撃つが、ノブは風船のように爆発しながら強い衝撃波を生んだ。

ハズレか。

周りを見渡すと後方にノブが居たのですぐさま蒼月を撃つ。

するとノブは足の底から衝撃波を出し、氷の弾を素早くかわした。

避けたっ・・・本物だ。

ブースターを全開で吹き出しながらノブの下に飛んでいき、ノブの足に手を伸ばす。

しかしノブの足を掴んだ瞬間にノブは爆発し、強い衝撃波に思わず地面に倒れ込んでしまった。

まさか、わざとおびき寄せたのか・・・。

周りを見渡すとノブはヒロヤの隣に立っていて、満足げな表情を浮かべてこちらを見据えていた。

追いかけるから逃げられるってこと、かな?

紋章を5つ、花のように重ねながら掌の前に出す。

「蒼月光」

そしてブースターを全開にしながら勢いよくその場で回転する。

「何だっ・・・くっ」

少しずつ紋章の角度を変えながら、なるべく上下360度、広範囲に蒼月光を照射していく。

「ぐぁっ」

・・・当たったか?

「・・・おいっ」

誰かの叫び声が聞こえたので回転と蒼月光の照射を止めると、尻もちをついているノブと、腕を交差させながら体勢を低くしているヒロヤが見えた。

「お前、強引過ぎるだろうが」

呆れたような口調でそう言いながら、ノブはゆっくりと立ち上がる。

「そりゃあ強引にもなるでしょ」

まぁ当たったとしても一瞬だし、体は凍りついたりはしないけど。

「くそ・・・おいっシンジっ・・・ありゃ気ぃ失ってるか」

ヒロヤと共にシンジを抱え、ホールに戻るとシンジを椅子に座らせる。

「マナミ呼んでくるよ」

「あぁ」

マナミが会議室に戻って少しすると、急にヒロヤが思い出し笑いするように苦笑いを浮かべる。

「まさか氷牙がキレるとはな、予想外だった」

「えっノブさんが、やられたの?」

「あぁ、さすがにノブでも、ありゃ対応しきれなかった」

「そ、そっかぁ」

シンジが苦笑いを浮かべながらうつむくと、そんなシンジを見ていたヒロヤはゆっくりとこちらに微笑みを向ける。

「ちょっと試したかった技でもあったしね」

「そうか?」

「そういえばヒロヤ、静岡に居るノブナガって能力者知ってる?」

すると腕を組んだヒロヤは唸りながら天井を見上げた。

「あー確か、2つ力を持っていて、その力の2つ共を第二覚醒させてるって聞いたが」

「そうか」

やっぱり、覚醒を4回してるってのは本当みたいだな。

「何だ氷牙、そいつと戦うのか?」

「まあね」

ヒロヤは頷きながら闘技場のモニターに目を向けたので、つられて何となくモニターに目を向ける。

アイリは確か、風と氷を操る力を持ってたんだよな、そして新しく手に入れたのが炎の力か。

風の力は炎と氷にそれぞれ上手く混ざるけど、炎と氷は上手く混ざるかな?

・・・なるほど、理屈じゃないみたいだな。

燃え上がる炎をそのままの形で瞬時に氷のオブジェにしたり、氷の球をまるでガソリンをかけたかのように燃やすけど、全く氷の球は溶けてない。

しかもその燃え上がる氷の球を時限爆弾みたいに、好きなタイミングで水蒸気爆発させてる。

しまいには氷そのものを激しく燃え盛るように揺らめかせてる。

アイリって、結構想像力が豊かなんだな。

アイリが燃え上がる吹雪を自身の周りに吹き荒れさせていると、ノブの放つ衝撃波を防ぎながら、かなり広い範囲でノブに燃え上がる吹雪を飛ばしていく。

・・・そうか、ああゆうのがノブの弱点なのか。

あれだけの超広範囲攻撃なら、いくらノブでも避けるのが難しいみたいだ。

ちょっと良いこと知ったな。

「おい氷牙」

ふとシンジが怒ったような口調だがじゃれるようにも聞こえる声色で呼びかけてきた。

「ん?」

「お前、鉱石で手に入れた力と氷牙の力、まだ合わせてないだろ?」

「いや、今回行った異世界で強い奴が居てね、さすがに切り札を出したよ」

するとシンジはどこか嬉しそうに小さくニヤつき出し、その眼差しに力強さを宿らせていく。

「マジか、じゃあオレにも見せろよ」

「極点氷牙を倒せない人には見せれないよ」

目線を落としたシンジは眉間にシワを寄せながら、モニターとヒロヤに目を向ける。

「そうか、そうだよな、3対1でも勝てないんじゃな・・・」

落ち込んじゃったかな。

「もしかしたら、明日、見るだけなら見れるかもよ?」

「え?どういうこと?」

「明日、ここである人と戦うから、その時に見れるかもね」

「ふーん」

おもむろに席を立ち、ホールの両端にある飲み物が出る機械からホットミルクをコップに注ぐ。

「氷牙」

ん?・・・。

「ユズ、どうしたの?」

何となく浮かない顔をしているユズは、おもむろにベルトのポケットからカードキーを取り出した。

「マナミに部屋を案内して貰ってね、しばらく部屋を見て回ったんだけど、あたしにとってはちょっと住みづらいの」

「そうか。どんなところが?」

「んっとね、オフロっていうのが部屋だったら良いなって」

なるほど、水気が欲しいってことかな。

「おじさんに頼めば何とかなるかもよ?」

「本当?」

するとユズの表情に笑顔が戻り、安心したように表情を緩ませていった。

「あぁ。じゃあ早速おじさんのところに行こうか」

会議室に入ると誰も居ないので真っ直ぐおじさんの部屋に向かう。

「どうかしました?」

「部屋の内装を変えて貰うことって出来る?」

「出来ますよ」

おじさんが頷きながら即答すると、こちらに顔を向けたユズは嬉しそうに笑顔を浮かべる。

「どんな内装ですか?」

「お風呂を部屋にしたいって。あの壁や床の材質と水気が欲しいってことだと思うんだけど」

「そうですか。ではベッドやテーブルはどうしますか?」

ユズに顔を向けると、ユズは小さく唸りながら頭の中で何かを思い描くように目線を上げる。

「あたしはいつも、ふかふかの海藻の上で、腰くらいまで波が来る波打際で寝てたから、そんな感じに出来る?」

・・・ぱっと見、リクライニングするベッドで下半身は水に浸かりながら寝たいってことか?

「そうですね・・・」

さすがにおじさんも困ってるか。

それにやっぱり、さすがの人魚でも寝ながら潜ったら溺れるのかな。

「分かりました、やってみます。では、リビングをお風呂と同じような材質の内装に、ということで良いですか?」

「うん」

「じゃあ、カードキーお借りして良いですか?」

ユズがカードキーを差し出すと、それを受け取ったおじさんはキーボードの端にカードキーを差し込む。

そしておじさんは慣れた手つきでキーボードを叩き始めた。

島崎 辰克(シマザキ ノブカツ)

フリーター。

自衛隊にいたこともあってか、テロリストが相手でも臆することなく立ち回ったり、作戦を考えたりする、シンジ達のリーダー的存在。お酒を飲むのが好きだが、テロ鎮圧に向かうときになると何故か酔いが醒めやすい。


ありがとうございました。

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