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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第七章

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アンド・マーメイド・ジャーニー

古びたような着物を着崩した、何となく印象の悪い人達がユズを囲んでいく。

「まさかこんなときに人魚に会えるなんてな」

「丁度良い、肉でも売りゃすぐにでも国を建て直せるほどの金になる」

卑しい目つきで男性達が刀を抜き始めると、ユズは周りを見回しながら表情を曇らせていく。

男性達に向けて氷弾を撃ち、2人の男性が少し吹き飛んだ隙にユズの手を引いて男性達から離させる。

「てめぇ、妖術使いか」

「妙な身形しやがって、どこの異国人だ?」

ユズを背後に置いて男性達に目を向けていたとき、突如水が鉄砲水のように1人の男性に飛んでいった。

「く、くそ、宝の山が目の前にあんのによぉっ」

仕方ないか。

氷の仮面を被り、男性達に向けて氷弾を撃ち出していった。

「ユズ、やっぱり町は危ないよ」

「ううん、旅の一部だと思えば楽しいし、それにもうあたしは戦えるから大丈夫だよ」

「そうか」

・・・キガンの出口はまだ遠いな。

「ユズ、日が落ちる前に帰るから、ちょっと急ぐよ?」

「うん」



あんな衝撃が街全体に広がったんだ、どこかに埋まってるかも知れない。

ん、力の気配が近づいてる。

レテーク・・・。

小さな気配を頼りに瓦礫を1つ取り除いたとき、すぐに見覚えのある後頭部が姿を現した。

「おいっレテーク」

・・・すぐに退かしてやるからな。

レテークに覆い被さっている瓦礫を取り除き、レテークを仰向けにすると、レテークは勢いよく息を吹き出した。

「おいっ」

体の前面には大きな傷が無い、まさかあの時、レテークはとっさにチガリュウに背中を向けたのか。

「ぐふっ・・・ふっ」

「おいっレテーク」

レテークの息に少し落ち着きが見られるようになると、レテークの目が少しだけ開き出した。

「おいっ」

「・・・うぅ・・・」

「お前、転送筒持ってるか?」

まだ少し虚ろな眼差しのレテークはゆっくりと翼を消し、上着のポケットの方に目を向けた。

・・・ここか。

レテークの服のポケットから転送筒を取り出して蓋を開ける。

転送筒から噴き出す光の膜が視界を覆い、光の膜が消えるとすでにそこは山の上だった。

「ハル、クさん・・・チガリュウ、は?」

「いなくなったよ」

翼を消し、透視筒で小屋の位置を確認してからレテークの腕を肩に回し、扉を開ける。

「あらっレテークちゃん、大丈夫ぅ?」

バードが歩み寄ってきたときに玄関先にレテークを寝かせるが、レテークの眼差しは先程よりもはっきりとしていた。

「シープ、治癒液持ってきてぇ?」

「はーい」



あれだな、ゲートは。

・・・ちょっと傾いてるけど、壊れてないかな?

「ユズ、ちょっとここで待っててよ」

「うん・・・どこか行くの?」

石碑の前に作った大きな水の球に座りながら、ユズは少しだけ不安げな表情を見せた。

「ちょっと妖怪石採ってくるだけだよ」

「場所分かるの?」

「・・・分かんないけど、適当に探せばすぐに見つかるでしょ?」

するとユズは心当たりがあるかのように小さくニヤつき出した。

「あたし、知ってるよ?妖怪石がある所」

・・・ある所?

「妖怪石って、妖怪の頭にあるんじゃないの?」

「んっとね、どうして妖怪から妖怪石が生えるかっていう話があるんだけどね、あたし、あんまり勉強好きじゃないから詳しいことは分かんないんだけど、妖怪石はね、本当は土の中にあるの」

・・・やはり普通に鉱物ってことなのかな。

「そうか」

「あたし、1つだけ妖怪石が採れる場所知ってるから、連れてってあげるよ」

「そうか、助かるよ」

満面の笑みで頷いたユズは大きな水の球から飛び降りると手招きしながら林の中を泳いでいった。



「ふぅ、死ぬかと思ったよ」

治癒液とやらを背中に塗っただけで、止血されるなんてな・・・。

「どうだったのぉ?力は手に入ったぁ?」

テーブルに顎を置いていたレテークはゆっくりと体を起こし、目線を落としながら首を横に振った。

「じゃあ、もう1回攻め込むのねぇ?」

「ううん、セイテイの力は、チガリュウが手に入れたよ」

「そぉ・・・」

バードは落ち込んだ様子のレテークを優しい目つきで見ながら、小さく頷いている。

「それで、チガリュウはどうしたの?」

「ハルクさんがやっつけてくれたんでしょ?」

「いや俺じゃない、例の、ディビエイトに殺されたって言われてた奴だ」

レテークがこちらに顔を向けると、バードも珍しく目を丸くしてこちらに顔を向ける。

「どうゆうことぉ?一緒に戦ったのぉ?」

「まぁ・・・一時的な利害の一致ってやつだ。俺だってチガリュウを止めなきゃいけなかったし、ヒョウガも刻印を守る立場だったからな」

「え・・・ヒョウガって・・・」

・・・まずい、口が滑ったな。

「ハルクちゃん、まさか、知り合いなの?」

バードはまるで子供を叱るような目つきで真っ直ぐこちらを見ながら、こちらが喋り始めるのを待ち始める。

「実は、そうなんだ。俺が堕混になる前からな」

「そぉなのねぇ・・・でも、その子が私達の事調べてるならぁ、私達の敵ってことなのよぉ?」

敵、か。

「それにぃ、ディビエイトでも倒せないなら、きっと調査隊とかぁ、討伐隊とか出ちゃうかも知れないわぁ?」

「いや、あいつには俺が言っておく。あいつは多分好奇心で動いてるだけだからな、俺の説得には応じるはずだ」

・・・って言っても、追いかけてまで説得するほど危険な存在なのか?

「まぁ、単独で行動してるなら危険でもないしぃ、今は放っておいても良いかしらねぇ」

「そうか」

「そうだわぁ?今後のことなんだけどぉ、予定通りレテークちゃんにはディビエイトになって貰うからぁ、それまでハルクちゃん、サポートしてくれないかしらぁ?」

「俺は良いけど」

ソファーの隣にある背もたれの無い椅子に座って本を読んでいるラビットに目を向ける。

「ラビット、このままバードについてるか?」

「うん、ディビエイトを増やすなら、サポートしなくちゃね」

「そうか」



ここ、ユズの湖だな。

「ここにあるの?」

湖の前に降り立つと、ユズは勢いよく湖に飛び込んだ。

「ぷぅ・・・そうだよ、氷牙って泳げる?」

・・・潜るのか、まぁ、ブースター使えば泳がなくて済むけど。

「あぁ」

ユズが湖の中に潜ったので湖に飛び込み、ユズの後についていく。

・・・やっぱりユズってエラがあるのか。

深い湖から顔を出すほど高い、1本の太い岩の塔から離れていくと、やがて湖の底と壁の間の位置に空いてる穴が見えてきた。

・・・もしかして、あれかな?

するとユズは振り返りながらその穴に指を差した。

穴に入って少しすると酸素がある場所に辿り着いたので、湖から上がって洞窟を見渡す。

・・・湖から洩れる光だけじゃ、何があるのか分からないな。

「ここなの?」

「うん」

「何も見えないよ?」

「あそこ」

ユズが指を差した方に目を向けると、水から洩れる光がかろうじて届いている所に、宝石のように光が反射している何かがあった。

宝石のように光っているものがある場所に飛んでいくと、そこには確かに赤く反射している部分があった。

・・・取り出してみたら分かるかな。

絶氷槍を出し、赤く反射している部分の周りを刺していく。

しばらくして壁から発掘された原石が湖に落ちると、すぐにユズが潜って沈んだ原石を追いかけた。

「わーい」

そして湖から上がったユズは原石を高々と掲げながら満面の笑みを浮かべる。

「採れたね」

「あぁ」

原石を受け取り、湖で少し洗うと、土が剥がれた原石は林檎ほどの大きさになった。

こんなもので良いか。

「ユズのお陰で妖怪石採れたよ、ありがとう」

「うん」

「じゃあ行こうか」

湖から出ると空はすっかり赤々と焼けていたので、鎧を解かずにユズの手を引っ張って飛んでいく。

・・・何とか日が落ちる前に来れたか。

「ふぅ、氷牙に引っ張って貰うとすごい速いね、ある意味楽しかったよ」

「ちょっと急ぎ過ぎたかな?」

髪を撫で下ろしながらユズは満面の笑みを浮かべ、小さく首を横に振る。

「大丈夫だよ、髪も乾いたし」

「そうか。じゃあ行くよ?」

「うん」

石碑の中をくぐり抜けたときに後ろを振り返ると、ユズは声を漏らしながら周りを見渡していた。

原石を着物の袖の中にしまい、おじさんの部屋への扉を開けた。

しかしそこには誰も居なく、ただ巨大なモニターに解読不能の文字が並んでいるだけだった。

・・・前も居なかったことがあったし、不思議でもないか。

「ここって、氷牙の家なの?」

「違うよ、組織のオーナーの部屋だよ」

しきりに部屋を見渡しながらユズは小さく相槌を打つ。

「組織って、何?」

「この世界には、普通の人間と特殊な力を持った人間が居るんだ。組織っていうのは、僕みたいな特殊な力を持つ人間達の居る場所だよ」

「へぇー」

多分まだ夕方だし、ユウジ達も居るだろう。

「ちょっと皆に説明するから、ここで待っててくれる?」

「説明って?」

「いきなり人魚が来たらびっくりするから、前もって連れて来たよって言っておくんだ」

ユズは納得したように頷くと、満面の笑みを浮かべながら大きな水の球に腰掛けた。

「そっか分かった」

会議室に入るとすぐにマナミ、ユウジ、アキの3人がこちらに顔を向けたが、それと同時に違和感という名の沈黙がその場を包み込んでいった。

「・・・誰?」

口を開いたマナミはとても落ち着いた物腰で、気品すら漂わせている。

・・・マナミ、だよな。

「マナミ?」

「え、そうだけど」

マナミが驚きの表情を浮かべると、背筋を伸ばし、力強く強気な雰囲気を醸し出すユウジもゆっくりと首を傾げ、髪を茶色に染めているアキは警戒心をあらわにしながら見下すような目つきでこちらを見る。

・・・イメチェンにしては、体の中から醸し出す雰囲気が違いすぎる。

「でもよく見るとカソウだね、何?カソウも髪染めたの?」

・・・カソウ?

「僕は、カソウじゃないよ」

「え?」

「だと思った、ぱっと見全然違うし」

するとアキがこちらから目線を外しながら呟くように喋り出した。

「でも、顔はカソウだよ?」

「いや、きっと違う」

マナミと思われる人がユウジと思われる人に顔を向けると、ユウジと思われる人は姿勢を崩さずに静かに口を開いた。

「お前、誰だ?」

「僕は氷牙だよ」

「ヒョウガか・・・」

・・・知らないのか、おかしいな。

でも見た限り、皆は皆なのにな。

それにこの部屋だって・・・いや、ちょっとだけ雰囲気が違うかも。

「何で、マナのこと知ってるの?」

「・・・マナミだけじゃないよ、ユウジだってアキだって、ミサだって知ってるよ」

「えぇっ」

マナミと思われる人が落ち着いたトーンの驚きの声を上げると、アキと思われる人は納得したように唸りながら頷き出した。

「そうかぁ、分かったよユウジ」

「まさか、パラレルワールドだなんて言わないだろうね」

「だぁもう、何でいつも先に言っちゃうのかな、そのまさかだよ」

・・・パラレル、ワールド?なるほど、それなら、筋は通るか。

「うそぉ・・・それって、なーに?」

「え・・・っと、だから、僕達と同じ顔と名前の人達がいる、ここじゃない別世界があるってことだよ」

マナミと思われる人が小さく唸りながらこちらに顔を向けるが、腑に落ちないような表情のままアキと思われる人に目線を戻す。

「でも、名前、カソウじゃないって」

「氷牙は本名じゃないよ。だから多分、そのカソウって名前も本名じゃないんだと思うよ」

「そっかぁ」

・・・てことは、まだここは異世界ってことか。

でもまぁ、ここには用は無いしな。

そのときにおじさんの部屋への扉が開き、そこからユズが顔を出した。

「氷牙、来ちゃった」

「あ、あぁ」

まぁ良いか、名前も顔も同じだしな。

「入って良い?」

「あぁ」

ユズが会議室に入ると再び沈黙が流れたが、すぐに別世界のマナミは満面の笑みを浮かべた。

「人魚だぁ」

「あたしユズって言うの」

「マナはね、マナミって言うんだよ」

2人はすぐに微笑み合うが、別世界のユウジとアキは呆気に取られたような表情でユズを見つめている。

「ここが、氷牙の世界なの?」

「違うよ。でもこれから行く僕の世界には同じ名前の人達が居るから、今言っとくよ。この人がユウジでこっちがアキだよ、2人は組織のリーダーだよ」

「リーダーってことは、偉いの?」

・・・でもこっちの世界の事情は分からないな。

「多分ね。それでさっき話したマナミと多分ミサが補佐役だと思うんだけど、合ってる?」

「あ、あぁ」

別世界のユウジが戸惑いながらも返事をすると、ユズは気になることがあるような表情でこちらの顔を覗いてきた。

「ホサヤクって?」

「リーダーの仕事を、支えたりって感じかな」

「へぇー」

「じゃあ、僕は自分の世界に帰るよ。異世界に行くより、こういう世界に来た方がややこしくなりそうだし」

別世界のマナミが手を振り出したが、すぐに別世界のアキに呼び止められる。

「氷牙も異世界に行ったのかい?」

・・・氷牙、も?

「あぁ」

「じゃあ、そのユズって人魚は、こことも氷牙の世界とも違う、また別の世界の住人ってこと?」

「そうだよ」

すると別世界のアキは目線を落とし、すこし険しい表情で腕を組みながら唸り出した。

「異世界を渡るって時点で危険性が高いのに、その世界の住人を連れてくるのはまずいんじゃないかな」

「そうかな、もう何人も異世界から僕の世界に来て普通に住んでるけど」

「えぇっ何人も?」

別世界のアキが声を上げるが、別世界のユウジは依然として、真っ直ぐ伸ばした背筋と組んだ腕を崩さない。

「何も、問題とか起きてない?」

「あぁ」

「そっか・・・」

そう呟くと別世界のアキは再び腕を組み、考え込むように黙り込んだ。

「じゃあ」

別世界のマナミに顔を向けると、手を挙げたまま動きが止まっていたマナミはすぐに笑顔で手を振り始めた。

おじさんの部屋に入り、何の違和感もないこの小さな部屋を見渡してみる。

置いてある機械とかも、全部同じだよな・・・。

「また違う世界に行くの?」

「あぁ、ここは僕の世界に似てるだけなんだ、だから今度こそ僕の世界に行くよ」

「そっか」

・・・でも、どうやったら戻れるのかな。

行って帰ってきたら、元に戻ってるなんて、そんなことはある訳がない。

・・・困ってきたな。

「どうかしたの?」

「どう戻ったら良いか分からないんだ」

「そ、そっかぁ」

・・・そもそも、何で石碑はこの世界に繋がったのかな。

まさか、さっきの聖帝の町全体を呑み込んだ衝撃波かな。

ちょっと傾いてたし。

「じゃあ、リーダーさんに頼んでみたら?」

「んー」

リーダーより、この組織のオーナーだな。

「そうだね。じゃあちょっと待っててよ」

再び会議室への扉を開けて顔を出す。

「あれ?どうしたの?」

別世界のマナミが口を開くと、ユウジとアキもこちらに顔を向けたので会議室に足を踏み入れた。

「どうやって戻ったら良いか分からなくてさ」

「だと思った、僕も丁度今どうしてパラレルワールドが繋がったか考えてたところだし」

別世界のアキは眼鏡の真ん中を人差し指で押さえながら、自信が滲み出るようなニヤつきを見せる。

「まぁ考えたんだけど」

「まさかオーナーに相談するなんて言わないだろうね」

するとすぐに別世界のユウジが何食わぬ顔で口を挟む。

・・・ユウジ、まさかわざと割り込んでるのかな。

「そのまさかだよ。どこに居るか知ってる?」

「ああ僕が呼んでくるよ、氷牙が行くと何かとややこしいからね」

「あぁ頼むよ」

するとアキは軽く腰を上げ、そそくさと研究室へ入って行った。

・・・この世界でも研究室として使ってるのかな。

研究室から出て来たアキの後ろにはオーナーと思われる人が居たが、その姿は見慣れたものではなく、長身の若い男性だった。

「この方が、パラレルワールドのカソウ君ですか」

「あぁ、けど名前はヒョウガっていうんだって」

アキが椅子に座ると、オーナーはこちらの目の前まで歩み寄り、丁寧に頭を下げた。

「はじめまして、私がこの組織のオーナーです」

何でかな、これだけ皆が同じ姿のパラレルワールドなら、オーナーも同じはずだけど。

「どうも」

「では早速調べてみますね」

「あぁ頼むよ」

オーナーと共にオーナーの部屋に入ると、部屋を見回していたユズがこちらに気づき、すぐに笑顔を浮かべた。

「お客さんですか?」

「まあね」

「この人がオーナーさんなの?」

オーナーはユズの目の前で立ち止まると再び丁寧に頭を下げた。

「はじめまして、私はこの組織のオーナーです」

「あ、うん、あたしユズだよ」

戸惑いながらも笑顔を向けるユズに会釈すると、オーナーは巨大なモニターの前の椅子に座り、キーボードを叩き始めた。

「おかしいですね、異常な点はありませんが」

「・・・そうか」

「・・・異常ではありませんが、奥の扉は組織と繋がってますね」

組織と繋がってる?

僕は異世界から来たのにな。

「それはいつの話か分かる?」

「履歴では1分前です」

・・・誰かがここに繋げたってことは・・・。

すると奥の扉が開き、見覚えのある顔の人が2人、オーナーの部屋に入ってきた。

来たか、しかも・・・。

「お、やっぱそうだったかぁ」

黒髪で僕の顔をした人が最初に口を開きながら、こちらの方に歩み寄る。

「うわ、白ぇな、あっちのカソウはこんな奴なのかよ」

そしてミサの顔をした人もそう言いながらカソウと思われる人の後につく。

「よぉ、お前が氷牙、か?」

「何で知ってるの?」

するとカソウと思われる人は自信が滲み出るようなニヤつきを見せる。

「俺達は極度にシンクロした異世界の住人同士だぜ?育ちは違うものの、行動パターンは運命的なほど似通ってんだ。お前が偶然に俺の世界に来て、俺も同じタイミングでお前の世界に行った。つまり、これは一種の事故だ」

「なるほど」

やっぱり、聖帝の衝撃波が原因かな。

「ゲートに不具合が出たなら、心当たりがあるよ」

「そうか。ところでお前、時間あるか?」

「え?」

カソウと思われる人は更にニヤつきの深さを増し、嬉しさのようなものが伝わってくるほどになった。

「偶然とは言え、俺と同じくらい強い奴と会えたんだ。闘技場行こうぜ?」

「・・・悪いけど、異世界から帰った報告がしたいんだ」

「良いじゃねぇかカソウ、どうせオーナーに言やいつでも繋いでくれんだからよ。それにあたし達だって報告しなきゃいけねぇだろ?」

ミサと思われる人は表情こそ落ち着いているが、怒ったような口調でカソウと思われる人を諭している。

こっちのミサとは対照的ってやつだな。

「ま、そうだな。じゃ氷牙、また明日お前の世界に行くから、待ってろよ?」

「分かった」

僕と同じくらい強い奴か、楽しみだな。

2人が会議室の扉の前に着いたときに、カソウと思われる人は急にこちらに振り返った。

「何でお前、人魚連れてんだ?」

「異世界に行ったときに知り合って、ついて来たいって言うから連れて来たんだ」

「そうか」

2人が会議室に入っていくと、ユズが微笑みながらこちらに顔を向けた。

「本当にそっくりだね。兄弟なの?」

「違うよ。僕を基準にすると、ここはあのカソウって人の世界ってことだよ」

すると目線を上げながらユズは小さく唸り出した。

「何だかよく分かんないかも」

「まぁ・・・とりあえず帰るよ」

「うん」

舞台が和風なので、サブタイトルはあえて全部英語にしてみました。第七章、終わりです。

ありがとうございました。

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