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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第七章

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ドラゴン・スレイヤー

周りの黒い花びらの刀身を見渡した狼男が、こちらの方に飛び掛かろうと足を踏ん張ったその瞬間、十枚の刀身から一気に電気をほとばしらせる。

「うあっ」

距離を取った狼男を見ながら、十枚の黒い花びらの刀身を引き寄せ再び黒嵐華を構える。

「憑鷹」

後ろから声が聞こえると同時に視界の隅に蜂鷹の姿が現れる。

「あの化け物共、段々皇下街に近づいてる、皇下街に来る前にお前もこっちに来てくれよ」

「何を言っているっ私がここを離れたらどうなるか分かっているのか?」

「お前こそ冷静になれよ、6人の龍より、お前の方が勝ってるって言いていのか?あ?守んなきゃいけねぇのは皇族だけじゃねぇだろうが」



剣を水平に振り抜いて白黒の大波を生み出すと、ヒョウガは掌の前に出した盾で受け止めながら背中から空気を吹き出し、その衝撃を打ち消していく。

その間に剣に纏わせた光と闇を剣の形に収めたまま長く伸ばし、動きが止まっているヒョウガ目掛けて光と闇の剣を振り下ろした。

勢いよく地面に落ちていくヒョウガを追いかけようとしたとき、ふとこちらの方に飛んでくるレテークが目に入った。

「サムライ達がエニグマに気を取られてる隙に刻印のところに行くよ」

「お前だけじゃ無理だ、待ってろすぐに片付ける」

剣に光と闇を最大限に集めてヒョウガの下に降り立ち、立ち上がった氷牙の胸元に剣先を突きつけた。



「悪いな」

その声が耳に届いたときにはすでに視界は光と闇に覆われていて、凄まじい衝撃に呑まれたままほんの少しの間時が流れた。

ブースターを横に吹き出して、ようやく極太の白黒の矢から抜け出せたときにはすでに林の中に居た。

天魔の力を溜める隙も無かったな。



他のディビエイトが殺したと言うほどの手応えがあってもヒョウガは生きていた。

なら、あれくらいじゃ死なないだろう。

「行くぞ」

「うん」

レテークと共に砦のような高い塀を飛び越え、高貴さと静寂さに満ち溢れた場所に降り立つ。

さっきとはまるで景色が違うな、まるで更に異国に足を踏み入れたような感じだ。

「レテーク、例の赤い門はあるか?」

「ううん、無いって言うより、多分ここには建てられてないんじゃないかな」

確かに中央にあるでかい建物と壁づたいにその建物を囲む家があるだけで、それらしいものは見当たらない。

「そうか」

歩き出したと同時に殺気を感じると、すぐに豪華な紋様が刻まれた服を着た侍が木の陰から現れた。

あの佇まいで分かる、あいつは強い。

きっとあいつが話に聞いていた、1番強いサムライか。

「お前が祠の番人か」

こちらの顔を見上げたサムライは小さく眉間にシワを寄せるが、すぐにその表情を緩めて目を逸らした。

「まぁ、そうだな」

「悪いが、祠は壊させて貰う」

「そうか」

随分とあっさりした返事だな。

「2人だけか」

別の声がした方に目を向けると、同じような服装をした侍が貫くほど真っ直ぐな眼差しでこちらを見据えていた。

いつの間に・・・。

しかし番人は1人じゃないのか。

「行くぞナギリュウ」

「あぁ、他の奴らには悪いが、手柄は俺が頂く」

2人が少し反った剣を腰に挿した鞘から抜くと、まるで体中を締め付けられるような強い気迫と、凍てつくような鋭い殺気が空気を満たしていった。

サムライとやらは皆ああいう形の剣なのか。

「行くぞレテーク」

・・・ん?

後ろを振り返ると、耳が下がったレテークは2人のサムライを見ながら脅えるように固まっていた。

仕方ないな。

剣に光と闇を集め、2人に向かって白黒の大波を放つ。

こいつらを早いとこ殺して、レテークに祠を壊させないと。

先に大波を抜け出したのは体中を締め付けてくるような気迫を放つサムライで、サムライはその服装や体に似合わず、驚異的な跳躍でこちらに飛び掛かってきた。

振り上げられた剣を光と闇を纏った剣で受け止め、すぐに強く押し返すと、サムライは地面に降り立ちながら剣を真上に振りかざした。

それと同時に空気を押し潰す清々しいほどの気迫がサムライから放たれ、周りが静寂に落とされたような感覚に見舞われた。

「一刀命凪ぎ」

くっ・・・この気迫。

振り下ろされた剣は一瞬で長くなったように見え、まるで視界にただ1つその剣しか映らなくなるほどの気迫に当てられる。

光と闇を纏わせた剣でかろうじて受け止めるが、気迫なのか実際に重たいからなのか、思わず押し切られそうになる。

「俺の気迫を間近に受けて怯まないとはな、敵ながら感心するぜ?」

「俺だって、元は隊長だからな」

サムライの剣を押し返したとき、体が凍てつくような鋭い殺気を放つサムライがこちらに向かってくるのが見えた。

そのサムライは大きく跳び上がりながら剣を振り上げたので、光と闇を纏わせた剣で身構える。

受け止めてすぐに押し返すと、サムライは華麗に宙返りしながら地面に降り立ち、その場で大きく剣を振りかざした。

「凍て花、満開」

その瞬間に足元に白い霧のようなものが波のように広がり、その一瞬で足の身動きが取れなくなる。

また相手の動きを削ぐ技か、だが、もうその手には乗らない。

全身に光と闇を纏うと共に、剣の刀身を光と闇に変える。

「乱れ咲き」

そしてそのサムライが飛び掛かってきたときに、爆発させる勢いで吹き出す光と闇の剣をサムライ目掛けて振り下ろした。

「おらぁっ」

サムライの剣に当たった感覚がしたときに氷が砕けるような音がしたが、そのまま強く振り切ると凍てつくような足枷は消え、サムライの体からは激しく血しぶきが舞った。

「トウリュウっ」

気迫を放つサムライの叫び声が虚しく響く中、トウリュウと呼ばれたサムライは力無く膝を落とし、音を立ててその体を地面に伏していった。

まずは1人だな。

「貴様ぁっ」

再びサムライから空気を押し潰すほどの気迫が溢れ出したとき、ふとサムライの向こうに別のサムライの姿が見えた。

新手か。

「ナギリュウ、1人で行くなよ」

気迫を放つサムライが不意に後ろを振り向くと、緊張感の無い表情のサムライは軽く地面を蹴っただけで気迫を放つサムライの隣に跳んできた。

「ゴウリュウも来たのかよ」

「貴公はいつもそうだ」

左手からまた別の声が聞こえたので目を向けると、頭の金の装飾が印象的なサムライが、建物の陰からゆっくりと歩み寄ってきた。

まだいるのか。

こちらと距離を取った位置で立ち止まったそのサムライは、少し細めた鋭い眼差しでこちらを睨みつけながら、ゆっくりと鞘から剣を抜き出した。

「1人で突っ走りおって。全く、抜け駆けだけは一人前だな」

「俺1人で十分だってのに、まぁ今回はハハリュウさんにも手柄、分けてやるよ」

「異国の者よ、これ以上の悪行は我らが許さない。覚悟しろっ」

そう言って地面を蹴った、頭の装飾が目立つサムライから瞬間的に天を突くほどの殺気が立ち込めると共に、サムライの背中から刀身のような光沢を放つ鋭い羽が生えた。

手に光と闇の球を出してサムライに撃ち出すが、素早くかわしたサムライは剣を振りかざしながら刀身の羽を大きく広げた。

サムライの剣を受け止めたとき、気迫を放つサムライが飛び出したのが見えたので、気迫を放つサムライに向けて尻尾を勢いよく振り回しながら、頭の装飾が目立つサムライを翼で叩き落とす。

体勢を崩しながらも地面に降り立った頭の装飾が目立つサムライに向けて、すぐさま激しく吹き出した光と闇の刀身を振り回す。

サムライが刀身の羽で防いだのが見えたが、構わずにそのまま光と闇の刀身を振り抜き、気迫を放つサムライも吹き出した光と闇に巻き込んだ。

・・・直前でかわされたか。



林を抜けるとすぐにエニグマの姿が見えたので、エニグマに紋章を向けて蒼満月を撃ち出す。

氷の爆風でエニグマの姿が覆われるが、氷の破片が風に消えたときにはすでにエニグマは氷漬けになっていて動かなくなっていた。

まずは1体だな。



2人が素早く距離を取ったが、頭の装飾が目立つサムライの肩からは血が溢れていて、気迫を放つサムライも押さえている腕から血が出ていた。

かわされたと思ったが、かすったようだな。

「おいおい、2人共大丈夫かぁ?」

依然として呑気な雰囲気を醸し出しているサムライが2人に並ぶと、2人は険しい表情で揃ってそのサムライに顔を向ける。

「早く刀を抜かないか、馬鹿者」

頭の装飾が目立つサムライが一喝するが、呑気な雰囲気のサムライは表情を崩さず、ため息をつきながら鞘と柄に手をかける。

「へいへい」

剣を抜いたサムライの表情は変わらないものの、サムライから発せられた強い圧力を感じる風のような殺気は、一瞬で辺り一面に広がった。

すると呑気な雰囲気のサムライが前に突き出した肩に剣を乗せて構えたき、更に放っている殺気の圧力が増した。

「万・切り風」

それと同時に頭の装飾が目立つサムライから放たれる天を突くほどの殺気が更に強まると、サムライは刀身の羽を広げ、剣を前に突き出して構えた。

「刃舞、金獅子」

頭の装飾が目立つサムライが飛び出して来たので、光と闇の刀身で受け止めるがすぐにサムライは距離を取る。

その直後に圧力を感じる殺気を放つサムライの剣が風を纏いながら伸び出し、勢いよくこちらに振り下ろされる。

・・・くっ。

かろうじて受け止められたのですぐに振り払うが、頭の装飾が目立つサムライが再び切り掛かって来たので、手に集めた光と闇の球で頭の装飾が目立つサムライの剣を受け止める。

するとすぐに頭の装飾が目立つサムライは回転しながら刀身の羽を振り回す。

胸元辺りを引っ掻かれたが、すかさず頭の装飾が目立つサムライに向けて剣を振りかざしたとき、ふと剣を振り出す、圧力を感じる殺気を放つサムライに目を捕われる。

剣を構える前に腕を切り付けられると、圧力を感じる殺気を放つサムライは間を置かずに剣を振り上げてきた。

圧力を感じる殺気を放つサムライの剣を押さえつけながら、頭の装飾が目立つサムライに目を向ける。

すると頭の装飾が目立つサムライは、すべての刀身の羽を折り曲げ、矛先をこちらに向けながら飛び掛かってきていた。

くそ・・・。

左肩辺りに8本の刀身の羽、そして頭の装飾が目立つサムライが逆手に持つ剣が腕に突き刺さるが、それと同時に頭の装飾が目立つサムライの首を掴む。

その直後に空気を押し潰すような気迫を感じると共に、殺気を感じる静寂が体中を締め付けた。

「一刀命凪ぎ」

何っ・・・。



最後の1体のエニグマに蒼満月を撃ち込み、一旦地面に降り立つと、ヒョウヨウとホウヨウがこちらの方にに駆け寄ってきた。

「氷牙殿か?」

「あぁ」

直後に建物の屋根に飛び乗りながらセンヨウとレイヨウも姿を現した。

一応揃ったかな。

「すぐに皇下街に向かうぞ」

センヨウの低い声に皆の表情が引き締まり、皆は一斉に皇下街に向かって走り出した。



左胸に鋭い痛みが走ったが、刃の入りが甘かったのか傷口はすぐに塞がり始める。

くそっ・・・。

「調子に乗るなぁっ」

柄を強く握りしめ、光と闇の刀身を吹き出しながら、頭の装飾が目立つサムライに勢いよく振り下ろす。

「ハハリュウっ」

光と闇に呑まれながら吹き飛ぶハハリュウと呼ばれたサムライには目もくれず、すぐに2人に向かって飛び出しながら激しく吹き出す光と闇の刀身を振り抜いた。

「ぐぁっ」

2人は光と闇の刀身を間一髪で受け流したが、すぐさま目に留まったサムライに向かって光と闇の刀身を真っ直ぐ吹き出した。

「ぐっ」

左胸を貫かれながらも、圧力を感じる殺気を放つサムライは剣を手放した両手で光と闇の刀身を握りしめ、殺気を宿す眼差しで真っ直ぐこちらを睨みつけた。

「ゴウリュウっ」

その瞬間に背中に何かが乗っかった感覚がして、またその直後に背後から心を突き刺すような殺気が溢れ出した。

何だ?

そして首筋に刃が突き刺さったような衝撃と痛みが走った。

くっ・・・。

「来るのが遅ぇよ、ヤシャリュウ」

「済まぬ、隙を伺っていた」

・・・まだ居たのか。

しかもこうも皆気配を消して現れるとは。

「ぐあぁぁ」

その直後、ヤシャリュウと呼ばれたサムライの叫び声と共に、背中全体を何かが引っ掻き回していった。

ドラゴンの姿をした者が、龍と呼ばれる人間達を斬っていく。ややこしいですか。笑

ありがとうございました。

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