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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第七章

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リユニオン

「僕は妖怪の血は入って無いよ」

感心するようなトーンで唸った壁に寄り掛かっている男性を見ると、その瞳は黒く澄んでいた。

「君は妖怪の血は無いの?」

「おいらの家は代々妖血が入ってるぜ?それより、君ってのは止めてくれよ、おいらはホウヨウだ」

「そうか」

ホウヨウの爽やかな笑みに、何となく海風を感じたような気がした。

妖怪の血があるからといって皆瞳が緑色って訳じゃないのかな。

「私はレイヨウと申します」

そう言って女性は丁寧に軽く頭を下げる。

「あ、どうも」

「私はセンヨウだ」

レイヨウに続いて口を開いた男性は頭は下げず、少し警戒心の感じる冷たい眼差しをこちらに向ける。

「どうも」

ヨウって多分鷹だよな、虎はコだし。

「すごいね、皆鷹なんだね」

「何言ってんだお前」

ホウヨウに顔を向けると、明るい口調でなのか、侍には似合わないような爽やかな笑顔でなのか、場の緊張感が少し解けたように感じた。

「その身形で鷹がすごいなんてな、そりゃあ嫌味に聞こえるぜ?」

・・・嫌味?

「お前、鬼の角は1人で採ったのか?」

「あぁ」

何で鬼の角を採ったって分かったのかな。

「その皇紋羽織ってのはな、親鬼の角を献上した者に与えられんだ。だがなぁ、鬼の角ならまだしも、親鬼の角を1人で採れんのは龍の名を持つ侍ぐらいだからな。お前は龍ほどの力を持ってるってことだ」

そういえばシナもそんな話をしてたな。

「でしたら、この方にも皇下街で異国人を討って頂いた方が良いのではございませんか?」

落ち着き払った声色で口を開いたレイヨウに目を向けると、レイヨウは気品を漂わせる良い意味で冷ややかな眼差しをホウヨウに向けていた。

「いや、龍でもないのに龍ほどの力量を持つ者が居るなら、皇下街の外でエニグマとやらを退治してくれた方が私は良いが」

センヨウが先に言葉を返すと、威厳のある低い声に他の侍は素直に話を聴き入っている。



「あ、ラビット・・・どうだった?」

「うん」

シープの問いにどことなく元気の無い返事をしながらラビットは椅子を1つ、テーブルの下に引き寄せる。

「スネークの、遺体が見つかったよ」

「そんな・・・」

シープが寂しげな表情を浮かべて小さく呟くと、バードも落ち込んだように表情を曇らせる。

「それで、誰がそんなことやったのよぉ」

「正確には分からないけど、多分堕混だと思うよ。定期報告には堕混が3人居たってゆうし、本部にはクーデターとして処理されるみたい」

そのスネークとやらは、1人で3人の堕混を従えてた訳か。

「それで、その堕混達はどこに行ったのよぉ」

「分からないよ、しかもスネークが持ってた物資転送用の通信端末も無くなってたって」

・・・通信端末?

「それが無くなると、どうなるんだ?」

こちらに顔を向けたラビットは険しい表情で小さく唸り出す。

「まぁ堕混達が色んな筒を本部から取り寄せられるようになるってことかな」

「なら、擬態光筒も使えるってことか?」

「そうなるね」

見つけ出すのは難しそうだな。

しかしすぐにラビットからは曇った表情が消え、いつもの落ち着いた眼差しに変わった。

「でも今のところは脅威になる反乱分子じゃないし、気にすることはないよ」

今のところか・・・。

これからでかくなる余地があるのが分かってるかのような言い方だが。

「とりあえず、今はレテークをセイテイとやらにしちゃってよ」

「あぁ、行こうかレテーク」

「うん」



随分とここで待ってるけど、そもそも今日攻めてくるって分かってる訳じゃないしな。

ずっとこの緊張感だと、さすがに侍達も疲れちゃうんじゃないかな。

「そういえば、皇下街が戦場になるなら、皇族の人達はどうなるの?」

「心配は無用でございますよ、皇下街には地下がござます故。それにすでに皇族の方々の避難は済んでございます」

はっきりとした笑みは浮かべないものの、レイヨウの凛とした眼差しと澄み切ったその瞳に、まるで微笑みを向けられているような印象を受ける。

シェルターってことか。

「なるほど、じゃあ皇下街の外に居る人も避難させたの?」

「いや、表向きには避難させる話は無い。逃げたい奴はそうするだろうがな」

すぐにセンヨウが湯呑みを持ちながら呟くような口調で応え、こちらには目を向けずに湯呑みを口に運んだ。

一般市民は自主避難って訳か。

突如勢いよく障子が引かれる音がしたので後ろを振り返ると、障子の向こうには緊迫感を醸し出す佇まいで、慌てたような表情の中年の侍が立っていた。

「今しがたっ、キガンの南西っ、南東共に異国人の手先が現れたっ」

その侍の大声に、十数人もの侍を収めている大部屋の空気が一瞬にして凍りついた。

「直ちに参られよっ」

号令のように発せられた声ですべての侍が一斉に立ち上がると共に、一気に緊張感が部屋を満たしていった。

でも誰か皇下街に知らせなくちゃいけないんじゃないかな。

最後に部屋を出るときに侍達を見送っていた中年の侍に目を向けると、まだ少し息が上がっている中年の侍はこちらの頭の方に目を向けながら困ったような表情を見せる。

「皇下街には知らせなくて良いの?」

「それは私から申し伝える、その方は異国人との戦に専念してくれぬか」

「分かった」

急いで修練所を出て絶氷牙を纏い、少し飛び上がりながら町を見渡す。

手下ってエニグマのことだよな。

確かに体も大きいし、力もあるから、堕天使よりもエニグマの方が手下として役に立つのかな。

聞き慣れた雄叫びが町に響き渡ると、木々を薙ぎ倒しながら林の奥から4体のエニグマが姿を現した。

まだ出て来るのか、それとも4体だけか。

極点氷牙を纏い、両手に龍牙を出しながら龍牙の根本に紋章を出す。

エニグマに近づきながら龍牙を2体のエニグマに向け、狙いを定めて龍ノ咆哮を撃ち出した。



その姿が目に入ると同時に疑惑が心を包み込み、またそれと同時にその人影から青白い槍が弾丸のように撃ち出された。

するとその青白い槍は真っ直ぐエニグマに飛んで行き、たやすくエニグマの体を貫いていった。

・・・やはり、ヒョウガ、生きていたか。

的になるエニグマを多く出していて正解だったな。

案外簡単に姿を見つけることが出来た。

ヒョウガを見ているとすぐにミレイユの姿が脳裏に浮かんだ。



あと2体だな。

エニグマの方に向かっていく侍達を見ていると、ふと目に入った何人かはすでに狼男を囲んでいた。

もう刻印は1つしか無いし、すぐに逃げ出したりはしないだろう。

龍牙を残りのエニグマに向けたとき、突如遠くから白と黒が混ざり合うように渦巻く極太の何かが、まるで矢のようにこちらに飛んできた。

腕を交差させる前にそれが胸元を打ちつけると、まるで激しい水流に打ちつけられたかのような衝撃に襲われる。

・・・水?

あの狼男以外に、やはり堕混が居たのか。

ブースターを吹き出して体勢を立て直し、何となく目に留まった建物の屋根に降り立つと、ふと目に入ったその人も近くの建物の屋根に降り立った。



どちらかと言えば、こいつには恩がある。

心操術の呪縛を解いてくれたのは事実だが、今は、戦わなくてはならない。

「ヒョウガ」



まさか・・・。

そういえば、あの時も水に似た力を使っていたな。

けど、表情を見る限りは異様な雰囲気は無いな。

「・・・ハルク?」

「あぁ」

小さく頷きながら、ハルクは何やら難しい表情でこちらを見つめている。

「お前、何でこの世界に居るんだ?」

・・・全部話すとちょっと長くなるな。

「最初は、反乱軍を潰すために異世界を回ってたんだ。だけど今は、ハルク達を堕混にした人達のことを調べようと思って」



「異世界を回るって、天王様のご指示か?」

「いや、僕が勝手にやってるだけだけど」

確か、ラビットの仲間がヒョウガを殺したって言ってたが。

敢えて聞く必要は無いな、こうしてここに居るんだから。

「最後に会った姿より、少し変わった気がするが」

「あぁ、強くもなったよ?」

どうやら、俺も新しい力を使わなくてはならないようだな。



すると小さなため息と共にハルクの眼差しに力強さが宿ったように見えた。

「1つ聞くが、そこをどく気は無いのか?」

もう正気に戻ってるみたいだし、説得したら天界に帰せるかも知れないな、ここはひとつ手加減しよう。

「あぁ」

「・・・そうか」



恩もあるし、ラビット達を調べてるなら、もしかしたら他にも俺のような堕混を救えるかも知れない。

それに無意味に殺す理由は無いしな。

体を少し屈め、白と黒の水流を生み出して体を覆った。



・・・何だ?・・・。

ハルクを包み込んだ白黒の水流が消え去ると、姿を現したハルクの全身は鱗に覆われていて、足は動物のような骨格になり、長い尻尾と滑ならな光沢を放つ翼を持つと共に、首は少し伸びて顔は龍のようなものになっていた。

・・・まさか、ハルクもハオンジュみたいになるなんて。

氷王牙を倒す力を持つ人が、まだ居るなんて。



するとヒョウガはおもむろに宙に浮き出し、まるで地上から距離を取るかのように上がっていく。

翼を広げて飛び上がろうとしたとき、突如ヒョウガが巨大な氷の球に一瞬にして覆われた。

何だ?

その直後に氷の球が勢いよく砕け散り、ヒョウガが姿を現したが、すぐに爆風に乗る氷の破片が飛んできたので思わず顔を背ける。

ゆっくりと屋根に降り立ったヒョウガを見てみると、先程よりも体が大きくなり、少し首が長くなったと共に顔つきも引き締まったように見えた。

「お前まさか、ディビエイトじゃないよな?」

「何?それ」

「いや、何でもない、忘れてくれ」

・・・ラビット達を調べてる時点で、ラビット達には関係無いよな。

胸に手を当てて長さと太さを増した剣を取り出し、剣に光と闇を纏わせる。

「行くぞ?」



きっと今のままじゃハルクには敵わないだろう。

・・・やってみようかな、天魔と氷牙の融合。

「あぁ」

ハルクが剣を振り上げながら飛び掛かってきたときに、白龍牙を出して前に構える。

振り下ろされた剣を受け止めるが、光と闇を纏った剣は白龍牙に深く食い込み、たやすく亀裂を生み出した。

ブースターを吹き出しながら剣を押し返し、すぐにハルクに紋章を向けるが、大きく振り回された翼に阻まれて体勢を崩される。

そしてその隙を突くかのようにすぐさまハルクはこちらに掌を向けた。



・・・またエニグマが増えたか。

ヒョウガが貫いたエニグマの他に、まだ2体も隠していたとはな。

狼男の動きに目を配りながら何となくヒョウガの居た方に目を向ける。

あのエニグマでも異国人でもないものは何だ。

「憑鷹っ」

狼男に目線を戻したときにはすでに狼男が鉤爪を振り上げていたが、岩影が目の前に飛び出して狼男の鉤爪を受け止めた。

続けてすぐに黒桜の刀身が振り伸ばされたが、それをかわすために狼男が素早く後ろへ下がる。

「よそ見しないで頂けませんか?」

「済まぬな麗鷹」

建物が壊される轟音がまた大きくなったのを感じると、ふと見えたエニグマが先程よりも皇下街に近くなったのも感じた。

このままでは・・・。

「麗鷹、エニグマを頼んでいいか?」

「何を言って・・・貴方はどうするのでございますか?」

「私なら問題無い。早く行けっ」

こちらを睨みつけた麗鷹はすぐに走り出し、建物の屋根に飛び乗って行く。

すぐに狼男が飛び掛かってきたが、岩影が受け止めている隙に純焔刀を解き、黒桜を呼び寄せる。

「黒桜、黒嵐華」

雷菖蒲と風杜若が黒桜に引き寄せられ、3本の刀身が消えると、3本の柄の底が繋がり合うと共に3本の鍔が弧を描くように伸びて行った。

繋がった3本の柄の中央を掴み黒嵐華を一振りすると、十枚の黒い花びらのような刀身が狼男に降り注いでいった。

すると狼男は何やら鉤爪に白黒の風を纏わせると、その場で勢いよく鉤爪を振り下ろし、凄まじい勢いで白黒の風を生み出した。

強く吹き荒れた白黒の風に、黒い花びらの刀身は狼男を捉えられずに狼男の周りの地面や建物に突き刺さる。

まだそんな業を隠していたとはな。

白火が天蹄、地翼の力を借りると純焔刀ジュンエントウとなり、黒桜が雷菖蒲、風杜若の力を借りると黒嵐華コクランカとなります

ありがとうございました。

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