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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第六章

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見えざる山、その頂へ

するとタイチは何やら期待を寄せるような微笑みを見せてくる。

「じゃあさ、今度、その切り札出して、お互い本気でやらないか?」

「ちょっとタイチ、何言ってるの?あんなに相手にされなかったくせに」

責めるような口調のミサにさえ、少しも反抗しようとはせずにタイチはミサに顔を向けると落ち込むように眉をすくめる。

「悪いねタイチ、切り札ってのはピンチにならないと出ないものだからね」

「そうかぁ」

ホテルの部屋に戻って水を1杯飲み、コップをシンクに置いてすぐにベッドに横たわる。

切り札か・・・。

ホールで朝食を取っていると、ユウコとヒカルコが料理を持って近くに座ってきて、何となく周りを見渡すとミサは2人とは別にタイチと隣のテーブルの椅子に座っていた。

「ユウコ、シンジとはよく話すでしょ?」

ユウコがこちらに顔を向けると、すぐにユウコはヒカルコと顔を見合わせながら微笑み合う。

「よく話すっていうか、彼氏だしね」

えっユウコとシンジが、か。

なるほど。

「そうか、シンジ、落ち込んでなかった?」

するとユウコは少し困ったように眉をすくめて小さく頷く。

「そうなの、何かね、朝から何か悩んでるっていうか、変なの」

「別に変じゃないよ」

ため息混じりにそう言いながらシンジがユウコの隣に座ると、ユウコはシンジの手元に目を向ける。

「あ、出た、そばうどんだ」

・・・そばうどん?

シンジの持ってきたお盆の上のそばせいろには、そばとうどんが混ぜて盛りつけられていた。

「混ぜたの?」

こちらに顔を向けたシンジはそばうどんとやらに目を向け、自慢げに小さくニヤつき出す。

「食感が違うと新鮮だろ?」

そう言ってシンジは箸でそばうどんを取り、お椀に入ったつゆに浸してそばうどんを啜り始める。

「そうか」

そういえば前にも同じようなことしてたな。

「そういえばシンジ、昨日は急に帰ったけど何かあったの?」

するとこちらに目を向けたシンジはうつむき、そばうどんを取っていた手を止める。

「別に・・・ただちょっと、1人で考えたくなっただけだよ」

「そうか」

朝食を終えてしばらくした頃にホールに援軍要請のアナウンスが響くと、シンジは手を振るユウコにしっかりと頷き返してから舞台の方に歩き出していった。

「氷牙は行かないの?」

ヒカルコが何気なく聞くような態度でこちらに顔を向けると、ユウコもつられてこちらに目を向ける。

「僕は遊撃兵だからね」

「何それ」

そう応えるとヒカルコは小さく笑いながら目を逸らし、雑誌を見始める。



「爪痕を残したら、反勢力は解散なの?」

「いや、完全に勢力を失うまでは反勢力だって無くならないだろう」

サキジマは落ち着いた態度で応えると、丸く整えられたパンやら、野菜や肉が、綺麗に重ねられたものにかぶりついた。

まあ勢力争いなんて、そんなものか。

それにしても、世界中で人気な店なだけあって、さすがに朝でも結構客が居るみたいだ。

この長細いものも、単調な食感にちょっとの塩味が癖になる。

「本拠地に殴り込むのが終わったら、すぐにリーダー達のお見舞いに行くんでしょ?」

「いや、面会時間ってのがあるからな、まだ行けないだろう」

「そうか」

2人と店を出たとき、すでにその街には少しの焦りを募らせるほどの雨が降っていた。

「ああ、なぁとりあえずあの店で待たないか?」

「オレはいいけど」

ガラスの壁に向けられて並ぶ椅子に座り、慌てるように足取りを早めていく人達を眺める。

「こりゃ、当分止まないな」

サキジマはコーヒーを飲みながら街を眺めて小さく呟いた。

・・・雨か。

「別に私は良いよ?雨の中でも」

こちらに目を向けたサキジマは悩むように小さくため息をつく。



「どっか行くの?」

「まあね」

「ふーん」

小さく頷くとすぐにヒカルコは雑誌に目を向けたので、コップをシンクに置き会議室への扉を開ける。

「あ、氷牙、今から時間あるかな?」

すると会議室に入るなりこちらに目を向けたユウジがすぐにそう声をかけてくる。

「話を聞くぐらいなら」

「何か、能力者組織の間で、氷牙がこの組織に居るって話が広まってさ、氷牙に力を貸して欲しいってメールが今5件来てるんだ」

ユウジは困ったように眉をすくめているが、アキは至って落ち着いた表情でホワイトボードを見ている。

「そうか、それって今朝だけで?」

「ううん、昨日からだよ。まあメールだし、すぐには返信しなくて良いと思ったから、今からちょうど氷牙を呼ぼうと思ったんだ」

いちいち全部対応してたら、また異世界に行くのが遅れるな。

「今から大阪の組織に行くから、用が終わったらどうするか話そうよ」

「うん分かった」

組織に入るがそこにはユイの姿は無く、別のテーブルに居る人達が小声で話しながらこちらに目を向けているのが何となく気になった。

「ユイは?」

「今は居てへん、用があるんやて」

椅子に座りながらそう聞くと、シキも前方の椅子に座りながらそう応える。

「そうか」

あっちの人達はシキに目も向けないところを見ると、恐らく別の派閥とやらの人達だろう。

「何や、今宮崎雨みたいやで?」

携帯電話を見ながら、シキはこちらには目を向けずに話しかけてきた。

「そうか、淡路島は?」

「・・・こっちは晴れみたいや、まぁ、予報やけどな」

雨なら、皆本拠地の建物の中に居るかな?

「ほな、とりあえず神戸に行こか」

「あぁ」

立ち上がったシキは別のテーブルに居る人達に近づいていく。

「行くでカイトウ」

「あぁ」

何だ、仲間の集まりだったのか。

シキがオーナーに声をかけるとオーナーがキーボードを叩いて合図したので、シキとカイトウと呼ばれた長い髪が特徴的な男性と共に神戸の組織に向かった。



この雨を見てると、何となくあの時を思い出す。

初めて空を見たときも、雨だった。

子供のときはいつも冷たい壁の中。

冷たい壁の部屋じゃ、ずっと体力づくりと戦い方を学ぶ訓練の繰り返しだったな。

18になってやっと隊に配属されて、演習で外に出たときに見たのが、初めての雨空だった。

・・・確か、いつかのヘイトとの任務のときにも雨が降って、その日にアレドゥが配属されたんだった。

隊長には悪いけど、人と距離を置く人だったから、あまり思い出が無いかも。

「弱まってきたし、今のうちに行こうか」

「あぁ、おい行くぞ」

「あ、うん」

小雨の中で2人と共に街中を行き、小さな山のようにそびえ立つジンオウカイの本拠地に向かい始める。



「12時になったら反勢力の奴らが動くんやろ?ほんなら、その5分後にでもオレらと氷牙が動き出すっちゅう感じでええやろ」

緊張感の感じる表情で赤のメッシュを入れた男性が腕時計を見ているが、ミシェルは一見落ち着いているような表情で椅子に座っている。

・・・戦い慣れしてるのかな?

「せや、別の場所に繋ぐんやったら帰るときどないなるんやろな?扉は1つしか無いやろ?」

シキが扉に目を向けると赤のメッシュを入れた男性もそちらに目を向け、少し張り詰めたような表情のまま小さく唸り出す。

「どっちか、シールキー使うたらええやろ」

緊張感が乗った声色に、何となく空気にも緊張感が伝染していくように感じた。

「ほんなら・・・氷牙、今持っとるか?」

「今は無いよ」

シキが赤のメッシュを入れた男性に目線を戻したときに、何やら微笑んだミシェルがポケットに手を入れたのが目に入った。

「私持ってるよ」

3人がミシェルに目を向けると、ミシェルは微笑みながらシールキーを出してみせる。

この組織のシールキーは猫のデザインなのか。

「オレらがシールキー使うて、氷牙が部屋の扉使うっちゅうことでええやろ」

「そやな」

再び赤のメッシュを入れた男性が腕時計に目を向けると、ゆっくりと立ち上がり始め、周りの空気も更に引き締まった。

「そろそろ行こか」

赤のメッシュを入れた男性に続いて皆も柱に向かったので、皆の後に続いて立ち上がってオーナーの下に向かった。

「神王会の本拠地の近くに繋いでくれる?」

「前に繋いだときの場所で良いですか?」

「あぁ」

柱を回り込んでいると、シールキーの扉の前に居たシキが真剣な眼差しでこちらに顔を向けた。

「気ぃつけや」

「あぁシキもね」



「何だ貴様ら」

「あんたらを潰す者だ」

まさか真正面から行くなんて。

門番らしき人が1人慌てて中に入って行くと、もう1人が立ちはだかるように3人を睨みつける。

「貴様ら、まさか反勢力の奴らか?」

サキジマの足元の土が盛り上がり、サキジマの足を軽く持ち上げながら砲台のような形になると、突如土の砲台から土の球が噴き出して門番を襲った。

「準備は良いか?」

一応翼を解放して置こうかな。



この前と同じマンションだな、部屋番号覚えて置かないと。

振り返ると、町並みの中に小さな山のようにそびえ立つ本拠地が見える。

さてと。

絶氷牙を纏い、鉄柵を蹴って飛び越えながら空に飛び出す。

空を飛びながら極点氷牙を纏い、紋章をブースターに転換して更に加速し、本拠地の最上階の、唯一ガラス張りになっている壁に突っ込んだ。

ガラスの砕ける音に、その部屋のすべての目が一気にこちらに向けられる。

白に染められたその空間の1番奥には王座らしき椅子に座っている男性が見え、王座の前には規則正しく列ぶ人の列があった。

ざっと20人くらいだろうか。

この広さにしては、思ったより少ないな。

とりあえずは王座に居る人に話を聞こうか。

歩き出した途端、およそ20の人の列が崩れ始めると、その人達は一気にこちらを取り囲むように展開していった。

「何だお前っ」

「ちょっと、話を聞きたくて」

まるでただただ攻撃の隙を狙っているかのような鋭い眼差しでこちらを見ていて、その人達の誰もが全く話が通るような雰囲気ではない。

更にはすでに日本刀を手にしている者や、全身を白い鎧で包んでいる者が、今にも飛び掛かろうと機会を伺っている。

「神王会がどんな組織か調べてるんだけど」

「貴様、礼儀を知らないのか?話を聞きたいだけなら、拠点からの紹介状でも持って、正門を通るのが筋だろ」

・・・それはそうだけど、時間はあまりかけたくないしな。

「まぁ、正確には乗り込みに来たんだけど」

「貴様、どこの組織の者だっ」

刀を持った男性が気迫の感じる低い声でそう言い放つと、緊迫感の波が広がるように、周りの人の表情も更に引き締まっていく。

「組織っていうほどのものじゃないよ、反勢力の人達と行動してるからね」

「反勢力、やはりそうか。貴様らは何も分かってない、か弱き人類だ。貴様には悪いが、我らの理想のために、管理者として時には制裁を下さなければならない」

「まあ、僕は反勢力に属してる訳じゃないけどね」

刀を持った男性はただ1人殺気を抑え、まるで言葉で屈服させようとする態度で睨みつけている。

「さっきから何をおかしなことを言ってるんだ?今になって命が惜しくなったのか?」

「僕はただ頼まれただけだよ。それに僕は今すぐに殴り込もうと思ってる訳じゃない。神王会がどんな組織か調べてから決めようと思って、だからこうやって直接聞きに来たんだ」

「直接聞きに来た、だと?」

怒りで表情を歪ませているように見えるが、男性は刀の背を肩に置いたままで身構えようとはしない。

「我々の活動は、今や東京にまで手を伸ばしつつある。噂でもネットでも聞いたことはあるはずだ、どんな組織か知らないとは到底思えない」

「確かに噂や人づてでなら聞いてるよ、永遠の平和のために戦うとか何とか」

刀を持った男性が小さく頷くと、周りの人の態度にも少しだけ落ち着きが見られた。

「分かってるじゃないか。なのに、何故こんな真似を?」

「でも、噂はたくさんあるから、この際確かめようと思って」



サキジマが足元の土の砲台から土の球を飛ばして男性を1人吹き飛ばすと、門番の男性が少し慌てた様子で下がっていく。

「おいっあいつら呼んでこいっ」

・・・あれ?ドラゴン、さっきからずっと後ろで立ち尽くしたままだ。

「お前らだけで十分じゃねぇかぁ?」

ドラゴンが門に片手を当てながら面倒臭そうな表情でそう言うと、サキジマは慌てるような表情で後ろを振り返る。

「お、おい」

・・・確かに今は手応えのある奴は出てきてないけど。

「サキジマ、組織ってものは、司令塔が倒れればすぐに力を失うでしょ?」

「あ、あぁ」

「じゃあ、私が1番上に行くから、ここ、頼んで良いかな?」

やっぱりユウコとシンジはそうなるんですね。笑

ありがとうございました。

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