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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第六章

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キャバルリー・バイク

「カズマとはいつも何してるの?」

「最近はね、色んなとこに出かけてるよ」

「良かったね、外に出られて」

レベッカは照れ臭そうに微笑んでカフェオレを口に運ぶが、何やら少し困ったように眉をすくめる。

「でも外ってすごい暑いんだよ?」

「あぁ、今はそういう季節だからね」

「レベッカ」

声がした方に目を向けると、ジュースを持ったマイがテーブルに近づいてきて、マイが笑顔を見せるレベッカの前に座るとマイに乗っていたクロルがすぐにテーブルに降り立ち、リラックスするように腰を落とす。

「レベッカ、今度また海行こうね」

「うん」

・・・海なら暑くても大丈夫か。

笑顔のマイはジュースをストローで飲んでからこちらに顔を向けた。

「氷牙も今度一緒に海行こうよ」

レベッカに顔を向けると、レベッカも満面の笑みを浮かべてこちらを見る。

「あぁ」

「おい」

テーブルの向こうにいたシンジと目が合うと声をかけてきたので、ホットミルクを一口飲んでから歩み寄るとシンジは強気な眼差しでニヤついて見せた。

「ヒロヤさんから聞いたぜ?新しい力使ったんだって?」

もう噂が広まったか。

「氷牙だって慣れたいだろ?相手しろよ」

「あぁ」

闘技場への扉の前でノブと合流し、薄暗い廊下から闘技場に出たとき、ふと後ろから駆けてくる足音が聞こえてきた。

あ、タイチか。

「俺も入れてくれないかな?」

「おう、良いぜ?」

即答で快諾したノブは微笑みながら下から手招きして背中を向けると、安心したような表情になったタイチはすぐにこちらの方に駆け出してきた。

「氷牙、君とは1度やってみたかったんだ」

「そうか」

・・・さっき初めて会ったのに。

まあインターネットやらニュースやらで、何かと有名になっちゃったしな。

「じゃあ、まずはジャンケンだな」

ノブの掛け声で3人が集まり、順番を決めると最初の人が前に出て後の2人は後ろに下がっていく。

まずはシンジか。

闘技場の真ん中で向かい合うとシンジは右腕を黒い外殻で覆い、両足を朱い外殻で覆った。

「翼解放」

光と闇のオーラを纏いながら翼を広げると、シンジは悩むような険しい表情で首を傾げた。

「どっかで見たことあるな、その姿」

「そうか」

イングランドに出た堕天使の姿が、ネットにでも流れたってところだろう。

「シンジから良いよ」

「あぁ」

応えながらすでにシンジは走り出していて、シンジが右腕を後ろに引いたときに紋章を出し、何となく紋章に光と闇を集中させる。

「何っ」

突き出されると同時に巨大化したシンジの朱い腕をたやすく受け止めたのは、光と闇の紋様を纏って二回り大きくなった氷の紋章だった。

お・・・変わった。

シンジは素早く右腕を黒い外殻のものに戻して地面を蹴り、斜めに振り回しながら再び振り下ろし様に右腕を巨大化させる。

すぐに光と闇の紋様を纏った紋章をシンジに向け、シンジの拳が頭上から振り下ろされたと同時に紋章から光と闇を纏った氷弾をシンジに着弾させた。

胸元の朱い外殻に直撃を受けたシンジはそのまま吹き飛んでいったが、頭上からは防壁の破片が崩れ落ちてきていた。

この防壁も1回で壊したか、さすがだな。

遠くの壁に軽く背中を着け、難無く地面に降り立ったように見えたもののシンジはそのままゆっくりと倒れ込んだ。

・・・大丈夫かな。

ゆっくりと立ち上がったシンジは右腕を元に戻すと、軽く胸を押さえながら何やら座り込んでしまった。

・・・そんなに強くなったのか、この氷弾。

ノブがブーツを纏いシンジに飛んでいったが、シンジはノブの手を借りずにすんなり立ち上がり、ホールに向かって歩き出した。

「どうかしたの?」

ノブの表情からは緊張感は伝わらないみたいだが。

「いや、ちょっと休憩だと」

ホールに向かうシンジに目を向けたノブの少し哀れむような眼差しに、何となく目が留まる。

「あんな簡単に拳を受け止められたからな、そりゃあ滅入るだろ」

「・・・そうか」

ダメージはそこまでじゃないみたいだな。

「じゃあ次はオレだぜ」

「あぁ」

距離を取ったノブが足を踏ん張ったとき、突如目の前の防壁に衝撃波が襲い掛かると、そのすぐ上空に宙返りしているノブが現れる。

反応は出来なくても、必ず隙があるはず。

ノブに掌を向け、光と闇の球を撃ち出すが、球が当たると共にノブが残像になって消えた。

その瞬間に後ろの防壁に衝撃音が響いたので、すぐさま後ろに居たノブに光と闇の球を撃つが、そのノブも球が当たると残像になって消えていった。

そしてまた上の方の背後の防壁に衝撃音が響いたので振り返ると、後ろの防壁には少しのヒビが入っていて、防壁のヒビの部分に足を着けたノブが居た。

すぐにノブに光と闇の球を撃つと、今度のノブは消えずに球を避けて跳んでいった。

本物でも避けられたんじゃ同じだ。

距離を取り始めたノブに追い撃ちをかけるが、撃つ球はことごとく避けられ、ふと動きが止まったノブに球が当たると、ノブは残像になって消えた。

また繰り返しか。

1秒前後にタイムスリップされて反応が出来ない上に、通常の移動速度だって簡単には仕留められないほどのものだし。

全く、速過ぎる。

しばらくノブに攻撃を仕掛けていったが、当てることが出来ないので、手を止めてノブに呼びかけた。

「どうかしたか?」

「この姿じゃ、ノブに攻撃を当てることすら出来ないから、降参するよ」

するとノブは笑みを浮かべずに、むしろ少し残念そうな表情で小さく首を横に振った。

「いや、お前は負けてねぇよ。オレだって、お前に攻撃は当てれても、ダメージになるものは何一つ無いからな、オレ達は引き分けだ」

「そうか」

「次はお前だ」

ブーツを消したノブと入れ替わるようにタイチが少し前に出ると、タイチはすぐにポケットから取り出した玩具のバイクを宙に投げる。

そして玩具のバイクが本物と同じ大きさになり見事に着地すると、タイチはおもむろにそのバイクにまたがった。

まさか突っ込まれるのかな。

「そのバイクって、本物なの?」

「あぁ、オーナーに作らせた、鉱石を混ぜた超合金で出来た特注品なんだ」

・・・ユウジが興味を湧かせそうだな。

「そうか」

ならちょっとやそっとじゃ壊れないのかな?

直後に小さな機械音と共にバイクのハンドルが勝手に動き、タイチの腰に固定されると、側面も同じように勝手に動き脚を守るように変形していった。

完全に固定されたみたいだけど、大丈夫なのかな?

そしてタイチはネックレスに手をかけると勢いよくペンダントトップを引き離す。

まだ何かあるのか。

更にそのペンダントトップがみるみる巨大化していくと、それはタイチの右腕に固定されながら剣になった。

「一応、この姿がオレの最終形態なんだ」

「本気ってこと?」

胸に手を当てて剣を取り出しながら聞くと、タイチは少し自信の伺える眼差しでニヤついた。

「あぁ。じゃあ行くよ?」

直後にバイクの後輪が煙を巻き上げながら高速回転すると、地面が悲鳴を上げるような音の後にバイクの前輪が浮き上がり、その勢いでタイチは突撃してきた。

・・・おっと。

前輪が頭上からのしかかってくると思ったときに前輪が横にズレると、代わりに頭上からはタイチの右腕の剣が振り下ろされた。

剣で受け流すとすぐにタイチは横を通り過ぎたので振り返ったが、ドリフトするように後輪を滑らせたタイチは、すでにその後輪で防壁を叩いていた。

防壁にヒビが入ったがタイチは冷静な表情でバイクを走らせ、距離を取る。

豪快なだけあって攻撃力もあるみたいだな。

正面を向くとすぐにまたタイチはバイクの前輪を浮かせながら突撃してきて、剣を構えるがその前に前輪が頭上の防壁を叩き、防壁に少しのヒビが入るとタイチはエンジン音を轟かせ、そのまま防壁の上を走り出した。

上手く使われたかな。

後輪だけで防壁の上に乗ると、タイチはその重そうなバイクを軽々と持ち上げて跳び上がり、そして落ちる勢いに乗って剣を振り下ろしたので剣を構えるが、あまりの重さに剣は押し切られ、タイチの剣は頭上の防壁にヒビを入れた。

重たい・・・。

タイチが地面に着地したときを狙ってバイクの前輪に光と闇の球を撃つ。

回りながらタイチは吹き飛ぶが、すぐに前輪と後輪の間からつっかい棒のようなものが地面を着くと、火花を散らせながらバイクは見事に体勢を立て直す。

「何か、ケンタウロスみたいだね」

「え、オレ的には、騎馬隊をイメージしたんだけどな」

そう言って戸惑うような微笑みを浮かべながらタイチは左手で頭を掻き始める。

「そうか」

今までに見たことない立ち回りだしな、対応が少し難しいかも。

まぁ種類的にはシキと同じかな。

しばらく戦うとタイチは剣を元のペンダントトップに戻してバイクを降りたので、翼を消してタイチに歩み寄った。

「その剣、何か漢字みたいだね」

バイクをポケットに入れたタイチは、その問いに反応したのか少し照れ臭そうに微笑んでペンダントトップを見せてきた。

「いや、漢字だよ、帝って字、逆さにしたら剣に見えるでしょ?」

まぁ・・・確か、に。

「オレの名前も帝が使われてるから、オーナーに言って作って貰ったんだ」

「そうか」

ホールに戻るとミサが少し不満げな眼差しでタイチを見ていて、タイチが小走りでミサの下に向かうのを見ながら、レベッカの隣に戻った。

「おい」

どこか思い詰めたような顔色のノブが隣に座ってくるのを見ながらホットミルクを飲む。

「ん?」

「お前、あの時の天狗と同じだよな?」

・・・天狗?あぁ、ハオンジュか。

「さっきのお前見て、思い出したんだよ」

真剣な表情ではあるもののノブからは不信感や緊迫感は伝わってこない。

「ちょっと違うけど、大まかには同じだよ」

「お前、まさか、あれか?・・・」

するとノブは眉間にシワを寄せ、徐々に険しい表情になっていく。

ノブは堕混というものがどういう者でその上、侵略目的で活動してるって知ってたかな?

「あの天狗と、付き合ってんのか?」

「・・・はい?」

・・・どうしてハオンジュと?

「いやだって、同じような力なら、口裏合わせて一緒に鉱石使ったってことじゃねぇか?」

「ハオンジュにとっては僕は仲間を殺した敵だよ?そんな、昼ドラじゃないんだから」

目線を上げたノブは目を泳がせると、何かを思い出したかのようにゆっくりと頷いた。

「ああ・・・そういや、お前ら戦ってたな、そうだったそうだった」

夕食の時間になりバイキング形式の料理がホールに運ばれたので、テーブルの真ん中にあるベルを鳴らす。

「氷牙、取りに行かないの?」

するとレベッカが立ち上がりかけた体勢で止まって声をかけてきた。

「あぁ、今日はメニューから頼もうかな」

そう言うとレベッカはカズマに目を向けてから少し嬉しそうなニヤつきを見せた。

「もしかして、ラザニア?」

「あぁ」

「じゃああたしもそれにしよっと」

そんなに気に入ったのか、ラザニア。

そういえばシントが急に天狗が出なくなったって言ってたな。

夜も更けた頃に部屋に戻ろうとしたとき、ふとタイチに呼び止められたのでタイチの居るテーブルに向かう。

「どうかした?」

「氷牙、どうしてそんなに強いの?」

何気なく喋る口調でタイチが聞いてくると、雑誌を見ていたヒカルコはこちらに目を向け、ミサは睨みつけるような真剣な眼差しでタイチに顔を向ける。

「タイチ、いいじゃないそんなこと気にしなくても。この人はその、さ、才能があるだけなのよ」

タイチが不思議がるようにミサを見ると、ミサは少し戸惑うような表情で目を泳がせる。

「ミサどうかしたの?」

「ううん」

首を横に振ってすぐにティーカップを口に運ぶミサをまだ若干気にかかるように見ていたタイチは、こちらに顔を向けるとすぐに小さく頷いて唸り出した。

「才能かぁ、じゃああの力はもう覚醒させたの?」

あの力?天魔の方かな。

「いや、さっきのは覚醒してないよ」

「それなのにあんなに強いのか、すごいね」

「そうか」

その対応に何かを勘づいたのか、小さく首を傾げたタイチは更に驚くように眉を上げる。

「まさか、まだ切り札があるの?」

「・・・まぁね」

「ああそうか、ネットで見た姿とさっきのを合わせたのはまだってことか」

隠す理由も無いしな。

「・・・まぁね」

やっぱりタイチもネットとかで見たことがあるみたいだな。

タイチの戦う姿はタイチいわく騎バイクですが、それを言うとノブにダジャレ呼ばわりされるそうです。笑

ありがとうございました。

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