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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第六章

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プラン・ワン

「ヒカルコ、夏休みだし、どっか行かない?」

ユウコが嬉しそうに笑みを浮かべてヒカルコに話しかけると、ヒカルコもすぐに雑誌からユウコに目線を変えて微笑み返す。

・・・なるほど、だから最近制服着てなかったんだな。

「うん、じゃあ、他に誰誘おうか」

「レンちゃんも一緒に行こうよ」

一瞬こちらに目を向けたレンはユウコを見ながらほんの少し口角を上げながら小さく頷いた。

「後は・・・ミサちゃんと、ミントちゃん達と・・・」

また少し時間が経つと料理が運ばれてきたので皆と共に席を立ったが、ふと気が付いたのはミサの姿がないことだった。

「氷牙って、いつも部屋で何してるの?」

話しかけられたので目を向けると、レンは卵焼きにかぶりつきながら少し寂しそうな眼差しでこちらを見ていた。

「たまにニュースとか見るけど、僕は寝るためだけに部屋に帰ってるようなものかな」

「そっかぁ」

「レンちゃんはテレビ見ないの?」

ユウコに顔を向けたレンはすぐに小さく首を縦に振る。

「1人だと、あんまり見る気しないかな」

「じゃあ私の部屋に遊びにおいでよ」

ユウコが満面な笑顔を見せてそう言うと、レンはほんの少し口角を上げてゆっくり頷き、再び卵焼きにかぶりついた。

なかなかあれ以上は笑みが深くならないな。

集中して気を張ってるからなのか、それともまだ心の底から気を許せてないからなのか。

夜も更けてユウコやヒカルコが部屋に戻っていった頃、ノブがボトルを持ちながら隣に座ってきた。

「そういや、どうだ?神王会のこと何か掴んだのか?」

「反勢力があるみたいだよ」

ノブはグラスに注ぐ手を一瞬止めると、妙に真剣な表情で小さく眉を上げながら頷き出した。

「それなら、100%良いもんとは言えねぇなぁ」

「あぁ、これからその反勢力の人と会うから、もしかしたら本当に乗り込むことになるかもね」

顔を上げたノブはふとした表情で窓に目を向けながらグラスを口に運ぶ。

「これから?夜中じゃねぇかよ」

「あぁ、あっちがそう指示したからね」

「・・・まぁ、お前にはバリアがあるからそう危険じゃねぇが、気はつけとけよ」

「あぁ」

いきなり防壁を壊すほどの攻撃はしてこないとは思うけど。

「そういえば、ノブは神王会について何か分かったことあるの?」

「ああ、いや、悪ぃな」

「そうか」

部屋に戻り、ベッドのサイドテーブルからシールキーとペンを取ってソファーに座る。

確か、りんくうゲートタワービルだったな。

適当に時間を潰した後にシールキーを壁に貼り、現れた扉を開けて外に出ると、建物の明かりと街灯で真っ暗闇ではないがそれなりに視界が悪い。

シールキーを剥がして、とりあえずビルの前で待ってみる。

もし神王会の人が暗号を解いて来たらどうするんだろう。

そもそも、待ち合わせを指示した人が神王会の人だったって可能性はある。

10分前に外に出たけど、もう10分以上は経ってるよな・・・。

・・・来ないな。

暗号まで出しといて来ないということはあるんだろうか。

ビルの前をうろつき始めて、感覚的には1時間以上は過ぎたような気がする。

もしかしたら、何かを試されているとか・・・。

夜空を微かに焦がすような電灯の音だけが虚しく耳に入ってきていたとき、突如遠くの方で何かの物音がした。

周りを見渡すと、こちらを囲い込むように数人の人影が近づいてきたのが分かった。

「お前が羊島か?」

すると1番近くに来た1体の人影は引き締まった低い声を発した。

「あぁ」

「お前は神王会の人間か?」

かろうじて確認出来たのは、ベストに指先がない手袋、そして肩に掛けられた黒光りする長いもの。

「違うよ」

「なら反勢力の立場の人間か?」

「それも違うけど、状況次第では神王会に乗り込もうとは思ってるよ」

一瞬沈黙が流れると、人影の頭部が小さく頷いたように見えた。

「乗り込むって、お前1人でか?」

「いや、僕は知り合いから神王会に乗り込むことになったら、力を貸して欲しいって頼まれただけだよ」

すると突如別の人影がこちらをライトで照らし出した。

・・・眩しいな。

「ほんまに1人で来よったみたいやし、信用出来るんちゃいます?」

「まだ分からんが、とりあえず連れてくか」

・・・これからまたどこかに行くみたいだな。

突如背後から両腕を取られるとライトが消され、すぐに誰かがこちらの口を布のようなもので押し当ててきた。

何だ。

反射的に手に紋章を出して後ろの人に氷弾を撃ち、すぐに口を押さえてる腕を掴んでその人にも氷弾を撃つ。

「おいっ何やってんだ」

「知りまへんがな、こいつ、クロロホルムが効かへんのですわ」

「んな訳ねぇだろ」

どうやら気を失わせたかったらしい。

連れてくってそういう意味か。

「お前が間違えたんじゃないのか?」

「間違える訳ないやないですか・・・この臭いは、ほんまも・・・」

そう言いながら自分の口に布を当てたその人は、眠り込むように力無く地面に倒れ込む。

「おい馬鹿・・・って自分でクロロホルム嗅いでんじゃねぇよ。・・・ったく、あ、じゃあ本物ってことか」

倒れた人に近づいてしゃがみ込むと、その人は呆れたような口調でそう呟きながらゆっくりと立ち上がる。

「これからどこか行くの?」

「あ?・・・まあ、とりあえずアジトにな。お前に道順バラす訳にはいかねぇだろ」

「じゃあ、目隠しすれば?」

ふと微かに捉えられた輪郭が小さく傾くと、光りが入った瞳には何となく不思議がられたような気がした。

「じゃあ、ほら、自分で結べよ」

おもむろに渡されたものを広げてみるとハンカチのようなものみたいなので、細く丸めて目を隠すように頭に巻く。

「おいマミヤ、こいつ運んでやれ」

「ええやないの、寝かしとったら」

・・・女性も居るみたいだな。

「あ?じゃあ、こっち連れてってくれよ」

後ろの方から小さなため息と共に足音が近づくと、不意に腕を掴まれ、体の向きを後ろに向かされる。

「手ぇ出しや」

・・・腕を掴ませて連れていくのかな。

「ちゃうわ両手や」

・・・両手?

両手を前に出すと何かに巻かれるような感覚がして、両手を縛られると腕を挙げさせられる。

・・・何だろう。

腕の輪の中に何かが通ったような感覚がした瞬間、細い線が密集したようなものが顔に着き、ほんのりと柑橘系に似た香りがした。

その直後に体が持ち上げられ、背負われたような感覚の後に太ももが腕のようなものに引っ掛かった。

・・・おんぶされたのかな。

「もし暴れたら、すぐに振り落とすで?」

「あぁ・・・何かいい匂いがしたよ?」

「シャンプーや、アホ」

・・・さっきの妙にさらさらしたものは髪の毛だったのか。

「ほら、さっさとしいや?置いてくで?」

「おい待てよ、リーダーは俺だろ?」

シールキーを使わないで行くってことは、この人達は能力者じゃないってことかな。

しばらくして頭に巻いた布を外すと、目の前には少し暗めの照明に照らされたカウンターがあり、その向こうにはバーテンダーのような服装の人、そしてその背後の棚には様々なお酒が並んでいた。

後ろを振り返るとその薄暗い広い空間には高さのある椅子とテーブル、ソファーと低いテーブルのセットがいくつか配置されていた。

普通に客も居るみたいだな。

隣にはこちらの反応を伺うように見据える男性が座っていて、少し長めの髪をオールバックで固めた髪型が印象的だった。

この人がさっきの人なのかな。

服も違うみたいだし。

「バーなの?」

「あぁ、バー兼俺らのアジトだ」

「そうか」

・・・あれ、他の人が居ないな。

「そんでまぁ、お前は大阪府警が叩かれたテロは知ってるか?」

そう言ってコップをカウンターに置いたとき、コップから氷がぶつかり合うような音が小さく響いた。

「知ってるよ、確か神王会の自作自演だって聞いたけど」

すると男性は小さく眉を上げ、感心するように頷いた。

「そうだよ、そこまで知ってんなら話は早い」

そういえばこの人は関西弁じゃないな。

「証拠になる場面は撮ったんだが、すぐに神王会の奴らに見つかってな、データが奪われたもんだから、今はもう真相は闇ん中だ。だからもう、それを武器にして乗り込むのは無理だろうな」

「他にもそういう事件は無いの?」

男性は素早くコップを口に運び、小さくため息をつく。

「怪しいのはあるがどれも証拠が無ぇ」

「そうか」

もし乗り込むことになっても、ここは大阪だし、あまり神王会には打撃は与えられないかな。

「あのさ、反勢力ってどれくらいあるの?」

すると男性はコップに目線を向けたまま小さく首を傾げる。

「さあな、まあ俺らだけってのはありえないだろ」

反勢力の存在は確認出来たけど、決定的な情報は無さそうだ。

コップを口から離した男性がこちらに目を向けたとき、眼差しに強い意思が宿ったように見えた。

「でもまあ近々、あいつらの拠点を潰す計画があんだ」

・・・拠点か。

「こう言ったら悪いけど、やるならいきなり本拠地をやった方が良いんじゃない?」

すると男性は呆れるように表情を緩め、小さく笑い声を上げた。

「分かってねぇなぁ、そんなこと出来たらとっくにやってるさ。お前、あの組織力甘く見すぎなんじゃねぇか?」

組織に組織で対抗すれば、単に組織力の大きい方が勝つっていうのは、何となく分かる。

「じゃあ、もし・・・いや、神王会ってそんなに悪いの?」

「あ?・・・まぁ、実際にやってることを見たら誰も良いとは言わないだろう。それに、1番気にかかるのは、神王会が武器を集めてるってことだ。理由は分からんが、傍から見りゃあただの軍事組織だろ?いづれ、世界に牙を向くときが絶対来んだよ」

そして男性は気持ちを落ち着かせるようにコップを口に運び、コップの中の氷同士を小さく響かせる。

宗教的な組織なら危険じゃないとしても、軍事組織でもあるなら、必ず勢力争いが生まれる、か。

「だから俺はせめて拠点でも潰していって、勢力拡大を抑えようとしてんだ。それに、拠点が潰されたことにキレて神王会が動けば、軍事組織として勢力争いしてるって世間が見なすだろ?そうなれば宗教方面でも信用が落ちんだろ?」

「そうだね」

捨て身の起爆剤みたいな感じかな?

「でももし、勢力争いとは全く関係無い場所から、いきなり本拠地が潰れるほどの爆弾が落ちたらどうなるかな」

動きが止まった男性はゆっくりとこちらに顔を向け、怒りや恐怖、疑惑が混ざったような真剣な表情で睨みつけてくる。

「まるで、そんなことが出来ると言ってるように聞こえるが?」

「さすがにそこまでは分からないけど、陽動とか関係無く、単独で本拠地に乗り込む遊撃兵が居たら面白いかなって」

深いため息をつきながら男性はゆっくりとコップを口に運び、空になったコップをバーテンダーに差し出した。

「おかわり」

「はい」

バーテンダーがコップを受け取ると男性は椅子を回してカウンターに肘を置き、天井を見上げてからこちらに顔を向けた。

「・・・つまり、俺達が拠点に乗り込んだ後、お前がたった1人で本拠地に飛び込むってか?」

「あぁ」

「いや死ぬだろ」

・・・どんなに巨大でも、組織なら中心の柱が折れれば終わりだと思うけど。

「まぁ、考え方は悪くは無ぇ、組織ってのは混乱に弱いからな」

「そういえば、君達は能力者じゃないの?」

すると気楽そうに話していた男性の表情が少しだけ引き締まった気がした。

「俺はそうだが、他は違う・・・それよりお前、年上に君はねぇだろ」

「そうか」

力によっては、能力者が1人居ればそれなりに戦力になるか。

「じゃあ、リーダーさん達と僕の知り合いが同時に何箇所かの拠点に乗り込んで、その後に僕が本拠地に行くってどうかな?」

「あぁ、良いんじゃないか?」



「あれ?ドラゴンさんは?」

「ちょっと仕事の話があるって」

ナナハは小さく頷くと周りを見てからこちらに笑顔を向ける。

「ハオンジュさんが居てくれるから、もう安心して住み処に行けるよ」

ずっとって訳にはいかないけど・・・。

でもナナハの家に泊めて貰えたし、こんな土地でも悪くはないかな。

「私驚いちゃった、ハオンジュさんもすごい強いんだね」

「まあ、ね」

やっぱりあの人の強さは特別なのかな。

氷牙の方は着々と計画が立てられていくようですね。

ありがとうございました。

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