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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第六章

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動き始める組織

「どんな組織なの?」

ポスターには純白の鳥達が羽ばたく大空の下で、空を見上げながら幸せそうな表情の子供達が広大な草原を駆けている風景が描かれていた。

「色々な噂があるらしいが、世界中から武器を集めてる組織だって聞いたことあるぜ?」

「そうか」

確かに力が無いと世界は支配出来ない。

もしかしたら、世界を支配してから一気に平和を訴えるやり方なのかな。

拠点の建物に戻り、最上階の一角にある部屋に入ると、ドラゴンがおもむろにテーブルの方へと歩き出した。

「・・・これが前のデータをもとに改良した新しい進化薬だそうだ」

寂れたテーブルには決して似つかわしくない、怪しく黒光りしたそのケースから、ドラゴンは慣れた手つきで液体が入った透明な筒を取り出した。

まるで胸元の宝石のような赤い液体だ。

「んじゃまあ、早速、行きますか、飯も食ったし、運動がてらにな」

「うん」

改めて見ると、やっぱり変わった作りの城だ。

見渡す限りの同じような町並みの中にある、一際目立つそびえ立った大きな城を見ながら、ドラゴンと共に実験に使う巨大動物を探す。



「へぇ、あれほど使わないって言ってたのに、何で急に?」

ユウコが驚くような表情でシンジに問いかけると、シンジは眉間に小さくシワを寄せながら目線を少し上げる。

「いや、いきなりひらめいたんだよ。ノブさんや氷牙と戦ってたからかな」

するとシンジと同じように考え込むような表情で頷いていたユウコはすぐに嬉しそうにニヤつき出す。

「じゃあ、どんな力を手に入れるの?」

「それは・・・」

まさかシンジがいきなり鉱石を使うって言い出すなんて。

「それは?」

更にニヤつきが増すユウコの催促に、シンジは依然として悩むような表情で首を傾げている。

「何かこう・・・速いやつ?」

「え?」

どうやらまだアイデアは固まってなかったみたいだな。

「氷牙君、私の部屋までお願いします」

・・・おじさんだ。

舞台に目を向けると、不安げに眉をすくめてこちらに目を向けるミサが視界に入った。

何も言ってないのに、おじさんから呼び出しがかかるなんて。

「氷牙、オーナーと何か約束でもしたの?」

「してないけど、ちょっと行ってみるよ」

「時間がかかるようなら、後回しにしてよ?今日はライブなんだから」

「あぁ」

不安げに舞台とこちらに交互に目を向けるミサを見ながら舞台に向かって歩き出す。

「ああ氷牙君」

「珍しいね、おじさんが呼ぶなんて」

すると半分体をこちらに向けながら、おじさんは片手で素早くキーボードを叩いて、またすぐにこちらに顔を向けた。

「いえ、呼んだのは私ではないんですよ」

おじさんじゃない?

巨大なモニターに近づくと、一通のメールが画面に映し出されていた。

「氷牙君を呼んだのは、この方ですよ」

大阪の組織のシキからみたいだ。


氷牙、このメールを見たら、なるべく早くこっちに来て欲しいねんけど。

訳は来てから言うわ。


内容が分からないから、どれだけ時間がかかるものかが分からないな。

ミサに相談しないと。

「ちょっと待ってて」

「はい」

舞台を降り、ヒカルコやユウコと楽しそうに会話しているミサの下に向かうと、こちらに気づいたミサの表情がすぐに不安げに曇り出した。

「何だったの?」

「大阪の組織のシキからすぐに来て欲しいって、内容が分からないから、どれくらい時間がかかるか分からない」

苛立ちと不安が混ざったような表情で唸り出したミサは、周りを見渡した後に腕時計に目を向けた。

「じゃあ、午後の3時までには絶対に戻ってきて、絶対よ?」

「分かった」

おじさんの部屋に戻ると、合図を受けながら足早に奥の扉へと向かう。

「おう、待っとったで」

「あぁ。それで、何か用なの?」

「とりあえず座りや」

シキに連れられてテーブルに案内されて椅子に座ったとき、開き出した扉にふと目を向けるとユイがオーナーの部屋に入ってきたのが見えた。

「ああ氷牙、もう来たん?思うたより早いやん」

「そうか」

ユイがシキの隣に座ると、少しずつシキの表情から気楽さが薄れていく。

「ほんで?どやった?」

「ミシェルちゃんから聞いたんやけど、神戸の組織にも勧誘が来たんやて」

・・・勧誘?

「ほんまかいな、すぐ隣やないか」

「・・・勧誘って?」

2人がこちらに目を向けると、シキの緊迫感の伝わる表情が一瞬緩んだように見えた。

「あ、そやった、氷牙に頼みたい事っちゅうのは宮崎の組織の事なんや」

宮崎・・・。

「確か、急速に勢力を拡大してる組織だよね?」

「そうや。さっき聞いたやろうけど、もう兵庫県にまで手を伸ばしとる」

宮崎の組織がどんな組織なのか分からないが、2人の表情を見る限り穏やかではないような雰囲気が感じとれる。

「せやけど、実際に目に見えないところではどこまで手を伸ばしとるか分からんがな」

「その組織ってそんなに危険なの?」

「実際には分からん、けど世界中から武器を集めてるっちゅう話を聞く限りは、皆も危険だと思うとるんちゃうか?」

純粋に危険な組織なら、勧誘も受け入れられずに勢力なんて拡大出来ないんじゃないかな。

「・・・で、その組織に何をするの?」

小さく目線を上げ、顎をさすり始めたシキの表情からは落ち着きが見られるようになってきた。

「とりあえずは調査やな。実際に組織がどないなもんかを知らんと、俺らかて動けへんからな」

ということは長期的なものか。

今日中に終わらせるのは無理だな。

「調査って何するの?」

というか調査だけならシキ達だけでいいと思うんだが。

「まあ調査やったら俺らだけでやるわ、氷牙に頼みっちゅうんは、もし乗り込むことになったら力を貸して欲しいっちゅうことなんや。噂でもされど噂やろ?準備はしとかんとな」

「なるほど」

組織と敵対するのは初めてだし、戦いには興味はあるな。

「まあそうゆう訳やから、乗り込むんなったときまた呼ぶから覚えといてや」

「分かった」

席を立ちおじさんの部屋に戻ろうとシキ達に背を向けたとき、ふとシキに呼び止められるように声を掛けられた。

「せや、せっかく来たんやし久しぶりに相手せいよ」

「・・・そうか」

自信が滲み出るようなニヤつきでシキが自動販売機に向かうのを見ながら、周りを見渡して壁に掛けてあるような時計を探す。

「どないしたん?」

「今何時かなと思って」

「・・・あ、ほんまや、ここ時計無いんやね」

同じように周りを見渡したユイは何食わぬ顔ですぐに自分の腕時計に目を向ける。

「11時前やけど、もしかして都合悪いのにわざわざ来てくれたん?」

「いや、大丈夫だよ」

申し訳なさそうな表情でユイが声のトーンを下げるが、すぐに応えるとユイは頷きながらも少し不安げにシキに目を向ける。

「ほれ、何してんねん、行くで?」

「あぁ」

扉を抜けて廊下を進み、中腹辺りにある少し大きめな扉を開けて奥に進む。

ホールと同じような広さの部屋の中の1つの扉を抜け、闘技場の真ん中で少し離れて向かい合うと、シキはゆっくりと日本刀を抜いて鞘を後ろに投げ捨てる。

「先に言うといてやるわ。俺かてな、覚醒、したんやで?」

「そうか、鉱石使ったの?」

「まあな、ほな・・・行くで」

自信の滲み出るようなニヤつきから一気に真剣な眼差しに変わったときに絶氷牙を纏う。

シキの持つ刀に風が吹き荒れ始め、大きく反り返ったいびつな形に変わると、シキ自身の足にも渦巻くように風が纏った。

シキの力が強いって訳じゃなくて、武器に力を乗せることが強いのかな。



「あれで良いんじゃねぇの?」

目線の先には毛皮で全身を覆った太い4本足の巨大動物とやらが川の手前で佇んでいた。

見物人が居るみたいだけど、別に良いか。

ドラゴンから進化薬を受け取り、あまり音を立たさずに背後から巨大動物に近づく。

翼を解放したらあまりにも目立っちゃうし。

楽に済ませるにはそっとやった方が良いかな。

見物人が持つ薄くて四角い何かから、変な発信音が鳴った途端、巨大動物が反応するかのように素早く音の出た方に顔を向ける。

そしてこちらの存在にも気づいた巨大動物は、威嚇するような雄叫びを上げた後に見物人の方へと走り出した。

やはり邪魔だったか。

「うわぁぁ」

「きゃあぁ」

巨大動物が1人の見物人を押し倒し、今にも食い殺そうと殺気を発しているときに巨大動物の背後に回り込んで、進化薬の針を後ろ脚の付け根辺りに素早く刺した。

囮に使えたから、まあ良いか。

痛みに気がついたのか、巨大動物がこちらに目を向け、飛び掛かろうと地面を踏ん張ったとき、まるで魂が抜けたかのようにそれは力無く地面に倒れ込んだ。

まずは昏睡だな。

実験失敗なら、このまま何も起こらずに動物は死ぬだけだけど。

「おいセイヤっ・・・セイヤっ」

若そうな女性がそう叫びながら、巨大動物に襲われた同じように若そうな男性に駆け寄る。

安易に近づく方が悪いのに。

「ちょっ・・・マジやべぇよ・・・おいセイヤっ・・・」

「うぅ・・・きゅ、救急、車」

かろうじて声を発している男性の腹からは、何かにえぐられたかのような深い傷から、止むことなく血が溢れ出している。

・・・この傷じゃ、恐らく手遅れだろう。

見物人もだいぶ増えたとき、死にかけている男性を囲んだ大勢の人の中から1人の男性が前に出た。

「皆さん、もう大丈夫です、私は傷を治せる能力を持ってます、だから安心して下さい」

・・・そんな事が出来る人間もいるのか。

死にかけている男性の傷口を瞬く間に閉じた男性は立ち上がると、皆を見渡しながら手を軽く上げて賛美を静めた。

「我々がいる限り、巨大動物に、この星の支配権は渡しません。我々、ジンオウカイがある限り、皆さんには永遠の平和が約束されます」

ふとドラゴンに肩を叩かれると、ドラゴンは顎で巨大動物を差しているので何気なく巨大動物に目を向ける。

・・・動き出した・・・実験成功か。

ゆっくりと起き上がりながら巨大動物の体が更に巨大化していき、背中からは細長くとも力強い腕のようなものが2本生え始めた。

「おい頼む」

「うん」

人々が逃げ惑う中、徐々にエニグマというものに形作られていく巨大動物を見ながら翼を解放する。

少しして成長が止まり、エニグマになった巨大動物はこちらを見据えながらまるで像のように立ち尽くした。

「これで3体目だが。こいつの解析データで、恐らく進化薬が完全なものになると見立てられてる」

「そうか」

・・・じゃあ実験もこれで最後かな。

「まあ、赤い宝石を少し混ぜたおかげだろうな、お前のとシンクロして、よりエニグマの精神状態が安定・・・」

突然の爆発によりエニグマが大きくよろめき、胸騒ぎが一瞬にして膨張したのを感じながら、何かが飛んできた方に目を向ける。

「そこのお嬢ちゃん、危ないから下がってな」

・・・誰だ?

大勢の見物人の前には、自信に満ち溢れたように佇む男性と、落ち着き払った態度と眼差しの男性がこちらを見ていた。

「ここはオレ達に任せて、君達は逃げなさい」

もう1人の男性がそう言ってこちらに駆け寄り始めると、最初に声を掛けてきた男性は自信に満ちたようにニヤつきながらエニグマに向かっていく。

・・・そりゃそうか、こんな巨大な生き物が現れれば、自分達の街を守るために誰かが立ち向かおうとするはずか。

「さぁ、下がって」

落ち着き払った声色でエニグマの前に立ちはだかられたとき、何となくその顔にムカつきを覚えた。

・・・邪魔だ。

別に襲われてないし、このまま2人をやっつけて、さっさとエニグマを連れていこうか。

「おい」

ドラゴンに軽く腕を掴まれて遠くの木の陰に連れられると、ドラゴンが2人を見ながら急にニヤつき出した。

「ここでオレらが暴れたら、後々居づらくなるだろ?だからここは、あのエニグマを使ってあいつらを追っ払ってやるんだよ」

「でも、もしエニグマがやられたら?」

「ああ・・・そうなりそうになったら、オレが出る。別にさ、拠点になるところなんていくらでもあんだからよ。だからお前はここに居ろって」

「・・・分かった」

2人を見据えるエニグマに意識を向ける。

・・・やれ。

今ハオンジュがどこに居るか、地名は直接書いてないので、そこら辺を考えるのもいい暇潰しになるかと。笑

ありがとうございました。

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