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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第五章

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リベンジ・アンド・ラン

極点氷牙を纏うと同時に超低温の衝撃波がハオンジュに襲い掛かると、剣に纏う電撃のような光で身を守りながら、ハオンジュはとっさに逃げるように後ろに跳ぶ。

「・・・ふうっ・・・そう、その姿。やっぱりあの時のセイカの軍人だ」

・・・セイカ?

「・・・まだ分からないの?獣人が所属してる部隊と一緒に、エネカトからセイカに入った私達を迎撃したくせに」

・・・エネカト・・・獣人・・・そして・・・2刀流・・・まさか。

「あの時の、鎖国兵か」

黙ったままハオンジュは再び小さく口角を上げて見せる。

「・・・いや、でも白い奴以外は死んだはず」

「確かにアレドゥは連れて行かれたみたいだけど、あの時、私はかろうじて命を取り留めたんだ」

確かに黒い鎖国兵はこめかみに膝蹴りしただけだっただけど。

「だとしても、どうしてここに・・・それに」

「どうしてこの姿になったかって?」

小さく笑みを浮かべたまま、ハオンジュは目線を空に逸らす。

確かに同じ時間帯に堕混が攻めてきたけど、鎖国兵とは関係無かったはず。

「ある人が・・・これをくれたんだ」

胸元の赤いひし形のものに指先を置きながら喋り出すハオンジュから、ふと威圧的な殺気が薄れていくのを感じた。

「それは?」

「正確には分からない。けど、これを使うと外部の様々な力の源を吸収することが出来るんだ。だから私は、仲間の敵討ちのために力を望み、ここに来た」

「僕がここに居ると知ってて?」

ゆっくりとため息をついたハオンジュが目を開くと共に、再び威圧的な殺気が溢れていくのがひしひしと伝わってきた。

「・・・そう」

そう応えた後に、ハオンジュは静かに両手から緑色の光の剣を作り出す。

来るか。

振り下ろされた緑色の光の剣を紋章で受け止め、そのすぐ後に尻尾から蒼月を1発撃ち込む。

・・・ある人?

死神の国に来た人間達のことだろうけど。

打ち上げられたハオンジュは空中で体勢を立て直すと、全身に力を溜めるように小さく身を屈め始める。

「・・・はあぁっ」

瞬間的な電撃音と共に手足を大きく広げると、ハオンジュの全身が輝くほどに緑色の光を纏い始めると同時に、帯電するように輝く緑色の光は周りの建物や能力者達にも届くほどに激しくほとばしった。

だけど一体どうやって僕がこの世界に居ると知ったのか。

そしてハオンジュは緑色の光の剣の剣先をこちらに向けながら、ゆっくりと腕を後ろに引く。

何か大技でも出すのか。

紋章を出して構えた直後、緑色の光の剣を突き出しながら、輝くほどの緑色の光を纏ったハオンジュは自身もろとも巨大な稲妻のように突っ込んできた。

・・・くっ。

紋章を斜めに傾け、突っ込んできたハオンジュをかろうじて受け流したが、通り過ぎた直後に地面を強く蹴ったハオンジュは、素早く再び背後から剣を突き出しながら緑色の光をほとばしらせる自身もろとも飛び掛かってくる。

構える間も無く胸元に緑色の光の剣を突き刺され、激しい放電のような衝撃と共に吹き飛ばされた後、ビルの壁に激しく衝突するような轟音と衝撃が体中に響き渡った。

瓦礫と共に落ちていく中、運よく足から地面に落ちたので足を踏ん張りながらハオンジュに目を向けると、体中に緑色の光をほとばしらせながら、ハオンジュは睨みつけるようにこちらを見据えていた。

かなりの衝撃だったな。

ということは、あの赤いひし形の宝石があれば誰にでも堕混になれる、もう、堕混は死神や天使達だけじゃないってことか。

両手に緑色の光の剣を携えながらハオンジュが静かに飛び出してきたので、2本の交差させられた緑色の光の剣を花のように重ねた5つの紋章で受け止める。

「じゃあ誰が君をここに?」

「あいつらのことは分からないし、私はそんなことに興味はない。ただ、私は敵を討ちたかっただけ」

「そうか」

一旦後ずさりしたハオンジュは立て続けに緑色の光の剣を振り抜いてきたが、5つも重なっている紋章にすべての攻撃が防がれると、怒りの表情をあらわにしながら再度力強く剣を振るう。

それでも重なった5つの紋章で難無く受け止めると、紋章越しのハオンジュの表情から更に殺気が溢れ出した。

「あの巨大な生き物はどうしたの?あれはグリムじゃないから、君が知ってるはずがないのに」

一瞬目線だけ上げたハオンジュの表情から、ほんの少しだけ落ち着きが見られた。

「あれはまた、別の実験台みたいだから、私は知らない」

「そうか」

もう聞けそうな情報は無さそうかな。

純粋な敵討ちが目的なら、ちゃんと相手をしてあげようか。

ブースターを噴射した勢いでハオンジュを強く押し退け、紋章をブースターに転換してから両腕に龍牙を出すと、ハオンジュの眼差しに殺気が満ちたのが見てとれた。

立て続けに振るわれる緑色の光の剣を龍牙で捌きながら、隙を見て瞬間的にブースターを出してハオンジュの胸元を蹴り飛ばす。

「鎖国の剣の方が切れ味は良かったんじゃない?」

「・・・そうかもね」

小さく深呼吸したハオンジュは更に激しく全身に纏う緑色の光をほとばしらせると、ハオンジュが飛び出すと同時に瞬時に2本の緑色の光の剣の輝きが増して更に太く長く伸び出した。

まだ大きくなるのか。

「はあっ」

そして回転しながら交差させた2本の緑色の光の剣を思いっきり振り抜いてきたので、ブースターを出しながら2本の龍牙を交差させて構えたが、凄まじい電撃音と衝撃に龍牙は砕かれ、また同時に爆発のような放電によって激しく吹き飛ばされた。

やられたか。

さすがだな。

「氷牙ぁっ」

ノブの声が遠くから聞こえたので体を起こし、ブースターの数を戻して砕かれた龍牙を消しながら立ち上がると、何かの破片が体の中から崩れ落ちるような感覚がした。

「・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」

少し息が上がっているハオンジュにはほとばしっていた緑色の光は消えていて、鎧に目を向けると、肩から膝にかけて体の前面が激しく砕かれていた。

これで全力か。

空気中の水分を鎧に換え、すぐに損傷を完治させると、ハオンジュは驚きの表情と共に再び緑色の光の剣を構える。

相手のスタミナが切れるまで戦ってる暇は無いか。

そろそろ終わらせよう。

ブースターを出しながら瞬時に距離を詰め、振り下ろされた緑色の光の剣を紋章で受け流しながら背後に回り込み、ハオンジュに蒼月を2発連射する。

緑色の光の剣にほとばしる光で衝撃を和らげながらハオンジュが吹き飛んでいくときに龍牙を出し、素早く腕を引きながら矛先をハオンジュに向ける。

「龍ノ咆哮」

ハオンジュが体勢を立て直す前に氷の槍を撃ち出したが、突如氷の槍がその場に留まると、直後にその氷の槍は何かに潰されるように瞬時にその形を失った。

何だ、今の。

龍ノ咆哮が、いきなり掻き消えた?

するとまた直後にハオンジュの隣に軽い空間の歪みのようなものが見えたとき、その歪みから1人の男性が姿を現した。

「そこまでだ」

・・・誰だ?

「悪いな、今ここでこいつを殺らせる訳にはいかないんだ」

冷静な口調でこちらに語りかけてきた、その短髪の男性を見たハオンジュは驚きの表情を浮かべる。

「・・・ドラゴン、どうして・・・」

ドラゴン?

名前からしてこの世界の人間か?

「どうしてって、まだやる事が残ってるだろ。とりあえずお前はあれと一緒に戻れ」

そう言って何かをハオンジュに渡して急かすように背中を軽く叩くと、ドラゴンと呼ばれた男性はまるでハオンジュを庇うようにこちらに体を向ける。

その間にハオンジュは翼をはためかせると、ゆっくりとエニグマの上に降り立っていった。

「君は誰?」

見た感じノブくらいの年齢だけど。

「誰って・・・あー・・・」

困ったようにドラゴンが頭を掻いていると、突如ハオンジュとエニグマが透明な球体に包まれ、そして球体と共に一瞬でその姿を消していった。

・・・逃がしたということは分かったけど。

「お前らっ根城をやられた仕返ししろっ」

「ん?」

声を上げたスキンヘッドの能力者に目を向けたドラゴンは、今にも襲い掛かろうとしている能力者達に怯む様子もなく、落ち着いた表情でゆっくりと掌を能力者達の方にかざした。

「やれ、マグナム」

するとドラゴンの声と共に上空からどこからともなく巨大な火の玉が現れ、まるで降り注ぐ隕石のように能力者達を襲っていく。

・・・火の玉?

次々と能力者が倒されていくと、高速移動のような動きで1人無傷のスキンヘッドの能力者は、すぐさま逃げるようにその場を去っていった。

「逃げたか、まあ良い判断だな」

静かに手を下ろしたドラゴンは一瞬ノブ達の方に顔を向けてからこちらに目線を戻した。

「お前らもさっきの奴らの仲間か?」

「いや、違うよ」

「そうか」

呟くように応えながらドラゴンがポケットから銀色の小さな筒状のものを取り出し、おもむろにその先端を蓋のように開ける。

すると銀色の筒状のものの先端が光り出し、一瞬にしてドラゴンは透明な球体に包み込まれた。

質問するタイミングが無かったな。

そして瞬く間にドラゴンは透明な球体と共に姿を消していった。

あのドラゴンという人が堕混の仲間だとすると、ハルクや他の天使達が居た演習場を火の玉で襲ったのは、ドラゴンだということになる。

「おい氷牙」

近づいてきたノブに顔を向けながら鎧を解くと、シントとアイリも安心したような表情でこちらに歩み寄ってくる。

「お前、あんなの食らってほんとにダメージ無ぇのか?」

「問題は無いよ」

そういえばレイが何人かの人間が現れて死神を連れて行ったって言ってけど、その仲間の1人がさっきのドラゴンだということは確かだろう。

なら、やっぱり反乱軍と下界の人間は無関係だな。

「まぁ・・・アジトはぶっ壊れたし、天狗って言うか、何かお前の知り合いみたいだったしな」

「いやノブ、知り合いって言うほど良いもんじゃないって」

苦笑いを浮かべながらシントが口を開くと、ノブも困ったような表情で頭を掻いている。

「あー・・・まあ、とりあえず帰るか」

「そうだな」

ハオンジュはまたここにやって来るのだろうか。

「おいシント、天狗があんな強ぇなんて、聞いてねぇよ」

「俺だって、てっきり能力者の暴力団の誰かだと思ってたし、あれじゃ何にも歯が立たないよな」

2人の話を聞き流しながら神奈川の組織に戻ると、すぐにミヤビが心配そうな表情で駆け寄ってきた。

「シント君、大丈夫だった?テレビで巨大動物が出たって」

「ああ、暴力団のアジトが壊滅しただけで、特に被害は出なかったよ」

小さく頷きながらまだ不安げな表情を隠せないミヤビにシントが優しく微笑みかけると、ミヤビの表情から張り詰めた緊張のようなものが薄れていった。

「そっか」

まだ堕混やドラゴンとやらについて謎が多いな。

ただ堕混を殺して回るよりも、黒幕についての情報を得る方が良さそうだ。

組織に戻り、ノブとアイリと共に何気なくテーブルを囲む。

「まぁ、とりあえず、昼メシでも食うか」

「そうだね」

相槌を打ちながらアイリがテーブルのベルを鳴らし、いつものようにウェイトレスがやって来ると、ノブと顔を合わせたウェイトレスは微笑むような笑顔で軽く会釈をする。

「おぉニーナか」

・・・前よりもだいぶこのウェイトレスと親密になってるみたいだな。

「じゃあランチメニュー頼む」

「はい、かしこまりました」

緊張が感じられないような笑顔で応えたニーナと呼ばれたウェイトレスは、颯爽と奥の扉に戻って行く。

「仲良いの?」

「まぁ、な」

「昨日の夜に一緒に飲んでたらしいよ」

照れ臭そうに目線を逸らしたノブを横目に、アイリが冷静な表情で口を開く。

「そうか」

そういえば組織のウェイトレスはこの世界の人間なんだろうか。

もしそうだとしたら、急激に変化したこの世の中で、あんなにも生き生きとウェイトレスをやれるだろうか。

「まぁ、そうだな、オレは敵の攻撃を避けられる自信があるが、お前は氷牙みたいな鎧は無いしな」

「うん、攻撃範囲は広いけど、私は攻撃力も防御力も中途半端なんだよなぁ」

麺を啜り、ノブの話に何気なく応えているように見えたアイリの表情に少し陰りのようなものが伺えた。

こんな時でもノブ達はお腹が空きますからね。笑

ありがとうございました。

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