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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第五章

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置いてきぼり

2人に連れられて会議室に入ると、そこにはマナミの他にレンとレベッカもマナミ同様テレビに夢中になっていた。

マナミが仲介役になって、異世界から来た者同士、上手く打ち解け合えてるみたいだな。

おじさんの部屋に入ると、こちらに体を向けたおじさんの隣には、ノブだけではなく見覚えのある女性がもう1人立っていた。

確か前に話したことがあったな。

「おう、来たか・・・実は、神奈川の奴らからあることを頼まれてな、暇そうだから、お前も来いよ」

「あぁ」

援軍要請じゃないのかな?

「じゃあ行くか」

「あぁ」

見覚えのある女性が応えるとノブが歩き出したので、2人に続いて奥の扉を抜けた。

すると部屋に入ってきたノブ達に気づいたシントはすぐさま立ち上がり、こちらの方に近づいて来る。

「よお」

「あぁ」

四角いテーブルに案内され、皆が椅子に座るとシントの表情が微かに引き締まったように見えた。

「まず初めて来た奴が居るから紹介させて貰う、こいつはアイリだ」

「カトウアイリです」

前にノブが言ってたアイリってこの人のことだったのか。

軽く会釈したアイリに、シント達は黙って会釈を返すが、その時にシントの爽やかな微笑みがいつもより若干薄いように見えた。

「で、今日はただの援軍要請って訳じゃなさそうだな」

「まあな、実は、これからちょっとある場所に調査に行こうと思うんだけど、2人だけじゃ不安だって言うからさ」

「あっそれじゃ何か私が悪いみたいじゃん」

シントの隣に座っている女性がすかさず話に割って入ると、シントは困ったように苦笑いを浮かべてその女性を見る。

「いやいや、そうは言ってないって」

「じゃあ今はお前ら2人しか居ないのか?」

するとシントの表情が更に少しだけ曇り出した。

「んまぁな、何て言うかさ、組織の空気が悪くって・・・自警団の人数も減ったしな、あまり1度に大人数では動けないんだ」

大阪の組織みたいに内部分裂でもしたのかな。

「そうか、まぁそらぁ、仕方ねぇわなぁ。で、具体的に何しに行くんだ?」

「まだニュースにはなってないんだけど、天狗って呼ばれてる奴が居てさ、人を襲ったり、店から食べ物を奪ってったりするらしいんだ」

鳥類が鉱石の力で人の形に近づいた進化でもしたなら、ただの野生動物の能力者の仕業ってことにはなるだろう。

「じゃあそいつを懲らしめに行くってことか?」

「まぁ・・・簡単に言えばそうなるかな」

自警団っていうのは、何もテロリストと戦うためだけにある訳じゃないのか。

「ふーん、で、そいつはどんな奴なんだ?天狗ってだけじゃ、人間か動物か分からないからな」

「ああ、それを今から調べようと思って」

気の緩んだような笑顔でシントが応えると、張り詰めていたような空気が少しだけ緩んだ気がした。

「ああ?じゃあ・・・初めの下見なら、逆に5人もいらねんじゃねぇかぁ?」

「え、じゃあほら、手分け、すれば良くないか?」

「まぁ・・・別に良いか、暇だしな。お前も良いだろ?」

ノブがアイリに問いかけると、アイリは落ち着いた表情ですぐに頷いた。

「こっちはミント達が居れば別に問題無いんじゃない?」

「あぁ。じゃあ・・・まずは・・・現場に行かないとな」

するとすぐに席を立ったシントはホワイトボードの脇にある箱らしきものから、筒状に丸まったものを取り出して素早くテーブルの上に広げる。

「ここら辺で起きたって聞いたから、とりあえずまずはここに行こうか」

シントの持つシールキーで作った扉を抜けて外に出た途端、真っ先に遠くから漂ってくる、中華料理を思わせるような匂いが鼻に入ってきた。

「おいおい、まさかあの中華街に天狗が出たってのか?」

「それはまだ分からないよ」

ノブの問いに応えながら、シントはポケットから取り出した携帯電話を耳を当てた。

「もしもし?・・・はい・・・じゃあすぐに。それじゃあ、まず詳しい話を知ってる人の所に行こう」

「何だよ、ちゃんと段取り組んでんじゃねぇか」

「ま、まぁ、な」

照れるように苦笑いを浮かべるシントがふと目線を向けた方から、小走りで走るような足音が聞こえてきたので、何となくその方に目を向けてみる。

「シント君、シール忘れてるよ」

「あ、そうだった、ありがとう、ミヤビ」

そうか、やっと思い出した、この人の名前。

ミヤビからシールキーを受け取ったシントは、すぐにそれをポケットにしまい横断歩道の方へと歩き出した。

「わぁ・・・すっごい匂いだね」

「・・・あぁ」

独り言なのか分からないので何となく返事してみると、ミヤビはこちらに微笑みかけてから前を向いた。

しばらくして中華料理の匂いが背後に抜けていった辺りで、シントは小さめの喫茶店のようなお店に入って行った。

「おう、来たか」

カウンター越しからシントに声をかけた、顎ひげが特徴的な男性はすぐに奥の方に顔を向ける。

「おいっ来たぞっ」

「あ、はい。ようシント、まぁとりあえず座ってくれ」

カウンター席に座ると、後から出て来た若い男性がシントの前に立った。

「この人は俺の大学の先輩でスギウラさんだ」

「どうも」

スギウラと言う男性が軽く会釈すると、同時にノブ達も軽く会釈を返す。

「じゃあこの人が目撃者って訳か?」

「ああ、ま」

「おいちょっと待て、ツガワの坊主」

顎ひげの中年男性が少し渋い声でシントの言葉を遮ると、一瞬だけ空気が張り詰めたように感じた。

「まず注文しろよ、話だけ聞いて帰られんのは御免だぜ?」

「あ、すいませんマスター。じゃあ俺、アメリカンで」

「おう、そっちの兄ちゃんは?」

マスターの男性が1人ずつ注文を聞きながら素早く立ち回り始めると、安心したように小さく頷いたシントはノブと顔を合わせてから再びスギウラに目を向ける。

「先輩は、実際に見たんですか?天狗を」

「あれが天狗かどうかは分からないが、翼を生やした人間が飛んでくのは見たよ」

「どこまで行ったか追っかけたのか?」

ノブに目を向けたスギウラはマスターの男性と共に立ち回りながら素早く首を横に振る。

「仕事中に一瞬店を出ただけだったから、そんな暇は無かった」

「じゃあ、どっちに飛んでったかくらいは分かりませんか?」

「確か、この前のテロが起きた方だったような・・・」

「ああ、スタジアムの方ですか」

まだ有力な情報とまではいかないか。

「まぁ、あそこは潰れたホテルやら、中途半端にぶっ壊された建物が取り壊されずに寂れたまんまになってっからなあ」

マスターの男性は呟くように喋り出すと、ゆっくりとコーヒーカップをシントの前に置く。

「こんな都会の真ん中なのにっすか?」

ノブの前にコーヒーカップを置きながら、マスターの男性は険しく眉間を歪ませて小さく頷く。

「たかってんだよ。クソガキどもがな。それに今じゃ超能力者だか何だかが根城にしちまってる。重機を出しても返り討ちに遭うって始末だ・・・おう、白髪の坊主はブレンドだったよな?」

「あ、はい」

中華街や横浜スタジアム、それ以外にも人が集まる場所が多いから、テロを起こすためのアジトには適した場所って訳か。

「マスター、お砂糖もう1つ貰って良いですか?」

ミヤビが恐る恐る話しかけると、マスターの男性は険しい表情をすぐに小さな笑みへと歪ませる。

「嬢ちゃんは、ブラックが苦手か?」

「あぅ、はい・・・小学生のときに飲んで以来・・・」

「はっはっはっ・・・まぁ、子供にはコーヒーの味は分かんねぇよな。俺もそうだったよ、昔は」

また少し笑みが深くなったマスターの男性がそう言いながら砂糖を1本渡すと、困ったような笑みを浮かべていたミヤビから緊張感が薄れたような気がした。

「じゃあ、天狗もそのアジトに居る能力者の1人ってことか」

「その可能性が高いな。先輩、他に見た人とか知ってますか?」

「いやぁ、俺は知らないけど、まぁ後は直接の被害者に聞くしかないだろう」

被害者に聞くより、アジトが分かってるなら、そっちに行った方が良いと思うけど。

「・・・じゃあ、そろそろ行くか」

しばらくしてノブとシントが席を立つと、スギウラは素早くレジの方に回り込んだ。

「オレが払っとくから、お前ら先に行ってろよ」

「え、ああ、悪いな」

シントが戸惑いながらも出口へ向かうと、コーヒーカップを下げていたマスターの男性はニヤついた表情でノブに近づいた。

「おお、兄ちゃん、男前じゃねぇか」

「ああ・・・どうも」

店を出るとノブとシントはどこかに歩き出す様子もなく近くのガードレールに腰を掛ける。

「そのアジトに行ってみるのはどうだ?」

「いきなりか?」

「つったってそれしか手がかりが無ぇし、もしそこに犯人が居るなら、ためらう理由も無ぇだろ」

目線を落として黙り込んだシントは険しい表情でミヤビの方に目を向ける。

「危ない場所に、ミヤビは連れて行けないよ」

一同の視線がミヤビに向けられると、ミヤビは焦りが見える笑みを作りながら皆を見渡す。

「私なら大丈夫だよ、自分を守ることくらいしか取り柄無いもん」

それでも表情を変えないシントを見たノブは、眉間にシワを寄せながら空を見上げる。

「じゃあ、氷牙と一緒に中華街辺りで遊ばせてりゃ良いじゃねぇか」

遊ばせてればって、このミヤビって人、見た目よりそんなに若いのかな?

「まあ、それなら・・・良いかな?ミヤビ」

「う、うん・・・シント君がそう言うなら」

「よしじゃあ、氷牙、ちょっと待ってろよ」

そしてノブは軽く手を振り、シントとアイリを連れて歩き出して行った。

「中華街でも歩く?」

「・・・そうだね」

元気の無さそうな返事を返したミヤビはゆっくりこちらに顔を向けると、我に返ったかのように小さく笑みを浮かべてから歩き出した。

確かにこの人は戦い慣れして無さそうだし、女性を守りたいという気持ちも分かるけどな。

「何か、私、匂い嗅いでたらお腹空いちゃった」

「じゃあ何か買う?」

少しだけ気まずさが伝わってくる笑顔を浮かべながら、ミヤビは一段と中華料理の匂いが強い方へと向かっていく。

「氷牙君は何か買わないの?」

「あぁ、財布、持ってないからね」

すると口を開けたまま固まったミヤビは、周りを見渡してから少し寂しそうな眼差しになった。

「そっか」

お店から戻ってきたミヤビが肉まんを1つ、両手で持ちながら満足げな笑顔を見せてくると、ゆっくりと肉まんを真ん中から裂き始めた。

「あちち・・・ふぅ、はい、どうぞ」

「・・・良いの?」

ミヤビは半分に分けた肉まんをこちらに向けながら満面の笑みで頷く。

「ありがとう」

「・・・私自身もね、ほんとは分かってるの。自分は、戦力としては役に立てないってこと」

「そうか、でも今なら、力なんてすぐ強化出来るでしょ?」

まぁそこまで気持ちが戦いに慣れないなら、いくら強い力があっても無駄になるけど。

すると大きな一口で肉まんを頬張ったミヤビは小さなため息をついて空を見上げる。

「・・・私、強くなれるかなぁ?」

「そう望めばなれるよ」

そういえばあの鉱石って、どうして願っただけで力が強くなるんだろう。

組織に来る前に会ったあのおばさんや、組織のオーナーをしているおじさんが、関係してないとはどうも思えないな。

「次はどこ行く?」

「じゃあ、港の方に連れてってよ」

「そうか・・・僕、ここに来るの初めてなんだ」

また少し驚くような表情でこちらを見るとミヤビはすぐに噴き出すように微笑んだ。

「しょうがないなぁ、もう」

中華街から逸れた1つの道を抜けたとき、1人の女性にまるでつきまとうかのように歩く3人の男性が真っ先に目に入った。

「ちょっと待てよ」

「もうしつこいっ」

嫌がってはいるが、知り合い同士だったら部外者の出る幕は無いな。

「勝手に縄張りに入るのが悪いんだろ?」

「関係無いでしょ?つきまとわないでよ」

「おいっ」

1人の男性が腕を掴むと女性はすぐに男性の手を振り払い、立ち止まった女性が男性と睨み合ったときに不意に袖を引っ張られる。

「氷牙君、止めた方が良いよぉ、ケンカになっちゃう」

「そうか」

ゆっくりと近づくと、4人は黙ってこちらに顔を向けた。

じゃあ何でシントはミヤビを連れてきたんだって感じですけどね。笑

ありがとうございました。

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