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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第五章

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その時は少しずつ近づいて

その直後に小さな落雷音が3回轟き、リアの指先から電撃のように光線が放たれたのが理解出来たときには、すでに変身した男性は今にも地面に伏そうと倒れ込む寸前だった。

「ああ、音也、羨ましいよその丈夫さ」

「いやいや、そんなことよりリアさん、強すぎ」

小さく鼻で笑いながら満足げな表情を見せるリアの横顔に、ふと目を奪われていることに自分でも気が付いた。

「まぁ私は頑丈じゃないし、結局はさ、判断の速さなんだよ。空手も同じ、結局は相手より速く動いて、相手よりも速く拳を突き出した方が勝つ、ただそれだけなんだよ」

判断力か・・・さすがに説得力が凄まじい。

「特に音也は考えないで動くことを癖にした方がいいよ」

「直感、ですよね」

「うん」

ふと倒れているテロリスト達に目を向けたとき、全身を白く染めた男性がゆっくりと動き出したのが目に留まる。

あ・・・。

「何だ、あっちもそれなりに丈夫みたい」

「ふぅっ・・・くっさすがに報告にあっただけの事はあるようだ」

ようやく立ち上がった白い男性が真っ直ぐリアを睨みつけると、リアは悠然と立ちながらゆっくりと腕を組む。

「だが、最後に勝つのは我々だ、後でゆっくりと後悔するがいい。貴様がどれほどのものに手を出したかということを」

どういう意味だろう・・・。

そう言って男性が小さく手を挙げると、直後に男性の隣に突如もう1人別の男性が姿を現したが、またその直後に2人は一瞬にしてその姿を消していった。

うわ・・・すごいな、本物のワープだ・・・。

小さく鼻息を吐いたリアにふと顔を向けると、こちらと目を合わせたリアはどことなく困ったような顔色を見せた。

「どうやら、こいつらには大きな黒幕って感じの組織があるみたいだね」

黒幕か・・・。

確かにこの2人と、さっきの白い人とはどことなく距離感があった。

パトカーのサイレンが聞こえる前にその場を後にしながら、リアは取り出した携帯電話を頬に当てる。

「もしもしアリサカ?何か報告したいことが出来たから・・・うん」



「前に、ハンマー男がいるテロ組織を叩くにはあと2つ駒が足りないって話をしただろ?まぁお前がその1つだとして、こいつがもう1つの駒だ」

背は高そうに見えるが、何となく伝わってくる気迫のようなものが薄い男性は、軽く会釈をしてから椅子に座った。

「ほら、ミサが見つけたっていう例の透明人間だ」

「あ、どうも、フウマと呼んで下さい」

制服を着てるから、この人も高校生ってことか。

「あぁ、ノブ、ユウジには鉱石使うことまだ言ってないの?」

「まぁ、な・・・駒も揃ったしな」

「そうか」

苦笑いを浮かべていたノブは素早く息を吐くと、少しずつ真剣な顔つきへと変えていく。

「まぁそういうことだから、次で決着つけないとな。具体的な作戦は、また神奈川の奴らと集まったときに考えるから、とりあえずお前ら、そういうことで頼んだぞ」

「分かった」

「はい」

ホットミルクを注いで適当に椅子に座りしばらく過ごしていると、ふと静かに隣に座ってきたミサの表情がいつもの落ち着いたものとは何となく違うような感じがした。



はぁ、どうしよう。

何となく氷牙の顔が見づらいわ。

・・・あ、でも一緒にライブを見てから、話を切り出そうかしら。

それなら岡田君にはもう少し待って貰わないと。

・・・一応メールしとこっと。


岡田君、告白の件、もう少し待ってくれないかしら?実は、好きな人とデートの約束してて、それが終わってから言おうと思うの。

もしフラれでもしたら、気まずいままデートに行くなんて嫌だもの。


ヒカルコとユウコも帰ってきたので、とりあえず落ち着きを取り戻すために2人と話をしていると、不意を突くように急に手の中が振動し始める。

・・・返ってきたみたいね。


分かった。

ていうか、全然気にしなくて良いよ。

俺が勝手に言ってるだけで、何か、気を遣わせてごめんな。


優しいのは分かるけど、何かうさん臭いわね。

携帯をバッグにしまいながら、ふと氷牙に顔を向けたときに氷牙もこちらに顔を向けてくる。

眉も動かさない表情とその眼差しからは、何も考えてないようにも見えるし、何もかも見透かされているようにも見える。

でも嫌なものを見るような目ではないのよね。



何かを訴えかけてるような目でもないし、あえて聞かなくていいか。

「そうだミサちゃん、ニュースで見たよ?ミサちゃんの学校でテロが起きたんだって?」

ユウコが喋り出すと、ヒカルコも少し深刻そうな表情でミサに顔を向ける。

「えぇそうなのよ、もうすごいびっくりしたわ?巨人がね、壁に大きな穴空けちゃったし」

「穴って、教室に?」

「えぇ」

「そっかぁ、大変そうだねぇ」

ユウコの相槌にヒカルコも一緒になって頷いていると、ゆっくりとユウコがこちらに笑顔を向けてくる。

「でも氷牙なら、すぐに巨人なんか倒しちゃうでしょ?」

「いや、僕は別の用事があって行けなかったんだ」

「え・・・大丈夫だったの?」

すると一瞬にしてユウコが青ざめたような表情になり、心配そうな眼差しでミサを見る。

「えぇ、ノブとシンジとミント達が来てくれたし、マナミが居てくれたから怪我人も出なかったわ」

ミサの落ち着いた微笑みに、ユウコはゆっくりと息を吐きながら、肩の力を抜くように乗り出していた体を引く。

「良かったぁ・・・まぁシンジなら・・・まぁまぁ役に立つしね」

遠くのシンジに一瞬目を向けたユウコが噂話をするように微笑むと、相槌を打つミサは少し困ったように微笑み返す。

「そ、そうね」

「続いてのニュースです。特殊な能力を持つ人間による通り魔事件が増えている一方で、ゲリラ的に発生するテロや傷害事件に対して、警察関係者以外の特殊な能力を持つ一般人によって、事件が解決されている件数が日に日に増加傾向にあるということが当局の調査で分かりました」

力を持つことで破壊願望が生まれる人も居れば、正義感が生まれる人も居るってことかな。

「こうした一般人の方々に突如正義感が芽生え始めたのには、ネットで話題になっているある人物が関係していると思われます」

画面が切り替わり、やじ馬の中の一般人が撮影したような映像が流れ始めると、何やら見覚えのある、全身を白い筋肉質なスーツで固めた人物が戦う姿が映し出されていた。

あの人は確か・・・。

「雑誌のモデル出身で、現在はドラマやCMなどで活躍している、瀬良翔太朗さんなんですけども・・・」

前にヒカルコに見せて貰った雑誌に載ってた人だったな。

「あら?」

ソファーに座って銀色の棒状の物を頬の上で転がしていたミサは、いきなり身を乗り出す勢いでテレビを見た。

「どうかした?」

「今、貴方が映ったように見えて」

インタビューに応えている瀬良翔太朗の背景には、無残にも壊されたメリーゴーランドのようなものが微かに見えた。

「遊園地にヒロヤとテロを鎮圧しに行ったとき、瀬良翔太朗が後から加勢して来たんだ。このインタビューの背景があの時のものだったら、実際にあの場所に居たかもね」

「へぇ・・・」

驚きの表情を浮かべたミサはふと何かを言いたそうな表情をこちらに向けてくる。

「やっぱり貴方、自警団に入れば良いのに。ああやってテロリストと戦ってるんだから」

「結果的にテロを鎮圧した形になっただけだよ。僕は戦いたいだけだから」

するとミサの眼差しは怒りに似た何らかの強い意思が宿ったようにその色を変える。

「じゃあ貴方、もしテロをする側に誘われたら、街を壊すの?」

「街じゃなくて、軍隊が相手だったら・・・断らないかもね」

「ちょっとっ・・・テロなんて、絶対にやったらいけないんだからっ」

声を荒げたミサの眼差しからは、はっきりと怒りの感情が伝わってくる。

「そうか」

まぁテロでもヒーローでも、能力者が相手じゃなきゃ張り合いが無いしな。

「そうかって、ちょっとほんとに分かってるの?そんなことしようとしたら、あたし許さないわよ?」

「まあ、破壊願望が強い人ほど強い力を求めるし、ヒーローよりテロリストと戦う機会の方が多いと思うよ?」

「の方が多い、じゃダメなの。絶対にあっちゃダメなの、分かった?」

まさかあんなに声を荒げるなんて思わなかったな。

「あぁ」

依然として強い眼差しのままこちらを見つめるミサは小さく頷くと、感情を抑えるように鼻から大きく息を吐き、テレビを消してから黙ってベッドの方に歩き出した。

朝を迎えてゆっくりと起き上がったミサを横目に見ていると、こちらを確認したミサはゆっくりとソファーに歩み寄って来たので、近くに来たときに顔を上げると目を合わせてきたミサはすぐに笑みを浮かべる。

「おはよ」

「あぁ」

いつものようにミサの支度が終わり、再びミサがソファーの方に向かって来ると、ミサは静かに向かいのソファーに腰を落とした。



氷牙ってほんとに表情が分からないから、もしかしたら、ほんとに自分の意思だけで行動しちゃうかも。

「もし貴方が、ほんとにテロを起こそうとしたら、あたし全力で止めるから」

「・・・どうやって?」

・・・な、何ですって?

下向き加減の目線のまま氷牙が口にした言葉に、何となく氷牙から人間らしさを感じた。

「僕は別に、単に戦闘力の話をしてるんだ。覚醒もしてないのに、どうやって僕を止めるのかなって」

・・・確かに、まともに戦ったら、あたしじゃ氷牙に敵いっこないわね。

「でも、何もそんな力でねじ伏せるようなやり方しか、方法が無い訳じゃないじゃない。ちゃんと話せば、貴方だって分かってくれるでしょ?」

「・・・まぁでも、今の時代、特に攻撃型の能力者は、どうしても力の有無で物事を判断しちゃうかも知れないよ?」

何なのかしら?

氷牙ったら今朝はやけに素直じゃないわね。

もしかしたら・・・本音を言える相手だって認めてくれたのかしら?

「え、えぇ、そうね」

・・・もしそうなら、告白しても、受け入れてくれるかも知れない。

毎晩、一緒の部屋で寝てたから、きっとその効果が現れたんだわ。



そういえば、これだけ能力者というものが世の中に知れ渡っても、大規模な戦争が起きたとかニュースでも聞かないな。

「・・・ミサ」

「何かしら?」

妙にニヤついた表情のまま、ミサはこちらに顔を向けている。

「準備出来たなら、ホールに行こうよ」

「・・・あ、え、えぇ、そうね」

少し慌てながらミサが立ち上がったので、部屋の電気を消してミサと共に部屋を出た。

「ねぇミサちゃん知ってる?大阪の辺りでね、超大きい動物が出たんだって」

「あらそう、でも鉱石って色んな場所に埋まってるから、関西でも野生動物の能力者は沢山居るんじゃないかしら?」

するとユウコは小さく首を傾げながら斜め上に目線を向ける。

「何かね、この世のものじゃないんだって」

野生動物の能力者も、身体の変化によっては原形が無くなる奴も居るだろう。

「でも、野生動物の能力者ってそうゆうものなんじゃないのかしら?」

「うーん、そうかなぁ」

「ユウコ、その情報、どっから聞いたの?」

ヒカルコに顔を向けたユウコはまたすぐに目線を斜め上に向ける。

「んー、大阪に住んでる、いとこからだよ」

「そっかぁ、ニュースで聞いたことなかったから」

「でもすぐにニュースでも流れると思うよ?」

ニュースにならないほどのものだったら、やはりただの野生動物の能力者ってことになるだろう。

「ユウコ、その動物ってどこから来たって?」

「ん?私のいとこが見た話じゃ、もうすでに何人かが戦ってる最中のときに見かけたらしくて、でもすぐに逃げてきたから、詳しいことは知らないみたい」

「そうか」

確か大阪に友好関係を結んだ組織があったな。

「見かけたって、まさか街中じゃないわよね?」

「ううん、家に帰る途中だったから、きっと街中だと思うよ」

街中?

そんな大きい動物が街に入るまで誰も気づかなかったのか。

「それじゃ氷牙、行ってくるわね」

「あぁ」

ホールにすっかり人気が薄れてくると、ミントとライムがこちらのテーブルに近づいて来るのがふと視界に入った。

「ねぇ氷牙、ノブが呼んでるよ?」

リアさんの最大の武器は判断力ってことなんでしょうかね。笑

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