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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第五章

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ザ・オキュペーション4 デターミネーション

だとしたら、須藤刑事を説得してもあのジンノって人が命令すればSATは動くって訳か。

「どうしても、カラスも持って行きたいの?」

「は?あ、いや別に?」

少し驚くような表情になったジンノがすぐにそう応えたときに、後ろで話を聞いていた須藤がジンノの隣に近づいた。

「何言ってるんですかジンノさん、立ち退かせるために話してたんじゃないんですか?」

「ああわりぃな、俺ぁいっぺん能力者ってのと話してみたかったんだ」

「え・・・」

おや、須藤刑事があんなに困る顔するなんて。

「お前、お偉いさん方の能力者に対する見方知ってるか?能力者ってだけでテロリスト扱いだ」

何か急な展開だけど、戦わなくて済みそうかな。

「まぁ、お偉いさん方の話だから、あまり鵜呑みにはしてないんだけどな。だがあまりにもそういう話ばっかり聞くもんだから、まぁ現場の人間としてはさ、本当に能力者ってもんがそんな人間ばかりか確かめたくてな」

「そうですか」

須藤が真剣な表情で小さく頷くのを確認すると再びジンノが体をこちらに向けた。

「なあ青年、お前は、本気で俺達とやり合うつもりか?」

「いや、僕はただマイのボディーガードだし」

やはり警察は能力者を警戒してるってことかな。

ジンノのその眼差しには鋭さがあるが、それは警戒心というよりかはただ表情を伺うようなものだった。

「あくまで自分からは手を出さないってことか。じゃあお前は、テロを起こしたいとは思わないのか?」

この人自警団のこと知らないのかな?

「というか、僕の周りの能力者は須藤刑事達と協力し合ってる仲なんだけど、知らないの?」

「・・・は?」

呆気にとられたような顔を見せたジンノはすぐに須藤の方へと振り返る。

「は?お前、あいつ、知り合いか?」

「・・・はい」

「はいじゃねぇよ。協力し合うって何だよ」

須藤は一瞬こちらを見てから、いつものような澄ました態度からは見られない、困惑さが伺えるたような表情をジンノに向けた。

「北村が、あの白髪の青年に名刺を渡したそうで、それをきっかけに白髪の青年の仲間が自警団を結成してから以後、自警団とは特テロと独自に連携を取りながらテロの鎮圧にあたってます」

「・・・独自、か、だからって俺には言えよ、そういう繋がりがあんならよ」

「すいません、外部にも、上層部にも極力漏らしたくなかったんで」

申し訳なさそうに須藤が応えると、体はこちらに向けていたジンノは少し険しい表情を浮かべると共に体も須藤の方に向ける。

「俺は外部か?お前らがSAT呼べるっつったって、最終的に決められんのは俺なんだぞ?それになぁ、協力者だったら協力者同士で顔見知りじゃねぇと、連携も糞も無ぇじゃねぇか」

「すいません・・・」

いつも鋭い眼差しで澄ました表情の須藤刑事でも、あのジンノって人には頭が上がらないのかな。

ふと後ろを振り返ってみると、マイは巨大なカラスと問題無く話をしているように見える。

「お前ら、もう良いぞ」

ジンノがそう言ったので目線を戻すと、こちらに銃を向けていたSAT隊員達は規則正しく揃って立ち上がり、銃を上げて一斉にジンノの方に体を向けていった。

「青年、いきなり悪かったな・・・じゃ、戻るぞ」

そして足早にジンノはどこかふて腐れたような背中を見せながら、他の隊員を連れて公園の入口に向かって行った。

あの人、ただ話をしたかっただけだったのか。

じゃあ何で銃を向けたんだろう?

能力者に対する威嚇か・・・いや、カラスに向けてたのか。

「あ、そうだこいつ運ばなきゃな」

眠らされている巨大な猫を運び出す作業に取り掛かるのジンノ達を見ながら、ふと須藤がこちらの方に近づいてきた。

「ジンノさんの事は、気にしないでくれ」

「・・・分かった」

少し気の抜けたような表情で歩き出した須藤を見ながら、マイの下に戻る。



先程の更に3倍くらいにまで巨大化した男性に怯まずにシンジも右腕を朱く染めて巨大化させると、シンジは振り下ろされた巨大な拳を踏ん張りながらもしっかりと受け止める。

しかしすぐに巨大化した男性はシンジの右腕を掴み、軽々とシンジを入口の方に投げ飛ばした。

ブースターを出して体勢を立て直したシンジは難無く床に降り立すと、すぐにブースターを使って巨大化した男性の方に飛び出し、回転しながら右腕を突き出す。

両腕を交差させてシンジの拳を受けた巨大化した男性は、勢いを殺せずに大きくのけ反り後ずさりして、そのまま壁に背中を叩きつける。

「くそっ」

聞き取りづらいほどの太い声が響くと共に、巨大化した男性が壁から勢いよく背中を離し、その勢いでノブに向かって手の平を振り下ろすが、巨大な手がノブに着く直前に突如巨大化した男性の顔面に衝撃音が轟いた。

少しのけ反った巨大化した男性の顔の前にはノブが浮いていて、すぐにノブがいた床の方に目を向けたが、すでにそこにノブの姿は無い。

やっぱり瞬間移動なのかしら・・・。

それにしてはさっきは残像がはっきり見えたけど。

「あっ」

阿未花に顔を向けると、阿未花は少し嬉しそうにノブを見た後にこちらに顔を向ける。

「もしかして、御咲が言ってた好きな人って、あの人?」

「え・・・ち、違うわよ、あんなの、タイプじゃないし」

ノブの方を見た阿未花は下を向いてからこちらに目線を戻す。

「うーん、まさか、隣の高校生じゃないよね?」

「全然違うわ?」

「だよね」

あんな大きさだけど、2対1だし、負ける訳ないわよね。

あ、でももし、他のテロリストが加勢して来たら、危ないかも。

ふと巨大化した男性の足元に倒れている男性を見ていると、男性はいきなり動き出し、ノブが机に置いた銃に向けて手を伸ばした。

あ、銃が・・・。

2人共、戦いに夢中で気づいてないんだわ。

素早い展開にただ眺めることしか出来ずにいると、瞬く間に男性は銃を引き寄せ、黒板の方に走り出し、そして銃をシンジに向ける。

男性の方に走り出そうと足を踏ん張った瞬間、銃声が響き、シンジの太ももに弾が当たる音が小さく聞こえると、すぐにシンジが床に倒れ込んで脚を押さえ始めた。

「ああっ」

「おいっ」

倒れたシンジを見たノブが血相を変えながら銃を持っている男性の方に顔を向けたと同時に、ノブの向こうにいる巨大化した男性が片足を上げたのが目に入った。

「ノブ後ろっ」

こちらに顔を向けようとしたノブがすぐに反対の方に顔を向けるが、避ける間も無くノブは巨大化した男性の振り出されたつま先に直撃を受け、鈍い音と共に大きく宙を舞う。

「ノブっ」

運よく目の前に転がってきたノブに駆け寄ると、意識はあるみたいだが、うずくまったまま動かずに辛そうな表情をしている。

「そこから動くなよ?」

落ち着いた強い口調で喋り出した男性の方に睨みつけるように目を向けるが、男性の目と銃口は男性に向かって走り出そうと身構えている、ミントとライムの2人に向けられていた。

「ヘタに動かない方が身のためだ、見ただろ?これは、本物だ」

どうしよう、一気に不利になっちゃったかも。

巨大化した男性を見ると、倒れているシンジに向かって蹴り飛ばすような勢いで足を振り上げていて、シンジは右腕で受け止めたものの激しく床を転がり、こちらの目の前まで大きく飛ばされた。

「もう良いっ帰るぞ?」

銃を持った男性はミント達を視界に納めながら、巨大化した男性に向かってそう叫ぶ。

「は?もうお前らとは関係ねぇ。オレはここをぶっ壊す」

「何だって?」

あっ。

銃を持った男性が驚いて巨大化した男性に顔を向けた瞬間に右腕を前に突き出し、何十もの少し太い糸を銃を持った男性に浴びせかける。

「なっ」

すぐに男性の腕を縛り上げると共に、糸を絡ませて銃を奪う。

「くそっ能力者か」

男性の目線の先に目を向けると教壇が宙に浮いていて、教壇が勢いよくこちらに飛び出したと同時に左腕を教壇に向けて突き出す。

「御咲ぁっ」

糸が絡んだ教壇は目の前で動きが止まると、まるでツタに絡まりながらも必死にもがくかのようにその場に留まっている。

阿未花に顔を向けると安心したように座り込んだのですぐに男性に集中するが、その表情は焦っているようなものではなかった。

「これでもう、教壇は動かせないわよ?」

「・・・ちっお前だって、両腕塞がってんじゃんかよ」

睨むような眼差しで笑みを浮かべて目線を逸らした男性が、何かを見つけたように表情を変えたので、すぐにその方に顔を向けると、目の前で倒れていたシンジの巨大な腕がゆっくりと宙に浮き始める。

まさか、人も飛ばせるのかしら?

「く・・・」

シンジが抵抗するも、巨大な腕はこちらに狙いを定めるかのようにゆっくりと拳を後ろに引いていく。

「邪魔すんなよな」

シンジの拳に体を向け、首周りにファーを出して身構えたとき、男性が居る方から衝撃音が聞こえると、シンジの巨大な腕は力が抜けたように崩れ落ちた。

「・・・お、前らも、かよ」

すぐに目を向けると、男性は何かに打たれたかのように苦しそうな表情でミント達を睨みつけていた。

ふう、ミント・・・。

「おいっ・・・何してんだっ・・・手、貸せって」

「うるせぇっ・・・勝手にやってろ」

そう言い放つと巨大化した男性はおもむろに後ろの壁に体を向け、走り出すかのように体勢を屈める。

まさか・・・。

「おおおぉぉ」

大きな地響きと共にその巨体は真っ白な壁に大穴を開けると、颯爽と木漏れ日に照らされた粉塵の中へとそのまま消えて行った。

・・・か、壁が。

「あいつ・・・やりやがったな」

糸に縛られた男性が呟きながらこちらに顔を向けたとき、その真剣な眼差しにふと目を捕われる。

「おい、解けよこれ。あいつを止めなきゃ、ここが潰れるぞ?」

「な、出来る訳ないでしょ、あなただってテロリストなのに」

「はっお前らじゃ止められる訳ないだろ」

でも確かにずっとこうしてる訳にもいかないわね。

「ミント、マナミ呼んで来てくれる?」

「あ、うん」

ミントが扉の方に走り出すのを見てから男性に目を向け、男性に絡めている糸を更に強く絡ませて両腕両足を縛り、頭にも糸を巻いて目隠しさせた状態で男性を寝かせる。

教壇に絡ませた糸も解いてから、痛みを我慢しながら座り込むシンジに歩み寄る。

「大丈夫?」

若干汗ばんでいるシンジはこちらに顔を向けるが、歯を食いしばるように歪ませたその表情ですぐに太ももに目線を戻して小さく首を横に振る。

結構、血が出ちゃってるわね。

「・・・超、痛い」

「もうすぐマナミが来るからね」

黙って頷いたのを見てからゆっくりと立ち上がりふと教室を見渡すと、後ろの方に避難している人達の目線が妙に痛かった。

「ライム、ミントが来るまでここで待ってて?」

「え・・・ミサ、1人で行くの?だめだよ、私も行くよ」

その直後に、壁に開けられた大穴の向こうから何かが崩れ落ちるような轟音が聞こえる。

始まったみたいね。

すぐにでも止めに行かないと。

「でも・・・」

「御咲、1人じゃ危ないよ。行かないで」

飛びつくように腕を掴んできた阿未花の手を掴むが、必死に訴えるその表情に自然と手の力が無くなっていく。

「でもこのままじゃ、大学が・・・」

「・・・おい」

思わず目を向けた先には、体中に糸が絡まったまま力無く横たわる男性の姿があった。

「俺にも行かせろ」

「な、何言ってるの?」

「お前1人で何が出来んだ?言っとくけどな、俺は何も、破壊するためにここに来たんじゃない。それに俺なら、あいつの動きを止められる」

さっきのシンジみたいに人も浮かせたり飛ばせたり出来るなら、動きを封じることも出来るってことかしら?

「だ、だとしても、解いたら逃げるでしょ?そんなの、すぐに信じられる訳ないわよ」

「じゃあ、あのままにしておくってのか?」

それは・・・。

こんなとき氷牙ならすぐにやっつけてくれるのに。

でも、あたしだって、動きを封じるくらい。

「ミサ、一緒に行こうよ、ね?2人なら大丈夫だから」

「ライム・・・」

でも阿未花を1人にしておくのは不安だわ。

「おいおい、1人も2人も変わらないだろ」

「あなたは黙ってて」

うーん・・・まだかしらミント。

再び遠くから轟音が聞こえる度、募る焦りが今にも体を走らせようと心を締めつける。

この事件はミサに少なからず影響を与えることになるんでしょうね。

ありがとうございました。

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