クリスタルを求めて2
これまでのあらすじ
能力者になり、アリサカと関わるようになっても変わらない日常に小さな失望感を感じる音也。そんな中、遂に親友達に能力者であることを知られたが、親友達はすぐに自分達も能力者になると決意する。そして音也は能力者になる為に必要なクリスタルを探し始める。
何も無いか・・・。
「音也、何かあった?」
「ううん」
愛華音に応えながらゆっくりと腰を上げたとき、ふとその根っこの膨らみに妙な違和感を感じた。
「音也、行こうぜ」
「うん」
何も無かった。
ここら辺に変な感じがしたのは確かなんだけど。
マイの肩の上でしゃがみ込んでいるカラスはもうほとんどリラックスしてるように落ち着いている。
「別の林の大きい動物の巣にも行きたいんだけど、良いかな?」
「僕は良いけど」
ヒカルコに顔を向けると、光の柱を消し、緊張感を緩ませたような表情のヒカルコはマイとこちらを交互に見る。
「良いよ、行こ?」
微笑みながら応えたヒカルコを見て笑顔で頷いたマイはゆっくりと歩き出していく。
別の巣の場所ってもう分かってるのかな?
「ねぇカラスさん、別の巣の場所知ってる?」
マイが話しかけると、カラスはマイの肩に座ったままマイに顔を向ける。
「ほんと?じゃあ教えてくれる?」
さっき初めてマイと話したのに、こんなにすぐになつくなんて。
人懐っこい性格なのかな。
ヒカルコとマイの世間話を聞き流しながら池を左手に進んでいき再び林に入ると、すぐに遠くからカラスの鳴き声が聞こえてきた。
するとマイの肩に乗っていたカラスが立ち上がり、ゆっくりと飛び立って木の枝へと降り立つと、林の奥に向かって鳴き声を上げ始めた。
今度はカラスの巣ってことか。
呼びかけるような鳴き声に、次々とカラスが集まって来て枝に降り立って来ると、間もなくして重たい足音のようなものが茂みの向こうから聞こえてきた。
そして茂みから出て来たカラスはマイよりも大きく、翼はコウモリのように手が生えた形に変化していて、後ろには尻尾のようなものが確認出来た。
親玉かな。
大きなカラスがマイを見据えるように立ち止まると、マイについて来たカラスは静かに飛び降りてマイの隣に降り立ち、大きなカラスの方に体を向ける。
「マイね、カラスさん達に伝えたいことがあるの」
大きなカラスが首を傾げると、木の枝に止まっているカラス達も互いに顔を見合わせたりし始める。
「ううん、さっきね、大きな猫さんにも言ったんだけど、むやみに街に出ない方が良いと思うの」
カラスって群れで動くイメージがあるし、親玉を納得させられれば安心は出来そうだな。
「でも、そしたらカラスさん達が危ないよ?」
大きなカラスは目線を下に向けると同時に、手で胸元を掻き始める。
「そうそう、きっとね、来たら軽く追い返すくらいの感じで良いと思うの」
鼻からため息のように息を小さく吐いた大きなカラスは、ゆっくりと首を動かして空や地面へと目線を向けていく。
人間みたいに最初から疑ってかかったりしないのかな?
大きなカラスはこちらやヒカルコを見た後に、マイの隣に立っているカラスに目を向ける。
「え?・・・この子はマイとお友達になったの・・・んふふっ何かね、先月、独り立ちしたみたいよ」
マイの微笑みから見て、何となく話が弾んでいるように見える。
ならこのカラスはマイについて行った方が食べ物に困らないと思ったのか。
「・・・うん、ありがとうカラスさん、じゃあマイ達、行くね」
カラスがマイの肩に乗るとマイは大きなカラスに手を振って歩き出し、大きなカラスと木の枝に止まっているカラス達が去って行くのを見ながら、マイ達と林を後にする。
ボディーガードは必要無かったみたいだな。
「じゃあ、帰ろうよ」
マイが笑顔で喋り出すと、ヒカルコは不思議そうにカラスを見る。
「あれ?そのカラスは連れてくの?」
ヒカルコがそう言うが、カラスはすでに気を許すかのようにマイの肩に腰を下ろして座っている。
「うん、1羽くらいなら家で・・・あ、ホテルで飼おうかな」
「ああ、それも良いかもね」
ひらめいたように喋りながら微笑むマイにヒカルコも安堵したような微笑みを返す。
「しつけとか出来るかな?」
マイはこちらに顔を向けると、カラスを見てから何やら自信の伺えるような微笑みを見せてきた。
「大丈夫だよ」
「氷牙知らないの?カラスって鳥類で1番頭が良い種類に入るんだよ?」
するとヒカルコも自信ありげにニヤつきながらそう言ってカラスを見る。
「確か賢さは犬と同じくらいだって言ってたよ」
「そうか」
まあ言葉が通じるなら、しつけなんて難しくも何とも無いか。
「じゃあ名前つけてあげたら?」
するとこちらに振り向きながら笑顔になったマイは目線を上げながらニヤつき出した。
また太郎かな。
「んー、じゃあねぇ・・・クロルって名前、どうかなぁ?」
色から来たか。
そう言ってマイがカラスに顔を向けると、少し間が開いた後にマイの笑顔が深くなった。
悪くはないな。
そういえば性別はどっちだろう。
「一休みしたら、あっちの方行ってみるか」
「そう、だね。でも何か、見つかる気がしないんだけど、手掛かりもないし」
「うーん、どうする?音也」
ホントにさっきの場所が気になるけど、見た感じ何も無かったしな。
「ネットに出てた他の場所は?」
すると顔を見合わせた2人は、どことなく意見に同調するようなものではないような表情を浮かべる。
「あんま遠く行きたくないなぁ私」
「オレも。音也だって胸騒ぎがって言うし、それにさっきの新種の動物、あれ、クリスタルに関係してないなんて言い切れないだろ?」
確かに、新種の動物とクリスタルとの関係か。
「あそうだ音也、聞いてみてよ、その入った組織の仲間に」
「ああそりゃ良いや。その手があった」
「え」
って言っても、連絡出来るのリアさんしか居ないんだけど。
リアさん、多分今頃忙しいだろうな。
すると2人はまるでこちらが携帯電話を取り出すのを待つかのように、揃って何食わぬ顔を向けてくる。
「ほら」
公衆トイレの裏からおじさんの部屋に戻ると、おじさんは片手でキーボードを叩きながらもすぐにいつものようにこちらに体を向けてくる。
「お帰りなさい、おや、新しいお友達ですか?」
「そうなの、クロルって言うの」
マイが満面の笑みで応えているときに会議室へと扉が開くと、そこからは何やら引き締まった表情のノブとミント達が姿を現した。
「もう繋いでますよ」
「分かった」
おじさんに応えながらノブ達がこちらに歩いて来るので、道を開けながらノブ達に目を向ける。
「援軍要請?」
「まあな」
すれ違いざまに応えたノブを見送りマイとヒカルコと共に会議室に戻る。
「わぁ、カラスぅ」
マナミがクロルを見ながらゆっくりと微笑みを浮かべると、マイもクロルを見た後にマナミに微笑みかける。
「うん、クロルって言うの」
「へぇ・・・クロルちゃん?あ、クロルくんかな」
首を傾げながらマナミがクロルを見ると、マイも首を傾げてクロルを見た。
「クロルって男の子?・・・そっかぁ、クロル、男の子だって」
「そっかぁ」
ホールに出て舞台を降りるとマイはすぐに廊下に向かったので、何となくヒカルコと共にミサが居るテーブルに向かった。
「お帰り」
ミサの隣にヒカルコが座るとミサがそう言ってヒカルコに優しく微笑み、ヒカルコの隣に座ったときにミサはこちらにも優しく微笑みかけてきた。
「ミサ何してたの?」
ヒカルコの問いにミサがゆっくりと目線を上げると、ミサは何故か照れ臭そうにニヤついてからヒカルコに目線を戻す。
「そうね、のんびりしてたわね。ヒカルコこそ散歩は楽しかったかしら?」
「うん、上手く話が進んだから、ボディーガードは必要無かったけどね」
「あらそうなの」
ホットミルクを持って席に戻り、ミサとヒカルコの話を聞き流しながらホットミルクを飲む。
暇だな。
また異世界にでも行こうかな。
「もしもし、あの、今大丈夫ですか?」
「うん、今は別に何も無いけど、何?もう用が済んだの?」
「あ、いや、ちょっと聞きたいことがあって」
「えぇ?何だ・・・聞きたいことって何?手短にしてよね」
怒ってないみたいだけど、やっぱりちょっと迷惑だよな・・・。
「あの、リアさんって魔法のクリスタルって知ってますか?」
その時にふと愛華音の何かを勘繰るような真っ直ぐな眼差しに目を捕われる。
「へ?クリスタルぅ?何それ」
「え、あの、普通の人間が能力者になるためのクリスタル、です」
「・・・あ、ああ」
お、知ってるのかな?
「知ってるよ?確かアリサカとホンマが使った」
「ホントですか?え、それどうやって手に入るんですか?」
要太に顔を向けると、要太は話の内容に勘づいてか少しだけ期待を寄せるような笑みを浮かべる。
「アリサカの話じゃ、巨大動物の巣にあるらしいけど」
「あ、はい、僕もそう思って探してるんですけど、それらしいものは見当たらなくて」
「うーん、ていうか何で今探してんの?」
「実は、僕の友達がクリスタルを使いたいって言ってるんで、それで」
声の調子じゃ、どうやらリアさんも知らなそうだ。
「ふーん、そういえばアリサカ、知り合いから地面を掘って取り出したっていう話も聞いたって言ってたよ」
地面から、掘って取り出した?・・・。
そういえば、あの違和感がある場所にホントにクリスタルがあるとしたら、それは地面の中だってことなのか?
「じゃあ、クリスタルって、地面の中に出来るんですか?」
「まぁ、私はアリサカから聞いただけだから、ホントかどうか分からないけどね」
「そうですか、でもすごい手掛かりになりますよ、ありがとうございました」
「あ、うん、じゃあ」
携帯電話をしまいながら2人に顔を向けると、要太は同じように期待感が伝わったような笑みを浮かべ、愛華音は真っ直ぐな眼差しの中に、更に疑惑を纏ったような顔色をしていた。
「クリスタルって地面の中にあるのか?」
「何かそうみたい」
「ねぇ」
口を開いた愛華音に顔を向けると、何故か愛華音はその表情に不安感と若干の嫌悪感を伺わせていた。
「電話の相手、女?」
「え?」
な、何だろ、その聞き方・・・。
「うん、そうだけど」
愛華音が要太に顔を向けると、要太は何かを理解したかのように急にそわそわし始めた。
「お、おう音也、どういうことだよ、音也には山川が居るのに」
「え、な、何でよ、違うよそんなんじゃないよ」
「違うでしょ要太。私が聞きたいのは、仲間ってどういう人達なのかだよ。電話での話し方とか、仲間って言うより下っ端って感じだったじゃん」
うお、話し方が普通になったってことは、今愛華音は本気だ。
「そ、そ、そうだね。音也、そういえば仲間ってどんな奴ら?」
ここはちゃんと正直に言わないとダメか。
「あの、アリサカソウマ達だよ」
「えぇっ・・・ま、マジかよ」
要太が愛華音に顔を向けると、さすがに愛華音も要太のようにただ驚いたような表情を浮かべた。
「音也、それ、ヤバくない?大丈夫か?」
「うん、話してみたら、皆普通だったよ、やっぱりテロリストって感じじゃなかった」
「ふぇぇ・・・マジかよ。音也、あのアリサカの、仲間にねぇ」
ふと愛華音と目が合うと、その神妙な眼差しは心の奥底に小さな溝を感じさせた。
「じゃあ、とりあえずさ、さっきの鳥のとこ、もう1回行こうよ」
「あぁ分かった」
再び2人と共に見知らぬ美しい鳥を見上げてから、違和感のあった太い根っこのある方へと回り込む。
「てか、どうやって穴掘るんだ?」
「え・・・っと」
ふと目に留まった小枝、石を使い、根っこの周りの土を掘り出していく。
「お?何だそれ」
そして少ししてそれは、根っこの下に絡まるような形で姿を現した。
「うわぁ、宝石じゃん、ホントに」
これじゃ、この木ごと引き抜かないとダメか。
ん?・・・。
そのクリスタルをまじまじと見つめながらまた少し土を掻き出すが、一向にそのクリスタルは全貌を見せようとしない。
「で、でかいよ、これじゃちょっと無理かも」
さすがに木を引き抜いたら怒られるよな。
すると要太が何やら若干の不気味さを感じさせるほどの笑い声を出し始める。
「こんな時のために、持ってきたんだよ」
そう言って要太がポケットから取り出した物を見ると、それは小さなアイスピックだった。
「さすが要太じゃん」
「へっへっへ、ほら」
愛華音は主語を後に話す癖があるんですね。しかし本気になったら普通になるらしいです。笑
ありがとうございました。




