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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第五章

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2人の眼差しは太陽のように

ふぅ、言うのは、今しかない、か。

「じゃあ何で学校サボったんだよ」

「その、テロリストとさ、戦ってたから」

「え?」

「だから僕、戦えるんだ。戦える力が、あるんだ」

再び2人が顔を見合わせると、こちらに目線を戻した要太は神妙な面持ちではあるが納得したような顔をして、愛華音は表情を落ち着かせたものの、どこか腑に落ちないような顔色を見せていた。

「マジかよ」

「能力者・・・まぁ、分かったけど、それは。でも、それがどう関係してるの?学校をサボるのと」

アリサカさんのこと言ったら、どうなるかな。

でももう、言わずに終われる空気じゃないし。

「実はさ僕、ある人達の仲間に入ったから、これからきっともっと学校サボると思う。テロ鎮圧とかで忙しいからさ」

重々しいため息を漏らしながら頷いた要太に顔を向けると、要太は少しだけ目を泳がせた後にどこかすっきりとしたような表情を見せ、そしてすぐにいつものあっけらかんとした面持ちをして見せた。

「そっか分かった。じゃあオレも能力者になる」

「え?」

「は?」

愛華音と共に声を上げながら要太の顔色を伺うが、その時ふと感じた気持ちは、孤独という名の風船から空気を抜く、小さな嬉しさだということが自分でも理解出来た。

「てか出来んの?そんな簡単に」

「え?愛華音知らないのか?魔法のクリスタル」

魔法のクリスタル?

何だそれ。

「知らないけど」

「オレも見たことはないけどさ、触っただけで能力者になれるクリスタルってのがあるらしいんだよ」

ゆっくりとこちらに顔を向けた愛華音は、要太の話をまるで信じていないかのようにニヤつき出す。

「いやいや」

「いやホントだって、ほらオレ達のクラスの矢川って不良、あいつもそれで能力者になったんだって」

「マジで?」

あの不良グループ、最近妙に態度がおかしかったのはそのせいだったのか。

テロリストにばっかり構ってちゃダメか。

この2人を守るためにも学校はサボれないな。

「何かヤバくない?あいつが暴れたら、学校とか」

「大丈夫だよ、そん時は僕が戦うから」

「おいおい、ならオレだって戦うよ、それにこれからは護身用でも能力者にならないと危ないしな」

するとそう言った要太に顔を向けた愛華音はすぐにその表情から、不安感や緊張感といったものを伺わせ始める。

「じゃあ、私も、なる、能力者に」

「え、でも」

能力者になったら、是が非でも戦うことになる。

愛華音を、危険な目に逢わせられる訳がない。

「いや愛華音は・・・」

「ヤダよ、仲間外れにしないでよ」

要太と顔を見合わせると、要太は一瞬だけ目を泳がせた後にどこか覚悟を思わせる力強い眼差しを見せていった。

「じゃあ、オレ達も能力者になろう」

「うん」



料理が下げられ始めたときにユウジがいつものように舞台のスタンドマイクの前に立つ。

「皆さん、どうも。最近、宮崎県辺りで大きな能力者の組織が出来たみたいですけど、宗教関係の組織とか、裏では軍事組織としても動いてるとか、色々噂されていて、この組織としてはあまり関わりを持ちたくないので、出来れば皆さんも勧誘には気をつけて欲しいと思います」

宮崎の他にも、世界中に同じような大きな組織があるかも知れないな。

ホットミルクを持って椅子に座ろうとしたときにふと近づいてくるシンジが視界に入る。

「おい氷牙、闘技場行こうぜ」

「そうか」

一口だけホットミルクを飲んでテーブルに置きシンジと共に闘技場に向かう。

「シンジはまた覚醒とかしてない?」

薄暗い通路を通っているときにそう聞いてみると、シンジは落ち着いた表情を見せているものの、その全体的な態度はどこか落胆のようなものを伺わせた。

「してないよ、ていうか第二覚醒で十分戦えるしな、やっぱり、お前が異常に強いだけなんだよ」

「そうか」

闘技場の中央に立つとシンジはすぐに右腕を暗めの朱い外殻で包み込む。

「氷牙も第二覚醒の姿になれよ」

そう言いながらシンジが下がっていくので、絶氷牙を纏って返事をしながらシンジから離れる。

前に蒼月を撃ったらシンジの手が凍って腕が使えなくなってたしな。

極点氷牙を纏い、紋章をすべてブースターに転換してからシンジ近づく。



あれが、氷牙の第二覚醒の姿なの?

動きが早過ぎるわ。

シンジったら、全然ついて行けてないじゃない。

「ねぇ、あの広い所は何なの?」

レンに顔を向けると、レンは眉をすくめて不安げにこちらを見つめていたが、その表情にはふと寂しさとは何か別の感情が混ざってるように感じた。

「闘技場って言ってね、みんなが自分の力を試すために使う場所なのよ」

眉をすくめたまま黙って小さく頷くと、レンは再びモニターに釘付けになった。

歳が近いからかしら、雰囲気は少し似てるけど、妹より20倍は静かな子ね。

モニターを見ようとしたときに、ユウコがこちらに近づいてくるのがふと視界に入る。

「あらユウコ、夕飯は家で済ましたのかしら?」

「うん、そうなの」

ユウコは笑顔で応えながら椅子を少しレンに近づけてから座り、レンがゆっくりとユウコに顔を向けるとユウコはレンに優しく微笑みかけた。

「レンちゃんて、歳はいくつなの?」

するとレンは目線を上げて小さく首を傾げた。

「忘れちゃったかな」

忘れるなんて・・・長い間カレンダーとか見なかったのかしら?

「そうなんだぁ」

ユウコは少し驚くように眉を上げたがすぐにまた優しさが溢れるような笑顔をレンに見せる。

見た目は中学生ぐらいに見えるけど、後でレンのこと氷牙に聞いてみようかしら。

「私ね、レンちゃんとお友達になりたいの」

「ほんと?」

ユウコが笑顔で頷くが、レンは微笑みも浮かべずに眉をすくめ、少し不安げにユウコを見つめている。

この歳で両親が亡くなってしまってるから、簡単に気を許せないのは何となく分かるけど、あのユウコの笑顔を見ても顔色を変えないなんて、何か訳があるのかしら?



「お前さぁ、それよりまだ強くなんだろ?ありえねぇよ」

「そうかな、でも僕、火には弱いみたいだよ。この前テロリスト相手に手こずったし」

腕をゆっくりと元に戻しながら目線を落としたシンジは、ため息まじりに小さく唸った。

「まじか、まぁ弱点くらい無いとな」

少し疲れた様子のシンジとホールに戻り、ミサ達の隣のテーブルにシンジが座ったので、ホットミルクを隣のテーブルから持って来てからシンジの隣の椅子に座った。

「ふぅ、あそうだ、氷牙、さっきの姿は名前とかあんのか?」

ぬるくなったホットミルクを飲んでいると不意にシンジがそう口を開いた。

「ん?あぁ、あるよ」

「ふーん」

さすがにシンジは腕に名前なんてつけてないと思うけど。

「何か最近、ショウタとか妙に技に名前つけてんだよなぁ、じゃあさっきのは何て言うんだ?」

シンジはコップを持ちながら、どこか照れを隠すように少し眉をすくめて聞いてくる。

そんなに気になるのかな?

「極点氷牙だよ」

「はぁ?・・・ゴクテン?変な名前だな」

「そうか」

するとシンジの後ろに座っていたヒカルコが椅子を回し、素早くこちらの方に体を向ける。

「私はカッコイイと思うけど」

少し驚いたシンジは思わず後ろに振り向くが、まるで気を許しているようにすぐに椅子を回してヒカルコとこちらを視界におさめられるように体の向きを変える。

「変わった当て字とかあるの?」

そしてすぐにヒカルコは嬉しそうに小さくニヤつきながらそう聞いてきた。

「ただ北極点の北を取っただけだよ」

「ふーん」

ヒカルコも名前とかつけ無さそうだな。

突如援軍要請のアナウンスが会場に響き、シンジと遠くに居たノブが舞台に向かったとき、レベッカとマイが前に座ってきた。

「マイに相談したらね、マイが氷牙と一緒に公園に行って欲しいんだって」

レベッカが喋り終えたときにマイを見ると、レベッカを見ていたマイもこちらに顔を向けた。

「とりあえずボディーガードしてよ」

「分かった」

さすがに攻撃型でもないマイが1人じゃ危険かな。

「でも退治なら僕1人の方が良いんじゃない?」

「え?・・・退治しに行く訳じゃないよ」

マイは小さく眉を上げながら少し驚くような口調でそう応える。

退治じゃない?

「そうか、でもマイが不安がってたってレベッカが言ってたよ」

「ああ、マイが気にしてるのは動物達のことなの」

微笑みながらマイがそう言うと、レベッカは少し恥ずかしそうにうつむく。

「どういうこと?」

するとマイは少しだけ不安感を伺わせるような顔色を見せる。

「だって大きな動物達が居たら、みんな怖がったり、駆除しようとするでしょ?」

確かにそれは仕方ないけどな。

「だからマイね、動物達にみんなを怖がらせないように説得したいの」

説得か・・・。

「そういえばマイは動物と話せるんだっけ?」

「うん」

なるほど、マイは人間より動物を心配して不安がってたのか。

「そうか、そういえばこの前警察が来てたし、行くなら早めの方が良いね」

「そうなの?じゃあ、明日にでも行こうよ」

笑顔になったマイがそう言うと、ヒカルコが再びこちらのテーブルの方に体を向けた。

「マイぃ、それなら人間が巣に近づかなきゃ良いんじゃないの?」

するとマイは少し困ったように眉をすくめて唸り出した。

警察が大きな動物をどう判断するかが問題だな。

「んー動物達にも、みんなが動物達のことどう思ってるか伝えてあげなきゃ」

巣に入っただけでいきなり襲われたりしないかな。

小さく唸りながらヒカルコが何やら目を細くしてこちらを見る。

「じゃあ・・・氷牙だけじゃ不安だから私も行ってあげるよ」

「ほんと?」

再びマイが笑顔になったときにレベッカの後ろからカズマが近づいてきたのが目に入った。

「レベッカ、そろそろ部屋に戻るよ」

「あ、うん」

「じゃあマイも行く」

レベッカのすぐ後にマイが立ち上がり、ヒカルコに小さく手を振ってからマイは廊下に向かった。

「氷牙の力って、人を守るには不向きなんじゃない?」

「まあそうだね」

小さくニヤついて見せてからヒカルコは体の向きを戻し、雑誌に目線を戻していった。

ホットミルクを注ぎ直して席に戻るときにふと会議室からノブ達が出て来るのが目に入った。

暗い夜でもテロを起こす人が居るんだな。

少し時間が経つと、ユウコとレンが席を立つのを見たヒカルコも雑誌を閉じ、席を立ち始める。

「あたし達も行くわよ」

「そうか」

飲み干したホットミルクをシンクに置いてからミサについて行き、ミサと共にミサの部屋に入る。

何となくミサについてきたけど、何か忘れているような・・・。

キッチンの角を曲がって真っ直ぐ進んだミサは、そのまま何も無い壁の前で立ち止まる。

「あら?」

あ、そうだ。

「ねぇ、扉が無いじゃないのよ」

こちらに振り向いたミサは壁を指差しながら、まるで問い詰めるような言い方で喋り出した。

「ちょっと用があってシールキーを使ったんだ」

「そうなのね、じゃあ、早く貼って来てよ」

するとミサはすぐに何食わぬ顔でそう言いながらキッチンのカウンターに腰掛けた。

「そうか」

自分の部屋に戻って明かりを点け、ベッドのサイドテーブルからペンを取ってリビングテーブルの上にあるシールキーの下に向かう。

行き先を書いて壁に貼ると、ドアノブと縁が現れたすぐ後にミサが部屋に入ってきた。

「でもまたシールキー使うと思うよ?」

「元に戻しておけばそれでいいのよ」

ミサは平然と応えながらソファーに座ろうとしたが、何かを思い出したかのようにこちらに顔を向けた。

「氷牙、異世界に行ってたのよね?」

「あぁ」

「ちゃんとお風呂入ったのかしら?」

そう言いながら疑い深い眼差しでこちらの体を見始める。

ちゃんと説明した方が後々面倒なことにはならないかな。

「僕はね、お風呂に入る必要が無いんだよ」

するとミサは眉間にシワを寄せながら頬を小さく膨らませた。

「何よ、また必要が無いですって?どういうことなのよ」

「僕の体は機能してないんだ。前に言ったでしょ?簡単に言えば仮死状態だって」

「・・・えぇ」

ミサは眉をすくめ、悲しそうな表情で小さく返事をしながらソファーに座る。

「汗もかかないのに、シャワーとか浴びる必要なんて無いってことだよ」

相変わらず氷牙はさらっと大事なことを言います。笑

ありがとうございました。

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