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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第五章

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変わり始める日常

ライムミントが部屋に戻ったのでホットミルクを飲みながら何となくホールを見渡し、飲み終わったホットミルクのコップをシンクに戻して部屋に戻ると、すぐに暖かい空気が充満していないことに気がつく。

リビングに向かい、ベッドの方に目を向けるがそこにはミサの姿はなく、布団も誰かに手がつけられた形跡は無かった。

ミサの部屋に続く扉に目を向けると、ストッパーが外されていて扉は閉められていた。

ベッドに横たわり朝を迎え、洗面所で朝の習慣を済まして廊下に出る。

そしてホールに出る直前に腕を掴まれたので後ろを振り返ると、そこにはミサが立っていた。

「帰ってたの?」

驚いたような声色で口を開いたミサは、すぐに少し寂しそうな眼差しを見せてきた。

「まぁ昨日の夜にね」

「そうなのね」

呟きながら頷くと、すでにミサの口元が緩んだその表情には、ただ嬉しさが滲み出ていた。

「ほら行くわよ」

「あぁ」

ミサと共に椅子に座ったときに、レンが右隣りに静かに座ってくる。

「あら?」

ミサは小さく驚きの声を上げてレンを見ると、レンは眉をすくめながら寂しそうな眼差しでミサに顔を向けた。

「ああ、この子はレンだよ」

「もしかして・・・異世界から?」

「あぁ」

レンに顔を向けながらミサが眉を上げて小さく頷くと、すぐにミサはレンに優しく微笑みかける。

「Nice to meet you.I'm Misa.You may hear anything willingly.」

ミサが笑顔で喋り出すと、レンは眉をすくめてミサを見たまま固まり、ゆっくりとこちらに顔を向けた。

どうやら伝わらなかったみたいだな。

「何て言ったの?」

「さぁ」

「ち、ちょっとっ」

レンと共に首を傾げているとミサが慌てて声をかけてきたので、レンと共にミサに顔を向ける。

「な、何なの?恥かかせないでよ」

「・・・レン、この人はミサだよ」

そう聞いたレンがミサに顔を向けると、ミサはすぐにまた慌ててレンに微笑みかけた。

「よ、よろしくね」

レンが眉をすくめて頷いたときにホールに料理が運ばれて来たので、レンを連れて料理を取りに行く。

「レン、食器の使い方分かる?」

「ちょっとなら」

トレーとお皿を取らせると、ゆっくりと料理の前に連れていく。

「今食べたいものを食べたい分だけお皿に乗せるんだよ。それから、あんまり別の料理が混ざらないようにね」

「これ何?」

列の1番最初の料理を見るとすぐにレンがそう聞いてくる。

「エビチリって言って、ちょっと辛いよ」

半音高い声で唸りながら、レンはエビチリをお皿に取る。

「これは?」

「卵焼きだよ」

「これは?」

「ナポリタンだよ」

「じゃあこっちは?」

「ソーセージだよ」

一度にこんなたくさんの料理を見たから、やっぱり興味津々みたいだな。

フォーク類の後に飲み物の説明を軽くして椅子に戻ると、こちらに顔を向けたレンが一瞬だけ口角がほんの少し上がったのが今度はちゃんと確認出来た。

食事を始めたときにミサが腕を掴んでくると、そのままゆっくりとミサの口元まで耳を引き寄せられた。

「あの子、どうしてあんなもの持ってるのよ」

腕を放したミサに顔を向けると、ミサは少し不安げに料理に夢中のレンを目で差した。

やっぱり気にならない人なんて居ないか。

「レン」

ソーセージにかぶりついたままレンがこちらに顔を向けたと同時に再びミサに腕を掴まれた。

「そのナイフと銃はいつから持ってるの?」

レンが眉をすくめてソーセージから口を放したときにミサに軽く袖を引っ張られたが、無視してレンが応えるのを待ってみた。

「ナイフは・・・お母さんの形見で、銃はお父さんの・・・形見かな」

自分の背中に目線を向けながらゆっくりと応えたレンの表情が、特に寂しがるようなものではなかったということにふと気が付く。

「そうか」

すると話を聞いていたのか、前に座っていたユウコとヒカルコがレンを見た後に少し驚いた表情でお互いに顔を見合わせた。

「それより、この黄色いの、何て言ったっけ?」

そう言いながらレンがそれをフォークで差す。

「卵焼きだよ、気に入ったの?」

微笑みこそ浮かべないが、早めに頷いたところを見ると、どうやら気に入ったということらしい。

再びレンが料理に夢中になったときに再びミサに袖を引っ張られたのでミサに顔を向けると、ミサは再び自身の口元までこちらの耳を引き寄せていく。

「あんなストレートに聞かなくたって良いじゃないのよ」

「僕もちょうど気になってたし」

言葉に詰まらせたミサは少し哀れむような眼差しでレンを見て、こちらに目線を戻すと眉をすくめながら料理に目を向けた。

ユウジの挨拶が終わると、ミサ達が学校に行くために支度を始める。

「じゃあ行って来るわ」

「あぁ」

ミサ達が廊下に歩き出すのを見ていると、こちらに顔を向けたレンが声を掛けてきた。

「みんなどこ行くの?」

「学校だよ」

レンは小さく頷きながらミサ達を見ると、すぐにまたレンがこちらを見て眉をすくめた。

「氷牙は行かないの?」

「まあね、行く人も居れば行かない人も居るよ」



気持ちを早ませる規則的な電子音に目を覚まし、分厚く高級感のある布団を持ちながら体を起こす。

このベッドにもちょっと慣れてきたかな。

ホテルの壁に作った扉から自分の家の自分の部屋に戻り、服を着替える。

ふと窓から見下ろした住宅街の風景に、何となく昨日までの無機質さとは違う何かを感じた。

もう、今までの人生には戻らないんだ・・・。

1階に下りてダイニングに入り、椅子の後ろの壁沿いにカバンを置く。

そして食パンをトースターに入れてから冷蔵庫から牛乳を取り出す。

「お兄ちゃん、昨日夜中にどこ行ってたの?」

「散歩」

「ふーん」

「麻耶、食事中に携帯はダメでしょ」

母さんの言葉に返事をしながら麻耶は食パンにかぶりつき、同時に携帯の画面をなぞる。

・・・あ、パン焼けた。

食パンにバターを塗っていたとき、ふとテレビのニュースが耳に入ってくる。

「ん?」

麻耶がテレビに目を向けると、つられてマグカップを手に取りながら父さんもテレビに目を向ける。

埼玉の高校生が自分の学校を破壊か・・・。

そんなことしたってただ目立つだけだよな。

「お兄ちゃんの学校にも能力者居るの?」

「さあね、多分居るんじゃないかな」

そういえばC組の吉川とか言う奴も、テロを起こしたって自慢してたな。

どうせ大したテロでもないくせに。

母さんが食器をシンクに運び始めると同時に麻耶は洗面所に行き、父さんがネクタイを結び始める。

「行ってきまーす」

麻耶がそう言うと母さんはいつものように玄関前で手を振り、父さんは玄関先から車の鍵を開ける。

「パパじゃあね」

「あぁ、行ってらっしゃい」

父さんと微笑み合いながら手を振る麻耶について行きながら、いつもの並木通りにふと過去の記憶を重ねていく。

「お兄ちゃんの高校って、修学旅行いつ?」

「10月末くらいじゃないかな?」

そういえば、テロをやって自警団に返り討ちに遭ったっていうA組の奴、もう退院したかな?

でも退院したってそのまま逮捕だしな、テロをするにも頭使わなきゃ。

中学への分かれ道で麻耶を見送ってから公園のトイレに入る。

そしてシールキーで作った扉を抜け、期待と不安を募らせる未だに見慣れないビルに入る。

「え、何で制服?」

ナカオカが馬鹿にするようなニヤつきを見せつけてくるのを見ながら、待合室のような部屋のソファーにカバンを置く。

「だって、普通に高校に行くふりするから」

「あそう」

奥の部屋に入るとすぐにホンマも驚いたような声を小さく上げ、その瞬間に何となく恥ずかしさが頭を過ぎった。

「良いんじゃないか?ブレザーとネクタイだけ取れば目立たなくなるだろ」

ホンマに同意するように相槌を打ちながらナカオカがソファーに深く座ったとき、静かに開かれた扉の向こうからアミシマが姿を現した。

「じゃ、とりあえず始めるか」

そう言ってアリサカがゆっくりと立ち上がると同時に、胸の奥から重たい緊張感が芽を吹く。

ふぅ、テロ活動か、何やるんだろ。

「まず2人に軽く説明しとくな。俺達が今マークしてるテロ組織についてだが、ひとつは千葉で活動が多く目撃されてるテロ組織、もうひとつは茨城で主に活動してる、通称ネイチャーセーバーって組織だ」

「え・・・」

アミシマの顔を伺ってみると、アミシマは驚きの中に戸惑いを感じさせるような表情をしていた。

「実はな、アミシマが来る前からマークしてたんだよ、そこ」

「そうだったのか」

「でまぁ、千葉の組織にはナカオカと伊勢谷、ネイチャーセーバーは俺とアミシマが担当だ」

千葉の組織には名前は無いのかな?

そういえばこの組織にも名前は無いし、付けない所もあるのかな?

「あれ、じゃあホンマさん達は?」

「俺達は巨大動物担当だ。中には動物を操る能力者ってのも居るからな、そこら辺も放っておく訳にはいかないんだよ」

なるほど・・・。



同じテーブルの椅子にレベッカが座ってくると、レベッカは何かを気に掛けているような神妙な面持ちをしていた。

「ねぇ氷牙、ニミィとどうやって知り合ったの?」

そしてすぐにレベッカは少し寂しそうに眉をすくめてそう聞いてきた。

「レンと一緒に森を歩いてたら、レンが困ってたニミィを見つけたんだ」

「レンも居たの?」

黙って頷いたレンを見ると、レベッカはまたすぐに期待を寄せるような表情でこちらを見る。

「それでどうしたの?」

「んー、木の枝にレベッカのお守りを挟んじゃったみたいで、でも羽が傷ついて取れないって言うから僕が取ったんだ」

するとレベッカは心配そうにすくめた眉を深くして見せながら黙って頷く。

「その中でレベッカの名前が出て、僕も同じ名前の妖精を知ってるって言ったら、もしかしたら急に居なくなったニミィの知ってるレベッカかも知れないってことで、もしそうだったらニミィのペンダントを渡して欲しいって渡されたんだよ」

「そっかぁ」

一瞬泣き出しそうに顔を歪ませたがレベッカは小さくため息をつくと、ゆっくりと安心したような笑顔を見せてきた。

「ありがとねニミィを助けてくれて。レンもありがとね」

「うん」

レンが半音高い声で頷くとレベッカは天を仰ぎ、安心し切った表情で小さくため息をつく。

「あ、じゃあレンって、あたしと同じ世界から来たの?」

「うん」

するとレベッカは嬉しそうに微笑み出しながら、こちらに顔を向ける。

「レンは獣人なんだ。デーモニシアンって言う種類なんだけど、レベッカは知ってる?」

「うーん、獣人のこと、あんまり知らないんだよね、あたし」

妖精と獣人って違うのかな?

首を傾げて応えながら、レベッカは何かを気に掛けるようなふとした表情をレンに向ける。

「でも、見た目は普通の人間だね」

そう言って不思議がるように首を傾げるレベッカにレンはすくめた眉を緩め、更にほんの少しだけ口角を上げて見せた。

「あたし自分の姿を変えられるの」

「へぇー」

驚いたように声を上げたレベッカは頷きながら、まるで疑惑や嫌悪感を感じさせない親しげな微笑みをレンに見せる。

「そういえば、ユキにも会ったけど、ユキってレベッカが大きくなったこと知ってるのかな?」

「あ、そうそう、昨日ね、カズマが呼び出したときにユキったら、すごい驚いてたんだよ」

こちらを見ながら微笑みを深くしたレベッカは、楽しく思い出を振り返るように話しながらコップを手に取る。

「そうか」



「音也って、意外と学校サボるタイプなんだね」

いきなり名前で呼ばれるとちょっとびっくりするけど、ま、いっか。

「え、そう言うナカオカさんは」

「ちょっと、その呼び方止めてよ、同級生扱いされてるみたいで何か変な感じだから」

変な感じって・・・アバウトだな。

「あの、リアさんってハーフなんですか?」

「え?いやまあハーフっちゃハーフだけど、まさか外人の血が入ってるからって下の名前で呼んでるって思ってる?」

「い、いや、単純にそうかなって思って」

見た感じ、大学生くらいなのかな。

でも見た感じ学校なんか行ってなさそうだけど。

「でもまぁ、当たってないこともないよ?私オーストラリアに住んでたことあるし」

伊勢谷 麻耶(イセヤ マヤ)(15)

中学生。

クラスの男子からたまにセヤマヤと呼ばれてからかわれている。兄が能力者とあってか、能力者というものにさほど恐怖心を抱いていない。


ありがとうございました。

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