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エネルゲイア×ディビエイト  作者: 加藤貴敏
第一章

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ワールド・ワズ・アラウンド・トゥ・ウェイク・アップ

氷の弾の直撃を受け吹き飛んだものの、ユウジは地面に倒れることなくかろうじて体勢を立て直してこちらに体を向けてきた。

「ふぅ・・・今のは効いたよ」

どうやら、全身に纏った電気で衝撃を軽減させてるみたいだな。

その直後にユウジは投げる為の振りかぶる動作も見せずに、素早く自身よりも大きな電気球を投げつけてきた。

おっと。

とっさにブースターを噴き出しながら体を反らし、かろうじてその巨大な電気球をかわしたものの、その瞬間に鋭い眼差しでこちらを見るユウジの口角が小さく上がったのにふと気がついた。

ん?・・・。

何となく後ろを振り返ったとき、目の前には通り過ぎていったはずの巨大な電気球が何故か再びこちらの方に迫ってきていた。

両手に紋章を出して巨大な電気球を何とか受け止めたと同時に、ユウジの呼びかける声が聞こえたのでユウジに目を向けると、そこにはこちらの方に飛んでくるもう1つの巨大な電気球があった。

な、やられた。

これじゃ挟み撃ちだ。

巨大な電気球が背中に押し付けられる衝撃を感じた直後、2つの電気球がまるで共鳴するように引き寄せ合い始めた。

まずいな、背中の紋章も押さえられてブースターが使えないみたいだ・・・。

しかし押し潰されるような感覚が強くなるにつれ、絶え間なく体中に響く凄まじい電撃音は何故か少しずつ遠ざかっていくように感じた。

意識がはっきりする感覚が戻ったとき、目の前には何故かこちらの肩に触れるナカガワマナミがいた。

あれ・・・あ、そうか

「氷牙」

心配そうな眼差しのミサと目が合うと同時にホールに居ることが理解出来ると、ふとユウコの隣に座るユウジの姿が目に留まった。

「あぁ氷牙、目が覚めたみたいだね」

「やっぱりユウジは凄いよ。戦いの才能があるんじゃない?」

「そうかなぁ?」

肩から手が離れたのでナカガワマナミにゆっくりと顔を向ける。

「ありがとう」

「どうもぉ」

笑顔で応えたナカガワマナミが去っていくと、安心したような穏やかな表情をしたユウジもテーブルを離れていった。

「お疲れ様、負けちゃったわね」

何だかミサも落ち込んでいるみたいだ。

「そうだね」

ユウジは穏やかそうに見えるけど、戦いになったとき判断力は人並み外れてるな。

おじさんはきっと、そういう人達が欲しくてこんなことしてるんだろう。

トーナメントが終わった後でも、まだ緊張感が抜け切らないような空気が会場に漂う中、静かにおじさんがマイクの前に立った。

「それでは皆さん、まずは早速この組織の新しいブレインに上がって来てもらいましょう」

確かに組織にリーダーとか幹部は必要だと思うけど、何でおじさんがリーダーをやらないんだ?

するとテーブルを通り過ぎるときにユウジがミサに小さく手招きをした。

「やっぱり本気なのね」

呟きながらミサは渋々席を立ち舞台に向かって行き、そして4人を舞台に並ばせたおじさんは再びマイクの前に立った。

「最初はどうなることかと思いましたが、こうして組織の活動がスタート出来ることを嬉しく思います」

皆はおじさんの話よりもブレインの顔ぶれの方が気になるみたいで、まるでおじさんの話を聞いていないかのような話し声があちこちから聞こえてくる。

「それでは、早速自己紹介して貰いましょう」

おじさんは後ろへ下がりながらマイクに向けて手を差し出し、ユウジをマイクの前に立たせた。

「どうも、攻撃型のリーダーになりました。ナカジマユウジです。どうぞよろしく」

ユウジが横にズレるとミサがマイクの前に立ち、他の2人もミサに並んだ。

「攻撃型で補佐をさせて頂きます。あたしのことはミサと呼んで下さい。よろしくお願いします」

「支援型のリーダーになりました。アキミヤソウです。ちなみに僕の力は索敵です。よろしくお願いします」

「あ、あの、マナは支援型で、補佐になりました。・・・ナカガワマナミです。医療班としても、お、お役に立てたらうれしいです。よ、よろしくお願いします」

「皆さん、ブレインの方々に拍手をお願いします」

おじさんの言葉で会場は不安感と警戒心が混ざったような静かな拍手に包まれた。

「それでは皆さん、今後は夕食の後に会議で決定した行動方針を、リーダーに報告して貰う形で進んで行きますので、そのつもりでお願いします。以上です」

「なんかやっと始まったって感じなのかな」

「始まったって言ったって、何が何だか分からないことだらけだね」

ユウコが不安げに口を開くと、一見落ち着き払った表情を浮かべるヒカルコもその口調からは不安感が滲み出ていた。

何か目的があるから組織なんて作ったんだろうけど、おじさんの目的、か・・・。

すると4人はおじさんに連れられ、舞台の左奥に設置されているガラス張りの部屋に入って行った。

「あの部屋何だろう?氷牙知ってる?」

徐々に会場から緊張感が無くなっていく中、同じようにその部屋を見ていたユウコがそう言ってこちらに顔を向けた。

「分からないけど、何か会議室みたいな感じじゃないかな」

「ふーん、ミサちゃん何話してるんだろう」

ユウコがくつろぐように腰を下げながら座り喋っていると、ユウコの真後ろからシンジが近づいてきたのに気がついた。

「ミナミ」

「ん?あ、シンジ」

ユウコがシンジの存在に気がつくとシンジはユウコの隣の椅子に座るが、シンジは何か言いづらそうな表情でユウコを見ていた。

「数学の宿題やった?」

「うん一応」

「ちょっとさ、見せてくれない?」

「えー?」

ユウコがからかうように目を逸らすと、シンジは気まずそうにうなじを掻きながら目線を落としていく。

「いや、闘技場行ってたら忘れちゃって・・・」

そんなシンジを見ながらユウコはまるで同情するようなため息をついた。

「もう分かったよ。来て?」

「悪いね」

思った以上に2人って仲が良いみたいだな。

「いいね、氷牙は宿題が無くて」

去っていく2人を見ていたヒカルコはニヤつきながらこちらに顔を向ける。

「まぁ、ね。ヒカルコは成績良さそうだね」

「そう?まぁ悪くは無いけど。それよりいくつも組織があるようじゃ、学校なんて行かなくなる人もいるんじゃないかな」

シンジと違ってヒカルコは真面目な感じに見えるし、そんなことにはならなそうだな。

「学校に行かなくなったら、力を使うために動くのかな」

それを聞いたヒカルコがまた考え込むような真剣さが伺える眼差しで目線を落とす。

「若者は元気も意欲もあるけど冷静な判断力がない。そこに力が加わるってことは、やっぱりテロだらけ・・・かな」

おじさんは、何で若者だけをここに集めたのかな。

「そうかもね」

「何か何となく暇だよね。トーナメントが早く終わったせいかな」

ジュースを一口飲んでコップを置くと、ヒカルコは話題を変えるように声色を変えながらそう言って微笑みかけてくる。

「長引かせるのも大変なんだよ」

するとヒカルコは何故か若干の嬉しさのようなものが伝わってくるニヤつきを浮かべた。

「ふーん、まぁすぐ終わってもそれはそれでつまんないしね」

「まあそうだね」

席を一旦離れ、ホットミルクを注いで再びテーブルに戻ると、ヒカルコの隣にはすでに1人の知らない女性の姿があった。

「氷牙君だよね?」

椅子に座ると話かけられたので、その女性に顔を向ける。

初めて喋る人だ。

支援型の人かな。

「マイね、トーナメント見てたけど、氷牙君カッコよかったよ」

鼻にかかったような声が印象的なマイという人はいつの間にかヒカルコの隣に座っていて、しかも2人の間からは距離感というものがさほど感じられないような雰囲気が漂っていた。

「それはどうも」

「この子は私の隣の部屋のマイだよ」

「そうか、支援型の人かな?」

すぐに笑顔を浮かべたマイの顔立ちからは、ヒカルコやユウコよりも若干のあどけなさを感じた。

「そうだよ、マイね、動物と話せるんだよ」

「そうか、面白いね」

「そうだ、ヒカルコちゃん、カズマ見てない?」

マイが隣に居るとヒカルコが何となく大人っぽく見えるな。

「私は見てないけど、部屋にいるんじゃない?」

「そうかなぁ。氷牙君は見てない?」

初めて聞く名前だ、支援型の人かな。

「え?カズマは会ったことないよ」

「え?そうなの?」

マイは少し驚いたような顔でそう言うとヒカルコに目を向けた。

「カズマは攻撃型だけどリーグ戦は出てないから、氷牙は分からないかもね」

いつもの落ち着いた口調でヒカルコがそう言うと、マイは再び笑顔を浮かべながら納得したように大きく頷き出す。

「あ、そっかぁ。じゃあ分からないね」

「そうなのか。攻撃型なのに?」

「うん。カズマは攻撃型だけど、自分は戦わないって言ってた」

笑顔でそう応えながらマイはストローとコップを持ち、ゆっくりとストローをくわえた。

攻撃型でもエントリーしなかった人もいるのか。

「トーナメント終わったし、闘技場とかに居たりして」

コップを掴みながらヒカルコが何気なく話をしていると、マイはモニターに目を向けたり、廊下への扉に目を向けたりするが、マイの表情からは不安げに人を捜す焦りのようなものは全く感じられなかった。

「そうかなぁ。あ、でもカズマ、トーナメントが終わってから闘技場に行くかもって言ってた」

「そうなの?ならいるんじゃない?」

ヒカルコがそう言うとマイはモニターを1台ずつ見渡し始める。

ふと闘技場への扉からシンジが出て来たのが見えると、シンジは疲れ果てたような重たい足取りでテーブルに向かい、そしてすぐになだれ込むようにして椅子に腰掛けた。

トーナメント終わったのにまだ修業してるのかな。

「あ、いた」

「え?どこに?」

マイの言葉につられるようにヒカルコもモニターを眺め始めたので、何となくそんなヒカルコを見ながらホットミルクを口に運ぶ。

「ほら、廊下のドアから来た」

「え?何だぁ」

力が抜けたように口走りながらヒカルコが廊下に続く扉に目を向けると、マイはすぐに廊下の方へと走って行った。

「ヒカルコはカズマと話したことあるの?」

「うん、1回だけね」

すると間もなくしてマイは学ランの中にパーカーを着る1人の男性を連れて戻ってくる。

「あ、氷牙だ」

カズマと呼ばれているその男性は、連れて来られるなりこちらを見ながらすぐにそう言って落ち着きのある驚きの表情を見せる。

「負けたのに、有名人みたいだね僕は」

「オレは氷牙の方がカッコイイと思うけど」

カズマは軽く慰めるようにな口調でそう言いながら小さく頷く。

「それはどうも。2人は知り合いなの?」

「いや、最初に同じテーブルだったからな、それで話すようになったんだ」

マイのエスコートで椅子に座らされながらも表情を崩さずにカズマは冷静な口調でそう応える。

「そうか」

「そうだ、氷牙にしようかな」

するとカズマは突如何かひらめいたような期待感をあらわにする表情を浮かべながら、再びこちらに顔を向ける。

「何の話かな?」

「これから、闘技場に行こうと思うんだけど、相手してくれない?」

戦うのか?・・・。

「あぁ、分かった」

トーナメントには出ないけど、力を使う気はあるのか。

「じゃあマイが審判やるー」

カズマが立ち上がると、すぐにマイも後に続いて立ち上がった。

「邪魔にならないようにね」

「分かってるよー」

微笑みながら手を振るヒカルコにマイは笑顔で応えると、2人と共に空いている闘技場に向かった。

「何でリーグ戦に出なかったの?」

「あんまり、目立ちたくないんだ」

小さく眉をすくめながらカズマは冷静にそう言い放った。

「そうか」

まぁ、中にはこういう人もいるのかな。

「簡単に言えば、めんどくさいんだよね」

「まぁ、そうだね」

マイが笑顔で一言加えると、カズマは微笑みながらマイに応える。

まぁどんな力を持っているかは人それぞれだしな。

「うわぁ暗いね、何か下水道みたい」

支援型の人は、そうそう入ることは無いからな。

薄暗さのせいなのか、マイは少し元気がなさそうに話していたものの、広場に出るとすぐに笑顔を浮かべた。

「すごーい。こんなに広いの?」

「おーい、あんまり遠くに行くなよー」

マイが走り出していくと、カズマはまるで妹か何かを相手にするかのように走っていくマイに声を掛ける。

考えてみるとここまで組織の外でのシーンがないですね。もし撮影スタッフがいるとしたら、楽なのかな。笑

ありがとうございました。

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