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しるし(詩集)

淋しくなんかない

作者: さゆみ

あなたにどんなにきつく抱きしめられてもわたしのからだは冷えてしまう

あなたとどんなに長い口づけを交わしてもあなたの唇は温度を持たなくて

あなたと何度肌を重ねてもあなたの微弱な鼓動は今にも消えてしまいそうで

わたしはいつも淋しかった

あなたの命の灯がどうか消えないようにわたしは無色のあなたに色をあげたかった

でもあなたはどんどん薄く透明に近づいて今にも壊れてしまいそうだった


あなたを支える唯一の武器はトークだった

ユーモアがあり親しみやすい軽快な語り口はどんな場所をも和ませてくれた

あなたの語る過去の武勇伝にわたしはいつも聞き入っていた

自叙伝でも書いてみればと言ったけれど文才はないと小さく笑った

あなたのまわりには友人が沢山いた

あなたの温かいトークに惹かれた人たちが集まってきた

でもわたしは淋しかった

あなたも淋しかった?


所詮口だけじゃ生きていけない

それ以外あなたには何もなかったのだから

地位も名誉も仕事も保険もお金も健康も居場所さえも

借金だけが膨らんでゆく

友人は去っていった


あなたをあたたかい色で染めることが出来なかったのは

わたしもあなたと同じ無色だったってこと?

冷たい物体同士が重なりあってぶつかって摩擦しても

削られてカラカラの氷の粒が溢れてゆくだけ

いっそこのまま二人でいく?


でもあなたはわたしから離れた

だからわたしも離れた

冷たい物体は個々に生きてゆく

わたしはもう淋しくなくなった

全然淋しくなくなった


もう一度逢いたいなんて思わない

でももし一つだけ願いが叶うとしたら逢えなくていい

ただあなたの声が聞きたい

言葉が欲しい


そうわたしは全然淋しくなんかない









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― 新着の感想 ―
[一言] お邪魔します。 さて、難解な宿題を課せられたようで、この題材を読破しました。 色と温度とが、あなたとわたしを表現できる唯一の接点なのでしょうね。 感覚的には共有出来得る題材です。 しか…
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