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 私達は遊撃として戦いに参加することになった。


「うーん。効きそうにないけど、ちょっと行ってくるね!」


 そう言って飛び出していったのは私……じゃなく、露草だ。さやかちゃんがすかさず攻撃力上昇の魔法をかける。


「わたしも援護しますよー」

「なら、僕も」

「よし、いくか」

「いきましょう」

「レッツゴー!」


 ユノやユキトさん、それにマグロっちさんやさつきさん、リカさん達がそれぞれ巨人に向かって駆け出す。

 マグロっちさんは大きな包丁のような刀で、さつきさんは鞭、リカさんは双剣だ。

 連携なんて無視して勝手に攻撃し始めた皆に、私は戸惑う。


「えっと……これでいいの?」

「……俺に聞くな」


 私の疑問にトオルは目を逸らした。そんな私達に、ルーゼフさんが苦笑する。


「まあ、《World》初の大型戦闘だからな。いろいろと不手際もあるさ。さて、俺もいくとするか」

「なら、俺もいきます。リンはどうする?」

「え? もちろん、いくよ?」


 なぜそんな質問をされるのかわからず、首をかしげると、トオルは眉を寄せた。


「短剣だろ。ダメージ与えられないんじゃないか?」

「ああ、そのことなら――」

「邪魔なんだよ!」


 突然怒鳴り声が響いて私は口をつぐんだ。声の主は、《白銀の風》のメンバーらしい。そして、怒鳴られた相手は、なんと露草達だった。


「はあ? うちらの邪魔したのはあんたらじゃない。足はもう一本あるんだし、あんたらはあっちを攻撃したらいいじゃん」

「そうですよー。人数多いからって威張んないでくださいー」

「なんだと? 生意気な女共だな。たいしたダメージも与えられないんだから、引っ込んでいたらどうだ?」

「そうだ、そうだ!」


 あっという間に露草達トリック・ビリーヴのメンバーと、《白銀の風》のメンバーで言い争いになってしまう。


「おいおい、なに仲間割れをしてるんだ」


 慌ててルーゼフさんが間に入り宥めようとしたけど、それは逆効果になった。


「仲間割れだと? 貴様らと一緒にするな。我々は理念の元に動いているのだ。わかったら、大人しくサポートに専念していろ」

「何様なの? ちょっとムカついたんですけどー」


 甲冑姿の男性プレイヤーの言葉に、リカさんが噛み付くように言い返し、再び言い争いが始まってしまう。


「ど、どうしよう、トオル」

「参ったな……。うちのギルマスは、広場であちこちに指示出してるから、こっちに来れないしな……」


 止めることも出来ずにあたふたとしていると、涼やかな声がその場に響いた。


「何事ですか!」


 一瞬で騒ぎがおさまる。静まり返ったそこに現れたのは、銀髪の少女。《白銀の風》のギルマス、イリスさんだった。


「そ、総帥……これは、その、たいしたことでは」

「総帥は何事かと聞いているのです。答えなさい」


 しどろもどろの甲冑プレイヤーに厳しく告げたのは、イリスさんの隣にいる黒髪の男性だった。耳が長いから、多分エルフだと思う。端正な顔をしているけど、表情は冷ややかで、怜悧、という印象だ。


「……あの人は?」

「《白銀の風》のナンバー二、ギルマスの右腕と呼ばれているすばるってプレイヤーだ」


 そっとトオルに尋ねると、小声で教えてくれた。昴さんは、さらに甲冑プレイヤーを問い詰めている。


「どうしたのです。早く言いなさい」

「その、それが、あの……」

「聞こえませんよ。はっきり話しなさい」

「――時間の無駄だろ、昴」


 そこへ口を挟んだのは、イリスさんの後ろにいる男性だ。筋骨隆々、という言葉が似合う大柄な男性で、赤銅色の短髪と緑色の瞳がよく似合っている。

 《白銀の風》のメンバーの中で彼だけは、黒の鎧を着ていた。


「あいつはD・K。ディーと呼ばれてるな。《白銀の風》のナンバー三でギルマス、イリスの左腕だ」


 私が聞く前に、トオルが教えてくれる。なるほど、《白銀の風》のトップ三人組なのか。

 ディーさんは、頭を掻きながら苦笑した。


「どうせまたうちの奴らがちょっかいだしたんだよ。おい、そこのねーちゃん達。悪かったな。どうもうちの奴らは短気で困ってるんだ」

「ディーさん!」

「なんだ、違うって言うのか?」

「いえ、それは……」


 甲冑プレイヤーは言い淀み、ディーさんは呆れ顔で首を振った。


「まったく。俺らの相手はあのデカブツだろーが。敵対する相手を間違えてんじゃねーよ」

「……すみません」


 苦虫を噛み潰したような表情で甲冑プレイヤーが謝ると、イリスさんは露草達に向かって頭を下げた。


「私達の仲間が失礼をしました。謝罪いたします」


 イリスさんの言葉に《白銀の風》のメンバー達が、渋い顔をしつつも彼女同様頭を下げる。

 それを見て、露草達は困った顔をした。


「うん。いや、謝ってくれるんならいいけどさ。……まあ、これから気をつけてよ」

「貴様、偉そうに……!」

「ガロン!」


 露草の言葉に先ほどの甲冑プレイヤーが怒鳴りかけたが、イリスさんに止められる。イリスさんはもう一度頭を下げて、表情をあらためた。


「とにかく、私達がこうしている間にも時間は刻々と過ぎています。できれば、水に流していただき、協力して戦いたいのですが」

「うーん、うちはいいけど……」


 露草が皆を見る。ユノ達はうなずきを返して、同意を示した。ルーゼフさんが皆を代表して答える。


「その提案をお受けします。我々としても、巨人を倒すのにはお互いの協力が大切だと思っていますから」

「ありがとうございます」


 話がまとまって、喧嘩腰だった皆も落ち着きを取り戻した。

 良かった。巨人を倒さないといけないのに、どうなるかと思った。


「それでは、攻撃を再開します。――昴」

「はい。一班と二班は巨人の右足を攻撃。三班は待機。四班は作戦通りに」

「はっ」


 イリスさんが昴さんを振り向くと、予想していたのかすぐに指示が出された。

 甲冑プレイヤー達は一斉に返事をするときびきびと動き出す。


「なら、こっちは左足だな。皆、わかったな?」

「あいよー」

「了解」

「ういさー」


 こちらはルーゼフさんが指示を出し、それぞれが返事を返しながら動き始める。口調は緩いけど、皆真剣だ。


「俺達もいくか」

「うん」


 トオルの言葉にうなずき、駆け出そうとした私の横を、甲冑プレイヤーの一人が通り過ぎた。


「どうせ大した攻撃も出来ないくせに」


 せせら笑うようなその言葉を言ったのは、ガロンとかいうプレイヤーだった。

 むっとして睨み付けたけれど、ガロンは鼻で笑うと背を向けて去っていった。

 ……どっかの誰かさんと争うくらいムカつく奴だな。


「リン? どうかしたのか?」

「……なんでもない」


 内心、腹が立っていたけど、また喧嘩になったらと思うと言いだせなかった。

 この鬱憤は、巨人相手で晴らさせてもらおう。


 私は流水を握り締め、巨人の左足に向かって駆け出した。

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