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 久し振りの死に戻りだった。

 あの後二回チャレンジしたけど、二回とも敗北した。ダンプエッグの方を先に倒した場合も、残ったハンプエッグが暴走状態になり、謎レーダーを撃たれまくって全滅。ならばと二体同時に倒そうとしても上手くいかない。

 そうこうしているうちにさやかちゃんがログアウトする時間になり、一旦お開きとなった。

 次に集まるのは二日後となっている。


「はあ……」


 私はソロで狩りをしながら溜め息を吐いた。

 リアルでは、もう八月も半分を過ぎた。つまり、βテストも終わりに近づいているのである。

 私の中では、もう本サービスの購入は決定事項だから、それはいい。いいのだけど、終了までになんとかお化け屋敷はクリアーしたいな。

 ……どうやったら、ハンプエッグとダンプエッグを倒せるのかなあ。


「――気が乱れているな」


 ぼんやりと考えていたその時、ふいに背後から聞こえた声に私は驚いて振り返った。

 木の幹にもたれるようにして、黒ずくめの男性が立っていた。


「な、いつの間に」


 全く気配を感じなかった。

 いくら考え事をしていたといっても、狩りの最中。それなりに周囲を警戒していたのに……。

 驚く私に、男性はさらに驚く事を言った。


「なにやら悩み事のようだな。もしや、お化け屋敷のふざけた卵の事か?」

「な、なんで、そのことを……」


 ああ、駄目だ。私は人見知りが発動してしまい、後ろに下がった。逃げたい、けど、話を聞きたい。じりじりと距離を取りながら尋ねると、男性は苦笑したようだった。


「そう警戒するな。なに、この間、そなたがあの屋敷から出てきたのを見かけてな。我もあの屋敷の卵どもには苦労させられたので、そうではないかと思ったまで」

「え……」


 つまり、えっと。この人が、スレで話題になっていた、屋敷に入った人って事?


「あ、の。……お化け屋敷、クリアー、した……ん、です、か?」


 うわわ。すごい噛みまくり!! 我ながら、これは恥ずかしい……と、うつむいた耳に、男性が答える声が届く。


「いや、まだだ。ボスに敗れてな。己の未熟さを恥じ、修行しなおしているところだ」



 男性は一度息を吐くと、気を取り直したように続けた。


「卵どもには、状態異常がよく効く。手段があるなら、麻痺、眠りなどで一体の行動を封じて、その間にもう一体を倒せばいい。凶暴化する前に残る一体も倒せば、楽に倒せるぞ」

「……なんで、その。えっと、……教えて、くれるんです、か」

「ふむ。何故、か。単に同業者に塩を送ったまで。では、また」

「あっ!?」


 私は目を見張った。またしても、一瞬で男性はいなくなっていた。周囲を見回しても、影も形も無い。

 ……すごい技術だな。


「あ、ありがとうございました。でも……同業者?」


 誰が? 私が? ……いったい何の同業者だと?

 お礼を口にして、私は首をかしげた。

 謎を残したまま、男性は姿を消し。私は教えてもらった攻略法を試すべく、二日後を待った。

 そして、二日後。

 私達は再びお化け屋敷にチャレンジした。




「これで、どうだ!」


 私が熊の隠し爪を振るうと、ハンプエッグが体を震わし動きを止めた。それを確認して、ギリギリまでHPを削っていたダンプエッグを、露草が仕留める。

 暴走は……しない!


「とどめですー!」


 ハンプエッグにユノの放ったエアカッターがヒットして、そのHPを失わせる。


「お、女の子ともっとイチャイチャしたかった……」


 ものすごく残念そうにつぶやきながら、ハンプエッグは光の粒子となって消えていく。

 ――ちゃりん、と床に金の鍵が落ちた。

 固唾を飲んでその様子を見守っていた私達は、しばらくしてから、顔を見合わせた。


「……やった?」

「やったよな」

「やりましたよー」


 一瞬の沈黙。そして私達は喜びをあらわにした。


「やった、やったー!!」

「やったね、リンちゃん!」

「わたしの手柄ですよー」

「やっと勝てたね、ユキ兄!」

「ピィ!」

「そうだね、さやか」

「……怪しい奴からの情報だから、どうかと思ったが。まあ、うまくいって良かったよな」


 皆が口々に喋り、誰が何を言っているのかわからないくらいだ。まあ、とにかく。やったー!!


 そして私達は、金の鍵を持って書斎に向かった。


「……開けるよ?」


 鍵を差し込みながら尋ねると、皆は緊張した顔で頷いた。私は一つ深呼吸をして、鍵を回す。


「……これは」

「なに、これ」

「……魔方陣、ってやつかな」


 トオル、露草が息を飲み、ユキトさんが眉をひそめて言う。

 私、ユノ、さやかちゃんは言葉もなく床を見つめた。

 重々しく開いた扉の向こう側。書斎の床には、怪しげな魔方陣が描かれていたのである。


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