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 その作戦は、一階の階段下で行われた。


「ううう、本当にやるの?」

「もちろんですよー。ほら、リンも早く準備してくださいー」


 ユノに促された私は、渋々とウインドウを開き、操作した。

 とたんに、私の格好は水着姿となる。ユノや露草、さやかちゃんも皆水着姿だ。トオルやユキトさんは左右の部屋に隠れている。

 ユキトさんは最後まで渋っていたけど、結局ユノに押し切られた。

 背中が開いたワンピースの水着を来ているユノは、私達を見回すと腰に手をあてて笑った。


「ふっふっふ……“ベタなお色気作戦”開始ですよー!」

「ベタってわかっててやるんかい」

「あう」


 タンキニ姿の露草がぺしっとユノにつっこみを入れて、作戦はスタートした。

 ……こんなところで水着姿になるなんて、恥ずかしいよう。ううー。

 ハンプエッグ、早く出てこい!




「さあ、まずは皆で声を合わせて呼んでみましょうー」

「呼んだら卵お化けさん、来るかなー?」

「ピィ?」


 ユノの言葉にさやかちゃんが可愛らしく小首をかしげた。さやかちゃんは花柄のワンピースの水着姿だ。


「うーん。どうだろ。でも、やってみようよ。駄目でもともとだしね」

「そうそう、リンちゃんの言う通り。いいかな? さやかちゃん」

「はーい」

「ピーィ」


 露草に尋ねられ、さやかちゃんとレヴィが元気良くお返事する。うん、いい子だね。


「さあ、それじゃ、いきますよー? せーの」


 私達は息を吸い込み、声を合わせて言った。


「素敵で格好よくて逞しいハンプエッグさん。私達と遊びましょー」

「喜んでー!!」


 なんと本当に現れた。

 シャンデリアから降りてきたハンプエッグは、丸い顔をだらしなく緩めて私達の間を飛び回る。


「皆、今ですー!」


 ユノの声に、皆が一斉にウインドウを操作する。一瞬で元の姿に戻った私達にハンプエッグが驚く中、左右の部屋の扉が開いて、トオルとユキトさんが駆け付ける。


「さやかに近づくな、この卵野郎め!」

「げっ! またお前かよ、しつこいなー」

「おっと、逃がさないぞ」

「ユキト、こっちは任せろ」


 ユキトさんとトオルがハンプエッグを挟み込む。私達もそれぞれ武器を構えて取り囲んだ。

 すると、ハンプエッグは非常に面倒そうに言った。


「俺と遊びたいのかー。仕方ないな、可愛い女の子が相手なのはちょっと心が痛むけど、付き合ってあげるよ。――ダンプ! 出てこい!」

「呼ーんだー?」


 ハンプエッグの呼び掛けに応えて間延びした声がしたかと思うと、真ん中の扉が開き、ハンプエッグそっくりのモンスターが出てきた。

 卵に顔と手足がついたようなモンスターで、名前を【ダンプエッグ】というらしい。赤ん坊のガラガラを右手に持っているダンプエッグは、あくびをしながらゆっくりと宙を飛んできた。


「来たか、弟よ。こいつらとちょっと遊んでやろうぜ」

「うーんー、いーいーよー」


 ふわあ、ともう一度あくびをしてから、ダンプエッグはガラガラを降った。


「うわっ!」


 頭に響く音が鳴り、私の体が痺れる。麻痺だ!


「ごめん、麻痺しちゃった!」

「リンお姉ちゃん、待ってて!」


 さやかちゃんが呪文を口にする。その間に、ハンプエッグとダンプエッグは楽しそうに私達の間を飛び回り、時折攻撃してきた。私も、動けないところへハンプエッグの体当たりを受けた。


「うひゃっ!?」

「んー、意外とおっきいね!」

「ピィ!!」

「うおっ、邪魔な蛇だなあ!」


 体当たりついでに、むむ胸に頬擦りされた! ちょっ、セクハラ! 

 レヴィが噛み付いたおかげですぐ離れていったけど……変態卵め、GMゲームマスターに言い付けてやる!!


「リンお姉ちゃんお待たせ、【キュアパラライズ】!」


 さやかちゃんの声と共に光が体に集まるエフェクトが現れ、麻痺が解けた。


「さやかちゃん、ありがと!」


 お礼を言いつつ、私はハンプエッグに駆け寄る。さっきのお返し、受けてもらうからね!


「ダンシング・ブレード!」


 流水とククリの両方を持って、スキルを発動させる。


「げっ! 可愛い子ちゃん、怒っちゃやーよ!」

「……潰れろ、くそ卵」


 ハンプエッグの背後からはトオルがバトルハンマーを振り上げている。なぜか機嫌の悪いトオルと共に、私はハンプエッグを倒した。


「やった!」

「よし!」


 思わずトオルとガッツポーズをして喜ぶ。

 だけど、喜べたのはつかの間で、異変はすぐに起きた。


「に、兄さん……! くそー、ゆーるーさーなーいー!!」


 なんと、ダンプエッグが怒り状態になり、巨大化したのだ。


「危ない!」

「さやか!」

「きゃああっ!!」


 ダンプエッグはまずさやかちゃんを狙った。ガラガラで殴られ、壁にぶつかったさやかちゃんは光となって消えてしまった。死に戻りだ……。


「よ、よくもさやかを! うおおお!!」

「援護するよ! ユノ!」

「はいですー」


 ダンプエッグに突っ込むユキトさんを、露草とユノがサポートする。私とトオルも駆け寄ろうとした。

 だけど、次の瞬間、巨大化しているダンプエッグが無茶苦茶に暴れだしたのだ。


「うわっ……!」

「くうっ!」

「ひゃああー」

「ユキトさん! 露草! ユノ!」


 なんと、ダンプエッグの近くにいた三人が一気に光となって消えてしまった。

 ……残りは、私とトオルだけだ。


「リン。今回はもう無理だ、出なおそう」

「……うん」


 悔しいけど、その通りだ。私はトオルにうなずき、外への扉に向かおうとした。


「逃ーがーさーなーいーよー……」


 だけど、ダンプエッグは私達の狙いを悟ったらしく、扉の前に陣取って外に出さないようにした。

 そして、巨体を弾ませて、地震を起こしたのだ。


 どうん、どうん。


 地面が揺れる度にダメージを受ける。それに加えて、ガラガラの攻撃が襲ってくる。

 ろくに反撃も出来ずに、まずトオルが消えていき、そして一度はレヴィに回復してもらった私もガラガラの一撃を受けて死に戻りとなった。


 こうして、私達は全滅したのだった。

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