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 壁や天井から出現した十数体のゴーストは、滑るように宙を飛んで私達に接近してきた。

 その奥では同じく宙に浮いているハンプエッグが楽しげに踊っている。


「へいへい、妖精のお嬢ちゃん、一緒に踊らない?」

「えー」

「ピィー」

「さささやかに手を出すなら僕が相手だ!」

「男はお呼びじゃないつうの」


 ゴーストに怯えていたユキトさんがさやかちゃんにちょっかいを出されたことで奮い立ち、槍をハンプエッグに突き付ける。

 ハンプエッグとユキトさんが戦う周りでは、ゴーストを相手に戦うトオルや露草、ユノの姿。特に魔法を使えるユノは大活躍だ。

 さやかちゃんも、ユキトさんをフォローしている。

 うん、皆大丈夫そうだね。


「ピィ!」


 皆の様子を眺めていると、私の首に巻き付いているレヴィが鋭く鳴いた。視線を前に向けると、こちらに一体のゴーストが近づいてきている。


「教えてくれてありがと、レヴィ」

「ピィ」


 私はレヴィに感謝して、戦いに意識を切り替えた。



 ゴーストとの戦いは、コツさえつかめば簡単だった。じっくりと観察し、こちらに攻撃してくる瞬間にカウンターを決めるのだ。

 十数体居たゴーストは次々と消え去り、残るはハンプエッグだけとなった。


「ちぇっ、ゴーストの奴弱すぎだぜー。じゃ、またね、可愛い子ちゃん達。男は消えろ」


 消えろ、と言い捨てて、ハンプエッグは自分の方が消えていった。


「逃がしたか」

「くそー、次は必ず倒す!」


 トオルが眉をひそめながらつぶやき、ユキトさんが拳を握り締める。おお、珍しい、ユキトさんがやる気だ。やっぱりさやかちゃんにちょっかいを出されたのが原因だろうか。

 私がユキトさんを眺めていると、露草に軽く肩をつつかれた。


「リンちゃん、そろそろ次にいかない?」

「あ、うん。そうだね、真ん中の部屋に行ってみよう」

「レッツゴーです」

「レッツゴー!」

「ピィー!」


 ユノが杖を振り上げ、さやかちゃんがそれを真似する。楽しげな二人につられたのか、レヴィも楽しげに鳴いた。


 真ん中の部屋は食堂だった。

 もとは真っ白だっただろうテーブルクロスが長方形のテーブルにかけられ、その上には青白い炎を灯した蝋燭が置かれていた。


「うわー、雰囲気でてるね!」

「ううう、ださないで欲しい……」


 目を輝かせる露草の後ろでつぶやくのは、当然ユキトさんだ。


「……さっきの奴はいないみたいだな」


 油断なく辺りを見回しながら、トオルが言うと、ユノやさやかちゃんも周囲を見回した。


「そうですねーいませんねー」

「どこ行っちゃったのかなぁ? ね、蛇さん」

「ピィ?」


 さやかちゃんに声をかけられたレヴィは首をかしげると、あちこちに首を向け、壁にかけられた絵画の一枚に向かって鋭く鳴いた。


「ピィ!」

「おっと、見つかっちまったかー」


 呑気な声と共に絵画の中から出てきたのは、丸くて白い物体、ハンプエッグだった。


「レヴィ、すごい。よく見つけたねー」

「ピィー」

「蛇さん、えらーい」

「そうですねー、えらいですよー」


 私がレヴィを褒めると、さやかちゃんやユノも笑顔でレヴィを褒めた。


「ピィ、ピィ」

「むむむ」


 照れるレヴィ。それを見たハンプエッグは、なにやら唸りだした。


「可愛い女の子達に囲まれて嬉しそうにしやがって! くそう、こいつらに虐められちまえ!」


 ハンプエッグがじたばたと暴れながら言うと、壁から数体のスケルトンが現れた。天井からは、巨大なコウモリも降りてきた。


「今度こそ逃がさないぞ!」

「えー、またお前かよー」


 ユキトさんがハンプエッグに槍を突き付け、戦いは始まった。

 スケルトンとコウモリ……【キラーバット】のコンビはなかなか厄介だった。

 それでもなんとか全部を倒すと、またしてもハンプエッグは姿を消した。


「……また逃げられたか」

「うう、面目ない……」


 トオルの言葉にユキトさんはしょんぼりとうなだれる。それを見たさやかちゃんが、両手を握り締めて励ました。


「頑張って、ユキ兄!」

「さやか……ああ、頑張るよ! あんな奴にお前をやらないからな!」

「……本当に叔父馬鹿だね」

「ですねー」


 一気に元気になったユキトさんを見て、露草とユノが呆れ顔をする。

 私もトオルと顔を見合せ苦笑した。


 そんなこんなで一階の探索は終わり、次は二階に行くことになった。

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