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 屋敷の中は薄暗く、静かだった。

 入ってすぐの場所は、きっと掃除をしたらとても豪華なんだろうな、という感じで、二階に上る階段が左右に分かれて設置されていた。

 頭上には埃まみれのシャンデリア。調度品も全部埃まみれで、長い年月誰の手も入っていないということがうかがえる。

 私と同じように周囲を見回していた露草が息を吐いた。


「うわー……本格的にお化け屋敷って感じ」

「わくわくしますねー!」

「そ、そうかい?」


 なぜかユノのテンションが高い。逆にユキトさんの方はなんだかビクビクとしていて、挙動不審だ。


「お化け、いるのかなー? ね、蛇さん」

「ピィピィ」

「さ、さやか。期待しちゃ駄目だよ! 本当に出てきたらどうするんだい!」

「……いたとしても偽物だろ。ゲームなんだから」


 さやかちゃんは怖くないらしく、楽しそうに辺りを眺めている。そんなさやかちゃんにユキトさんが青い顔で注意して、トオルに呆れた顔でつっこまれていた。

 さて、そろそろ探索にうつらないとね。


「えっと、どこから見てみる?」


 と、尋ねると、皆は考え込んだ。


「うーん……まずは一階を調べてみませんかー?」

「そうだな。二階はその後でいいと思う」


 ユノの提案にトオルが同意して、なら、と露草が左右と真ん中にある扉を示した。


「どっちから回る? うちは右、左見てから真ん中かなー」

「僕もそれでいいよ……ううう、不気味なのは外だけだと思っていたのに」

「さやかもそれでいいです。ユキ兄、大丈夫ー?」

「ピィー?」


 皆の意見がまとまって、まずは一階を調べることになり、右の部屋に行ってみた。




「ここは……使用人の、部屋みたいだな」


 右側には二つの部屋があり、二段ベッドとクローゼット、小さな机が置かれていた。


「あれ……?」


 私は違和感を感じて首をひねった。


「どどどうしたんだい。お化けじゃないよね、違うよね?」

「あ、はい。違います」


 ユキトさんがガタガタ震えながら尋ねてきたので、否定してから机の引き出しを指差した。


「ここ、他と違って埃が少ないんですよ。もしかして、最近誰かが触ったのかも……」

「だ、誰かってだれ! 幽霊じゃないよね!?」

「お化け? ねえユキ兄、お化けいたの?」

「ピィ?」

「いや、幽霊なら触れないだろ……」

「そうとも限りませんよー、触れる幽霊もいるのかもしれませんよー……ほら、そこに!」

「うわあああ!! さやかは僕が守るうう!!」


 ……一瞬でカオスになってしまった。


「てい」

「きゃんっ」


 露草が背後からユノの頭にチョップを落とした。そのまま溜め息をついて話しだす。


「からかわないの。ユキトもこいつの言うこと真に受けないでよね」

「か、からかわれてたのか……」

「ばっちりとね。ほら、ユノ」

「うう、頭に鈍痛が……ごめんなさい」


 あっさりと場を収めて、露草は腕を組んだ。


「スレに、この屋敷に入っていく人影を見たって情報があったよ。やっぱり先に入ったプレイヤーがいるみたいだね」

「そうなのか? 先をこされたのか……」

「うーん……一番乗りじゃないのかー」


 トオルの後につぶやいて、私はがっくりと犬耳を垂れた。いや、もとから垂れ耳だけどね、更に垂れたのだよ。多分。

 取り敢えず、気を取り直して部屋を調べる。

 机の引き出しには、ぼろぼろになったレターセットしかなかった。なにか、本みたいなサイズの物があったようなのが埃の形からわかったんだけど、部屋の中にはなかった。先に来たプレイヤーが持っていったのかな。

 クローゼットには古びたメイド服と、執事服がそれぞれの部屋にあった。

 他は、特になにもない。


「次いこうか」


 なんとなく肩透かしな気持ちを味わいながら、私は皆にそう声をかけた。




 左の部屋は厨房だった。


「かまどですかーレトロですねー」

「レトロっていうかなんというか……あ、食器棚発見。へえ、食器のセンスいいなーうちの好みだわ」


 さっそくユノと露草があちこちを見て回っている。私はなんとなく近くに置かれていた鍋の蓋を開けた。

 丸くて白い物体に手を振られた。


「はろー」


 蓋を閉めた。

 ……えっと。

 私はもう一度、今度はゆっくりと蓋を開けてみた。


「可愛い犬のお嬢さん、お茶でもどーう?」


 また閉めた。いや、なんだろ。この認めたくない気持ち。


「どうした?」

「あ、トオル……えっと、この鍋の蓋を開けて、中を見てくれる?」

「ああ、構わないが……」


 怪訝そうに眉をひそめながら、トオルは鍋の蓋を取った。

 とたん、中に入っている何かが嫌そうな声を上げる。


「げっ、男かよ。可愛い女の子ぷりーず」

「……さやか、ファイヤーボールを頼む」


 トオルは無表情で淡々とさやかちゃんに頼んだ。


「あ、はいっ。えっと、【ファイヤーボール】!」

「ひゃああ、あちあちあちっ!」


 さやかちゃんのファイヤーボールで鍋は火に包まれ、中から丸くて白い物体が飛び出してきた。丸い物体は怒っている。


「なにすんだよ、乱暴だな! これだから男は嫌なんだ! やっつけてやる!」


 怒る丸い物体を【鑑定】しつみると、【ハンプエッグ】と出た。喋るモンスターは初めてかもしれない。

 なんて、のんびりと考えている暇はなかった。


「うわわ、お化けだー!」


 ユキトさんが叫ぶ。あちこちから、半透明のモンスターが出てきたのだ。

 杖を構えながらユノがユキトさんを宥める。


「落ち着いてくださいー。ただのゴーストですよー」

「やっぱり幽霊なんだ!」

「……いや、まあ、そうだけどね」


 怯えるユキトさんに苦笑しながら、露草は私を見た。


「リンちゃん、ゴースト系モンスターと戦ったことある?」

「ううん、ないかな」

「そっか。ゴーストは攻撃してくる瞬間以外は物理無効だから、気をつけてね」

「うん、ありがとう」


 私はお礼を言って流水を鞘から抜いた。

 さあ、お化け退治だ。

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