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階段を上る前に、皆でまた少し休憩をとることになった。
減ったHPを回復して、お菓子や軽食を食べていると、紅蓮がユキトさんを見た。
「おい、へたれ鬼」
「へたれ……あのさ、僕にはユキトって名前が……」
「あー、わかったわかった。それより、ドロップアイテムはなんだったんだ? へたれ鬼」
「……ユキトだってば」
「あー、ボクも聞きたいー。どんな武器?」
「さやかも見たーい」
マリアロッテくんとさやかちゃんが紅蓮の言葉に同意して、しょげているユキトさんを見る。ユキトさんは少し元気を取り戻したらしく、うなだれていた頭を上げた。
「そうかい? なら、えーと……あれ?」
ウインドウを操作しているユキトさんの顔がこわばった。
皆が注目する中、再び頭をうなだれさせたユキトさんはぽつりと言った。
「魔石と……グリフォンの羽、しかない」
「えっ」
ボスクラスの敵だったのに、武器をドロップ出来なかったの!? それは……うん、なんというか。
皆が言葉を無くす。ややして、さやかちゃんがやれやれというように首を振った。
「……ユキ兄、相変わらず不幸だね」
「……うう」
容赦のないさやかちゃんの一言に、ユキトさんはさらにがっくりと肩を落としたのだった。
……御愁傷様です。
アイテム、で思い出したことがあり、私はインベントリからとある物を取り出した。
【修行のネックレス】である。
「皆、このネックレスなんだけど……」
と、手に入れた経緯を話して、どうするかと尋ねると。
「んー。わんこのおねーさんの物でいーんじゃない? 鍵を開けたのおねーさんだし」
あっさりとマリアロッテくんが言った言葉に、皆がうなずく。
「そうですわね。わたし達はその場にいなかったわけですし……さやかさんはどう思いますか?」
「さやかは、えっと、リンお姉ちゃんが頑張って宝箱を開けたんだから、リンお姉ちゃんの物でいいと思います」
「さやかがいいなら、僕はそれでいいよ」
「まあ、そういうこったな」
与一さんに尋ねられてさやかちゃんが答え、ユキトさんがそれに同意して、最後に紅蓮が興味なさそうにまとめた。
私は戸惑いながら皆を見渡し、手の中のネックレスを見た。
「えっと……いいんですか?」
「いいと思いますわよ」
にこり、と与一さんが微笑んでくれる。私は皆に感謝して、ネックレスを再びインベントリにしまった。
もしかしたら戦いがあるかもしれないから、つけるのはここを出てからにしよう。
「ピィ!」
良かったね、というように元気になったレヴィが鳴いた。
休憩を終えて、とうとう私達は階段を上った。鐘の音が身体の芯に響く。
黒い《塔》の最上階は壁がなく、均等に並んだ円柱の向こうに星がまたたく夜空が見えていた。
中央には巨大な止まり木。
頭上には金の鐘。
そして、止まり木にはその巨大さに見合う大きさの鳥が止まっていた。
「銀の鳳凰……」
知らず感嘆の吐息が漏れる。
止まり木に止まっている鳥は、優美で華麗な銀色の鳳凰だった。
白い《塔》にいた鳳凰は普通に赤かったらしいけど、そっちも見てみたかったなあ。
私達が見惚れていると、鳳凰の嘴がゆっくりと開いた。
「――よくぞここまで来ましたね。冒険者達よ」
その声は、鈴を鳴らすように可憐な女性のものだった。
黒い《塔》の鳳凰は、雌なんだね。
「おい、なにか返事しろ、犬女。リーダーだろ」
「え、あ」
ぼんやりしていたら紅蓮にせっつかれた。そうだった、私がリーダーだった。でも、なにを言えばいいんだろう?
「あ、ええと、その。……はじめまして」
「あら。礼儀正しい冒険者ですね」
鳳凰は夜空色の瞳を細め、軽く首をかしげた。
「はじめまして。わたくしのところにまでたどり着いたのは、あなた達で二組目です。よく頑張りましたね」
「二組目……」
私達は驚き、顔を見合わせた。
「ボク達より先に来たパーティーがいるの? どんな人達だった?」
マリアロッテくんが尋ねると、鳳凰はまた首をかしげた。
「ええ、あなた達は二番目よ。どんな人達かは教えてあげられないの。ごめんなさいね」
「あ、いいです。無理言ってすみません」
申し訳なさそうに謝る鳳凰に、両手を振って頭を下げる。ずいぶん腰の低い精霊だなあ。レーヴはけっこう偉そうだったのに。
でも、二番目か……だとすると、宝玉は貰えないのかな。
「褒美にこれを授けましょう」
鳳凰が銀の羽根を広げると、目の前に何か巻物のような物が浮かんできた。
「スキル指南書です。どんなスキルでも一レベル上げることが出来るので、活用してくださいね」
「やっぱり宝玉ではないんですのね」
「だねー」
与一さんとマリアロッテくんがうなずきを交わす。そういえば、この二人に宝玉の話を聞くのを忘れていた。どんな宝玉を貰ったのか、どんな効果があるのか、などを後で詳しく聞かせてもらおう。
「スキルは上げるのが難しいから、助かるなあ」
「やったね、ユキ兄」
「……まあ、こんなもんか」
ユキトさんとさやかちゃんは素直に喜んでいる。紅蓮は相変わらず素直じゃないなあ。
「さあ、帰りの道を開きますよ。鏡はまだ持っているかしら?」
「あ、はい。あります」
私が金庫に入っていた丸い鏡をインベントリから取り出すと、鳳凰はうなずいた。
「それを床に、そう。では、いきますよ。――あなた達に幸あらんことを」
床に置いた鏡から白い光が溢れ出る。銀の鳳凰に見送られ、私達は白い《塔》に戻ったのだった。
【シルト村編】に比べたらだいぶ短いですが、【もう一つの塔編】もこれにて終了です。
よろしかったら、感想など頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
次回は閑話を予定しています。




