表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/80

48

 階段を上る前に、皆でまた少し休憩をとることになった。

 減ったHPを回復して、お菓子や軽食を食べていると、紅蓮がユキトさんを見た。


「おい、へたれ鬼」

「へたれ……あのさ、僕にはユキトって名前が……」

「あー、わかったわかった。それより、ドロップアイテムはなんだったんだ? へたれ鬼」

「……ユキトだってば」

「あー、ボクも聞きたいー。どんな武器?」

「さやかも見たーい」


 マリアロッテくんとさやかちゃんが紅蓮の言葉に同意して、しょげているユキトさんを見る。ユキトさんは少し元気を取り戻したらしく、うなだれていた頭を上げた。


「そうかい? なら、えーと……あれ?」


 ウインドウを操作しているユキトさんの顔がこわばった。

 皆が注目する中、再び頭をうなだれさせたユキトさんはぽつりと言った。


「魔石と……グリフォンの羽、しかない」

「えっ」


 ボスクラスの敵だったのに、武器をドロップ出来なかったの!? それは……うん、なんというか。

 皆が言葉を無くす。ややして、さやかちゃんがやれやれというように首を振った。


「……ユキ兄、相変わらず不幸だね」

「……うう」


 容赦のないさやかちゃんの一言に、ユキトさんはさらにがっくりと肩を落としたのだった。

 ……御愁傷様です。




 アイテム、で思い出したことがあり、私はインベントリからとある物を取り出した。

 【修行のネックレス】である。


「皆、このネックレスなんだけど……」


 と、手に入れた経緯を話して、どうするかと尋ねると。


「んー。わんこのおねーさんの物でいーんじゃない? 鍵を開けたのおねーさんだし」


 あっさりとマリアロッテくんが言った言葉に、皆がうなずく。


「そうですわね。わたし達はその場にいなかったわけですし……さやかさんはどう思いますか?」

「さやかは、えっと、リンお姉ちゃんが頑張って宝箱を開けたんだから、リンお姉ちゃんの物でいいと思います」

「さやかがいいなら、僕はそれでいいよ」

「まあ、そういうこったな」


 与一さんに尋ねられてさやかちゃんが答え、ユキトさんがそれに同意して、最後に紅蓮が興味なさそうにまとめた。

 私は戸惑いながら皆を見渡し、手の中のネックレスを見た。


「えっと……いいんですか?」

「いいと思いますわよ」


 にこり、と与一さんが微笑んでくれる。私は皆に感謝して、ネックレスを再びインベントリにしまった。

 もしかしたら戦いがあるかもしれないから、つけるのはここを出てからにしよう。


「ピィ!」


 良かったね、というように元気になったレヴィが鳴いた。




 休憩を終えて、とうとう私達は階段を上った。鐘の音が身体の芯に響く。

 黒い《塔》の最上階は壁がなく、均等に並んだ円柱の向こうに星がまたたく夜空が見えていた。

 中央には巨大な止まり木。

 頭上には金の鐘。

 そして、止まり木にはその巨大さに見合う大きさの鳥が止まっていた。


「銀の鳳凰……」


 知らず感嘆の吐息が漏れる。

 止まり木に止まっている鳥は、優美で華麗な銀色の鳳凰だった。

 白い《塔》にいた鳳凰は普通に赤かったらしいけど、そっちも見てみたかったなあ。

 私達が見惚れていると、鳳凰の嘴がゆっくりと開いた。


「――よくぞここまで来ましたね。冒険者達よ」


 その声は、鈴を鳴らすように可憐な女性のものだった。

 黒い《塔》の鳳凰は、雌なんだね。


「おい、なにか返事しろ、犬女。リーダーだろ」

「え、あ」


 ぼんやりしていたら紅蓮にせっつかれた。そうだった、私がリーダーだった。でも、なにを言えばいいんだろう?


「あ、ええと、その。……はじめまして」

「あら。礼儀正しい冒険者ですね」


 鳳凰は夜空色の瞳を細め、軽く首をかしげた。


「はじめまして。わたくしのところにまでたどり着いたのは、あなた達で二組目です。よく頑張りましたね」

「二組目……」


 私達は驚き、顔を見合わせた。


「ボク達より先に来たパーティーがいるの? どんな人達だった?」


 マリアロッテくんが尋ねると、鳳凰はまた首をかしげた。


「ええ、あなた達は二番目よ。どんな人達かは教えてあげられないの。ごめんなさいね」

「あ、いいです。無理言ってすみません」


 申し訳なさそうに謝る鳳凰に、両手を振って頭を下げる。ずいぶん腰の低い精霊だなあ。レーヴはけっこう偉そうだったのに。

 でも、二番目か……だとすると、宝玉は貰えないのかな。


「褒美にこれを授けましょう」


 鳳凰が銀の羽根を広げると、目の前に何か巻物のような物が浮かんできた。


「スキル指南書です。どんなスキルでも一レベル上げることが出来るので、活用してくださいね」

「やっぱり宝玉ではないんですのね」

「だねー」


 与一さんとマリアロッテくんがうなずきを交わす。そういえば、この二人に宝玉の話を聞くのを忘れていた。どんな宝玉を貰ったのか、どんな効果があるのか、などを後で詳しく聞かせてもらおう。


「スキルは上げるのが難しいから、助かるなあ」

「やったね、ユキ兄」

「……まあ、こんなもんか」


 ユキトさんとさやかちゃんは素直に喜んでいる。紅蓮は相変わらず素直じゃないなあ。


「さあ、帰りの道を開きますよ。鏡はまだ持っているかしら?」

「あ、はい。あります」


 私が金庫に入っていた丸い鏡をインベントリから取り出すと、鳳凰はうなずいた。


「それを床に、そう。では、いきますよ。――あなた達に幸あらんことを」


 床に置いた鏡から白い光が溢れ出る。銀の鳳凰に見送られ、私達は白い《塔》に戻ったのだった。

【シルト村編】に比べたらだいぶ短いですが、【もう一つの塔編】もこれにて終了です。

よろしかったら、感想など頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。


次回は閑話を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ