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鏡の向こうは、円形の広い部屋だった。
何本かの柱が立ち並ぶ部屋の中央には、グリフォンがいる。だけど、そのグリフォンはフール君の浮舟とは違い、全身が真っ黒だった。
「あら……白い方の《塔》にいたグリフォンとは色が違いますね。あちらは焦げ茶色でしたわ」
「ダークグリフォン、か。手強そうだね……」
与一さんが首をかしげてつぶやき、その隣のユキトさんも緊張した顔でうなずく。
「でもちょっとかわいいね」
「ピィ」
さやかちゃんとレヴィはマイペースだね。
「ふっふーん。やっとバトルだね!」
「おう。暴れるぜ」
マリアロッテくんと紅蓮は物騒な笑顔で嬉しそうに武器を構える。……頼もしい、というかなんというか。
十人十色な皆の反応を眺めて、私も流水を構える。
さあ、戦いだ。
戦いの先陣をきったのは、与一さんのスキルだった。
「《影縫い》」
光の矢がグリフォンの影に刺さり、その身体を縫い止める。続けて私が投げナイフを投げ、マリアロッテくんと紅蓮が突撃する。
《影縫い》の効果は僅か数秒だったけど、二人の攻撃は見事に当たった。よし、先制成功だ!
「《乱れ突き》!」
次にスキルを放ったのは、ユキトさんだ。槍スキルがグリフォンを襲う。
「キュアアッ」
「わっ!」
だけど、その攻撃は避けられて、逆に前脚の一撃を受けてしまう。
「【ヒール】! ユキ兄、しっかり!」
「う、うん。ありがとな、さやか」
さやかちゃんに回復してもらい、ユキトさんは再び槍を構えた。
そこへ、グリフォンの追撃が迫る。けど、私が割って入った。
「やらせない!」
浅くグリフォンの羽を切って、注意をこちらに向ける。グリフォンの攻撃を躱しつつ注意をひいていると、皆がそれぞれ最適な位置に着いたのが見えた。
「連携、いきましょう!」
私の言葉に皆がうなずく。よし、まずは私からだ!
「いち!」
すっかりお馴染みとなった掛け声をかけながらグリフォンの胴体に一撃を加える。
「に!」
「さーんっ!」
ユキトさん、マリアロッテくんも私に続いて武器を振るう。そして紅蓮が拳を振り上げて……。
「キュアアッ!」
「うわっ」
「くっ!?」
「わああっ」
物凄い突風が私達を襲い、目を開けていられずに閉じてしまう。お腹に重い一撃を受けて吹っ飛ばされたのは、その次の瞬間だった。
したたか床に背中を打ち付け、呻きながら上半身を起こす。な、なんでいつもお腹を狙われるの。かなり苦しいんですけど……!
「ピーィ!」
なんて考えている暇はなかった。白い光が私を包み、グリフォンの追撃から守ってくれる。
「あ、ありがと。レヴィ」
「ピィ……」
レヴィのおかげで助かった。
私が感謝すると、落ちないように私の首に巻き付いているレヴィは弱々しい鳴き声をあげる。たぶん、さっきの光は当分使えないと思うから、もう今のような事にならないようにしなくちゃ。
「皆、大丈夫ですか!?」
起き上がって声をかけると、口々に大丈夫、と返事が返ってきた。さやかちゃんも無事みたいだ。
ただ、ユキトさんがさやかちゃんを庇ったみたいでかなりHPを削られている。
「さやかちゃんはユキトさんにヒールを。皆、グリフォンの風に気をつけて、隙があったらもう一回連携いきましょう!」
「はい、わかりました」
「オッケーだよっ」
「了解!」
「おう」
私の言葉に、皆は力強い声を上げた。
攻防は一進一退だった。グリフォンはとにかく素早い。おまけにHPの減った相手に追撃を仕掛けてくるので非常に厄介だった。
でも、私はすぐに気付いた。
「……フール君の浮舟の方が強かった」
あのグリフォンに比べたら、全然マシだ。そう思うと気持ちに余裕が出た。
そうだ、あれを使ってみよう。
ふとそう思い、私はグリフォンの隙を見て近づいた。
「せいっ!」
振るった左手に握っているのは、【熊の隠し爪】だ。
「キュアッ」
隠し爪で胴体を斬り付けると、グリフォンは目を見開き動きを鈍らせた。
「よっし! 麻痺にかかりました!」
「わんこのおねーさん、やっるー!!」
「連携、いきましょう! ――いち!」
再度連携を呼び掛けて、私から動く。すぐにユキトさんとマリアロッテくんも続いた。
「に!」
「さんっ!」
「ちっ……し!」
「ご、ですわ」
紅蓮と与一さんの攻撃もヒット! よし、次はスキルだ!
「《二連撃》!」
素早く二度斬り付けて離脱する。ユキトさんが続いて槍スキルを放った。
「《疾風突き》!」
「《パワースラッシュ》!」
マリアロッテくんが放った衝撃波もヒットした。そして紅蓮が拳を振りかざす。
「おりゃあ! 《焔》!」
拳が炎に包まれて、グリフォンの頭に当たった。
「キュアアッ!」
さすがにグリフォンも暴れ、羽を動かして空を飛ぼうとしたが。
「――《五月雨》」
続く与一さんのスキルで羽を射ちぬかれ、失敗に終わる。
そして、連携のラスト。
「いくよー!《ファイヤーボール》!」
さやかちゃんの魔法が炸裂し、連携成功の軽快な音楽が流れた。もちろん、大ダメージである。
「これで、とどめだ!」
グリフォンの後ろにいたユキトさんが槍を繰り出す。
「キュアアッ……」
残っていたHPを失い、グリフォンは光の粒子となって消えていった。
「階段が……」
同時に、部屋の中央に光が集まり、上へと昇る階段が出現した。
「いよいよ頂上だな」
紅蓮の言葉に、私は無言でうなずいたのだった。




