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 ぐるぐるぐる。螺旋階段を私達は無言で昇る。

 ぐるぐるぐる。上へ上へと昇ってゆく。

 ……いいかげんどこかに着かないかなー。


「ひーまー。退屈だよー」


 長い螺旋階段に辟易したらしく、マリアロッテくんが両腕を振り回しながら愚痴った。

 さやかちゃんも口には出さないけど退屈そうだし、皆ちょっとやる気をなくしているようだ。


「……ちょっと休憩しようか」


 そういえば、《塔》に入ってから今までずっと動き詰めだった。リーダーとして、その辺りにも配慮が必要だったのに、と反省する。

 とりあえず、モンスターも出ないことだし、階段に座って休憩をとることになった。


「ユキ兄、お菓子食べたいー」

「はいはい。シュークリームでいいかな?」

「うん、生クリームのやつ!」


 さやかちゃんの要望に応えて、ユキトさんはシュークリームの袋をインベントリから取り出すと、私達にも差し出した。


「皆さんも、良かったらどうぞ。カスタードと生クリームがありますから」

「ありがとうございます、いただきますわ」


 お礼を言って、さっそく与一さんが手を伸ばす。……前々から思っていたけど、与一さんって意外と食いしん坊キャラ?

 カスタードと生クリーム、二つを両手に持ってほうばる与一さんはとても幸せそうだ。


「リンさんもどうかな?」

「あ、いただきます。ええと、カスタードをもらいますね」


 私も一つもらって、一口食べてみた。

 甘味が口の中で広がる。甘いけどしつこくなくて、いくらでも食べられそうな美味しさだ。


「ピーィ」

「え? 食べたいの?」

「ピィピィ」


 レヴィがおねだりするように体を私の頬に擦り付けてきた。私がシュークリームをちぎりカスタードをつけて差し出すと、小さな口を目一杯あけてかじりつき、なんだかうっとりしながら咀嚼している。……甘党なのかな。


「マリアロッテさんもどうだい?」

「んー、ボクはいいや。ピザ持ってるから、それ食べる。ありがとね」

「マリア、あの……」

「はいはい。ヨイチの分もあるよー」

「うふふ、ありがとうございます」


 マリアロッテくんはシュークリームを断り、インベントリから湯気をたてるピザを取り出した。与一さんに一切れ渡し、もう一切れを紅蓮に差し出す。


「食べる?」

「……そうだな。もらうか。サンキュー」


 おお、紅蓮が素直だ。思わずまじまじと見つめてしまって、「なんだよ」と凄まれた。うん、変わってないね。残念だ。


 そんな和やかな休憩中、ついでに体力も回復しておこうとポーションを取り出した。小瓶の蓋を開けて口をつけようとしたその時。


「ピィ!」

「えっ、レヴィ!?」


 なんとレヴィが瓶の中にダイブした。ええー!?


 レヴィは上半身を瓶の中に突っ込んで、ポーションをごくごく飲んでいる。


「れ、レヴィ。それはジュースじゃないんだよ?」


 確かに、ポーションは甘ったるい。炭酸の抜けたソーダのような味がする。でも、回復薬だ。……精霊が飲んでも大丈夫なのかな?


「ピーィ」


 一瓶を飲み干したレヴィは、ようやく頭を出して満足そうに鳴いた。いや、まあ、一本くらいは飲んでもいいんだけどね?


「……変な蛇だな」


 思わず紅蓮の言葉にうなずきそうになった私だった。



 休憩して気分を切り替えた私達は、再び螺旋階段を上り始めた。しばらくそうして階段を上ると、ようやく頂上らしき場所に出た。

 奥の壁には、等身大の姿見が飾られている。


「なんだか、終点といった雰囲気ですわね」


 与一さんの言葉に皆がうなずく。私は与一さんに訊いてみた。


「本来の《塔》なら、頂上には何があるんですか?」

「精霊がいましたわ」

「おっきな鳥がいたよー。でも、その前にグリフォンとのバトルがあったけどね」

「え? えっと、その話もっと詳しく……」


 鳥の精霊? その前にグリフォンとの戦い?

 それって、レーヴのダンジョンと似てる。私はもっと詳しい話を聞こうとしたけれど、ちょうどその時、さやかちゃんが弾んだ声を上げた。


「あっ! こんなところに小さなドアがあるよ!」


 ぞわり、と背筋を悪寒が走った。

 考えるよりも早く、私は動いていた。振り返り、さやかちゃんがいる場所を確認すると、ダッシュ訓練で培った瞬発力を駆使して駆け寄る。さやかちゃんは、目立たない場所にある小さな――本当に小さな扉の前でしゃがみこみ、手を伸ばそうとしていた。

 扉が開き、そこから真っ黒な手が出てきたのは、その瞬間だった。


「きゃー!! やだ、ユキ兄ーっ!!」

「さやか!?」


 黒い手がさやかちゃんの腕を掴むと、扉が開いてさやかちゃんを中に引き摺りこむ。

 その、ギリギリの一瞬。

 私はなんとかさやかちゃんのもう一つの腕を掴むことが出来た。


「リンさん! さやかさん!」

「わんこのおねーさん!?」

「ちび! ――リン!」


 皆が口々に私達の名前を呼びながら駆け寄ってくる。

 だけど、それよりも早く私とさやかちゃんは黒い手によって、小さな扉の中に引き摺り込まれたのだった。

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