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閑話:メンテナンスの日

「あーつーいー」


 ちりちりと夏の日差しが肌を焼く。

 私は今にも倒れそうな顔で我が家のドアを開けた。買ったばかりのお気に入りのサンダルを脱いでいると、妹の奈緒がリビングから顔を出す。


「あれ? 早かったね、お姉ちゃん。おかえりー」

「うん、ただいまー……」


 ふうう、と大きく息を吐いて額の汗を拭う。夏の真っ只中だけあって、外はうだるような暑さだった。

 今日は《World》のメンテナンスの日である。午前中は入れないので、久し振りに友達と会ってきたのだった。


「はい麦茶。由紀さんとかすみさん、元気してた?」


 リビングのソファーに座ってぐったりしてると、奈緒が気を利かせて麦茶を淹れてきてくれた。優しい妹を持って幸せだなあ。


「ありがとー。うーん、由紀は相変わらずだったよ。でもかすみは来れなかった」

「え? どうして?」

「あの子、例の数ヵ国主催のアイドルオーディション、一次通過したらしくて。いろいろ忙しいみたい」

「へえー、かすみさん、すごいねー」


 かすみ、は私の数少ない友達の一人だ。すごい美人だけど性格はあっさりしていてちょっと抜けている。今は何万人もの人が応募したという世界規模のオンラインアイドルのオーディションで忙しいらしい。今日は久し振りに会えると思ってたのに、残念だったな。


「由紀はこの前家族で旅行に行ってきたんだって。お土産のお菓子貰ったから、後で食べようね」

「わー、美味しそう! そういえば由紀さんはまだあのゲームやってるの?」

「アクア? うん、今は新しい大陸作ってるんだって。私がオンラインやってるって言ったら、なんでアクアをやらないの、って怒られちゃったよ」


 由紀も私の友達。小柄で小動物みたいな可愛さがある子なんだけど、意外と勝ち気で見た目とギャップがある。

 由紀はずっと前から《アクア》というオンラインゲームをプレイしていて、私にも勧めていた。

 《アクア》は、水の惑星を舞台にした壮大なゲームで、人魚になって大陸や島を作ったり、海底に国を作ったりできる。シュミレーションゲーム、なのかな? あまりそういうジャンルには詳しくないからよくわからないけど、別の種族を選んだプレイヤー達との戦争もあるらしくて、ちょっと苦手かな、と思っている。


「お姉ちゃん、ずっとアクアに誘われてたもんね。でもオンラインをやるのは嫌だーって断ってたお姉ちゃんが今は毎日プレイしてるなんて、なんか不思議な感じ」

「そうかな? まあ、未だに知らない人は苦手だけどね」

「そんなすぐには直らないよね。それで、シルト村から帰ってきてもう二日になるんだよね? レーヴから貰った卵って、まだ孵ってないの?」

「うん、全然まだ。ちょこちょこインベントリから出して服の内ポケットに入れたりして、暖めてるんだけどなー」


 そう。もうシルト村から《白の都》に帰ってきて二日が経っている。特にイベントもなく、毎日近くの草原や旧鉱山近くの林で狩りをしたりして過ごしている。卵も孵っていない。


「どんな子が出てくるのかな。お姉ちゃん、ちゃんとスクリーンショットを撮って見せてね」


 奈緒がうきうきとした顔で言う。動物ならなんでも好きな子だから、蛇でも楽しみらしい。いや、まだ蛇と決まったわけじゃないけど、でもレーヴの眷属だからね。多分、蛇かなあ、と。


「うん、わかってる。うまく撮れるかわかんないけどちゃんと撮ってくるよ」

「よろしくね。あ、麦茶のおかわりいる?」

「うん、欲しいな。お願いできる?」

「いいよーちょっと待っててね」


 あつーい外から帰ってきて、涼しいリビングで麦茶を飲む。

 ゲームも楽しいけど、たまにはこんな日もいいな。

 そう思いながら私は窓の外に広がる青空に目を細めた。

 ちりりん、と窓にかけてある風鈴が、風を受けて涼やかな音をたてていた。

 主人公所有スキル、称号一覧


 《パッシブスキル》


【かくれんぼ】Lv4【夜目】Lv4【誘き寄せ】Lv2【見習い毒使い】Lv1New!【投擲】Lv1


 《アクティブスキル》


【鑑定】Lv4【調合】Lv3【鍵開け】Lv4New!【狙い撃ち】Lv1


 短剣スキル《二連撃》Lv3


 《獲得称号》


【牙を持つ小動物】【シルト村の友人】

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