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閑話:村長武勇伝

 この閑話は、村長好きな友人のリクエストで書いたものなので、村長成分が多量に混入されています。

 苦手な方はご注意ください。

 ――村長、それは村人を守る盾。そして外敵を倒す剣。

 ――村長、それは孤高の存在にして村人達の親愛と尊敬を集める存在。


 シルト村の村長、デュークの朝は早い。日も昇らないうちから見回りに出かけ、ついでに軽く周辺のモンスターを狩り、鍛練を行う。

 最近は祭りがあったおかげで多数の冒険者達が訪れていたが、もう祭りは終わった。これからはよりいっそう警備に力を入れなくてはいけないだろう。


「ふむ……久々に彼らと試合うとするかな」


 腕が鈍っていないかを確かめるために、デュークは森へと向かった。




 シルト村近くの森には、筋肉自慢のモンスターが多数存在する。なぜか。それは、デュークが度々行う《シルト村武道会》に関係がある。


「ふしゃあっ」

「うほっうほっ」


 丸い舞台の上、闘鹿とバトルゴリラが組み合っている。互いに一歩も譲らぬ好勝負であった。満足げにそれを見つめるデューク。しかし、彼には少々物足りなかった。

 もっと上へ。もっと筋肉の高みへ。


「……やはりあのお方にお力を貸して頂くべきか」


 デュークの言葉にモンスター達がハッと身体を強ばらせる。あのお方。この地帯を収める精霊へと、デュークは無謀にも挑もうとしていた。

 そう、精霊、レーヴへと。




「……なるほど。俺を相手にしたいというのか。面白い、かかってこい」


 デュークの祈りを受けて姿を現したレーヴは話を受け入れた。灰色がかった白い髪と翠の瞳を持つ少年の姿が消え、朝もやの中巨大な蛇が現れる。

 レーヴ湖に本性を現したレーヴが降臨した。

 特殊な呼吸法によって水面に立つデュークは感謝を込めて深く一礼すると、腰を落とし、構えをとった。


「懐をお借りします、レーヴ様。……むぅぅんっ」


 気合いをいれたデュークの身体が二回りも大きくなる。眼光鋭くレーヴを睨み付けたかと思うと、その姿が掻き消えた。

 どんっ、という衝撃波が湖を真っ二つに割る。

 レーヴは凄まじい猛攻にさらされていた。


「うおぉぉおおおっ!!」


 まさに光の速さで繰り出される数十、数百の拳。レーヴの巨体がよろめく――と思ったが。


「温い」


 レーヴの翠の目がきらりと光った。

 とたん、デュークをとりまいて水が渦を巻く。水の竜巻に飲み込まれたデュークは苦しげに眉を寄せたが、しかし。


「ふぬうっ!」


 なんと身体から覇気を発して絡み付く魔力ごと水を霧散させた。距離をとって再び睨み合うデュークとレーヴ。

 彼らの間には、余人にはわからない満足感があった。


「……やるな。村長よ」

「勝たせていただきますぞ、レーヴ様」

「さあ、それはどうかな。――いくぞ」

「望むところ!」


 再び両者が激突し、高く水柱が立つ。辺り一面にどしゃ降りのような水が降り注いだ。

 たまたま湖のほとりを走っていた一台の幌馬車にも滝のように水が落ちてくる。




「……リン、濡れるから幌を閉めたらどうだ」

「うん……そうだね」


 ちょうど《白の都》への帰路に着いていたリンは馬車の中から怪獣大決戦を目撃してしまい、真っ白になっていた。目を逸らしたままのトオルの言葉に従い、幌をきっちりと閉める。

 うん、何も見なかった。

 シルト村に滞在している間にも上がりまくったスルースキルを発揮して、リンは先ほど見てしまったものを記憶から抹消する。

 ゆえに、村長の勝負の行方はわからないまま終わるのだった。


 ――村長武勇伝、完。

 なんだか、妙なノリですみませんでした;

 明日はもともと出す予定だった閑話の方を更新します。

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