時計のなか
掲載タイトル一覧↓
1.時計のなか
2.夜明けのま(ー)ち
3.薄桃のまぼろし
4.移 ろ い ろ
以上、4篇からなる小編詩集です。
拙くはありますが、お楽しみ頂けたら、幸いです。
*時計のなか*
ドクドクドク……
呼吸に せなかを
おされつつ
おだやかに きざむ
いのちの 軌跡
ドンドンドン……
地球の 足踏みに
おどりつつ
ふたつの あゆみが
ひと時 つながる
それは まるで
時計の中で
ぴたり 重なる
針のよう――
それぞれのテンポで
チクタクチク
それぞれのこころで
チクタクチク
いつか別れゆくのは
自然のやくそく
その中で わずかながら
おんなじ場所に
いたのです――
しとしとしと……
惜別に けしきを
ぬらしつつ
静かに わかれる
ふたつの あゆみ
ぐるぐるぐる……
思いでのロンドが
めぐりつつ
さきゆく あなたを
ぼんやり見つめる
ぼくと あなたが
時計の仲で
ふたたび 重なり
あえるよう……
雨と晴れの
あいまいな空へ
静寂のなか いのります――
それぞれのひとみで
チクタクチク
それぞれの言葉で
チクタクチク
ふたり すすみゆくのは
おなじ『地球』のわくの中
その中で たびをするから
おんなじ場所に
あらたな季節で
ふたたび ふたり
わらえるよう――
光がちらつき
芽吹いたそらへ
このいのりを ささげました
♪夜 明 け の ま(ー)ち♪
小鳥のホイッスルが
はじまりの合図
肌をさす
3月の夜霧が
ご退場なされます
足踏みの2拍子で
あなたも飛びのれば
むねにおどる
あざやかな花びらが
ご入場なされます
……ドク ドク
いきづくの 春めき
ドキ ドキ……
ときめきのティンパニ
夜明けのまち
夜明けのマーチ
むねにあふれる
ファンファーレ
夜明けのMarch
夜明けのマーチ
ステキな明日への
ぷれりゅーど♪
よぎった涙が
あふれた日々を
けしてしまうためでなく
のこった雫で
まばゆい日々が
ちゃんと花を咲かすため――
こうして春が 歩みだします
夜明けのまち
夜明けのマーチ
まぶたにやきついた
『さよなら』も
夜明けのMarch
夜明けのマーチ
ステキな自分への
おーばちゅあ♪
夜明けのまち
夜明けのマーチ
心にひびく
甘いフォルン
夜明けのMarch
夜明けのマーチ
ステキな春を
鳴らしましょう
―薄桃のまぼろし―
過ぎ去った記憶を
誘うかのように……
目眩い日輪
薄桃のまぼろし
渇いた悲しみを
潤すかのように……
麗らかな彩り
匂いたつ春の日――
時の波の前にも
溺れえぬ絆
心の土に根ざした
安らぎの木
いつかも見た
光にひらめく花びらが
今、時をとらえ
瞳を包み
霞たつ春で この身を抱く――――
歩みゆく日々が
止まったかのように……
柔らかな風の音
幼いまどろみ
この季節が
永遠であるかのように……
夢のような陽炎
溶かされた瞳
――ずっと一緒に
いれたら良いね
いつかに聞いた
優しくそよぐ言ノ葉は
やがて
凍えかわき 荒んだ風の中に
音もなくそっと枯れた夢……
――――けれど
今も息吹く
安らぎの木の花びらは
長い冬を振り切り
雪を溶かす
新たな春への
鮮やかな希望……
――ずっと心に
持ってゆくからね
いつかも見た
光にひらめく花びらが
今、時を放し
背中を押して
霞たつ春へ
この身を誘った――
・移 ろ い ろ・
さあ、目覚めよう
さらさらと
ひかりの衣を
そのからだにまとって
さあ、唄をうたおう
ざわざわと
風のささやきに
その耳をかたむけて
昨日の雨に
ぬれた大地を恐がらず
今日の光で
ほほえんだ雫に
恋をした木々を
愛せるように
さあ、見つめよう
いきいきと
息吹く命を
その瞳に宿して
さあ、踏み出そう
ふわふわと
雲のみちびきに
その心を 蒼にもどして
遠い明日に
廻りくる冬を
嘆かずに
雪が育む
澄んだ花びらの
清らかな色を
忘れないように……
長くはない時間の中で
出逢えるものは
多くはないから
一時一時の移ろう色の
その表情の美しさを
この小さな手のひらで慈しもう
この小さな手のひらで愛でていよう――
読了頂き、ありがとうございました。
誤字・脱字・その他気になる点などございましたら、知らせて頂ければ幸いです
ではでは
――hiro 2012.3.19