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魔法と剣以外にも、私にできてアキラにできないことは山ほどあった。
まず今までお世話になってこなかったスキルはほとんどがそうだ。
料理に乗馬に狩猟に野宿に、あとは飲酒。
この世界では飲酒に年齢制限はなかった。
そのため、私もアキラもアルコールに興味津々。
しかし、この容姿で二人して酔っぱらったらこの世界ではどうなることか予想がつかないわけでもない。
私は控えるようにしていたのだが、アキラはアルコール度数の低いブランデーの水割りのような酒でもグラス一杯で酔っぱらう。
対する私は、アキラの目を盗んで一人で飲みに出て試してみたが、底がなかった。
その上翌日に何も残さない。
正にワクだった。
「・・・なんかシュリに世話かけっぱなしだな」
「いいよそんなこと。何かできちゃうだけだし」
そう言って野宿するたき火を囲い、保存食の干し肉や固いパンをかじる。
「それに、私人と話すの未だに慣れないから、アキラが色々交渉してくれて助かってるよ」
アキラにできて私にできないこともある。
それが今言った話だ。
「自慢になんねぇよ・・・」
未だに一人称をオレと僕のどちらにするべきか迷っている私なのだが、アキラは既に女性らしい立ち居振る舞いをマスターしていた。
今や人前に出ればどこから見ても美少女だ。
話し方だけではない。
食べ方や歩き方、話し方に笑い方までもがとにかくかわいらしい。
二人きりの時に聞くガサツな男口調の方が違和感があるのは最初からだが、アキラが可愛らしく笑えば、微笑みかけられた人と一緒に見とれるくらいに馴染んでいる。
「私は何も努力してないし。がんばんないとねぇ」
「お前はソレ以上すごくなんなよ」
「アキラもこれ以上女の子らしくなると困るよ」
本人だってやりたくてやっていることではない。
だから嫌そうな顔をした。
「ほっとけ」
「こないだだって双子に見えないって言われちゃったしねぇ」
髪の色の違いだけで、歳にも差があるようには見えないため、私たちは双子という設定で旅をしている。
「それはお前がでけぇからだろ」
「そうかな?アキラがかわいすぎるからだと思うけど」
男女なのだから身長に差ができるのは当たり前だ。
アキラの女の子らしさのせいで、私以上に可愛さが際立ってしまっているせいだと思うのだが。
しかし、今まで出会ってきた人々には双子だと名乗ってしまった手前、今更変えることはできない。
中には同じ旅人も居たし、この兄妹のことはそう簡単には忘れられないはずだから。
「そろそろ王都だねぇ」
最初の町でそろえた荷物の中から地図を取り出し、たき火の横に開いて見せた。
「今日は・・・ここら辺だろ」
「そうだねぇ」
ここから東に見える川を渡れば後は王都まで一直線だ。
ただし、渡ってから馬で半日以上の行程を経て、という話だが。
そもそも私たちが王都に向かうことに理由はない。
見てみたい、というのが一番の理由かも知れない。
この世界で生きることを決めた私たちは、生きる場所を求めている。
職と住む場所を探している。
その中で王都に寄ることだけは決めている、という話だ。
王都観光が終われば、再び永住の地を求めてさすらう。
まぁ、王都がいい場所だと思えばそこで永住するつもりはあるのだが。
「アキラって何かやりたい仕事あるの?」
「さぁ・・・シュリは?」
「わかんない。仕事内容より職場環境、かなぁ」
やりたいことはないが、働きやすい場所がいい。
その方がきっと楽しいに決まっているのだから。