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彼と私

作者: 31100330

いつもの学校にいっている道,猫がいた。

かわいかった。

私はさわった。

でも,彼はさわらなかった。

「ふーん。嫌いなんだ。」と思って,学校に行った。

退屈な授業。

うるさい先生。

寝ている学生。

どれも正常だった。

彼をのぞいては。

彼は,落ち着きがなかった。

しかし,それはたまにあって私は,「またか。」と思っていた。

授業が終わり,帰り道。

猫が死んでいた。

朝の猫が。

悲しかった。

だって,傷一つなかったから。

車にはねられたりしたら,死因はわかるけどこれじゃあわからない。

彼は,ひどくおびえていた。


ある朝,彼を見かけた。

でも,彼の目には犬が映っていた。

また,私は「かわいいね。」と言って近づいてさわった。

彼は,「あまりさわらない方がいいよ。」といって,学校に行った。

いつもの授業。

日にちは違えど,何も変わらない。

彼も変わらない。

やっと授業が終わった。

彼と帰る途中で犬にあった。

朝の犬に・・・。

でも,死んでいた。

「やっぱり・・・,死んじゃったのか・・・。」

彼がつぶやいた。

なぜ,彼がわかるのか。

私は,聞いてみた。

「なんで,わかったの?」

「そ・・それは・・・。」

「ねぇ,なんで?」

「じゃあ,俺の話を聞いてくれるか?」

「うん。」


私は彼の話を聞いた。

彼は,異質体質で見たものの生気をを解き放つことができるとか,このことを知った軍が戦争に協力しにきたとか,悲しくてかわいそうな真実を知った。

そして,結局軍に参加すると言ったことも。

そのとき,私は思い出した。

彼が,猫を見た日のあのびくついていた姿を。

犬を見たときの彼の言葉を。

私は,呆然としていた。

しかし,彼は平然としている。

おそらくもう何人かにこのことを話しているのだろう。

でもそんなことはどうでもいい。

許せないのは,どうして彼が軍に協力するのかだ。

でものそのことを聞くと,彼は黙り込みそうだ。

彼とは長いつきあいだからわかる。

でも決して恋愛対象ではなく友達としてだ。

私は,もう彼を傷つけたくないからそのまま帰った。

家に帰ったとき,私は後悔した。

何でもっと聞いとかなかったんだろう。

聞いておかなくちゃいけないことがもっとあったのに・・・。


次の日,彼と一緒に登校した。

ゆっくりと,でも犬・猫がいるときは私が話しかけてそれらを見ないようにする。

これしか方法はなかった。

でもこのままではいけないと思う。

でも・・・でもこれしかないんだ。

「そんなに気にしなくてもいいよ。」

「えっ?」

彼が言った。

なぜだかとても安心した。

でも,見てしまったら死んでしまう。

傷つくのは,私じゃない。

彼の方なのに・・・。

その日の朝のホームルームで担任が来なかった。

みんながざわついている中で,彼はまたおびえていた。

でも,こんどのはちょっと変だった。

数日後,担任が死んだ。

死因は,心肺停止。

寝ている間に起こったそうだ。

私は,少し迷った。

もしこれも彼の力だったら?

犬や猫もちゃんと検査していないだけでもしかしたら心肺停止だったのかも・・・。

その日から,彼は学校に来なくなった。


悲しかった。

でも,彼の気持ちはわかる。

もう誰も死なせたくない。

もう誰も見たくない。

そういう気持ちだと思った。

日曜日,彼の家に行った。

人気はなかった。

それでも私はチャイムを鳴らした。

出てきたのは彼だった。

とても悲しい目をしていて,なんだか生きていない人みたいに思えた。

中に入れてもらうと,彼の両親が寝ていた。

いや,そう見えるだけかもしれない。

「死んじゃった」

後ろから聞こえた声は彼のものだった。

「俺は,ここには居たくない。だから,軍に行く。」

私は,彼の家を飛び出した。

気がついたら,泣いていた。

自分のベットで。

月曜日,彼の机はなくなっていた。

新しい担任からは,転校したと聞かされた。


ある日の新聞には,偽名だったけど彼のことが書いてあった。

「○○ ○○(18歳) 軍で活躍。見たものを抹殺。」

このことは,日本中に広まった。

男の子は,「かっこいい。俺もこんなことしてぇな。」

女の子は,「こんな人が彼氏だったら,ちょーやばくない!」

などと,くだらないことばかり。

自分が違うから,そんなことが言えるんだ。

一ヶ月ぐらいしたら,その話はあんまり話されなくなった。

私は,その間楽な気持ちになれた。

彼のことを考えなくてもいい。

今朝,猫にさわって来た。

いつもなら,彼がそばにいて帰る頃には死んで居るけど今日は生きていた。

数日後,彼がなぜか帰っていた。

私は,学校を休んで彼の家に行った。

その日の彼は,とても穏やかだった。

私は少し怖かった。

でも,彼が帰ってきて安心した。

そして,数日後の新聞に彼のことが書いてあった。

「○○ ○○ (19歳)銃撃戦にて流れ弾に当たり死亡」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

え? 

なんで?

彼は,・・帰ってたのに・・。

死んだ?

私は,確かめたくて彼の家に行った。

チャイムを鳴らしても誰も出てこなかった。

仕方なく帰ろうとうつむいたとき,ドアノブが壊されているのに気がついた。

私は,恐る恐る家に入っていった。

私が数日前一緒に食べたお菓子の袋がそのままになっていた。

私は,あの日のことを思い出してみた。

思い出してみると何かがおかしかった。

それは,私がここに来たとき「彼が居なかった」ということだった。

つまり,彼は本当に死んでしまって私はつらさに耐えられず彼の家に行ってしまった。

でも良かった。

彼を思っていて。

でも,やっぱり悲しい。

私は泣いた。

泣いた。

泣いた。

目が真っ赤になるくらい泣いた。


久しぶりに学校に行ってみると,猫が居た。

かわいかった。

だから,さわって学校に行った。

授業は退屈だった。

帰り道今朝の猫が死んでいた。

私は微笑んだ。

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