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いち

オリジナルです~。

著作のなんたらは私になんたら。


よろしくお願いします。

パトラ・ファンドは物心つく頃から5年間祖母の家に預けられた。

両親の言葉に直すとどうやら「訳あり」だったらしいが、後にそれはただの長い浮気騒動だったと知る。

余りに家が荒れて喧嘩で幼児の身が危ないとの事で彼女は街中の祖母の家に移ったのだ。

祖母と気が合う彼女は直ぐに馴染み、親が居なくとも全く寂しがる様子を見せなかった。

一人暮らしの祖母を楽にする為、進んで家事をし料理をしそのお陰で彼女は一人でも生きる能力を身に着けたとも言える。

「パトラは良い子ねえ。」

祖母にそう言って貰う為に彼女は子供ながら健気に頑張った。

また、平民は学を身に着ける事はないのだが、祖母は若い頃に身分ある家で家庭教師をしていたという事で、パトラは文字を覚え文章を覚えた。僅かながら数も教わる。

その事から本も読めるようになり、様々な物語に夢中になった彼女は身分ある者達のみの出入りが目立つ図書館の常連客となった。

街中の為友だちも出来て、彼女は同世代との交流で他者との付き合い方を学び、他者と知識から一般常識を知り、祖母からは真っ直ぐな愛情を得た。


「いい? パトラ、偏った概念や情報に騙されてはいけないよ。常に何が正しいかを見極め、自分の中で情報を更新し続けなさい。」

賢く厳しく優しくあった祖母から、彼女は生涯の教訓を得たと言えるだろう。


それが、パトラの幸運でもあった。


5年後――――――――、

10歳になったパトラは全く馴染みのない実家へと戻った。

少しばかり老けた両親は仲良く暖かく彼女を迎えた。

彼女の家は農家であり、周りに家と言えば遠くに豆のようにある一軒家のみ位の田舎にあった。

また、その遠く離れた豆のように小さく見える一軒家が、唯一のご近所さんでもあるのだが。

畑仕事で毎晩沈むようにぐっすりと眠っていたが、1年が経ち体力もつくと彼女はこの辺りで唯一の自分のコミュニケーション手段である両親のある特徴について考える事が出来た。

「いい? パトラ、私たちはね、いつかこの仕事をやめて大きい家を建てドレスを着た生活をするのよ。」

「いいかい、パトラ。いつか必ず俺達は身分ある者になるんだよ。」

それは二人とも、かなりの野心家だという事だった。

言い聞かせるようにしてそう囁く両親の言葉を鵜呑みしてそのまま信じそうになったが、祖母の教えから惑わされずに冷静に分析することが出来たのだった。

一家は食べ物に困っている訳でも生活が苦しい訳でもなかった。最も、重い税金には苦労したが。

それでも豊かな過度な生活に夢見る事を忘れられない両親はその言葉を言い続けた。

「いいかいパトラ。」

「いいわねパトラ。」

そしてパトラにどこか身分ある所へ嫁がせようとか婿養子を、などと企むのだ。

13を過ぎてからは彼女も「はいはい」と聞き流す事を覚えたが。

しかしそんな夢を見ている両親の願いは、革命でも起きない限り叶う事はない――――。

そう15のパトラが思っていた夏。


幸か不幸か両親の強運か。

反乱軍が発った。



田舎の為少し遅れてその情報が入った時、パトラは呆然とし両親は喜んだ。

どうやら、国王に不満を持った貴族と民衆が城下町でやらかしたらしい。


平和に暮らしてきた彼女には全く現実味のないことだった。

野心家である両親は喜んで真っ先に田舎を捨て、反乱軍に加わった。

事を、両親が家を出た次の日の朝置き手紙で知った。

命であり生活でもある畑を捨てるなど、考えられない。一体何をしているんだ。

そう怒っても仕方がなく、残された広大な土地は雇った信用ある責任者にまかせ、世話を残りの手伝いの人に頼んだ。ちなみに土地の一部を売りお金にしてパトラの旅金と、今後の念の為の貯金とした。

そう、パトラの家は広大な土地という財産があり、決して貧乏な訳ではないのだ。

やたら身分ある生活に夢見る両親の心情が全く理解出来ず、残された一人娘は昔暮らした祖母の家へと旅立った。




反乱というか、革命というか、それは意外と長引き2年も続いた。

一番争いが激しくなる前に、流石賢い祖母というべきか、「面倒事は御免」とでも言うように祖母はあっさりと寿命で亡くなっていった。

それからパトラは余り外に出なくて済むようにと定期的に長持ちする食料のみを買い込み、それを日々の食料として、祖母の持ち物である物語や物語以外の本を読み込んで過ごした。

勿論、乙女としてダイエットの運動も忘れずにである。

人と話したくなれば同じアパートの住人の所へ遊びに行った。ちなみに住んでいるのはお年寄りばかりである。



革命は革命軍の勝利で終わった。

同時に家篭りの生活に終止符が打たれた。

嬉々として新鮮な果物でも買いに行こうとした雨の日の朝。もっと言えば早朝。

「ひっ。」

元は祖母の、現在は自分のアパートの入り口に入って、外から見えない所に鎧を着た人が倒れていたのである。

その人は革命軍の印を纏っていたので一先ず安心し、だらだら流れ出ている血に青ざめ、慌てて止血をし部屋へ運んだ。

知らない人だけれど、見たところ騎士だし、このままだと死んでしまうし、他のお爺ちゃんお婆ちゃんが見たら驚いて心臓が止まってしまうかもしれない。

パトラはそう考えたのだ。

怪我人には薬と一緒に眠り薬も飲ませて、一応自分の部屋に鍵を掛け、家の扉にも鍵を掛け、買い物に出掛けた。

その途中で新政府の発表やら褒美を貰った者やら新貴族やらの新聞があったので、何気なく目に通して、




実家に戻った。





普通は半日以上掛かる道のりを三時間で帰った。へろへろになりながら留守の間家を守っていてくれた者達にお礼を言い、急いで残っている自分の家の畑をその人達に分け与えた。ちゃんと分割である。

「いいいいけませんっ、お嬢さん! こんな・・・」

「いいの受け取ってお願い。お礼だから。あげた土地は好きに使っていいわ。父さんと母さんはもう家に戻って来ないでしょうから。」

残りの余った土地を再び自分の財産に代え、家の物も殆どをその人たちにあげた。

殆ど残っていない自分の荷物と大切な物のみを持ち、肝心の家自体は売りに出した。

これで完了である。

愛馬のサウルのみを連れ出し、来る時に借りた馬は途中で返した。

アパートだけれど、馬を預かって世話をしてくれる所はちゃんとある。サウルをそこに預け、一部買った新聞に目を通した。




『ファンド夫妻、お手柄の大出世!

元は農民だったというファンド夫妻は革命で大活躍をし、大出世をした。

褒美で貰ったのは街中の広い土地と、大貴族という貴族の中でも上の身分である。

ファンド氏は馬を自由自在に操り戦場を駆け、ファンド婦人は女性ながらその知的な頭脳を使い、戦場で敵を混乱させた。

また、瞬く間に英雄となった二人は行方不明の一人娘を捜しているという。

ファンド夫妻の依頼で、似顔絵も載せよう。』



父が馬を自由自在に操り? 

そりゃああんなに広い土地の大田舎だもの、移動手段は嫌でも馬よ。嫌でも上手くなるわよ。あの辺に住む人皆上手いわよ。

母が知的な頭脳で戦場を?

そりゃああのお祖母ちゃんの娘だもの。あとそういうのは大好きで得意なはずよ性格上。楽しかったでしょうね。


彼女は心の中で毒づいた。

なんという事か、両親はただの野心家ではなく、運までも味方にしていたらしい。

今頃有頂天だろうと想像する。

ちなみに父は元孤児であり、家族はなく、母も祖母が亡くなった為親戚に財産を分ける必要も無く、欲しいままだろう。


両親は今のパトラの家―――元祖母の家―――の場所を知らないだろう。

二人は一度も来たことがなく、パトラは住所をメモしてあった紙を全て実家で燃やしてきた。

二人は有頂天になった後ふと実家を思い出し行けばそこは既に他人の家で、畑もなくパトラの居場所に繋がるものは何もないはずだ。

最も、膨大な財産と夢の地位を手にした二人が実家の存在を思い出すかは謎だが。

新聞の下に載っていた似顔絵は全く似ていなかった。やたら美少女に書き込んである。瞳の色が違うとはどういうことだ。


ともかく、御免、と思う。

両親が望んで手に入れた生活はパトラの理想とかけ離れていた。

パトラはあの祖母の家で過ごす事を愛していた。

また、夢が現実となった二人とは話も通じないに違いない。

彼女は名乗りを上げずにずっとこのままで別れたまま暮らそうと決意した。


遅くなって果物を買い込んで家に戻れば、鎧の人は起きていた。警戒している様子だった。

パトラは両親の思わぬ事で疲れていたが、これでずっとここで暮らせると自分を励ませば少し元気になった。

「ここは何処だ?」

鎧の人は聞いた。くぐもった声だった。

「私の家です。あなた、今朝うちのアパートの所で倒れていたんですよ。大丈夫ですか?」

血は止まっていたが傷は深かった。

「あの、出血が目立った肩の所だけ治療というか、手当てしておいたんですけど、他は大丈夫ですか?」

「ああ。」

返事をしたようだがやはりくぐもって聞き取りずらい。そこでパトラは提案した。

「あの、暑苦しいですし、落ち着かないので、その鎧、取っちゃいません? 汗かいてらっしゃるでしょう。傷があるなら、体は清潔にしないと。」

無言で騎士は鎧を脱ぐが、何故か顔の所だけ取らない。困って「あの、」声を出すと、

「・・・取ってもいいが、面倒事になると思うぞ。」

「はあ。」

よく分からぬまま曖昧に返事をすれば、騎士は顔を見せた。見事な金髪だが、非常に汗臭い。

面倒事とはこれだろうか、タオルとお湯を持って来ると、

「・・・分からぬのか?」

「はい?」

「・・・手当てをしてくれた貴女を信頼して素性を明かそう。私は、今となってはもうないが、国王の下で騎士団長をしていたダウス・ルティニクスである。革命軍の鎧を着ているが、元国王軍の者だ。よろしく。」

よろしく。とは、なんと暢気な。それは一体どういう意味でしょう面倒事よろしくという意味ですか?

ふらりと眩暈がしたパトラは足に力を入れて倒れるのを踏みとどまった。


「・・・それ、は、つまり、残党さんという事で・・?」

「そういう事だ。」



革命軍の鎧は、見つかるのを防ぐ為盗んだものだと言うのだから笑える。

今日は、まったく厄日である。



「図々しくも、此処に匿って住まわせて欲しいのだが。」

「ほんと図々しいですね。」


ここに元騎士団長さんが居ますよと知らせば褒美をもらえるかもしれない。ひと時は。

しかし、その人を手当し命を救って不可抗力とは言え一日匿ったのも事実で。

下手したらパトラ自身も罪を着せられるかもしれなかった。


「お願いですから、此処に居たとは絶対に言わずに今すぐ速やかに出て行って生き延びて下さい。」

「いや、そんな、命を救われ看病までして貰った恩人にそんな無礼な態度を取る訳には。」



我知らずにして国が捜しているであろう悪党さんを救っちゃった女の子の話。

その上弱みまで握られました。




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