私ではない
部屋に戻り思考を巡らせる。
王に撫でられた頭がまだ少し暖かい。
「同じ存在ではない」
自分を律するようにそうつぶやく。
私の記憶は白姫純恋の記憶だ。リーユの記憶は何一つとしてない。であれば私を作り上げているのは純恋であるはずなんだ。
じゃあ今の私は誰?純恋の身体をなくして、リーユに奪われた私はいったい何者なんだろうか。
「……散歩してくるか」
この体になってよかったことはこうやってたくさん動いても死の危険性がないことだ。もちろん全くないことはないが、それでもポトス様のおかげで常に死におびえることはない。
散歩も思考を整理することに使えることにこの体になってやっと知ることができた。それはリーユに感謝しないとな。
「あら、お散歩?私も一緒にいいかしら?」
「アンスリウム様。私でよろしければ、ぜひ」
二人で並んで歩く。無言の時間が少し続くが、その時間を気まずくは感じないのは王妃の人柄だろうか。
「リーユ」
「は、はい」
「お散歩は楽しい?」
「はい。お庭がきれいだからですかね」
突然の質問に少し驚きはしたが、私はそう返す。
王妃の笑顔が太陽に照らされすごくきれいに見える。
「アンスリウム様はお好きですか?」
「ええ。特にリーユとこうしてお散歩する時間はとても楽しく思うわ」
「ずっと思っていましたが皆さんリーユのことが大好きですよね」
「……ええ、大好きよ。あなたのことが」
「え」
突然そう言われて足が止まってしまう。違う、勘違いするなと脳内で自分に言い聞かせる。
王妃にとって私はリーユで、だから……
「あなた気づいている?記憶を失う前の自分のことをリーユ、今の自分のことを私と言っていることに」
そういわれて、私は思わず縮こまる。気づいている。いや、そうしているのだ。自分は違うものであると思っているから、リーユを自分として接することはできない。
その中途半端な思いがずっと王妃たちに気を使わせていることも知っていた。悲しませたくはないと思っている。だからこそ、私は違う人間なのだとみんなに気付いてほしかった。わがままで強欲な最低な人間。
「ふふ、ごめんなさい、意地悪なことを言って。サルビアが少しあなたと話をしたって聞いてついね。」
書庫のことをもう聞いたのかずいぶん早い……いや二人ならあり得るか。仲が良すぎて本当に逐一連絡を取っているのをこの一週間でいやというほど目の当たりにした。
「リーユはね、運動も勉強もあまり好きではなかったわ」
「そう、なんですか」
初めて、この世界の人からリーユの話を聞いた。ずっと、私を気にして話していなかったから。
特に王妃は絶対に話さなくて、王が言おうとしたときには強烈な睨みをかましていた。
「確かにあなたとリーユは違うのかもしれない。でもね」
そっと抱きしめられる。花の香りが私を包み込む。
「私たちはあなたを愛していることは信じてほしい。大切な娘なのだから」
私を愛している。それは、なぜですか。もともとリーユだったからですか。リーユの姿形をしているからですか。
王妃たちは知らない。知る由もない。私が白姫純恋だということを。
この世界が物語で、私は存在しないはずの人間だということを。
あなたたちにとって、なにがリーユロクなんですか。私にはわからない。
「そう、ですか」
「わかってないわね。難しいとは思うわ。でもどうかわかってほしい。リーユだからではないのよ、あなたを愛する理由は。また夕飯で会いましょう」
そういって王妃は離れていく。私を愛する理由。リーユだからではない。そんなことを言われても私は理解できない。
また一つ整理する志向が増えてしまった。
そんなことを考えながら私はまた散歩を続けた。
グダグダ思考パート。
さ、残り1人はどんな言葉をかけてくれるんでしょうね。
ところでどうでもいい話なのですが、リーユロクという名前はクロユリを反対から読んで名前風にしたことで名づけられた名前です。
私の中でユリの名前という志向が強すぎるせいでちょくちょくユーリと呼んでしまうのをどうか許してほしい。ごめんねリーユ




