壊さないように
「リーユ!迎えに来たぞ!」
扉があき、そこには満面の笑みのトリ様が立っていた。
「リウス様。女性のお部屋に突然入ってくるのはいけません」
「でも」
「でもじゃない」
メリアがトリ様のことを叱る。
ふたりのやりとりに自然と笑ってしまう。
侍女と主。そこには明確な線引きがあるはずなのに、まるで家族みたいで羨ましい。
そこに踏み込めない私はいつまで経っても他人のままだ。
「リーユ。いこう」
「はい」
差し出された手を私は握る。
一歩踏み込む勇気が足りない。
リーユは家族に愛されていた。私はリーユではない。そんな私がどんな表情でそこに踏み込めばいいのか分からない。
一体私はどうしたいんだろう。
食堂に行けば、変わらず王様と王妃様が笑って迎えてくれる。
ここに居たい。でもそれは私にはできないことで。
まとまらない思考が私を蝕む。
「リーユはどうですか?」
「え、あ!はい」
突然声をかけられ私は思わず声が裏返る。
なんの話をしていたんだろうか、全く聞いていなかった。
「疲れているのか?やはり普通の生活をするのは早かっただろうか。大丈夫か?」
「大丈夫です!サルビア様はお優しいですね」
私が名前で呼べば王様は目を丸くする。
さすがに名前で呼ばれるのが好きという話を聞いた後で名前で呼ばないのは気が引ける。
これが私にできる精一杯のこと。
「楽しかったですよ。何も知らないので全てが新鮮に感じました。あとは、そうですね動くのがすごく楽しくて制限が付いてるのがもったいないくらい」
そう言って笑えば全員がこちらを見て笑う。
「リーユは運動が好きですか?」
「はい!」
王妃の言葉につい元気に答えてしまう。しょうがない本当に楽しくて好きになってしまったのだから。
これに関しては隠してもしょうがない。
「そうですか、大丈夫。いつか全力で遊べる日が来ますよ」
「そうだといいのですが」
そっと頭を撫でられる。暖かい感触が心地よい。
癖になりそうで嫌になる。私では無い。この愛は私への愛ではないと、理解しなくては。
「アンスリウム様どうされたのですか」
「いいえ、可愛い娘が無邪気な子になって嬉しいのです」
「リーユは無邪気だったんですか?」
「ふふ、どうだったかしらね」
王妃は私の言葉を誤魔化す。
まただ、この人達は意図的にリーユのことを話さない。
愛に溢れて他人を思いやる方だからこそ私が気を使わないようにしているのだろう。
「いじわるしないでください」
「ふふ」
「アンスリウム、リーユが不貞腐れているぞ」
「あら、残念」
くすりと笑い離された手を目で追ってしまう。
甘えるなと、頭の中でつぶやく。過去を話さない優しさも、嬉しいという感情も全てリーユに向けてだ。私では無い。
私はゲームの世界を壊してはいけない。
その後のことはあまり覚えていない。いつの間にか食事は終わっていた
そろそろストックがなくなってきますが、キリがいい所までは毎日投稿したい




