普通の生活
私が闇の魔力を流されたことによる懸念はもう一つある。
これは私にしか気づけないこと。リーユロクは光属性の魔力保持者ということだ。
「もしも、私が光の魔力の保持者だったらどうなりますか」
「それは……!考えていなかったがその可能性もあるな……反発は強いものになるだろう。最悪の場合は……いややめておこう。その辺も調べておきます」
死に至る。という言葉が言葉の裏に見えた気がした。多分これは本来ゲーム本編にはなかったこと。少しでもゲーム通り進められるように、ポトス様には悪いが調べてどうか無事に済む方法を見つけてほしい。
「ということで、お嬢様は生きることに大変不利な身体となってしまいました。」
「みたいですね」
「なので体力づくりが本当に大切になってきます。しばらくはこちらでメニューを考えますから絶対にこれ以上のことはしないでください」
ポトス様から紙を渡される。そこには筋力、体力のつけ方から普段の運動量まで事細かく書いてあった。これを見ただけで分かる、この人はすごい医者だ。きっとこの人なら魔力の反発についても研究できるであろうと信じている。正直デンファレのことを使うのは気が引ける。どれが本当でどれが嘘かわからないからだ。信頼できる人間に任せておきたい。
「この通りにすればよいのですね。かしこまりました」
「はい。あと、診察には週に三回ほどきていただければと思います。お嬢様の体調が気になりますので」
「そちらのほうが私も助かります。では、また二日後に」
私はお辞儀をして部屋を出る。光の魔力保持者だということは私以外は知らない。確か覚醒は13歳の時だったはずだ。
それまで強い反発が起きないことを願うが……こればかりは何とも言えない。
「部屋に帰ったら運動着に着替えてそちらを試してみますか」
「そうですね。そうします」
メリアの提案に乗る。そういえば運動というのはすごく久しぶりな気がする。ベットの上から眺めていただけだったからな。少し、楽しみだ。
「ここが運動場ですか?」
「正確には鍛練場です。騎士団は午前しか室内での鍛練を行わないので、今はリーユ様のみですよ」
「やった」
それから少し体を動かした。
ずっとベットの上で過ごしていた。
こうやって動き回って、汗をかくなんて絶対にできなかった。
楽しい、運動ってこんなに楽しいものなんだ。
ここに来てからずっと感じていたことがある。
白姫純恋ではできなかったこと。普通の生活をすること。
誰かと食事をとったり、勉強をしたり、歌……はちょっといいけど、ほかの人と一緒にはできないかもしれない。それでもいい。
普通の生活をすることがこんなにも楽しい。
「メリア!運動ってこんなに楽しかったのね!」
「……!よかったです」
思わずそう笑った私を見るメリアは少し嬉しそうだった。
「はーっ、疲れたー。でも楽しかったです」
「運動お好きですか?」
「わからない。けど思い通りに体が動くのは楽しいです」
だからこそ、これしかできないことが本当に悔しい。
もっと動きたい、疲れたい。そんな欲望が出てきてしまう。
「私も騎士団に入ればもっと運動できるのかしら」
「リーユ様……」
「冗談ですよ」
困ったように笑うメリアに対してそういえば、二人で笑った。
そんななんともない時間が何よりも楽しくて、ずっとほしかった時間なのかもしれない。
「さあ、お部屋に戻って着替えましょう。夕食のお時間が迫っております」
「はぁい」
私たちはリーユの部屋に戻る。一日でこう何回も着替えをするのは大変疲れるが、それもまた楽しい日常の一つなのかもしれないと思うと煩わしくは思わない。
だが、間違えてはいけない。これは私の人生ではないのだということをきちんと理解しなくてはならない。私はリーユにはなれないのだから。
誰も傷つかないように生きるだけ。それだけだ。
そういえば紹介していなかったなと思うので突然ですが主人公の元人格の設定でも
白姫純恋
病弱でずっと病院にいた少女。運動はおろか食物アレルギーもあったため食べ物も制限されていた。
母は自分を生んですぐになくなり父はそれから純恋を憎むようになったのでほぼ一緒にいた記憶がない。
純恋の記憶にあるのは優しいお医者さんと看護師さんの笑顔だけだった。
自分の人生が限られたものだとわかっているからこそ、他人の起源など全く気にせず、自分の生きたい人生を生きると決めていた。
孤独を生きる少女にあったのはゲームや本、アニメだけだった。
18歳の誕生日に発作を起こし目が覚めるとゲームの世界に転生していた。
名前の由来については花言葉からとっております。




