散歩代わりに行くしかないかしら
お読み頂き有難う御座います。
爽やかな晴れ渡る朝……。今日も雪で照らされた真っ白な庭が眩しいわね。
「アーマンナー!」
「グググガウウ……」
「ああ、アマンナー、何処にいるんだー」
……甘ったるい気持ち悪い声が煩いわ!
朝起きたら、廊下から不愉快な声がしていました。
えー。……またバカ兄が本邸へ来ているのね……。ああー、早く玄関その他丸ごと鍵を交換したい!
バカ兄を閉め出したくて堪らなくて、最早、私が鍵師になりたいわ!
ああ、鍵師が待ち遠しい。でも、今出来ること何か無いかしら。雪がマシになったら、別邸の周りに空堀でも作ろうかしらね……。
そして、何故あの迷惑女が本邸に来たと思っているのかしら。単独で通さないように命じているから、絶対に入れない筈なのに。
その辺に埋まってるんじゃないのかしら。掘り返しにはバカ兄だけで充分ね。
「グルウ……フハハフハフ」
「コーエン、我慢して」
今にも噛みつきに行きそうですわね。行かせてもいいけれど……ちょっとねえ。掃除と洗濯が大変だしねえ……。
「この雪で洗濯も大変だから、あまり屋内を血で汚したくないのよ」
「ヴウウウ……クゥン」
綺麗好きだから、思うところがあるのか。やっと唸るのを止めたわね。
「何してるの。ちょ、スカートに顔を突っ込むの止めてくれないかしら」
「グゥ……」
「うわっ! 何するのコーエン、足を舐めないで欲しいのだけれど」
「クゥクゥ……」
「アマンナーーー!」
「ガウウウウッ! ガルルルルルウア!」
あ、コーエンが切れたわ。どうやら我慢の限界だったみたい。器用に鼻でドアを空けて、廊下に飛び出して行っちゃったわ。
「ギャー!」
あ、噛まれたかしら。
困ったものね。控えめに引っ掻いといてくれないかしら。
コーエンも気が短くて嫌になるわ。
「お嬢様、リビエール様が……」
「リビーが?」
どうしたのかしら。
遊びに来てくれるなら大歓迎だけれど。
使用人にはお通しして、と言付けて急いで応接室へと急いだわ。
廊下は……コーエンの白い毛だらけだったわね。意外と血が付いてないから、引っ掻いたのかしら。
「コーエン? コーエン?」
何処へ行ったのかしら。
廊下でゴロゴロしてるかと思っていたのに。
「ううう……痛い……! 顔を引っ掻かれたあああ!!」
廊下にゴロゴロ転がって鬱陶しい。倒木よりも邪魔ねえ……。埋めたいわ。
「あら、更に面白い光景」
「あらリビー。いらっしゃい。コーエン、迎えに行ったの?」
「ばふっ……!」
どうやら、リビーも面白い気配を感じ取ってやって来たようね。実は、あんまり面白くもないんだけれど。コーエンはリビーと一緒にいたのね。まあ、バカ兄を小突き回すのも飽きたのかしら。
「ソリでこっちに来る時、変な雪まみれの人影を見たわよ。アレが例の不審者かしら」
「グルルルル……」
「何時までそうなさってるんですか、コーエン様」
「ぐう……」
「寒いからってずっとこうなのよ」
「クウーン……」
「アマンナ……」
あ、バカ兄が復活した。
流血は……鼻血程度で止まってるわね。
「アマンナ……。可哀想なアマンナ……」
「……あ、小辺境伯が倒れたわ。
きゃー、たーいへーん」
「ばふっ……。ブフフフ……」
リビーの棒読み過ぎて笑えたじゃないの。
しかし、短い復活だったわね。
それにしても……素直に永遠に雪に埋まってくれると良いのだけれど。
村民に迷惑掛けたらと思うと……放置するのも困るわね。
「そうだわ。暇だし、あの迷惑リボンさんの奮闘ぶりを見に行かない?」
「えっ、この寒いのに外へ行くの!?」
「ええ。それに、コーエン様もそのお姿でヌクヌクと閉じこもっていては駄目よ」
「……」
「太るわよ。ジャクリーヌはプヨプヨなコーエン様をどう思われるでしょうかしら?」
「分かったよ! 行くよ!! 行きゃあ良いんだろ」
コーエンが久々に人の姿になったわ。冬になるとずっと犬の姿だったから珍しいわね。
銀というより白い髪に、冬の空のような青い目……は何時も通りだけれど、少し上背が伸びたかしら。犬の姿だと成長加減が分からないのよね。
でも……髪の毛伸び過ぎでは。背中まで有るじゃないの。
「……でも、散髪とお着替えしてからですわね」
「うう、寒い……」
……コーエン、今更ながらに夏服姿だったのが何ともね。そう言えば、晩夏から大体犬姿だった気がするわ。流石に夏服だと屋内でも寒いわよね。
ブラシで梳いていたけれど、滅茶苦茶髪の毛も伸びてるし……。突っ込んでも仕方ないけれど、どうなってんのかしらね。
「散髪はいいよ……。寒いし」
「取り敢えずお着替えですわね、コーエン」
面倒だけれど、散歩代わりに治安維持に出かけますか。私も少しは運動しないと……ちょっと二の腕が気になるし……。
コーエンは犬になれる青年でした。
犬になれる系青年、何気に書くの初めてかもしれませんね……。変わった獣人が好きなもので。




