表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡り合うは薄氷の湖  作者: 宇和マチカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/10

巡り合いは少し昔の湖

お読み頂き有難う御座います。

ラストですね。

「今日も雪深いわねえ……」


 ある晴れた日。

 バカ兄はトナカイのソリに乗せられて叩き出されたわ。

 勿論たったひとりでね。


 仕方ないわよね。

 連れてきた『愛しいアマンナ』を探しにも行かず、別邸でベソベソグシャグシャ泣いているのだもの。

 射撃も出来ないわ御者も出来ないわだとねえ。

 人ひとりの捜索なんて出来ないし、遭難必至なのよね。

 それは分かりきってたみたい。

 己のお命大事で、探しに行こうという体も装わずにね。アッサリと諦めたのよね。拍子抜けな程に。


 戻ってこられた怒り心頭のお父様にはしおらしくなさっていたわね。

『アマンナ・ポヨーン失踪』を記した手紙を持って、侍従も出してもらってやっと王都へ行ったわ。

 手紙を受け取った男爵は、きっと姪を探さないでしょう。貴族学校へやった時点で縁を切りたいようだったから。


「やっと行ったかー。寒い野郎だ」


 散髪を終えるなり、コーエンったら床に座り込んで、人の膝に顔を載せてきたの。ちゃっかり敷物を二枚重ねで足の下に敷いてるわね。


「それに変な女だったわ」

「リビエールが何か言ってたけどな。アイツの親父も変わった奴だったよな」

「お母様の従弟のウムリ小父様ね」


 もうお亡くなりになられたけれど。

 そもそも、お父様とお母様の馴れ初めには欠かせない方なのよね。

 私は、膝に縋り付くコーエンの切りたての白い髪を撫でながら、嘗て聞いたお話を思い出したの。


『カラルナの追走』


 小父様はそういう題名の本? 芝居の台本? を何時か分からないけれど、お読みになったらしいわ。

 何でも、カラルナという名前の低位貴族の少女が様々な殿方と様々な関係になって恋に落ち、必ず逃亡する羽目になる話らしいの。

 努力次第で、王宮に仕える下級侍女になることも、貴族学校に入学することも、軍に入ることも出来るらしいわ。


 だけれど、必ずとんでもない危機に陥るの。折角手に入れたその立場を投げ捨てて逃避行せねばならない。


 お相手の殿方と心から愛し合っていれば、逃げられる。

 だけれど、一滴でもお相手の心に疑心が湧けば……その心臓は撃ち抜かれる、というお話らしいわ。


 問題は、その女主人公の名前が彼の従姉……カラルナだった訳。

 最初は勿論疑われたそうよ。


 でも、カラルナは何から何まで本通りの女主人公の容姿なの。

 生国ではよくいる黄金の髪に、珍しい茶の目。そして、掌に珍しい花の形のアザがある。


 小父様は悩まれたそうよ。

 従姉のカラルナも大事だったし、何よりカラルナの選択次第では一族郎党惨殺される未来も視えたそうよ。

 そして、小父様は本の中で『危険の少ない結末』を選ばれて……カラルナを国境の湖へ誘導したそうね。それから、対岸にいる青年から変な謎解きを吹っ掛けられて……。


「『砕氷船』を作ったんだよな」

「……あら、口に出てたかしら。コーエン、顔を除けて」

「冷たいこと言うなよー」


 何時の間にか、私が逆に抱えられていたわ。……暖かいわね。でも、肩に顔を擦り付けるの止めて欲しいわ。肩の生地が何時も擦り切れるのよ。


「ウムリのおっさんが色々伝えたんだもんな、()()から」

「そうなのよね。銃に、香水に……砕氷船も」

「塩塗れの鉄槍を『銀皮の花』に刺して無力化しつつ、砕氷船で此処に乗り付けるとか面白過ぎるだろ」


 そうなのよね……。

 本当にそんな事出来るの? って思うような話だったわ。

 でも小父様曰く、人の体は鉄と塩の味がするから『銀皮の花』も騙せたんだとか。

 ……本当かしら。


 でも、お父様も人を喰らった時と同じように、残骸がちゃんと薬草になってたって言ってたものね。案外適当よね、あんなに残虐さもある氷の精霊なのに。


「その頃、あんまりガチで睨み合ってなかったからやれたんだろーな。

 今ならあの湖に船で縦断するなんて、蜂の巣にされるだろ」

「射撃手も今じゃ沢山いるでしょうしね」


 色々無茶苦茶だと思うけれど。

 見事、カラルナは小父様の知恵にて謎を解き、共に隣国へ……ヴォイッシュ辺境伯家へと押しかけ嫁入りしたのでした。


「それがお母様のお話ね……。

 今は地下の温室で薬草のお世話中かしら」

「こんだけ喧しいのに、全然出てこなかったな」


 本当に流されやすいと言うか、その癖自分本位というか。

 ちゃんとしぶとく生き残っている所は、流石女主人公と言うべきかしら。


「その頃の話をあの迷惑女が知ったとして……お父様の目的もねえ……」

「辺境伯が変な船を対岸に寄越したのも、隣国の技術者を拉致する目的だったんだろ? 策士だよな」

「当時は、顔が良かったらしいものね……。

 今ではでっぷりお腹だけれど」


 それにウッカリ引っ掛かったウムリ小父様も策士なのか、わざとなのか……。

 でも、嘗て読んだ物を思い出して、態々本を遺されたものね……。

 だから、我々ヴォイッシュ辺境伯領の者は詳細に覚えているのだけれど。


「今となっては、本当かしらって感じよね」

「まあ、邪魔が入らなくて俺は安心だけどな」


 耳に口づけが落とされて、首の匂いを嗅がれたわ。

 普通の婚約者だと、あまり余所ではしないらしいわね。

 コーエンはかなりの確率で犬姿だものね……。


 でも、小父様の話の中では女主人公カラルナは他の男へ恥じらうフリをして振り回していたわね。必要かしら?


「女主人公のように、恥じらうべきかしら?」

「いや? 俺好みのそのまま強いジャクリーヌでいてくれ」


 隣国との緊張も、未だ続くわね……。

 だけれど、愛しいひとと寄り添えるこの環境を作ってくださったことに感謝しつつ、皆と、コーエンと手を携えて護らないといけないわ。

 この愛おしい辺境伯領をね。……って、重い!全体重を掛けてくる!?


「だから、重いし苦しいのよ!」

「キャウン!!」


 ……実に、物理的にも重い未来になりそうよ。

もうひとりの電波系は、ちゃんとイベントをこなしたらしいです。

お読み頂いた貴方に感謝を!

有難う御座いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ