船を交わす少年少女
お読み頂き有難う御座います。
隣国との境目に、大きな湖がある。でも何処にあるのかは、分からない。
その地はとても寒くて、冬では大気が凍ってしまうかと思う程寒かった。
しかし、偶々辿り着いた少女は湖を見つけてしまった。彼女は元々街に住んでいて、連れとはぐれてしまったから。
外套に包まれていても、命を奪う程に寒い。その中に佇む凍りつく湖は、少女が見たこともないくらい美しかった。
少女が辺りを見回すと、対岸に誰かが見える。
思わず踏み出そうとすると、両手に乗りそうな何かが湖を滑ってきた。
手紙を載せた船の模型だった。
『氷の上に乗ると、沈んでしまうよ』
手に取った手紙には、そう書かれていた。
対岸に目を凝らすと、手を振っている誰か……少年が見える。
遠目にも、キラキラした髪を持つ少年だった。
それから、少女と少年との船を介した対話が始まる。
少女は携帯型の筆記具と紙を持ち、お世話になっている家から抜け出して、少年との話に夢中になった。
会話を載せた船は、すうっと氷の上を滑って来る。
『今日は。僕の名前はエリーク。
湖の対岸では、言葉は届かない。
でも、凍った湖に張った未だ氷は脆くて人を飲み込んでしまう。
だから、対岸の人と話すにはね。小さな船に手紙を載せて運んでもらうんだ』
次受け取った手紙に、そう記されていた。
その日のやりとりは、少女を探す声で中断してしまったが、神々しく見える不思議な少年と、珍しい方法のやりとりに少女は夢中になる。
雪の日には勿論外出が許されないので、晴れた日には何だかんだと理由をつけ、足繁く通った。
何時間も、何日も少年と手紙を交わした。
お世話になっている家の者に頼み込んで、珍しい単眼鏡を貸して貰ったお陰で少年の姿も見える。
単眼鏡を介して少女の目に映ったのは、街では見たことのない、氷のように透けた頬のとても美しい少年だった。
銀の髪も、暗い色の目も、街にいる誰よりも神秘的で美しかった。絵本の雪の精のように。
少女は、そんな彼に自然に恋をしていた。
少女が帰る最後の日。
彼は微笑んで、こう書いて船を寄越した。
『湖の中心で薄氷の花が咲いたら、人が渡れる術があるそうだよ。
また此処で会おう。
きっと会える。
渡れる術を携えて来てくれるよね?
信じているよ』
見づらいとは思いますが、単眼鏡は浪漫ですね。




