第1話:魔法陣の欠陥で別国召喚、運動神経と勇者力で初戦突破
光が消え、天城蓮は見慣れない城門の前に立っていた。前回の異世界での戦いから数日しか経っていないはずだが、今度は国も町も全く知らない景色だった。周囲の城壁や旗、石畳の道……どれも新しい国のものに見える。蓮は眉をひそめ、足元を確認する。「……また魔法陣か。しかも欠陥品だな……」彼はつぶやき、状況を把握しようと目を見開く。
城下町には兵士たちの緊張が漂い、街の人々も怯えた表情で周囲を見回している。空気が震える。すると遠くから、黒い影が地面を這うように迫ってきた。無数の魔物だ。角や羽を持つ怪物が群れを成して城下町に侵入してくる。蓮は本能的に体を動かす。ジャンプ、回避、蹴り……運動神経がフル稼働し、魔物の攻撃をかわしていく。徐々に、覚醒しかけた勇者力が反応する。
「勇者様……助けて!」姫の声が城壁の上から響く。蓮は視線を向け、そこに立つフィリアとリディアを確認する。彼女たちは必死に手を振りながら魔法で援護を行おうとしている。蓮は心の奥で決意する。「……やるしかないか、俺は勇者だ」
魔物の群れが迫る中、蓮は体を駆使して迎撃に加わった。蹴りで一体を吹き飛ばし、ジャンプで攻撃をかわし、盾で受け止める。街中を縦横無尽に駆け回る蓮の動きは、人間の常識を超えていた。姫たちも魔法で援護し、蓮の背後を守る。戦場の中心で、蓮は自分の中で覚醒しかけた勇者力が、運動神経と完全に融合していることに気づく。
戦闘が進むにつれ、魔物の群れは徐々に減っていった。逃げ惑う魔物を見ながら、蓮は呼吸を整える。「これで、とりあえずは……」とつぶやき、城下町を見渡す。姫たちは息を切らしながらも、蓮の元に駆け寄り、安心した表情を浮かべる。「勇者様、本当に助けてくれたんですね!」フィリアの声に、蓮は少し照れながら笑った。
戦闘の余波で破壊された街の一角を見つめると、光を放つ古代の箱が地面に埋まっていた。蓮は躊躇せず手を伸ばす。箱はひんやりとした金属の感触で、蓮の手に触れた瞬間、古代ブーツが出現する。「これが……古代装備か」装着すると、跳躍力と機動力が飛躍的に上がり、今後の戦いにおける戦術の幅が広がった。
その後、蓮は国の重鎮や兵士たちと対話し、国に残るよう求められるが、過去に勇者が不要と言われた経験から、複雑な心境になる。「俺は……必要とされていないと思われたのに、何を今さら……」しかし、姫たちの笑顔や国民の期待を目にして、蓮の胸は少しずつ熱を帯びていく。
日が暮れる頃、蓮は再び城壁の上に映る四天王の影を見つめる。遠くから戦況を観察するその影に、次なる戦いの予感を感じる。「……まだ、試練は終わっていないか」息を整え、蓮は立ち上がる。古代ブーツの軽やかな装備音が夜風に響き、勇者としての新たな冒険が幕を開けるのであった。




