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第47話 俺が好きなのは

「……ごめん」


 俺は断っていた。


 ずっと好きだった。それなのに俺は無堂さんからの告白を断っていた。


「あ、えっと……い、今の無しっ!」

「えっ?」

「ごめんね急すぎちゃった。さっき夜斗君、すごくかっこ良くて、気持ちが昂って勢い余っちゃったっていうか……と、とにかく今のは聞かなかったことにしてっ!」

「あ、うん。わかった」

「う、うん。やっぱ、もっと仲良くなってからじゃないと……」

「えっ?」

「なんでもない。あ、その……今度からあたしのこと姫奈って呼んでね。そう呼んでくれなきゃ返事しないから。それじゃあね」

「あ……」


 別れを言って、無堂さん……いや、姫奈さんはマンションの玄関を通って中へと入って行った。


「まさか無堂さん……姫奈さんから告白をされるなんて……」


 しかし断ってしまった。

 ずっと好きだったはずなのに……。


「夜斗」

「情美?」


 車で待っていた情美がこちらへと歩いて来た。


「無堂さん帰ったのになんかぼーっとしてたから」

「あーいや……」

「ウンチ漏らしちゃった?」

「幼稚園児か俺は。その……告白されて」

「えっ?」


 俺の言葉を聞いて情美は目を見開く。

 それからどことなく表情を暗くした。


「そ、そうよかったね。夜斗、無堂さんのことずっと好きだったし……」

「断わった」

「えっ? ど、どうして?」

「ど、どうしてって……」


 俺は情美の顔を見つめる。


「その……告白されたときになんかお前の顔が浮かんできて……」

「わ、わたしの顔? どうして?」

「いや、それはその……」


 その先の言葉を言えば、俺たちはたぶん友達じゃいられなくなる。

 そんな気がして俺は口篭った。


「もしかして夜斗……」

「あ、えっと……」

「わたしのこと……」

「情美……」


 俺は覚悟をして情美の言葉を待つ。


「す、げっぷー」

「うわ臭っ!」


 情美の口からゲップとともに吐き出されたものすごいニンニク臭に俺は顔をしかめる。


「お前またニンニクラーメン食ったろっ!」

「お腹減ってたからチョモランマ2杯も食べちゃった」

「どんな胃袋してんだお前は……」


 口から吐き出されるニンニク臭もいつもの2倍な気がした。


「なんかちょっと臭いなーとは思ってたけど……うう、なんかニンニク臭が凄過ぎて気持ち悪くなってきた」

「げっぷー」

「ちょ、追撃するなっ!」

「しょうがないじゃん出るんだから。それより夜斗さ……」

「いやもう話しかけるな。ニンニク臭で鼻が曲がる」

「げっぷー」

「やめろってのーっ」


 間近でニンニク臭たっぷりのゲップを食らって眩暈がした。


「女の子に臭い臭いってちょっとひどくない? げっぷー」

「チョモランマニンニクラーメン2杯も食って、ニンニク臭いゲップをかましながら女の子アピールするなっ!」

「ちょっと傷つく」

「あ、ごめん言い過ぎた」

「うそーん。平気だよー」

「コノヤロー」

「まあ夜斗は口が臭いから無堂さんにフラれたってことでしょ?」

「いや、全然、話が変わってるじゃねーかっ! 口臭いのを俺にするなっ! 臭いのはお前だけだよっ!」

「ちょっと傷つく」

「あ、ごめん」

「うそーん。平気だよー」

「コノヤロー。って、このくだりもうやったから」

「もう1回くらいやってもウケないかな?」

「知らんよ。もう帰るぞ」

「あ、さっきの話どうしよう?」

「そ、それは……また今度でいいだろ」


 なんかもうそういう雰囲気じゃなくなっちゃったし。


「夜斗が尻にショットガンを移植するって話」

「なんの話だよっ? なんで俺、尻から凶器をひり出す怪物になるなんて話をしてんだわけわからんっ!」

「けど緊迫した場面で尻を出して、そこからショットガンがニョキって現れたらおもしろいじゃん?」

「おもしろいで尻にショットガン移植するかっ!」

「ナハハ」

「おもしろがるのお前だけだよっ!」

「いや、今のは思い出し笑い」

「別のことで笑ってたっ! もういいから帰るぞっ!」

「あーい」


 なんだか嬉しそうに返事をして情美は俺のうしろからついて来る。


 やっぱ情美とはこういう関係がいい。

 けどいつまでもこうじゃ嫌だなという、そんな思いも心の中にあった。

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