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第41話 無堂さんが狙われてる?

 放課後、俺は情美を連れて無堂さんとともに帰る。


 少し前まで無堂さんと一緒に帰れるなんて想像もできなかった。

 カラオケやキャンプにも行ったし、仲がだいぶ進んだように思う。


「いつも2人で一緒に帰ってるんだね」

「うん。無堂さんも誰かと一緒に帰ってるの?」

「日によって違うかな。いろんな人と帰ってるよ。長い友だちとか、その日に仲良くなった人とかね。あんまり知らない人と帰ることもあるよ」

「へー」


 その日に仲良くなった人やあんまり知らない人と一緒に帰れるなんてさすが陽キャだ。俺は小学生のときから情美としか帰っていない。


「夜斗は知らない風と共にそよ風のように帰宅してるんだよね」

「そんなポエムな下校してね―よ。普通に歩いて帰ってるわ」

「普通に歩くと燃費悪いじゃん」

「カマロか俺は」

「じゃあもう空飛んで帰ればいいじゃん。もう知りません」

「なんで俺がわがまま言ってるみたいな感じになってるの……うん?」


 なにやら無堂さんが周囲を気にするような仕草をしていた。


「どうかしたの?」

「えっ? あ、その……ちょっと喉渇いたしそこのカフェに寄って行かない?」

「あ、うん。情美もいいよな?」

「よきにはからえ」

「昔の偉い人か」


 ということで俺たちは近くのカフェへと入る。


 女の子2人とカフェへ。

 両手に花と言いたいところだが、


「このチョモランマクリームパンケーキは量が多くて良いね」


 胸焼けしそうな食い物を横で口へ放り込んでる女を見たら、とてもそうとは思えなかった。


 一方、無堂さんのほうはケーキへ手も付けていなかった。


「さっき、周りを気にしてたみたいだけどなんかあった?」

「えっ? あ……うん。えっとね、なんか最近、誰かにつけられているような気がしててさ」

「誰かにつけられてるって……もしかしてストーカー?」


 無堂さんは誰が見ても美少女だ。

 ストーカーに狙われても不思議は無い。


「わからない。けど、もしかしたらって心当たりはあるの。もしそうだったら怖いなって……」

「心当たりって?」

「……」

「無堂さん?」

「……それは聞かないほうがいいかも。巻き込んじゃったら悪いし」

「そ、そんな危険な心当たりがあるの? だったら尚更、誰かに相談したほうがいいよ。なにかあってからじゃ遅いんだしさ」

「うん。けど大丈夫だよ。お父さんとお母さんに相談してるし、なんとかしてくれるって言ってたから」

「それならいいんだけど……。あ、けど心配だから、解決するまで登下校は俺たちと一緒にしよう。朝は迎えに行くし、帰りは家まで送って行くからさ」

「えっ? けど、あたしの家は途中から2人の家と反対方向になるみたいだし……」

「解決するまでだから大丈夫だよ。情美もいいだろ?」

「うん? いいよ。モノポリーは好きだしね」

「お前は一体、なにを聞いていたんだ……?」


 今日はいつもよりふざけ度合いの多い情美だが、特に文句は言わず、カフェを出てから無堂さんの住むマンションまで一緒に来てくれた。


「2人ともありがとう。送ってくれて」

「気を付けてね。家の中でも絶対に安全とは言えないから」

「うん。今日はお父さんもお母さんも仕事が忙しくていないんだけど、戸締りはちゃんとするから大丈夫だよ」

「なにかあったらすぐ警察に通報したほうがいいよ」

「わかった。それじゃあまた明日ね」


 マンションの玄関を通って無堂さんは建物へと入る。


 入り口は番号を入れないと開かないオートロック式だ。

 中に入ってしまえば大丈夫だろうと思う。


「お前、今日はいつにも増してふざけてたな」

「そうかな? そんなことないよ」

「無堂さんがいるときにふざけ度合いが増すような……」

「……友達の友達が一緒にいると、なんか居心地悪いの」

「あ……」


 よく考えてみれば、情美と無堂さんって別に友達ってわけでもないのか。それなのに一緒にいたら、確かに居心地は悪いと思う。


「だからお前、ずっとふざけてたのか」

「ふざけてると落ち着く。ふざけてないと禁断症状で震える」

「それはたぶん病気だ。けどごめん。ここまで付き合わせちゃって悪かったよ」

「ううん。構わないよ。わたしは無堂さんというより、夜斗のことが心配でついて来ただけだし」

「ストーカーのひとりくらいなら俺だけでも大丈夫だよ」

「たぶんストーカーとは違うかも」

「えっ?」

「なんか誰かにつけられてたみたい。もうどっかいっちゃったみたいだけど、あれはストーカーより面倒な連中かも」

「面倒な連中って……」

「どこでも我が物顔で歩くおばちゃん集団」

「そら面倒だわね。ある意味、怖い」

「反社会的な連中ってこと」

「反社会的って……なんでそんなのに無堂さんが狙われるんだ?」

「それはわからないし、もしかしたらわたしの思い過ごしかも。帰ったらお父さんに聞いてみる。裏の話には詳しいから。あ、ちょっとうしろ向いて」

「えっ? なに?」

「うらあっ!」

「いたーいっ!」


 なんか知らんけど背中をはたかれた。


「まあこういうことよ」

「いや意味わかんないんだけどっ!」

「裏と言ったら背中。それを身体でわかってもらいたかったにゃん」

「なにかわいく言って誤魔化そうとしてんだっ! まったくお前はもうっ!」

「まあまあここはわたしに免じて」

「お前がやったのにお前に免じるってどういうことだよっ!」

「遅くなっちゃうから帰ろうか」

「急に普通なこと言うなっ!」


 相変わらずふざけた奴だ。


 しかしもしも情美の言っていることが本当だとしたら無堂さんが心配だな。


 彼女を守るために俺ができることはなにかないか?

 それを考えながら家へ帰った。

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