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第36話 キャンプへ出発

「これで夜斗も1流のヒットマンに近づいたね」

「人を殺し屋にしようとするな」


 放課後、俺は情美と一緒にキャンプ用品を買いに繫華街へ来ていた。


「だって2日で50人は殺ったじゃん」

「殺ってない殺ってない。眠らせただけ」

「将来が楽しみってお父さんが満足そうに言ってたよ」

「お前のお父さんの中で俺の将来はどうなってんの……?」


 答えは聞きたくもなかった。


 キャンプ用品店にやって来た俺たちは店内をぐるりと歩く。

 いろいろとあって、目移りしてしまう。


「寝袋とかテントとか、あとは……」


 大きいものは家に配送してもらうとして、他の小物を俺はカゴに入れた。


「これも買おう」


 そう言って情美がカゴに鼻眼鏡とバーコードハゲのカツラを放り込んだ。


「いやなんだよこれっ? どっから持って来たっ?」

「キャンプで会話に困ったときにこれを使えばちょっとだけ盛り上がるじゃん」

「今どきこんなベタな小道具で笑いが取れるかっ!」

「ベタで笑いを取ってこそ1流よ」

「誰なんだお前は……。そういえばお前はキャンプ用品を買わなくていいのか?」

「わたしは経験者だから家に道具はあるの」

「そうなのか? キャンプしたことあるなんて意外だな」


 俺と同じでインドアな趣味しかないと思ってた。


「うん。中学のときにお父さんと行ったことあるの」

「へー。お父さんとキャンプなんて楽しそうだな」

「楽しくはなかったかな。とにかく大変だった」

「大変だったって?」

「崖を登ったり獲物を獲ったり、水場を探したりするのが」

「それキャンプじゃなくてサバイバルじゃね?」

「けど寝袋とか使ったよ? 崖にぶら下げてミノムシみたいにして寝た」

「いや、サバイバルにしたって過酷過ぎるだろっ! お前のお父さん、娘になにやらせてるんだよっ!」

「強い子に育ってほしいって。クマとも戦った」

「娘を怪物にでもする気かお前のお父さんは……」

「クマはキン〇ドライバーで倒した」

「本当か冗談かわからん……」


 こいつならやれるかもしれないし……。


 キャンプ道具を買った俺たちは店を出て家へと帰る。

 準備は万端。あとはキャンプの日を待つだけだ。


 ……そしてキャンプ当日。

 荷物を担いだ俺は待ち合わせ場所の駅で待っていた。


 俺が一番乗りだ。

 2番目に来るのは誰かな?


 あんまり知らない奴だったら2人きりは気まずいな。

 情美か陽介が来てくれればいいんだけど。


 そんなことを考えながら待っていると、


「あ、夜斗君おはよー」

「えっ? あっ、む、無堂さんっ」


 まさかの無堂さんが俺の次だった。


「夜斗君、早いねー。あたしが一番だと思ってたのにくやしー」

「い、いや、そんなに変わらないよ。俺もさっき来たとこだし」

「そうなんだ。タッチの差ってやつだね」

「う、うん」


 俺を見上げてニッコリ笑う無堂さん。


 やっぱりかわいいな。

 明るく人懐っこいこの性格は、陰キャの俺に眩しかった。


「夜斗君はキャンプ初めてなんだってね?」

「うん。俺インドアだから……」

「じゃあキャンプの大先輩であるあたしがばっちり教えてあげないとね。わからないことがあったらなんでも聞いて」

「ありがとう」


 無堂さんとキャンプ。

 喜びよりも、緊張のほうが多かった。


 それから続々とキャンプのメンバーが集まって来る。

 陽介が来て8人。あとは情美が来るのを待つだけだった。


「あいつなにやってんだ?」


 寝坊でもしたんだろうか?


 電話してみるかと俺はスマホを手に持つ。


「もう来てるよ」

「えっ?」


 情美の声が近くから聞こえた。

 しかし姿は見えない。


「情美? あれ? 気のせいかな?」

「ここにいる」

「えっ? うわっ!?」


 不意に背後の壁が動き出す。

 壁と同じ模様の人型が俺の側へと歩いて来た。


「な、情美っ?」


 俺を含めた全員が驚く中、現れたのは全身が壁と同じ模様をした情美だった。


「おま……いつからそこにいたんだっ?」

「夜斗が来る前からここの壁に潜んでた」

「忍者かお前はっ!」

「伊賀者です」

「どっちでもいいわっ!」

「と見せかけて実は伊賀に潜んでいる甲賀者の伊賀甚左衛門です」

「ややこしいっ! てかお前、ほとんどなにも持って来てないじゃん?」


 みんなは大きなリュックを背負っているのに、情美は寝袋を背負っているだけだった。


「持ってるよ。方位磁石とか水筒とかナイフとか」

「だからサバイバルじゃなくてキャンプだってのっ!」

「まあ落ち着いてよ伊賀の人」

「誰が伊賀の人やねんっ」

「キャンプもサバイバルもそんなに変わらないよ。やり方の違いだけでしょ?」

「いやまあそうかもしれんけど……」

「伊賀と甲賀の違いくらいしかないよ」

「その2つの違いはよくわからん……」


 まあともかく全員が集まったので出発した。

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